MENU
カテゴリー

「Catch up Premier League」~クリスタル・パレス編~ 2024-25 season

クリスタル・パレス、24-25シーズンの歩み。

目次

第1節 ブレントフォード戦(A)

ノーゴール判定で変わった流れをモノにしたブレントフォード

 23-24シーズンにおける終盤戦の主役だったクリスタル・パレス。オリーズこそミュンヘンに旅立っていったが、他の主力はキープに成功。エースのトニーが「総合的な判断」で欠場したブレントフォードのホームに乗り込み、開幕戦の勝利を狙う。

 立ち上がりは一方的なパレスのペースと言っていいだろう。バックスが余裕を持ってボールを持つと、インサイドに差し込みエゼが前を向いて左右に自在に展開。大外を取ったWBを生かして速いクロスをボックス内で入れるという攻撃のテンポにブレントフォードはついていけていなかった。

 さらに状況を悪くしたのはなかなかブレントフォードに前進の見込みが立たなかったこと。トップに残ったウィサはロングボールのターゲットとしては心許ない。だが、ショートパスを繋げばフレッケンがあわや鎌田に咎められてしまうという冷や汗をかく場面も。というわけで立ち上がりはイェンセンがバックラインに入って5バックでパレスを迎撃していたが、徐々にプレスからの陣地回復を模索していく。

 だが、このプレスはさらに事態を悪くする。遅れて出ていくプレスは逆にパレスの縦パスのタイミングの合図に。ライン間のエゼに取っては養分のようなプレスとなってしまった。

 試合の流れを大きく変えたのはエゼの直接FK。ネットを揺らした衝撃的な一撃はヒューズのオブストを取られてしまいノーゴール。さらには主審の笛がネットを揺らす前に吹かれたためにVARも介入することができないものとなってしまった。

 このプレーで一気に流れは変化。その直前からややつなぎからサイドの突破の目処が立ったブレントフォードは右サイドのムベウモの裏抜けから先制ゴールをゲット。カットインからのシュートは十八番パターンなので、シュートに対して後手を踏みやすい体の向きをしていたグエイにとっては悔いの残るプレーであった。

 出ていく必要のなくなったブレントフォードは自陣でのコンパクトな守備に終始。これにより猛威を震っていたエゼは完全に幽閉されることに。さらにはプレスにでも出ていくことができず。得点以降、パレスは反撃の目処が立たないままハーフタイムを迎えることとなった。

 後半もいい入りを見せたブレントフォード。ウィサとムベウモのコンビで右サイドを蹂躙すると、いきなりゴールを脅かしていく。

 対するパレスはロングボールを頻発。オリンピックで合流が遅れているマテタ→エドゥアールの交代はある程度用意されていたものかもしれないが、それでもロングボールを増やした理由としてはやや弱い気もする。

 前半と異なり、インサイドにボールをつけることができず、外への突破の負荷が高まるクリスタル・パレス。サイドに流れたエゼからそういう状態もなんのその!というクロスがガンガン上がるように。そうした中でブレントフォードはピノックがオウンゴールを犯してしまい、再び試合は同点になる。

 以降も左サイドからクロスを積極的に狙っていったパレス。インサイドに起点と作らなくてもなんとかしてしまうエゼの馬力で強引な解決策に辿りつく。このシーン以降も左サイドからのクロスで勝負に出ており、やや力づくでパレスと張り合っていく。

 勝ち越し点を狙うパレスだったが、それをあざ笑うかのように再び前に出るブレントフォード。右サイドからのクロスを起点としたプレーから最後にボールを押し込んだのはウィサ。仕事人ストライカーの一撃からまたしてもリードを奪う。

 以降も、ローブロックを組むブレントフォードに対して、パレスが力づくでの解決策を探る展開。だが、最後までゴールは奪えず。2トップが躍動したブレントフォードが勝利を収めた。

ひとこと

 完全にエゼのFKの判定から流れが変わった感はあるが、それ以前にもきっちりとつなぐトライから反撃の糸口を探っていたことは忘れてはいけない。

試合結果

2024.8.18
プレミアリーグ 第1節
ブレントフォード 2-1 クリスタル・パレス
Gtechコミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:29’ ムベウモ, 76‘ ウィサ
CRY:57‘ ピノック(OG)
主審:サム・バロット

第2節 ウェストハム戦(H)

連敗回避に成功したのはウェストハム

 ブレントフォード相手に優勢に試合を進めながらひっくり返されてしまい、開幕戦を落としてしまったクリスタル・パレス。再びロンドン・ダービーとなる今節はこちらも開幕戦で敗れたウェストハムをホームに迎えての一戦となる。

 パレスとしてはウェストハムのバックラインにはひとまずボールを持たせてOKというスタンス。5-2-3でナローに守って中央を圧縮し、そこからカウンターに出て行くプランでウェストハムを迎え撃つ。

 ウェストハムは前進とフィニッシュの両面で高さを生かすアプローチ。前線でサイドに流れるアントニオもさることながら、厄介だったのはソーチェク。アントニオをサポートするように列を下げてロングボールのターゲットになるあたり、単純に捕まえにくい。ただでさえサイズのある選手に対して列移動でズレて対応を強いられるというのは守る側としてはコストがかかる。

 押し下げる機会が多かったウェストハムだが、即時奪回による波状攻撃までもっていくことができなかったのはパレスの高いプレス耐性によるところだろう。時間がない中でもパレスのボールホルダーはスムーズな回避でウェストハムのなだれ込むようなプレスをいなし、ここから前進を狙っていく。

 時間が経過すると少しずつクリスタル・パレスもボールを持てるようになる展開に。3バックを基調に長いレンジのパスを生かして広いポゼッションを狙う。しかしながら、中央のCBがアンデルセン→グエイになった分、DFラインからの展開力は低下。正確に遠いところに届ける精度が足りておらず、サイドに時間を渡すことができていなかった。

 パレスが押し込む時間が増えた20分以降もチャンスは増えず。内と外が分断されてしまう攻撃はなかなかウェストハムに風穴を開けることができない。ポゼッション率の増加とチャンスの構築はイコールにならず、この試合の多くのチャンスはトランジッションがベースとなっており、自陣からの長い距離のカウンターの精度勝負となっていた。

 迎えた後半もボールを動かしながらも主導権の握り合い。ウェストハムは列を上げつつサイドに流れるソーチェクとアントニオを軸にポジションチェンジを行いながらロングボールの落としから前進を狙っていく。

 一方のパレスも中央でのコンビネーションが前半より良化。マテタのポストから少しずつチャンスメイクができるようになる。

 均衡した展開で試合を動かしたのはウェストハムの右サイド。ワン=ビサカが高い位置でキープし、ボーウェンのオーバーラップを促すと、ここからサイドの崩しに成功。ようやく混戦の中でソーチェクが試合を動かすゴールを決める。

 以降もゲームはどちらでもない展開に。そうした中からカウンターで牙をむいたのはウェストハム。エゼの突撃をカットしたところから生み出された機会を仕留めた。持ち上がりからウォートンを外したキルマンのプレーが素晴らしかった。

 じりじりした試合は後半に決着。ウェストハムが連敗ストップに成功した。

ひとこと

 アンデルセンの移籍はかなりクリティカルなダメージになる感がある。

試合結果

2024.8.24
プレミアリーグ 第2節
クリスタル・パレス 0-2 ウェストハム
セルハースト・パーク
【得点者】
WHU:67′ ソーチェク, 72‘ ボーウェン
主審:ロベルト・ジョーンズ

第3節 チェルシー戦(A)

中央集結の目的が見えてこなかったチェルシー

 前節、ウルブスを粉砕してマレスカ政権での初勝利を手にしたチェルシー。しかしながら、大味の時間も少なくなく、スコアほどの強さを見せ続けた90分というわけではなかった。真価が問われるのはここからだろう。

 この試合のチェルシーは保持で少し工夫を施してきた。カイセドが中盤に残り、エンソは左のハーフスペースに流れて上下動。きっちり左右対称というわけではないが、降りて受けて反転して前進を狙うパルマーと近い動きを見せたといっていいだろう。

 アンカー役のカイセドは最終ラインに落ちて、実質中盤に入るのはグストという変化も見せたチェルシー。アタッキングサードの攻め手になったのはマドゥエケ。右サイドから李リチャーズの背後を取る動きを繰り返して、チェルシーの推進力となる。時にはジャクソンとレーンを変えながらの攻撃も見せており、なかなか動きとしては興味深かった。

ヘンダーソンのセーブでなんとか踏ん張るパレスだったが、再三の右サイドからの突破を狙うチェルシーについに破られてしまい失点を喫することとなった。

 もっとも、チェルシーの保持のメカニズムが効きまくっていたかは怪しいところ。降りてくるパルマーとエンソの動きはやや単調な感じもあったし、左サイドの大外でレーンを重ねたネトとククレジャの縦関係が、シャドーの鎌田が引いて受ける4-4-2っぽい枚数合わせを敢行したパレス相手に何かを生み出せていたわけでもなかった。

 しかしながら、パレスの前進はチェルシー以上に苦しい。左サイドに開くリチャーズから奥を狙う一発を軸とする動きを見せたが、チェルシーの迎撃のターゲットが非常に明確であり起点を作れず。我慢が効かなかったエゼがラインを下げて怖くないエリアまで降りてきてしまうというありさまだった。

 40分手前にチェルシーは少しずつ迎撃部隊の対応が怪しくなったこともあり、パレスはボールを持てるように。しかし、スコアは動かず。試合はチェルシーのリードでハーフタイムを迎える。

 後半もチェルシーが仕切り直してボールを持つスタート。中央に降りるパルマーの反転はさらに見切られている感があった。

 パレスの苦しさは相変わらずであったが、敵陣でのFKでのリスタートからエゼがミドルでネットを揺らして同点。一振りで試合を振り出しに戻す。このゴールから少しずつパレスはチェルシーの中盤のギャップを使ってのポゼッションができるように。

 後半のチェルシーはフェリックスを投入し、さらにインサイドの起点を増やす。だが、余計に中央がごちゃごちゃした感があり、相手を動かしての攻略まではたどり着かなかった。グストの負傷からのムドリクは少しやけくそ感もあったが、中央の渋滞は選手交代では解消できず。右サイドのエンクンクとフォファナが終盤にほんのり奮闘したが、それ以上の成果を見せることはできず。チェルシーはホーム初勝利を飾ることができなかった。

ひとこと

 尖りがすっかりなくなってしまったパレスも方向性を打ち出せているのかよくわからないチェルシーも少し気になる出来だった。

試合結果

2024.9.1
プレミアリーグ 第3節
チェルシー 1-1 クリスタル・パレス
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:25’ ジャクソン
CRY:53’ エゼ
主審:ジャレット・ジレット

第4節 レスター戦(H)

交代策が実って薄氷のドロー

 今季ここまで勝ちがない両チーム。特にホームのパレスは期待が大きいシーズンだっただけに早く初勝利を手にしたいところである。

 ボールを持つのはレスター。パレスはマテタが中盤をケアするなど、バックスには無理にプレスにいかないスタートとなった。レスターは左サイドのコンビネーションからサイドの奥を取りに行く。奪われるとすぐにハイプレスでボールを奪い返しにいくなど、立ち上がりはかなり積極的な姿勢が見えた。

 序盤の流れが落ち着くとレスターも4-2-3-1のブロックを組み、ヴァーディを前残しすることでパレスとレスターはそれぞれ交互に保持から解決策を探る流れに。パレスの保持で少し気になったのはウォートン。中央で浮く機会が瞬間的に訪れるのだが、なかなかその機会に効果的な配球を見せることができない。周りとの連携の話もあるので、彼だけの責任ではないかもしれないけども。

 流れの中から迎えた決定機は両チームに訪れたが、これを決めるか決めないかで明暗はくっきり。左サイドを壊したパレスは逆サイドに余ったムニョスが決定機を迎えるが、ファエスが体を張ってのセーブ。ゴールを許さない。

 すると直後に中盤でのボール奪取からエンディディのラストパスを受けたヴァーディが裏抜けから先制。職人芸と言える一撃で試合を動かす。

 先制点以降はパレスの方がややボールを持つ機会が多くなる。大外のWBを生かしつつニアの裏抜け、そして逆の大外など広く使いながらチャンスを狙っていくが、ネットを揺らせないままハーフタイムを迎える。

 後半は立ち上がりにスコアが動く展開。先にゴールを奪ったのはマヴィディディ。クリアし損ねたところを仕留めて中押しのゴールを決める。

 だが、すぐにパレスもやり返し。左サイドから精度抜群のクロスを入れたミッチェルに応えたマテタがネットを揺らして後半早々の失点を帳消しにする。

 1ゴールずつを分け合った両チームは再びフラットな展開に。ボールを持ちながら解決策を探るのが多かったのはパレスなので前半の終盤の流れに戻ったといってもいいだろう。後半頭に入ったヒューズは左右に散らす展開力で存在感を発揮。レスターを押し下げることに貢献する。

 押し切りたいパレスは鎌田の投入から4-4-2にシフト。一方のレスターはコーディを組み込んでの5バックで逃げ切り態勢を構築する。

 方向性は打ち出された展開で成果を得たのはパレス。鎌田のスルーパスを収めたエンケティアの落としにサールが入り込んでPKを獲得。PKを与えてしまったのがコーディというのはなかなかに切ないところである。

 土壇場のPKで追いついたパレス。レスターはすんでのところで今季初勝利を逃してしまうこととなった。

ひとこと

 パレス、勝ち点を取れたことは良かったけども、昨季の良かった時期のフォームに全く戻ってこれない感じが気になるところ。

試合結果

2024.9.15
プレミアリーグ 第4節
クリスタル・パレス 2-2 レスター
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:47′ 90+2′(PK) マテタ
LEI:21′ ヴァーディ, 46′ マヴィディディ
主審:トニー・ハリントン

第5節 マンチェスター・ユナイテッド戦(H)

効いてる動きを繰り返せずスコアレスドロー

 前評判の高さとは異なり、なかなか今季は勝利が掴めないパレス。前節サウサンプトンを下してアウェイ連勝を狙うユナイテッドと対戦する。

 前節はかなり慎重な入りだったパレスだが、今節は高い位置から積極的なプレスに出ていく。奪ったら縦という形も徹底。マテタへの長いボールからチャンスを作っていく。立ち上がり直後のデ・リフトはかなり冷や汗をかいたことだろう。

 だが、パレスはマテタへのロングボール以外に前進の手段が皆無。降りるエゼは潰されてしまい、エンケティアは存在感が薄くボールを受けることができずに苦戦する。

 さらにはバックスの連携不足も露呈。一つずれを作られるとラインが簡単にガタガタになってしまうという苦しい状況であった。つまり、ユナイテッドからすると縦パスを入れてパレスのバックラインの誰かを引っ張り出せればチャンスになるということ。オフサイドにかからない裏抜けからチャンスを作るユナイテッドがパレスのゴールに迫る中盤戦に。

 だが、ヘンダーソンのセーブやクロスバー連打などシュートの精度に欠けるユナイテッドはこのチャンスを活かすことができない。チャンスの数では優位に立ったユナイテッドだが、セットプレーのデ・リフトを含めてネットを揺らすことはできなかった。

 パレスはきっかけが見つけられない状況であったが、大外を起点にする手数をかけた攻撃が前半終盤にほんのり見られるように。後半に希望をつなぐ形でハーフタイムを迎える。

 後半、パレスは2枚替えを敢行。下がるのはマテタとウォートン。タクティカルな判断であるならば驚きの交代であった。これにより前線で体を張る役目はエンケティアに回ってきた感があったが、マテタに比べると収めることができずに苦戦。パレスは前半の最後のペースを手放してしまう。

 後半もユナイテッドの有効打の基準は同じ。クリスタル・パレスの最終ラインからを人を釣り出し、その背後に侵入できるかどうかであった。ザークツィーとブルーノの2人はこの原則を守りながらボックス内への侵入を試みることができた。

 だが、徐々にユナイテッドは個々人の突破に頼る力押しにシフトしてきた感がある。交代選手のパフォーマンスがそういった点では迫力が物足りなかったため、ユナイテッドの勢いは少しずつ停滞するように。

 一方でパレスは交代選手を有効活用した感がある。サールはオフザボールの動きでユナイテッドを押し下げていたし、ヒューズはサイドから押し下げられた局面から前線への飛び出しで存在感を発揮。終盤にかけて得点の機会をフラットに引き戻す。

 だが、オナナという最後の牙城は強力。こちらも最後の一山を越えることができないままタイムアップ。試合はスコアレスドローでの決着となった。

ひとこと

 ユナイテッドはもっと愚直にパレスの仕組みを壊すことにフォーカスしたかったところ。ホイルンドが収まらないのとかは仕方ないけども、もう少しこの日効いてる攻撃を繰り返したかった。

試合結果

2024.9.21
プレミアリーグ 第5節
クリスタル・パレス 0-0 マンチェスター・ユナイテッド
セルハースト・パーク
主審:デビッド・クート

第6節 エバートン戦(A)

4回目の正直で未勝利沼脱出

 前節に続き未勝利対決に挑むエバートン。自チームと同じく不調にあえぐパレスを叩いて何とか上位浮上のきっかけを作りたい。

 互いに相手のバックスにはボールを持たせてOKというスタンス。インサイドをきっちり閉めることで、保持側にクリティカルなパスを通されることをとにかく避けたいという姿勢だ。

 どちらのチームも非保持のブロックは悪くなかったが、特に目立っていたのは鎌田とウォートンのパレスのCHコンビ。シャープなボール奪取でエバートンの攻撃を寸断する。

 そんないい流れが響いたのかパレスはセットプレーから先制点をゲット。ウォートンのファーへのクロスの折り返しをグエイが沈めてスコアを先に動かす。

 リードを許したエバートンだが、特にプレスの強度を極端に引き上げることなく淡々と攻略ルート探しに終始。中央が少し硬いので、トップ下のマクニールがサイドの裏に流れるなどオフザボールの動きに変化をつけていく。だが、このルートはグエイの先読みが効いており、パレスが優勢。セットプレーからのチャンスメイクや中央からのボール配球が安定したパレスは得点以降もエバートンに流れを渡さずに時計の針を進めていく。

 ただし、エバートンも中央の守備は相変わらず堅い。互いに縦のパスを引っかけ続け、なかなかチャンスを作れない展開のまま、試合はハーフタイムに突入した印象だ。

 後半も似たような渋い展開になりそうなところを早々に変えたのはエバートン。マクニールがミドルで仕留めたこのゴールで勢いに乗ると、さらにはハリソンからマクニールへのルートでエバートンは一気に逆転に成功する。

 パレスはスコアをひっくり返されたことでバタバタ。試合のリズムを失ってしまい、エバートンに苦しめられる後半の立ち上がりとなった。

 ようやく押し込めるようになったのは60分過ぎ。サイドに枚数をかけた攻撃からクロスを上げたり、対角のパスで薄いサイドを作ったりなど攻め筋の工夫は確かに見られた。

 しかしながら、ここ数試合の逆転劇を教訓にするかのようなエバートンの落ち着いた水際対応を前になかなかゴールを脅かすことが出来ない。

 最後までボールを動かしていくアプローチは捨てなかったパレスだが、終盤は逆にエバートンにボールを持たれなおして押し返される展開もしばしば。時計の針を順調に進めることに成功する。1点差を守り切り、ついに成立した塹壕戦からの逃げ切り勝利のパターン。4度目の正直に成功したエバートンが一足先に未勝利沼からの脱出に成功した。

ひとこと

 この試合での落ち着きがあれば、少なくとももう3くらいは勝ち点を取れていそうなエバートン。マクニールの連続ゴールが流れをかえるきっかけになるか。

試合結果

2024.9.28
プレミアリーグ 第6節
エバートン 2-1 クリスタル・パレス
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:47’ 54‘ マクニール
CRY:10‘ グエイ
主審:アンディ・マドレー

第7節 リバプール戦(H)

逃げ切り成功で首位で代表ウィークに

 中断前、最後の週末。土曜のランチタイムのカードに選ばれたのはセルハースト・パーク。首位のリバプールを迎えてパレスは初勝利を狙う。

 パレスは電光石火のファストブレイクでスタート。いきなりネットを揺らすが、エンケティアはオフサイド。奇襲はスコアには繋がらなかった。

 以降はリバプールがボールを持って動かす展開に。3-2型の後方ブロックをビルドアップの主役として、対角を使いながら押し下げていく。

 リバプールが目をつけたのはパレスのシャドーのポジション。CB-SBで揺さぶってフリーの選手を作る。先制点のきっかけとなったのはツィミカス。ガクポのバックドアからの折り返しでジョッタが先制ゴールを決める。

 以降も展開は変わらず。対角を使いつつ、時にはインサイドにも差し込みながらボールを動かしパレスを圧倒。パレスは前にポイントを作りたいところだが、リバプールのバックスの強度に苦戦。前を向くことができない。

 アンカーのグラフェンベルフのマークに関してはパレスの受け渡しが整理されたように見えたが、グラフェンベルフは1枚上手。シャドーがSBのケアにフォーカスすると、ファン・ダイクが縦パスを通すなどここでも中央のパスルートが効く。

 ややリバプール側のファウルが嵩むことになった終盤。パレスは押し上げる展開が増える中でトランジッション局面から背後にお祈りパスを通しにいくことで勝負に出る。ラクロワのパスが通り、パレスが後半はじめの決定機を迎えるが、アリソンがこれを阻止。リードをキープしてハーフタイムを迎える。

 後半、パレスは出ていく局面とリトリートの局面を整理。メリハリのあるプレスでリバプールの中盤の受け渡しを整理する。それでもツィミカスのところを捕まえることができず、ここからリバプールにボールを運ばれる。だが、そこから縦にしか進む選択肢がなく、効果的にゴールに向かうことができない。

 パレスはゆったりとボールを動かしつつ、大外をポイントにすることで前半よりも着実に押し込むことができるように。後方でのボールハントと徐々に前進のフェーズがつながり始める。ヒューズの投入で中盤が引き締まり、マテタの投入で前線に起点ができるように。前半のような祈るような強引な縦パスも収まるようになる。

 終盤はアリソンの負傷もあり、冷や汗をかいたリバプールだったがディアスとガクポを軸として時間を稼ぎ、なんとか逃げ切りに成功。パレスはエゼにチャンスが巡ってくるが、シュートは正面に飛んでしまった。

 難しいCL後の試合を制したリバプール。首位で10月の代表ウィークを迎えることとなった。

ひとこと

 インサイドを覗けるのが今のリバプールの強み。押し込んでのボール回しが単調にならなかった。

試合結果

2024.10.5
プレミアリーグ 第7節
クリスタル・パレス 0-1 リバプール
セルハースト・パーク
【得点者】
LIV:9′ ジョッタ
主審:サイモン・フーパー

第8節 ノッティンガム・フォレスト戦(A)

勢いの差が反映された後半に

 ここまで堅実な戦いが続いているフォレストとトンネルから抜け出すきっかけを見つけることができないパレス。対照的なシーズンとなっている両チームとの試合となった。

 どちらも守備の起点となるのは中盤。バックラインまで無理にボールを追うことなくある程度持たせてOKというイメージのスタートとなった。

 パレスは左サイドにアタッカーを集約するオーバーロード気味な姿勢を見せる。サイドから奥を取る形でスムーズに攻め切る形を作るのがこの日のエゼの右サイドへのコンバートへの意図だっただろうか?フォレストはサイドで早めに止める狙いよりも早くボールをつけられるかどうかが攻撃が機能する争点だった。

 一方のフォレストも左から。1stプレスラインを避けるように立つモレノやムリージョからボールを運ぶと、ここから奥を取る形を狙っていく。ハドソン=オドイのバックドアなどはその好例と言えるだろう。

 押し込む機会が多かったのはフォレスト。攻撃に枚数をかける分、リスクもあるが、後方を同数で止めることができるという信頼があるのだろう。実際にミレンコビッチはきっちりと高い位置からストッパーとして機能することを示すように。

 試合は徐々にフォレストペースに。押し込むフェーズが増えていくと、パレスからカウンターの機会が明らかに目減りしていく一方、アンダーソンのカットインなどアクセントになる動きからフォレストは攻め切るチャンスを手にする。飛び込むウッドにもかなり手を焼くことになっていた。CKからも決定機があるなど、セットプレーでもフォレストは手応えを感じる展開だった。

 パレスが押し込む機会を作ることができても、フォレストのブロックは強固。逆にフォレストにカウンターを喰らってしまうような展開となった。

 後半、フォレストはボールを持つスタート。鎌田を1列下げる5-3-2で構えつつ左サイドのラインブレイクからカウンターを狙うパレス。だが、その攻撃をさらにひっくり返されることでむしろフォレストがスピードアップしてカウンターに出ていく。

 時間の経過とともにフォレストは保持の機会をリカバリー。押し込むフェーズに突入する。相変わらずキレのいいアンダーソンの押し下げる動き出しからのセカンドボールを回収したのはウッド。虚をつくミドルシュートから先制点を決める。

 先制点以降も堅実に試合を進めることができたフォレスト。順当に逃げ切りに成功し、パレスに勢いの差を見せつけた。

ひとこと

 パレスはなかなか攻撃のブレイクスルーを見つけられず。おとなしくマテタじゃだめなのだろうか。

試合結果

2024.10.21
プレミアリーグ 第8節
ノッティンガム・フォレスト 1-0 クリスタル・パレス
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:65′ ウッド
主審:ティム・ロビンソン

第9節 トッテナム戦(H)

エースの復活でついに掴んだ初勝利

 ここまで未勝利と想定外の不振に喘ぐクリスタル・パレス。シーズン前の高い下馬評とは裏腹に降格圏に沈んでいる。エースのマテタのスタメン復帰をなんとか原動力にしたいところだろう。

 立ち上がりはそのマテタをめがけたロングボールでスタートするパレス。高い位置からチェイシングしたいトッテナムの狙いを外すように割り切った戦法で立ち向かっていく。

 ロングボールでボールを失った後は高い位置へのプッシュアップでトッテナム陣内に迫っていくところまでがセット。ただし、深追いはしすぎない。前線がステイするときは一気にラインを下げてブロックを組んでいく。

 トッテナムはブロックの外からポロやマディソンが大きな展開で動かしていくスタート。パレスのハイプレスに関しては横に振ることでいなせそうな立ち上がりだったが、ブロック攻略となると手応えがないという感じだろうか。

 風向きが変わってきたのは15分を過ぎたことから。パレスが押し込んでの即時奪回を機能させることでトッテナム陣内の時間が増えていく。トッテナムはパレスの攻撃を終わらせた後の1本目のパスが非常に雑。縦につけるパスをあっさりとパレスに渡してしまうことで相手の攻撃のターンを継続させてしまう。

 序盤はプレスを回避できていたが、自陣での動き直しの少なさからかポゼッションで脱出できる機会も激減。高い位置から中盤とバックスが捕まえて延々と攻撃を続ける姿は快進撃を続けている時期のグラスナーのチームの片鱗であった。

 延々と攻撃を続けることができたパレスは31分に先制点をゲット。ファーで構えていたマテタが先制ゴールをもたらす。

 後半はハイプレス合戦でスタート。高い位置からプレスに出ていく相手に対して、ひたすらバックラインの裏を取り合う攻撃を志向する。

 ジョンソンが裏をとったトッテナムが先制攻撃を仕掛けるが、より頻度が多かったのはパレスの方。切れ味抜群なのはエゼ。久しぶりの好パフォーマンスでパレスの攻撃を牽引する。

 トッテナムは前線の入れ替えからオフザボールを活性化。ジョンソンに加わるようにリシャルリソン、ヴェルナーが裏を取るアクションを見せにいく。

 だが、パレスの対応は安定。裏抜けに対しても安定したリアクションでピンチの芽を摘み取る。押し込んだ後のパターンとして積極的に活用していた左サイドからのクロスもヘンダーソンが問題なく処理をする。時折見せるカウンターでヴィカーリオに冷や汗をかかせることも忘れなかった。

 試合はこのまま終了。ついにパレスは未勝利沼を脱出。トッテナムを下し、悲願の今季初勝利を手にした。

ひとこと

 パレスが昨季の片鱗を取り戻した試合だった。

試合結果

2024.10.27
プレミアリーグ 第9節
クリスタル・パレス 1-0 トッテナム
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:31′ マテタ
主審:ダレン・ボンド

第10節 ウォルバーハンプトン戦(A)

種類の違う両チームの苦しみ

 昇格組以外で結果を出すことができないチームといえば、今はこの2チームの名前が上がることになるだろう。この90分もどことなくうまくいかなさが先行する展開だった。

 チャンスをより多く作ったのはパレスの方。ハイラインで相手を捕まえにいく形はそこまでひっくり返されることはなかったし、3人のアタッカーが前を向くファストブレイクは形を作ることができていた。

 だが、エゼの欠場の影響もあり、パレスは3人が前を向く形を作った後の展開を作ることができない。この点で悪目立ちしてしまったのはエンケティア。相手の中盤の背後でボールを受けるところまではスムーズなのだが、そこから状況をさらに前に進めることができない。プレッシャーで消えることで存在感を発揮できないなら、チームとしての枠組みの形になるが、この試合ではむしろいい形は作れていた(エンケティアの受けかたが上手いのは間違いない)だけに、エンケティアのボールを持った後のプレー選択が悪く目につく格好になってしまった。

 敵陣でのスムーズな攻撃が見られないパレスは徐々に後方のポゼッションの安定感が失われるように。ボールを動かすところでミスが出ることでウルブスに攻撃の機会を渡してしまうこともしばしばだった。

 一方のウルブスは得意パターンの構築がやりきれなかった感。左のハーフスペースに落ちるクーニャのポストからの展開はもっと見たかったが、周りがこれに合わせることはできず。前半終了間際にようやくサラビアの抜け出しを演出するが、セットプレーを軸にチャンスを作ったパレスに決定機を上回られる展開となった。

 後半は両チームとも攻撃に出る機会が多いオープンな展開に。セットプレーから先に動かしたのはパレス。ファーの角度のあるところからチャロバーがスーパーなボレーを叩き込み、リードを奪う。

 前後半の出来のギャップがいい方側に大きかったウルブスは2トップを生かして反撃。サイドに流れることでチャンスメイクしたストランド=ラーセンがボールを収めてクーニャにボールを渡す。ここから左サイドに流して先制点をゲット。ちなみにこの場面もエンケティアがボールをカットされたところからだ。もちろん、チャロバーの一発タックルが失敗したのも影響が大きかった。

 同点ゴールから勢いに乗ったウルブスは一気に逆転まで。見事な横断から逆サイドまで展開し、最後はゴメスが仕留める。ウルブズの攻撃の視界が一気に開けたのは鎌田がターンを許したところからだった。

しかし、パレスもセットプレーからすぐに同点。グエヒのゴールで試合を振り出しに戻す。

最後は両チームとも決め手に欠いてのドロー決着。上昇気流に乗れるきっかけを掴んだチームはこの日のモリニューにはいなかった。

ひとこと

種類の違ううまくいかなさに苦しんでいる感がある両チームだった。

試合結果

2024.11.2
プレミアリーグ 第10節
ウォルバーハンプトン 2-2 クリスタル・パレス
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:67’ ストランド=ラーセン, 72‘ ジョアン・ゴメス
CRY:60‘ チャロバー, 77’ グエヒ
主審:アンソニー・テイラー

第11節 フラム戦(H)

失われたフィードに翻弄されて

 立ち上がりから試合の流れはくっきり。ボールを持つ側になったのはフラム。パレスはフラムのバックラインには無理にプレスにはいかない。

 ということでフラムはパレスの1stプレスラインをきっちりと越えていくところからの前進を狙っていく。テテの大胆な持ち上がりから一気に侵入する。

 すばやくサイドを変えるという点ではCBのアンデルセンの存在も非常に効いていた。対角のフィードでパレスの左右のスライドに負担を強いる形でフラムのサイドアタックを効果的なものにしていく。特に、左に振るアクションからスミス・ロウ→ロビンソンのオーバーラップ活用という流れは一つの攻撃のスキームとして見事に成立していた感がある。

 中盤の横断などこの対角パターン一辺倒にならないところがフラムのいいところ。柔軟さを生かす崩しからパレスを追い込んでいく。

 一方のパレスは一点突破主義。やや左サイドに流れるマテタが頼みの綱という感じ。アンデルセンのコントロールミスなどたまに対応を誤るフラムのバックスに対して、容赦なく襲い掛かっていくマテタがこの試合におけるパレスの前半の唯一の攻め筋だった。

 セットプレーや流れの中からなど少しずつチャンスを作る時間も作れるようになったパレスだったが、きっかけはすべてマテタ。相対的にチャンスの色の濃いフラムが先制。ラクロワのコントロールミスからのショートカウンターでスミス・ロウがゴールをゲット。44分のマテタの決定機をフイにしたパレスとは対照的にチャンスをきっちりスコアに結びつけたフラムが先制点を決める。

 迎えた後半はパレスがゲームチェンジに挑む。鎌田の縦パスから抜け出したムニョスがチャンスを作るなど、押し込む流れを増やしながらフラムを攻め立てていく。

 フラムもこれに対抗。中央を経由して左右に素早く動かす横断や、右サイドのイウォビ→ペレイラなど前半と異なるルートからチャンスを迎える。

一進一退の攻防となった試合だがフラムはスミス・ロウのオフサイドの場面から再びリズムを掌握。少しずつ攻める時間を増やしていく。

 すると、パレスは鎌田が危険なタックルで一発退場。これで試合の均衡は完全に崩れることに。

 ややオープンながらも試合の主導権を握ったのはフラム。仕上げ役として前節大車輪の活躍を見せたウィルソンは今節もダメ押しゴールをゲット。またしても複数ゴールかと思われたシーンはハンドでお預けになったが、ジョーカーとして今節も存分に暴れまわった。

 チームとしての勢いの差を見せたフラムはパレスを圧倒。ロンドン・ダービーを危なげなく制した。

ひとこと

 アンデルセンの対角パス、まさしくパレスが昨季失ったものという感じであった。

試合結果

2024.11.9
プレミアリーグ 第11節
クリスタル・パレス 0-2 フラム
セルハースト・パーク
【得点者】
FUL:45+2‘ スミス・ロウ, 83‘ ウィルソン
主審:マイケル・サリスベリー

第12節 アストンビラ戦(A)

保持と非保持のはっきりとしたコントラスト

 どちらもバックスに無理にプレスは書けないスタートとなったが、自然とボールを持つことになったのはアストンビラ。トップのマテタは中央のティーレマンスをマークするため、フリーになりやすいCBからボールを動かしていく。

 パレスはとにかく非保持がナロー。少しでもスキがある中央のパスを差し込んでこようものなら、すぐにカウンターで咎めてやろうという心意気だった。実際にパレスは縦に速い攻撃からあっさりと先制点をゲット。降りるマテタに対して、アストンビラのCB陣は非常に中途半端な対応になったところをサールにひっくり返されてしまい、早々に先制ゴールを許す。

 この先制点は保持のビラ、カウンターにフォーカスのパレスのコントラストを際立たせるものに。中央を強引に割ると食らうしっぺ返しの強力さを知ったアストンビラはボハルデのサイドからのキャリーなど慎重な攻め手を織り交ぜていく。

 だが、そうした中で強気だったのはティーレマンスとバークリーのCHコンビ。縦に強気に差し込んでいくティーレマンスとキャリーで前線に顔を出しがちなバークリーの攻め筋は失敗した時のしっぺ返しが強烈。中央にぶち当ててパレスの強力なカウンターを食らうこともしばしばという展開となった。

 そうした中で隙をついた縦パスからビラが同点ゴールをゲット。マッギン→ワトキンスの縦パスをトリガーとしてパレスのバックスをラインブレイク。まさしく、パレスの先制点をオマージュした形でビラが同点に追いつく。

 少しずつ保持で相手を上回っていくビラ。押し込むフェーズを増やすと、ベイリーがヒューズに倒されてPKを獲得。だが、このPKをティーレマンスが決めることが出来ない。

 すると、CKからのカウンターでパレスは前半終了間際に勝ち越し。何度もあったカウンターのチャンスをようやくデベニーが決めてハーフタイム直前にリードを得る。

 後半もビラの保持、パレスのカウンターで展開する流れに。ビラはライン間→裏抜けとポイントを作りながら中央を活用していたので、前半よりも無理なく効果的に相手を押し込むことが出来ていた。

 しかし、ビラも盤石というわけではない。マートセンのタックルはあわや退場というものだったし、反撃のムードを削がれてもおかしくない軽率さがこの日のビラのバックラインにはあった。

 だが、押し込むフェーズを継続したご褒美でセットプレーからビラはマッギンが同点ゴールをゲット。以降も推進力を失ったパレス相手に勝ち越しゴールを狙うが、どうしてもこじ開けることはできず。試合は2-2のドローで幕を閉じた。

ひとこと

 パレス、後半に推進力がなくなるのであれば前半にもう1点ほしかった感がある。

試合結果

2024.11.23
プレミアリーグ 第12節
アストンビラ 2-2 クリスタル・パレス
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:36′ ワトキンス, 77′ バークリー
CRY:4′ サール, 45+1′ デベニー
主審:ティム・ロビンソン

第13節 ニューカッスル戦(H)

逃げ切りには虫が良すぎる

 立ち上がりにボールを持つのはニューカッスル。左サイドからのクロスで早速ゴールに迫っていく。

 しかしながら、以降はクリスタル・パレスがインサイドをきっちりと固めることでニューカッスルを外循環に追いやっていく。ニューカッスルは左サイドでの旋回を使いながらズレを作りにいく。

 パレスもボールを持てばゆったりとポゼッションを組んでいく。ニューカッスルのバックスへのプレスは鈍く、パレスは3バックから縦パスを通せるコースを探す展開に。ただし、ニューカッスルはジョエリントンが左のWBに落ちる5-4-1でパレスを迎撃。大外をきっちりと封鎖する。

 だが、どちらのチームもシュートは遠く、相手のブロックをこじ開けることはできず。ゴールに迫れそうなシーンはCKからのカウンターなど、トランジッションの成分が増えた時だけ。流麗なパレスのカウンターをムニョスは完結することができなかった。

 特別に劣勢というわけではないが、負傷で試合が止まることが多く、サイドの崩しにおいて簡単なミスが出るニューカッスルの出来は前半の気になるところという感じである。低い位置でも痛めていたジョエリントンの蓋が間に合わないシーンが出てくるようになるなど、コンディションの点で気になるところも目につく45分となった。

 後半は前半の頭のような展開。ニューカッスルがボールを持って、クリスタル・パレスを押し込んでいく流れだ。そうした中でもニューカッスルはスピーディーに敵陣への侵入の機会を得ることができていた。

 いい流れに乗ったニューカッスルはセットプレーから先制。デザインされたニアの攻略からゴードンの折り返しでグエーイのオウンゴールを誘発する。

 追いかけたいパレスは左サイドからの早めのクロスからチャンスを探る。後方からはグエーイが抜け出すサールにボールをつけるなど、前節と似たチャンスメイクを披露するが、ポープにこれはストップされる。

 パレスはカウンターからもチャンスを狙うが、スピードダウンを誘発されてしまい、かつトナーリのプレスバックに咎められたり、ミドルをブロックされたりなどチャンスを生かしきれず。押し込む時間帯にも決め切ることができない。

 終盤に再びニューカッスルに押し返されたこともあり、パレスとしては苦しい状況となったが、最後の最後で報われることに。左サイドからクロスを上げたグエーイからのボールをファーのムニョスが仕留めてゴール。前半に決定機を逃したムニョスが劇的な同点弾を決め、試合はドローで幕を閉じることとなった。

ひとこと

 ニューカッスル、枠内シュート0で勝つのは虫が良すぎた感。

試合結果

2024.11.30
プレミアリーグ 第13節
クリスタル・パレス 1-1 ニューカッスル
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:90+4′ ムニョス
NEW:53′ グエーイ(OG)
主審:ダレン・イングランド

第14節 イプスウィッチ戦(A)

エースの一撃で残留争いのライバルを制する

 ともに残留争いの真っ只中の両チームの一戦。序盤は激しいチェイシングからスタート。覚悟が見られる立ち上がりとなった。

 特に前からの意識が強かったのはイプスウィッチ。枚数を合わせてのプレスで敵陣からタイトに当たっている守備を行っていく。

 パレスはプレスを交わして前進しつつ、大外のオーバーラップも活用するなど幅も使うことで変化をつけていく。相手のプレスをある程度鎮圧した後は、縦パスを入れながら背負える選手を探すような形でインサイドに起点を作れるかどうかを確かめていた。

 時間経過とともに押し込む機会が増えたパレス。イプスウィッチは左右に動くデラップのロングボールを活かしての起点勝負。速攻の際には前線の起点としてすっかり頼りになる存在だ。

 保持においてはデイビスを片上げする形の3-2-5に変形していたが、この変形はパレスの守備にマッチする形に。あまり効果的な変形にはならなかった感がある。そのせいかプレスの圧に対してショートパスで脱することができないイプスウィッチ。試合はパレスが優勢。高い位置からの回収からポゼッションでWBを活用し、サイドからクロスを上げる形からじわじわとチャンスを作っていく展開となった。

 後半は互いに押し込むところからブロック崩しを交互にターンで行う展開。イプスウィッチは前半ほど無理なプレスを控え、ミドルゾーンから後方をきっちり守る形にシフトした感がある。

 イプスウィッチは攻撃でも手応えがある状態。前線のタレントはボールを持って前を向ければ面白いプレーはできる。その状況を整えられるケースは前半よりも明らかに多かったので、その点で前半よりは対抗できる状態だった。

 だが、パレスはファストブレイクから先制点をゲット。相手を外してカウンターを見事に完結させたマテタがパレスに貴重な先制点をもたらすことに。

 あとがなくなったイプスウィッチは地道にサイド攻撃を継続。左サイドはオーバーラップを活用した裏抜け、右サイドはハッチンソンの単騎での突撃からチャンスを作りにいく。もちろん、ファストブレイクはデラップの担当である。

 パレスも得点直後に先制点を再現したようなマテタのカウンター以降は押し込まれた状態をはねかえせず。終盤はサンドバックとなることを受け入れる展開となった。

 だが、それでもパレスは逃げ切りのミッションを達成。残留争いのライバル相手に貴重な3ポイントを積み上げることに成功した。

ひとこと

 イプスウィッチは悪くないのだけどもどうも競る展開をものにできずに勝ち点を積み上げられていない。

試合結果

2024.12.3
プレミアリーグ 第14節
イプスウィッチ 0-1 クリスタル・パレス
ポートマン・ロード
【得点者】
CRY:59′ マテタ
主審:クレイグ・ポーソン

第15節 マンチェスター・シティ戦(H)

いつもと景色の違うセルハースト・パーク

 ミッドウィークにリーグ戦の連敗を止めることに成功したシティ。バックスは再び苦しいやりくりになっているが、凌ぎながらなんとか勝ち点を積んでいきたいところだろう。

 ところが先に試合を動かしたのはパレス。立ち上がりにカウンターからいきなりゴールを強襲すると、4分には先制点をゲット。中央のサールとのコンビネーションでフリーになったヒューズがガラ空きとなった右サイドに展開すると、やや角度がついたところからムニョスがゴールを撃ち抜いて見せた。

 この先制点の場面のように中央のパス交換に対するシティのフィルター性能は絶望的なものがあった。ギュンドアン、ベルナルド、デ・ブライネの中盤ではボールサイドと逆側を埋めるという献身性までは発揮することができず、ヒューズが列を上げればあっという間にフリーでチャンスを供給されてしまった。

 パレスとシティの試合であれば、当たり前のようにシティがパレスの5バックを攻略するために云々という展開が当たり前だったが、この試合はそうはならず。パレスの保持に対してシティはプレス時もリトリート時も中盤に制限をかけることができず、チャンスを量産されてしまう。ディアスが最後のところで延々と体を張り続けることでなんとか1点差にとどめていた。

 シティは攻撃に転じればそれなりに可能性があった。デ・ブライネとハーランドのタンデムは速攻でも遅攻でもわずかな隙間があればチャンスを作ることができていた。左のヌネスも奮闘しており、同点ゴールは彼の右足のクロスから。グエイとヘンダーソンの両方に触れないところにクロスを上げて、ハーランドの久しぶりのゴールをアシストする。

 その一方で自陣からのポゼッションのミスは止まらず、パレスの逐一カウンターの機会を与えることに。アタッキングサードではサヴィーニョがややノッキング。2回あったシュートの機会も枠に飛ばすことができなかった。

 それでもなんとか同点にして以降は試合を落ち着かせたシティ。少なくともピンチの機会は抑えつつ、同点でハーフタイムにたどり着くことができた。

 後半はシティがボールを持つスタート。前半と同じく3-1-6をベースにボールを動かして、パレスの攻略を狙う。ようやくいつものシティ×パレスになってきた。

 シティは多めのライン間の人数を左サイドに動員。オーバーロード気味に仕上げにかかる。だが、パレスは50分に中盤のパスカットからサールが強引に右サイドをぶち抜くカウンターを披露。このプレーをきっかけにシティはまた自陣に近いフェーズでのミスが増えるようになる。

 押し込む機会が増えたパレスはセットプレーから勝ち越し。ラクロワのゴールで再び前に出る。

 ゴール以降は再びシティが攻勢に出る。攻め込むことはできていたが、ゴール前でのプレー選択がやや消極的でゴールを破ることができず。

 しかし、積極的にアタッキングサードでオフザボールを頑張っていたルイスがついに抜け出しから同点ゴールをゲット。ようやく3-1-6の恩恵を受けたような得点を手にする。

 だが、そのルイスは勢い余って2枚目のカードをもらって退場。シティは10人で残り時間を戦うことを強いられる。

 パレスにとっては押し返すことができない時間帯だったので、相手が1人減ってくれたのは非常に助かったことだろう。エゼ、サールが下がり、マテタに疲労が目立つだけに脅威は割引ではあったが、2点目のきっかけとなったセットプレーも含め、再び得点のチャンスを得る。

 だが、これ以上の得点はどちらのチームにも決まらず。試合は引き分けで決着することとなった。

ひとこと

 シティはこういう内容だとどこが相手でも2点くらいは取られそうな数のピンチは作られてしまう。で、毎回3点取れるクオリティがあるかは怪しい。ブロック守備の強度がないのは仕方ないので保持でリズムを悪くすることだけはなんとかしたいところだろう。

試合結果

2024.12.7
プレミアリーグ 第15節
クリスタル・パレス 2-2 マンチェスター・シティ
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:4‘ ムニョス, 56′ ラクロワ
Man City:30’ ハーランド, 68′ ルイス
主審:ロベルト・ジョーンズ

第16節 ブライトン戦(A)

失点の大安売りで宿敵に勝利を献上

 上位陣の停滞が目立つ中で勝てば上を見据えることができるブライトン。下位勢に取りこぼしが目立っている嫌な流れで迎えるのは、最もポイントを落としたくない下位勢であるクリスタル・パレスとのM23ダービーだ。

 序盤に主導権を握ったのはブライトン。特にこの日執拗に狙っていたのはWGの背後を狙う動き。三笘、ミンテが斜めのランでパレスのDFの背後を狙っていく。

 加えてブライトンはプレスでも積極策。サイドにボールを追い込みながら高い位置から刈り取ってのショートカウンターを狙っていく。ハイプレスからのショートカウンターや、背後を狙うダイレクトなラン。ブライトンの攻撃はやや手数的には少なめではあったが、きっちりと主導権を握るものではあった。

 一方のパレスはショートパスでは詰まらされ、前線へのロングボールは収まらないという苦しいスタート。だが、活路を見出せないままに迎えたセットプレーをモノにして先行。ニアでフリックしたボールを最後はチャロバーが叩き込んで先制する。ブライトンはニアでのフリックとチャロバーでの取り込みの2箇所でマーカーを外してしまい、先に相手に触られてしまった。

 さらにはセットプレーからのリスタートで、左サイドにフィードを送ったパレス。ミッチェルに対面したランプてぃは空振りをかましてしまい、ここからの折り返しに飛び込むサールをダンクは逃してしまった。ミスが連鎖するブライトンはあっさりと追加点を許してしまう。

 こうなるとペースはパレス。収まらずに苦戦していたロングボールにもブライトンはバタバタするようになり、完全にリズムはガラッと変わる。得点でリズムを掴んだパレスが優勢でハーフタイムを迎える。

 苦しむブライトンはランプティに代えてエンシソを投入。3バックにシフトチェンジ。CHの縦関係は維持しつつ、いざとなれば左にCBのエストゥピニャンを動員できるシステムになった。

 三笘、ミンテの両サイドから攻め込むブライトン。しかしながら、ヘンダーソンのファインセーブとラクロワの集中した対応でブライトンのチャンスをパレスがシャットアウトする。

 いつもに比べれば交代選手のパフォーマンスも安定。鎌田はプレスバックできっちりと貢献していたし、エンケティアもカウンターでの運びはいつもよりは落ち着いていた。

 まったりとした展開に持ち込むことに成功したパレスはロングキックから追加点をゲット。またしても対応を誤ったダンクを出し抜いたサールがこの日2ゴール目を仕留める。

 セットプレーのわちゃわちゃからオウンゴールを決めて1点を返したブライトンだったが、パレスの3点目で実質試合は終了だろう。最後はこの日を象徴するようなヘンダーソンのシュートストップで締め。パレスがアウェイでダービーを制した。

ひとこと

 ブライトンは失点が安い。前がかりになったとかじゃなくてゴールキックでの対応ミスはつらすぎる。

試合結果

2024.12.15
プレミアリーグ 第16節
ブライトン 1-3 クリスタル・パレス
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:87′ グエイ(OG)
CRY:27′ チャロバー, 33′ 82′ サール
主審:マイケル・オリバー

第17節 アーセナル戦(H)

得点先行のレアケース

 レビューはこちら。

 ミッドウィークはきっちりとした迎撃が機能しなかったパレス。基本的にはカップ戦と同じくプレータイムが多いメンバーを中2日で起用し、高い位置からのプレスでアーセナルを追い込んでいく。

 そのカップ戦で手応えを掴んだジェズスに早々に先制点を奪われるのは想定外だっただろう。しかしながら、プレッシング自体は十分に機能。キーマンになったのはミッドウィークは途中からの出番となった鎌田。久しぶりのリーグ戦での先発起用となった鎌田はウーデゴールのチェイシングとバックスへのプレスを両立。パレスのプレスからのショートカウンターのチャンスを構築する。

 いつもであれば、アーセナル相手に何度もプレスからチャンスを作るのは難しい。だが、この試合におけるパレスのサイド封鎖と高い位置へのプレスの思い切りの良さは抜群。高い位置からのチェイシングから繰り返しチャンスを作る。

 自陣からの攻撃も機能。ロングボールからCHのセカンド回収にかける形も悪くなかったし、自陣からのキャリーで左サイドにオーバーロード気味に流れてくるサールの同点ゴールも良かった。シュートは完全にサリバを出し抜く一撃だった。

 ビルドアップとプレスの両面が機能しないアーセナル。右サイドで奮闘するサカも負傷してしまい苦しい展開。それだけに得点を決めたジェズスの貢献度は高い。セットプレーからの二次攻撃で見事なミドルを沈めて再びリードを奪う。

 さらにはサカに代わって右サイドに入ったマルティネッリのクロスからアーセナルは追加点をゲット。またしてもジェズスが難しいボールを枠内に飛ばし、最後はハヴァーツがこぼれ球を仕留める。

 巻き返したいパレスは高い位置からのチェイシングで後半をスタート。アーセナルをもう一度飲み込み、2点のリードがセーフティでないことをアピールする展開に。

 再び試合のコントロールを失ったアーセナルを救ったのはまたしてもゴール。ガブリエウがパレスのラインの乱れを見逃さず、トロサールのラインブレイクを呼び込むフィードを送る。この一連の攻撃からアーセナルはマルティネッリが追加点を奪う。

 このゴールでさすがに連戦の疲労が出たパレス。以降はプレスを自重し、まったりとしたブロック攻略に移行することになっていく。

 仕上げとなったのはライス。ブロックを切り裂くドリブルを見せつつ、トドメとなる5点目をゲット。素晴らしいミドルでゴールパフォーマンス通りに試合を”眠らせる”こととなった。

 カラバオカップに続き、パレスを制したアーセナル。3試合ぶりの勝利でチェルシーとの勝ち点差を縮めた。

ひとこと

 非常に珍しい得点先行でアーセナルが流れをパターンの試合となった。

試合結果

2024.12.21
プレミアリーグ 第17節
クリスタル・パレス 1-5 アーセナル
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:11‘ サール
ARS:6’ 15‘ ジェズス, 38’ ハヴァーツ, 60‘ マルティネッリ, 84’ ライス
主審:サイモン・フーパー

第18節 ボーンマス戦(A)

縦に速い展開の連続でも打開策はなし

 シーズンの折り返しに差し掛かるタイミングで順位は5位。現在の立ち位置をキープできればボーンマスは十分に欧州カップ戦の出場権争いに食い込むことができる。好調なうちに一つでも多くの勝ち点を稼いでおきたいところだろう。

 序盤から試合はロングキックベースのスタート。非常に強度の高い展開で縦に速い攻撃を仕掛けていく。両チームともCHが縦関係になるなど、ゆったりとした保持型チームっぽい特徴もなくはないという感じ。より動きが大きかったのはCHが左右に動くことが許されていたボーンマス。左サイドのケルケズの後方をクックが入るなど、縦だけでなく横も自由度の高い動きとなった。

 パレスはグッとポジションを取って構える前線にボールを当てていくスタート。エゼの反転やサールの加速力など前線の個人技を活かす方向性が強めだった。時折、後方からラクロワがキャリーを仕掛けるが、基本的には縦に早くという方向性に相違はなさそうであった。

 優勢だったのはどちらかと言えばボーンマスだろうか。パレスはボーンマスの加速する攻撃に対しては警告相当のファウルを犯してしまうことが多く、なかなかクリーンに相手を止めることができない状態だった。

 ボーンマスが外に開くWGにボールを預けるのは対照的に、パレスは縦に速くと言うテイストの違いがある。どちらもWGを活かすという点では共通しているが、活かし方に異なるところがあるという感じであった。

 スピーディな展開の連続の割には相手をこじ開けるのに苦戦した両チーム。試合はスコアレスのままハーフタイムを迎える。

 後半もペースは同じ。直線的なテンポが続くあまり抑揚のない展開に。ボーンマスはそうした中でも左のハーフスペースに活路。クライファート、ウナルがこのゾーンでボールを受けに行く。

 一方のパレスはよりファストブレイクより。カウンターベースでチャンスを狙っていく。しかしながら、55分前後から徐々にテンポを落として左右に振りながらのポゼッションをするように。

 しかしながら、保持の割合が変わってもそれが両チームの活路にはならず。再び70分にテンポは上がる。フレッシュな交代選手を投入した両チームだが、展開は縦に速いままだらっと間延びをするだけ。攻撃の鋭さは時間経過とともに失われることとなった。

 試合はそのまま終了。両チームは勝ち点1を分け合う結果となった。

ひとこと

 終盤にもう一押しの力が足りなかった両軍だった。

試合結果

2024.12.26
プレミアリーグ 第18節
ボーンマス 0-0 クリスタル・パレス
ヴァイタリティ・スタジアム
主審:トーマス・ブラモール

第19節 サウサンプトン戦(H)

初ゴールは達成、初勝ち点はお預け

 就任初陣はウェストハムにホームで敗れてしまったユリッチ新監督。ロンドンで迎える2戦目こそなんとか初勝利をあげたいところである。

 リトリートベースの慎重派といういつも通りのスタンスを崩さないパレスに対して、序盤からサウサンプトンはオヌアチュへのロングボールで勝負するスタート。

 もちろん、それ一辺倒ではなくサイドからの押し下げにもトライ。左サイドのウォーカー=ピータースの仕掛けからのクロスでディブリングは先制ゴールをゲット。ユリッチに就任後初ゴールをプレゼントする。

 パレスの攻め筋はひとまずはカウンター。強引に中央にパスを刺してくるところを咎めて一気に3トップに当てての加速でサウサンプトンの保持ベースの流れを変えにいく。自陣に押し込まれるとやたらとバタバタしたのは失点シーンも含めて気になるところではあったが、サウサンプトンのプレスが弱まったこともあり、徐々に保持から時間を作っていく。

 中盤を超えられるケースが出てきたサウサンプトン。押し込むようになってきたパレスはCKから同点ゴールをゲット。GKの周辺にわらわらと人をかけてほぼブロックするというアーセナル初号機仕様のセットプレーから同点に追いつく。

 パレスは押しこむフェーズだけでなくロングボールも有効活用。マテタやサールに向かっていくロングボールから陣地回復をすることでサウサンプトンを苦しめる。特にマテタは無双状態。サウサンプトンは苦労してサイドから押し込んでも一撃でひっくり返すフィジカルですべてを台無しにしていた。

 後半のスタートは互いにロングボールから。マテタ、オヌアチュというそれぞれのターゲットからチャンスをうかがう展開に。じりじりとしたパレスのプレスに徐々に逃げ場を失ったサウサンプトン。優勢だったパレスは左右のサイドから自在に押し込むとエゼのミドルで勝ち越しゴールを奪う。

 リードを奪ったパレスは試合終了まで主導権を離さなかった。サイドの突破からの素早いクロスでサウサンプトンを追い詰めていく。サウサンプトンはブロックが間延びしてしまうことで受け手に回るとボールを奪う手段がないまま苦しみ続けることとなった。

 終盤にようやくサイドの突破からのグラウンダーのクロスからボールを入れていくが、パレスに跳ね返されてしまいジエンド。今節もユリッチ就任後初の勝ち点奪取はならなかった。

ひとこと

地力の差を覆すのはなかなかにしんどい。

試合結果

2024.12.29
プレミアリーグ 第19節
クリスタル・パレス 2-1 サウサンプトン
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:31′ チャロバー, 52′ エゼ
SOU:15′ ディブリング
主審:マイケル・サリスベリー

第20節 チェルシー戦(H)

連敗ストップも未勝利のトンネルは脱せず

 試合前の会見でマレスカがフォファナがシーズンアウトの可能性を口にしたことで激震が走ったチェルシー界隈。注目のCBの人選はアチャンポン。いきなり歯応えのあるマテタとのマッチアップに挑む。

 もっとも、そうした観点での対戦がフィーチャーされる前にチェルシーはリードを奪う。チェルシーはカイセドのサポートをつけずにSBは幅をとり、エンソが前に立つ布陣。ライン間と大外に人をおいた形でパレスの後ろに重い守備に対抗する。

 先制点のきっかけとなったのは左サイドのサンチョ。絞りながら降りて受けることでリチャーズを翻弄。最終的には3人を惹きつけてパーマーのシュートを演出する。パレスとしてはできるだけ5バックを動かさないままサンチョに対応したかったところ。かなり動かされて、自ら対応を難しくしてしまった。

 保持でも苦戦が目立つパレス。広がる3バックはどこにもパスコースが見つからないまま、繋ぐたびに苦しくなるパスを味方につけてはなんとかボールを捨てていた。それでも無理やり前線のマテタに当てればファウルをもぎ取ってくるのだからすごいけども。

 前半の中盤からパレスはボール運びが安定。ロングボールを回収、もしくは左サイドからの横断で右にオーバーラップするムニョスからチャンスメイクを行う。ボックス内の跳ね返しにはやや不安定感があったチェルシーだが、なんとか無失点。押し込まれる流れも見事にパルマー→ジャクソンのスルーパス一撃でひっくり返すお手軽さも見せた前半だった。

 後半の立ち上がりこそ、ハイプレスに出たチェルシーだったが、すぐさまパレスは反攻。ムニョスのいる右サイドからアイソ気味にチャンスを作っていく。

 チェルシーは少し流れが悪い入りとなった。簡単なパスミスやサンチェスのパスミスから相手にボールをプレゼントしてしまうことに。左右のクロスやセットプレーでパレスは徐々にゴールに迫る。

 少しずつ押し返しながら左サイドからチャンスを作るチェルシーだが、ゴールを決め切ることはできず。サイドの裏を取る形から決定的な場面を作ることもあったが、肝心のシュートが枠を逸れていった。

 そうこうしているうちにパレスは同点ゴールをゲット。高い位置でボールを奪うと、チェルシーのDFがラインを整える前にブレイクに成功。そのままの流れでマテタがゴールを決める。

 交代選手から流れを作りたい両チームだが、これ以上のゴールが生まれることはなし。チェルシーは3連敗こそ回避したものの、4試合負けなしは継続することとなった。

ひとこと

 ここに来て停滞が目立つチェルシー。交代選手の使い方からはイプスウィッチ戦を受けての新しい切り口探しも兼ねているように思える。

試合結果

2025.1.4
プレミアリーグ 第20節
クリスタル・パレス 1-1 チェルシー
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:82′ マテタ
CHE:14′ パルマー
主審:ティム・ロビンソン

第21節 レスター戦(A)

目論見が外れて沼への招待に失敗

 ファン・ニステルローイ就任以降も苦戦が続くレスター。残留争いのすぐ上にいるパレスはなんとしてでも沼に引き摺り込みたいところだろう。

 試合はポンポンとボールが飛び交うスタート。序盤はマテタ、そしてヴァーディというそれぞれのCFが裏抜けすることで決定機を一気に作りにいく。

 基本的にはパレスは前5枚がスライドしながら中盤で食い止めることがベース。レスターのバックスの組み立ては不安定と踏んだのか、徐々にパレスはプレスを強めていくように。レスターのバックスは前がかりなパレスの間を繋ぐように前進。シュートまで持っていくことができることもしばしばという感じだった。

 だが、パレスもプレスが徐々に刺さるように。中盤ではヒューズが刈り取り役となり、ショートカウンターを成立させにいく。ハイプレスから少しずつパレスはチャンスを作る。

 レスターは左サイドのマヴィディディが2枚抜きをするなどチャンスメイクが全くないわけではないが単発な感は否めない。よりチャンスを作ることができていたのはパレス。レスターのバックスはパレスの強気の姿勢を崩せないまま、機会の劣勢を抱えてハーフタイムを迎えることとなった。

 後半は互いにゆったりとした保持でスタート。非保持側がブロックをきっちりと組むことでテンポは遅い状況を作り出す。

 そうした中で試合を動かしたのは前半の序盤で見られたチャンスメイクから。抜け出したマテタが一発で仕留めて試合を動かす。レスターはヴェスターゴーアがラインコントロールを乱してしまったのが痛恨だった。

 このゴールを機に試合は少しトランジッション色の濃い展開にシフト。互いにチャンスを作りあうが、リードをしているパレスの方がよりクリティカルなチャンスを作ることができていた。

 流れを作れないレスターは3枚交代で前線を活性化。左右の押し下げからヴァーディのトリッキーなシュートやスマレのミドルからあわやというシーンを作り出す。

 だが、試合を動かしたのはまたしてもパレス。エゼのFKに抜け出したグエイがダイナミックなボレーを仕留めて追加点を奪い取る。

 レスターは前半のようにライン間を繋ぎながら前進ができる場面も作りつつ攻め立てていくが、最後までパレスの牙城は崩せず。目論見虚しくパレスが降格圏との勝ち点差を広げる完勝。暫定的に残留争いから脱する位置まで浮上したと言っていいだろう。

ひとこと

 抜け出しのシャープさと頻度でレスターを上回ったパレス。レスターも無理なく繋げるようになってきてはいるけども、地力に跳ね返されている感がすごい。

試合結果

2024.1.15
プレミアリーグ 第21節
レスター 0-2 クリスタル・パレス
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
CRY:52′ マテタ, 78′ グエイ
主審:アンディ・マドレー

第22節 ウェストハム戦(A)

シャープさでウェストハムに穴をあける

 共に残留争いからは少し上にいる両チームによるロンドン・ダービー。少し目先を変えてきたのはウェストハム。3バック採用+サイドハーフの位置にソーチェクという少し変わった形で勝負に出る。

 ボールを持つのはパレス。1トップの脇からボールを動かしていく。縦にパスを入れることでウェストハムの守備ブロックを動かしていく。ウェストハムの中盤はややこの縦パスに乱されていた印象。中盤を守備でのスタート位置にいる割にはライン間を閉じることが出来ない状況だった。

 パレスは右のハーフスペースを中心にスピードアップすることで敵陣に迫っていく。サイドから裏を取って押し下げる、もしくはミドルから攻撃を仕上げにいく。

 序盤は一方的に押し込まれていたウェストハムだが、少しずつ保持局面では押し込む状況も作っていく。非保持に回ると、パレスもウェストハムと同じく引き気味で受けに行く。

 ただ、押し込むことが出来ていても敵陣で何ができているのか?というと微妙なのがこの日のウェストハム。トップを外し、後方から攻めるサイドを決めることで縦に鋭い攻撃を放っているパレスの方が可能性は十分。中盤に穴を空けるフェーズも引き続き機能しており、優位に立ったままでハーフタイムを迎える。

 ウェストハムはこのままではまずいと思い立ったのか後半はハイプレスに行こう。ただ、思い切りこそいいものの、後方の強度がこのプランにやや耐えきれていない印象。バックラインの不安定さが起因でウェストハムは思ったほどペースを握ることが出来なかった感がある。

 パレスは根性での繋ぎから右サイドから疑似カウンターに成功。ライン間のエゼで加速すると、最後は一気にマテタが完結。ついに試合を動かす。

 ウェストハムは3枚交代で4バックにシフト。保持の時間が増える。だが、押し込んで何ができるんだ!?という問題点は据え置き。なかなかに状況を打開することが出来ない。

 苦戦するウェストハムはマヴロパノスの退場でさらなる苦境に。パレスは優位を作ると、前線の交代選手から追加点のきっかけをつかむ。今季は苦しむエンケティアがPKを確保。ただし、このPKを献上したのはファビアンスキ。元アーセナルの幸せは元アーセナルの悲しみの元に成立しているのはなかなかに切なかった。

ひとこと

 試合はパレスが逃げ切りに成功。ウェストハムは前半の序盤以降、いいところがなかった。

試合結果

2025.1.18
プレミアリーグ 第22節
ウェストハム 0-2 クリスタル・パレス
ロンドン・スタジアム
【得点者】
CRY:48‘ 89’(PK) マテタ
主審:トーマス・ブラモール

第23節 ブレントフォード戦(H)

凡戦ムードにPKで風穴を開ける

 例年通り、残留争いとは無縁のシーズンを繰り広げているトーマス・フランクのブレントフォード。序盤戦は出遅れていたパレスも秋が深まるころには立て直し完了、勝ち星を重ねて降格圏とはだいぶ差が出てきている。そういう意味ではいつものシーズン通りに中位をがっちりとキープしている両チームによる穏やかなロンドンダービーという感じだろう。

 序盤から両軍は平常運転。ブレントフォードは4-4-2のミドルプレスが基本線。パレスはマテタへのロングボールをベースにしつつ、時折自陣に引き寄せるような守備をすることでライン間を広げに行く。

 ブレントフォードはよりショートパス志向が強い展開。左サイドにジャネルトが列落ちし、浮きつつルイス-ポッターを押し上げに行く。

 パレスは前進のルートには特に困っていなさそうではあったが、ボックス付近でもう一工夫ほしいというのが正直なところ。インサイドに刺しこむことが出来ない状態ではなかなか敵陣を切り拓くのは難しい。

 ブレントフォードはサイドから斜めにインサイドのパスを差し込んでいこうとするが、そこまでクリティカルに刺さる場面はなし。総じてパレス以上にブロック崩しには苦労していた印象だ。

 正直なことを言えばどちらも前進のルートは確保できてはいるものの、そこから相手を動かすことが出来ない状態が続いている。守備が安定していたという見方もできなくはないが、どちらも打開策が見つからない状態での凡戦と表現した方が正しいようにも思う。

 後半、パレスは左右の幅を積極的に使い、まずは押しこんでいくことにフォーカスするスタート。ブレントフォードはカウンターから少人数で壊していこう!というスタンスだ。

 時間の経過と共に少しずつ力を出してきたのはエゼ。ドリブルやプレースキックで少しずつ敵陣を切り拓くことに成功する。

 だが、そんな流れと裏腹にゴールを決めたのはブレントフォード。コリンズへの対応が一歩遅れてしまったラクロワがPKを献上する。一度はこのPKは外してしまっていたが、クリアした選手がペナルティアークに早く入りすぎてしまったということで蹴り直し。ムベウモがリベンジに成功する形で先行する。

 勢いに乗るブレントフォードは右サイドのダムズゴーからクロスで追加点をゲット。セーフティリードを確保する。

 最後は5バックで構えてブロックを組むブレントフォード。パレスは交代で入ったエッセがデビュー戦でワンタッチ目をゴールにするという目覚ましいデビューを飾ったが反撃はここまで。凡戦ムードの膠着に風穴を開けたブレントフォードが勝ち点3を手にした。

ひとこと

 PKが文字通りの分水嶺。それ以外ではなかなか試合が動く感じはしなかった。

試合結果

2025.1.26
プレミアリーグ 第23節
クリスタル・パレス 1-2 ブレントフォード
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:85′ エッセ
BRE:66′(PK) ムベウモ, 80′ シャーデ
主審:トニー・ハリントン

第24節 マンチェスター・ユナイテッド戦(A)

鷲に睨まれ動的0トップは不発に

 フラムに勝利したユナイテッド。久々の連勝を狙い、ホームに迎えるのはクリスタル・パレス。このパレスはユナイテッドにとっては地味に天敵。リーグ戦では3試合連続で勝利がなく、最後のゴールは2023年。今はベンチにいないラッシュフォードがネットを揺らして以来、300分間無得点が続いている。

 天敵を前にしたユナイテッドはメイヌーのワントップという奇策を選択。序盤は彼を前に据える意味づけはできていたように思う。ミラーということもあり前から捕まえにくるパレスに対して、自由に動き回ることで起点に。横断からサイドで作ったチャンスにインサイドで飛び込むこともできており、動的さを全面出す形で勝負をする。

 基本的にユナイテッドはメイヌーの動き回る方向性を含めて噛み合わせをずらすことを基準にしていた。ブルーノが列を下げて4バックになるなど、パレスのプレスを退けるための動かし方を中心に。パレスは無理に噛み合わせることはなく、引いて受けつつ保持に回れば前にボールを当てるというシンプルな形で反撃を狙っていく。

 ユナイテッドは時間の経過とともに動的成分が低下。持つ機会自体は増えてはいるが、前線のボックス内でただ立っているだけならば、特にメイヌーをトップに置く意味はないだろう。素早い縦のシャープさが際立つマテタとは対照的に両軍は前線の存在感が入れ替わっていく。

 スコアレスで迎えた後半、パレスは少しハイプレスでトランジッション色を強めるスタート。ただ、保持からの押し上げは効かず、ポゼッションから展開を引き寄せられるかは微妙なところ。結局のところは後半はボール奪取からダイレクトに。奪った後の数プレーを大事にゴールに迫っていく。

 ペースを徐々に握ったパレス。パスワークがスムーズになると先制点はセットプレーから。跳ね返りを待てたが仕留めてゴールを生み出す。さらにエゼを投入し、パレスの攻撃は加速。オープンな展開でスペースを活かせるエゼにより、さらにペースを引き寄せる。スピードのあるバックスもハイラインという構造に乗ってきた印象だ。

 間合いが合わない状況が続くユナイテッドは後半はいいところなし。止まって時間を作れる選手がおらず、チャンスを作る機会も時間とともに減っていく。パレスはウォートンのセットしたカウンターをムニョスが仕留めてけりをつける。

 またしても天敵相手に無得点となったユナイテッド。勢いに乗ることは許されなかった。

ひとこと

 メイヌー0トップの意味づけができたかは微妙なところ。

試合結果

2025.2.2
プレミアリーグ 第24節
マンチェスター・ユナイテッド 0-2 クリスタル・パレス
オールド・トラフォード
【得点者】
CRY:64′ 89′ マテタ
主審:ジョン・ブルックス

第25節 エバートン戦(H)

好調キープのマージーサイド勢

 期待通りのロングボールの応酬からスタートしたこの試合。バックラインは簡単にリリースするという立ち上がりではあったが、そうした中でもハイプレスへの意欲が見えたのはエバートン。ミドルプレスからラインを上げてハイプレスに移行する隙を窺っていく。

 ただし、ハイラインを敷いた時のバックスの不安定さは今節も健在。ボールを奪った後の処理が安定せず、なかなか奪ったボールをチャンスに繋げることが出来ない。

 一方のパレスのバックスもタフなマークでエバートンにチャンスを与えず。好調のベトもなかなか序盤は存在感を見せることができない。保持でも少しずつ対角の長いレンジのパスからWBのフリーランを使って押し下げていこうとするトライで、エバートンの同サイドへの圧縮を外していく。

 パレスの陣形として少し気になったのはラクロワとリチャーズの間がたまにぽっかりと空いてしまうというアクションなのだが、あまりエバートン側にそこをつく感じは見えず。構造の隙をつく感じではないのはエバートンのカラーでもあると言えるだろう。基本はファストブレイクでの一点突破だ。

 CKから高さでゴールに迫っていたのはクリスタル・パレス。空中戦では優位の状況を作りつつ、圧でゴールに迫っていく。

 だが、そんなパレスに痛恨のミス。ミッチェルのスローインのミスを掻っ攫われてしまい、手痛い先制点を献上してしまう。

 なんとかこのミスをリカバリーしたいパレス。ハーフタイムには2枚の交代を行う積極策。するとわずか2分でマテタが同点ゴールをもたらすことに成功する。

 一方のエバートンも前半と同様のファストブレイクベース。左サイドからカウンターを狙い、リンドストロムが決定機を迎える。前半以上にオープンな展開で両軍のチャンスメイクが進んでいく。

 ゆるっとした展開で両軍が前線へのロングボールを生かすことができるか?という流れになった終盤戦。差を分けたのはセットプレー。押し込んだのはアルカラス。冬の市場で加入した新戦力がエバートンに貴重な勝ち越しゴールをもたらす。

 苦戦しながらもミスとセットプレーを活かして強かに勝利を手にしたエバートン。リバプールと共に好調なマージーサイドの雄が今節も勝ち点3を手にした。

ひとこと

 パレスは悪くない流れだっただけにミッチェルのミスから後手を踏む展開になったのは痛かった。

試合結果

2025.2.15
プレミアリーグ 第25節
クリスタル・パレス 1-2 エバートン
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:47′ マテタ
EVE:42′ ベト, 80′ アルカラス
主審:アンソニー・テイラー

第26節 フラム戦(A)

得点を境に明暗がくっきりと

 共に中位につける堅実な両チームによるロンドンダービー。互いに噛み合わせが悪くなかなかプレスのつかみどころがない一戦。そんな中でもハイプレスの意識が高いスタートとなったのはフラム。噛み合わないながらも3バックをチェイシングすることで高い位置からボールを奪いにいく。

 そんなフラムの積極的な守備に対して、パレスは横に長いボールを展開することで回避。対角のパスから左サイドで勝負をかけることでフラムのプレスを空転させる。

 逆にパレスの非保持は中央をきっちりプロテクトするミドルブロック。3-2-5に変形するフラムに対して、インサイドをプロテクト。フラムは3の右側に立つカスターニュを列上げするなど工夫を凝らしながら敵陣に人を送り込んでいく。

 時間の経過とともに存在感を増していったのはエゼ。長いレンジからのパンチ力のあるシュートで遠いレンジからフラムのゴールマウスを脅かしていく。対角のパスを駆使しつつ、フラムを押し下げていったパレスはセットプレーから先制ゴールをゲット。空中戦を制したラクロワがオウンゴールを誘発しパレスにリードをもたらす。

 フラムはなかなかこじ開けるためのポイントを見つけることができず。試合はパレスのリードでハーフタイムを迎える。

 後半、追いかけるフラムはポゼッションからスタート。右サイドで相手を食いつかせつつ裏をとることで一気にスピードアップを狙うなどショートパスによる組み立てから反撃を狙う。

 フラムはファストブレイクからもチャンス。左サイドを抜け出したヒメネスには重要なチャンスが訪れたが、これをラクロワがカット。これで試合の流れは再びパレスに。カウンターからチャンスを作り、エゼのヒールアシストからマテタがネットを揺らすがこれはオフサイド。

 しかし、その数分後に再びカウンターからゴール。右サイドを抜け出したムニョスは敵陣までボールを運ぶと、緩急を使い縦突破から角度をつけてのシュートを披露。意外性のあるゴールでパレスはリードを広げる。

 フラムはこのゴールで意気消沈。反撃の意欲も見えず、途中交代で入ったケアニーは負傷でベンチにすぐに退いてしまうなど、とにかく流れが悪かった。

 最後まで盤石の試合運びでクリーンシートを達成したパレス。上の順位にいるフラムを敵地で倒し、勝ち点3を手にした。

ひとこと

 得点が決まってからはもう両チームの出来の差がくっきりという感じだった。

試合結果

2025.2.22
プレミアリーグ 第26節
フラム 0-2 クリスタル・パレス
クレイブン・コテージ
【得点者】
CRY:34′ アンデルセン(OG), 66′ ムニョス
主審:ロベルト・ジョーンズ

第27節 アストンビラ戦(H)

らしくないドつきあいをパレスが制する

 3バックでスタートしたアストンビラだが、前からプレスをかけてこないパレスに対して、GKを絡めて4バックに変形することでボールを動かしていくスタート。パレスはいつも通りやや構える形から試合を始める。

 珍しかったのはアストンビラの振る舞いだ。高い位置から捕まえにいくアクションはこのチームの普段のスタンスにはあまりないもの。噛み合わせがいいわけでもないパレスのバックラインに対して前から枚数をあせて捕まえにいく。

 いつもと異なるアストンビラの振る舞いに、試合のテンションは少しずつ上昇。激しい中盤のデュエルの応酬というあまりこのカードらしくない展開に転がっていく。

 そうした中で先にネットを揺らしたのはアストンビラ。カウンターを加速させるティーレマンスの縦パスをスイッチに裏抜けをしたラムジーが最後にシュートを決めたがこれはオフサイド。ピンチを凌いだパレスはセットプレーから正真正銘の先制点を奪い取る。ウォートンのクロスをファーで折り返したリチャーズ、最後はサールが仕留めてリードを奪う。

 得点によりオープンな展開が誘発されることとなったこの試合。特にその恩恵を享受したのはパレス。エゼが加速装置となり、シュートチャンスは増加。得点前よりもさらにホルダーは自由な状態でシュートを打つことができていた。

 劣勢のビラは40分過ぎにロジャーズがネットを揺らすが、こちらもラムジーの時と同じく崩しのキーになった抜け出しでオフサイドで取り消し。わずかなギャップでパレスは同点になることを回避する。

 後半も先に攻め込んだのはホームのパレス。押し込んでシュート機会を作り、さらにはFKからもチャンスを迎える。しかし、ビラはGKのフィードからワトキンス→ロジャーズで抜け出す形から同点。ラインブレイクからの三度目の正直に成功し、試合は振り出しに戻る。

 スコアが動いたのは同点ゴールから7分後。高い位置からチェックに行ったリチャーズからのボール奪取で最後はマテタがゴールを決める。

 アストンビラは前節チームを作ったアセンシオとラッシュフォードの傭兵コンビを投入。だが、それでも流れは変わらず。違いを作り続けたのはパレス。WBの背後をとるアクションを続けることで押し下げると、最後はサールのボレーでリードをさらに引き離す。

 最後のゴールを飾ったのはエンケティア。ついに生まれた移籍後初のリーグ戦のゴールは試合の結果を大きく左右するものではなかったが、多くのファンとチームメイトから祝われる素晴らしいゴールとなった。

 思わぬゴールショーとなったセルハーストパーク。悪い時の守備の淡白さが大きなしっぺ返しとなってしまったビラだった。

ひとこと

 ビラによくある悪い流れを延々と取り返せないパターンの試合だった。

試合結果

2025.2.25
プレミアリーグ 第27節
クリスタル・パレス 4-1 アストンビラ
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:29′ サール, 59′ マテタ, 71′ サール, 90+1′ エンケティア
AVL:52′ ロジャーズ
主審:サム・バロット

第28節 イプスウィッチ戦(H)

結果を出した途中交代選手は?

 すでにタイムリミットのデッドラインは過ぎてしまった感があるイプスウィッチ。事実上、唯一のターゲットになるウルブスに逃げられてしまえばそこでゲームオーバーというのが彼らの現在地となるだろう。

 縦にガンガンつけていくという積極策が迎えた後半。前線を生かすための手段構築が目立った。マテタのいないパレスは中盤でストライカーの能力を補填する形でチャンスメイク。前線の動き出しに正確に場面を切り拓く形で合わせることが出来るウォートンからの供給により、パレスはチャンスが広がることとなった。

 イプスウィッチは背後のケアをするパーマーがファインセーブでチームも救う一方、直後のビルドアップでは相手のハイプレスにぶち当ててしまうなど、貢献度としては一長一短な状態だった。それでも前線のデラップはこの日も奮闘。縦パスを受けると自らが反転して前を向く形を作り、ゴールに迫っていく。

 優勢なのはパレスの方だろう。中盤から供給はイプスウィッチの守備陣にかなりシビアな対応を迫っており、イプスウィッチのDFは無理な体勢でのクリアを余儀なくされるなど、苦しい展開が続く。エンシソの反転からのシュートなど前線の能力の高さを生かす強引なこじ開けのスキルこそ見られはしたが、優勢なのはパレスの方だった。

 終盤はイプスウィッチのポストプレーを許すことで押し下げられる場面も多かったパレス。だが、オープンスペースで勝負ができるのならば特にそれも問題なし!というスタンスのサールから反撃を見せるなど、一方的にイプスウィッチのペースに持ち込まれることはなかった。

 後半も積極策が目立つのはパレス。比較的ラインを高めに設定し、イプスウィッチのバックラインにプレッシャーをかけていく。ミドルブロックを壊して加速するところまではそれなりに行けるイプスウィッチだが、仕上げのところまではたどり着くことが出来ず。試合としては一進一退の攻防が繰り広げられる。

 イプスウィッチの難点としてよく自分が挙げていたのは、交代選手のブーストのかけられなさ。しかし、この日はハッチンソンという十分なジョーカー役が途中から。ギアアップに期待がかかる用兵となる。

 しかしながら、この日に結果を出した交代選手はパレスの方。サールと連携に成功したのは鎌田。中央のスモールスペースの打開から抜け出す場面をおぜん立てすると、決勝ゴールを手にする。

 アタッキングサードの精度が決め手となったこのゲーム。途中交代の鎌田のスキルがパレスに3ポイントをもたらした。

ひとこと

 イプスウィッチ、粘れて奥の手も温存してて悪くない試合運びと思ったが。

試合結果

2025.3.8
プレミアリーグ 第28節
クリスタル・パレス 1-0 イプスウィッチ
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:82‘ サール
主審:サイモン・フーパー

第29節 ニューカッスル戦(A)

第30節 サウサンプトン戦(A)

第31節 ブライトン戦(H)

第32節 マンチェスター・シティ戦(A)

第33節 ボーンマス戦(H)

第34節 アーセナル戦(A)

第35節 ノッティンガム・フォレスト戦(H)

第36節 トッテナム戦(A)

第37節 ウォルバーハンプトン戦(H)

第38節 リバプール戦(A)

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次