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「Catch up Premier League」~クリスタル・パレス編~ 2024-25 season

クリスタル・パレス、24-25シーズンの歩み。

目次

第1節 ブレントフォード戦(A)

ノーゴール判定で変わった流れをモノにしたブレントフォード

 23-24シーズンにおける終盤戦の主役だったクリスタル・パレス。オリーズこそミュンヘンに旅立っていったが、他の主力はキープに成功。エースのトニーが「総合的な判断」で欠場したブレントフォードのホームに乗り込み、開幕戦の勝利を狙う。

 立ち上がりは一方的なパレスのペースと言っていいだろう。バックスが余裕を持ってボールを持つと、インサイドに差し込みエゼが前を向いて左右に自在に展開。大外を取ったWBを生かして速いクロスをボックス内で入れるという攻撃のテンポにブレントフォードはついていけていなかった。

 さらに状況を悪くしたのはなかなかブレントフォードに前進の見込みが立たなかったこと。トップに残ったウィサはロングボールのターゲットとしては心許ない。だが、ショートパスを繋げばフレッケンがあわや鎌田に咎められてしまうという冷や汗をかく場面も。というわけで立ち上がりはイェンセンがバックラインに入って5バックでパレスを迎撃していたが、徐々にプレスからの陣地回復を模索していく。

 だが、このプレスはさらに事態を悪くする。遅れて出ていくプレスは逆にパレスの縦パスのタイミングの合図に。ライン間のエゼに取っては養分のようなプレスとなってしまった。

 試合の流れを大きく変えたのはエゼの直接FK。ネットを揺らした衝撃的な一撃はヒューズのオブストを取られてしまいノーゴール。さらには主審の笛がネットを揺らす前に吹かれたためにVARも介入することができないものとなってしまった。

 このプレーで一気に流れは変化。その直前からややつなぎからサイドの突破の目処が立ったブレントフォードは右サイドのムベウモの裏抜けから先制ゴールをゲット。カットインからのシュートは十八番パターンなので、シュートに対して後手を踏みやすい体の向きをしていたグエイにとっては悔いの残るプレーであった。

 出ていく必要のなくなったブレントフォードは自陣でのコンパクトな守備に終始。これにより猛威を震っていたエゼは完全に幽閉されることに。さらにはプレスにでも出ていくことができず。得点以降、パレスは反撃の目処が立たないままハーフタイムを迎えることとなった。

 後半もいい入りを見せたブレントフォード。ウィサとムベウモのコンビで右サイドを蹂躙すると、いきなりゴールを脅かしていく。

 対するパレスはロングボールを頻発。オリンピックで合流が遅れているマテタ→エドゥアールの交代はある程度用意されていたものかもしれないが、それでもロングボールを増やした理由としてはやや弱い気もする。

 前半と異なり、インサイドにボールをつけることができず、外への突破の負荷が高まるクリスタル・パレス。サイドに流れたエゼからそういう状態もなんのその!というクロスがガンガン上がるように。そうした中でブレントフォードはピノックがオウンゴールを犯してしまい、再び試合は同点になる。

 以降も左サイドからクロスを積極的に狙っていったパレス。インサイドに起点と作らなくてもなんとかしてしまうエゼの馬力で強引な解決策に辿りつく。このシーン以降も左サイドからのクロスで勝負に出ており、やや力づくでパレスと張り合っていく。

 勝ち越し点を狙うパレスだったが、それをあざ笑うかのように再び前に出るブレントフォード。右サイドからのクロスを起点としたプレーから最後にボールを押し込んだのはウィサ。仕事人ストライカーの一撃からまたしてもリードを奪う。

 以降も、ローブロックを組むブレントフォードに対して、パレスが力づくでの解決策を探る展開。だが、最後までゴールは奪えず。2トップが躍動したブレントフォードが勝利を収めた。

ひとこと

 完全にエゼのFKの判定から流れが変わった感はあるが、それ以前にもきっちりとつなぐトライから反撃の糸口を探っていたことは忘れてはいけない。

試合結果

2024.8.18
プレミアリーグ 第1節
ブレントフォード 2-1 クリスタル・パレス
Gtechコミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:29’ ムベウモ, 76‘ ウィサ
CRY:57‘ ピノック(OG)
主審:サム・バロット

第2節 ウェストハム戦(H)

連敗回避に成功したのはウェストハム

 ブレントフォード相手に優勢に試合を進めながらひっくり返されてしまい、開幕戦を落としてしまったクリスタル・パレス。再びロンドン・ダービーとなる今節はこちらも開幕戦で敗れたウェストハムをホームに迎えての一戦となる。

 パレスとしてはウェストハムのバックラインにはひとまずボールを持たせてOKというスタンス。5-2-3でナローに守って中央を圧縮し、そこからカウンターに出て行くプランでウェストハムを迎え撃つ。

 ウェストハムは前進とフィニッシュの両面で高さを生かすアプローチ。前線でサイドに流れるアントニオもさることながら、厄介だったのはソーチェク。アントニオをサポートするように列を下げてロングボールのターゲットになるあたり、単純に捕まえにくい。ただでさえサイズのある選手に対して列移動でズレて対応を強いられるというのは守る側としてはコストがかかる。

 押し下げる機会が多かったウェストハムだが、即時奪回による波状攻撃までもっていくことができなかったのはパレスの高いプレス耐性によるところだろう。時間がない中でもパレスのボールホルダーはスムーズな回避でウェストハムのなだれ込むようなプレスをいなし、ここから前進を狙っていく。

 時間が経過すると少しずつクリスタル・パレスもボールを持てるようになる展開に。3バックを基調に長いレンジのパスを生かして広いポゼッションを狙う。しかしながら、中央のCBがアンデルセン→グエイになった分、DFラインからの展開力は低下。正確に遠いところに届ける精度が足りておらず、サイドに時間を渡すことができていなかった。

 パレスが押し込む時間が増えた20分以降もチャンスは増えず。内と外が分断されてしまう攻撃はなかなかウェストハムに風穴を開けることができない。ポゼッション率の増加とチャンスの構築はイコールにならず、この試合の多くのチャンスはトランジッションがベースとなっており、自陣からの長い距離のカウンターの精度勝負となっていた。

 迎えた後半もボールを動かしながらも主導権の握り合い。ウェストハムは列を上げつつサイドに流れるソーチェクとアントニオを軸にポジションチェンジを行いながらロングボールの落としから前進を狙っていく。

 一方のパレスも中央でのコンビネーションが前半より良化。マテタのポストから少しずつチャンスメイクができるようになる。

 均衡した展開で試合を動かしたのはウェストハムの右サイド。ワン=ビサカが高い位置でキープし、ボーウェンのオーバーラップを促すと、ここからサイドの崩しに成功。ようやく混戦の中でソーチェクが試合を動かすゴールを決める。

 以降もゲームはどちらでもない展開に。そうした中からカウンターで牙をむいたのはウェストハム。エゼの突撃をカットしたところから生み出された機会を仕留めた。持ち上がりからウォートンを外したキルマンのプレーが素晴らしかった。

 じりじりした試合は後半に決着。ウェストハムが連敗ストップに成功した。

ひとこと

 アンデルセンの移籍はかなりクリティカルなダメージになる感がある。

試合結果

2024.8.24
プレミアリーグ 第2節
クリスタル・パレス 0-2 ウェストハム
セルハースト・パーク
【得点者】
WHU:67′ ソーチェク, 72‘ ボーウェン
主審:ロベルト・ジョーンズ

第3節 チェルシー戦(A)

中央集結の目的が見えてこなかったチェルシー

 前節、ウルブスを粉砕してマレスカ政権での初勝利を手にしたチェルシー。しかしながら、大味の時間も少なくなく、スコアほどの強さを見せ続けた90分というわけではなかった。真価が問われるのはここからだろう。

 この試合のチェルシーは保持で少し工夫を施してきた。カイセドが中盤に残り、エンソは左のハーフスペースに流れて上下動。きっちり左右対称というわけではないが、降りて受けて反転して前進を狙うパルマーと近い動きを見せたといっていいだろう。

 アンカー役のカイセドは最終ラインに落ちて、実質中盤に入るのはグストという変化も見せたチェルシー。アタッキングサードの攻め手になったのはマドゥエケ。右サイドから李リチャーズの背後を取る動きを繰り返して、チェルシーの推進力となる。時にはジャクソンとレーンを変えながらの攻撃も見せており、なかなか動きとしては興味深かった。

ヘンダーソンのセーブでなんとか踏ん張るパレスだったが、再三の右サイドからの突破を狙うチェルシーについに破られてしまい失点を喫することとなった。

 もっとも、チェルシーの保持のメカニズムが効きまくっていたかは怪しいところ。降りてくるパルマーとエンソの動きはやや単調な感じもあったし、左サイドの大外でレーンを重ねたネトとククレジャの縦関係が、シャドーの鎌田が引いて受ける4-4-2っぽい枚数合わせを敢行したパレス相手に何かを生み出せていたわけでもなかった。

 しかしながら、パレスの前進はチェルシー以上に苦しい。左サイドに開くリチャーズから奥を狙う一発を軸とする動きを見せたが、チェルシーの迎撃のターゲットが非常に明確であり起点を作れず。我慢が効かなかったエゼがラインを下げて怖くないエリアまで降りてきてしまうというありさまだった。

 40分手前にチェルシーは少しずつ迎撃部隊の対応が怪しくなったこともあり、パレスはボールを持てるように。しかし、スコアは動かず。試合はチェルシーのリードでハーフタイムを迎える。

 後半もチェルシーが仕切り直してボールを持つスタート。中央に降りるパルマーの反転はさらに見切られている感があった。

 パレスの苦しさは相変わらずであったが、敵陣でのFKでのリスタートからエゼがミドルでネットを揺らして同点。一振りで試合を振り出しに戻す。このゴールから少しずつパレスはチェルシーの中盤のギャップを使ってのポゼッションができるように。

 後半のチェルシーはフェリックスを投入し、さらにインサイドの起点を増やす。だが、余計に中央がごちゃごちゃした感があり、相手を動かしての攻略まではたどり着かなかった。グストの負傷からのムドリクは少しやけくそ感もあったが、中央の渋滞は選手交代では解消できず。右サイドのエンクンクとフォファナが終盤にほんのり奮闘したが、それ以上の成果を見せることはできず。チェルシーはホーム初勝利を飾ることができなかった。

ひとこと

 尖りがすっかりなくなってしまったパレスも方向性を打ち出せているのかよくわからないチェルシーも少し気になる出来だった。

試合結果

2024.9.1
プレミアリーグ 第3節
チェルシー 1-1 クリスタル・パレス
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:25’ ジャクソン
CRY:53’ エゼ
主審:ジャレット・ジレット

第4節 レスター戦(H)

交代策が実って薄氷のドロー

 今季ここまで勝ちがない両チーム。特にホームのパレスは期待が大きいシーズンだっただけに早く初勝利を手にしたいところである。

 ボールを持つのはレスター。パレスはマテタが中盤をケアするなど、バックスには無理にプレスにいかないスタートとなった。レスターは左サイドのコンビネーションからサイドの奥を取りに行く。奪われるとすぐにハイプレスでボールを奪い返しにいくなど、立ち上がりはかなり積極的な姿勢が見えた。

 序盤の流れが落ち着くとレスターも4-2-3-1のブロックを組み、ヴァーディを前残しすることでパレスとレスターはそれぞれ交互に保持から解決策を探る流れに。パレスの保持で少し気になったのはウォートン。中央で浮く機会が瞬間的に訪れるのだが、なかなかその機会に効果的な配球を見せることができない。周りとの連携の話もあるので、彼だけの責任ではないかもしれないけども。

 流れの中から迎えた決定機は両チームに訪れたが、これを決めるか決めないかで明暗はくっきり。左サイドを壊したパレスは逆サイドに余ったムニョスが決定機を迎えるが、ファエスが体を張ってのセーブ。ゴールを許さない。

 すると直後に中盤でのボール奪取からエンディディのラストパスを受けたヴァーディが裏抜けから先制。職人芸と言える一撃で試合を動かす。

 先制点以降はパレスの方がややボールを持つ機会が多くなる。大外のWBを生かしつつニアの裏抜け、そして逆の大外など広く使いながらチャンスを狙っていくが、ネットを揺らせないままハーフタイムを迎える。

 後半は立ち上がりにスコアが動く展開。先にゴールを奪ったのはマヴィディディ。クリアし損ねたところを仕留めて中押しのゴールを決める。

 だが、すぐにパレスもやり返し。左サイドから精度抜群のクロスを入れたミッチェルに応えたマテタがネットを揺らして後半早々の失点を帳消しにする。

 1ゴールずつを分け合った両チームは再びフラットな展開に。ボールを持ちながら解決策を探るのが多かったのはパレスなので前半の終盤の流れに戻ったといってもいいだろう。後半頭に入ったヒューズは左右に散らす展開力で存在感を発揮。レスターを押し下げることに貢献する。

 押し切りたいパレスは鎌田の投入から4-4-2にシフト。一方のレスターはコーディを組み込んでの5バックで逃げ切り態勢を構築する。

 方向性は打ち出された展開で成果を得たのはパレス。鎌田のスルーパスを収めたエンケティアの落としにサールが入り込んでPKを獲得。PKを与えてしまったのがコーディというのはなかなかに切ないところである。

 土壇場のPKで追いついたパレス。レスターはすんでのところで今季初勝利を逃してしまうこととなった。

ひとこと

 パレス、勝ち点を取れたことは良かったけども、昨季の良かった時期のフォームに全く戻ってこれない感じが気になるところ。

試合結果

2024.9.15
プレミアリーグ 第4節
クリスタル・パレス 2-2 レスター
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:47′ 90+2′(PK) マテタ
LEI:21′ ヴァーディ, 46′ マヴィディディ
主審:トニー・ハリントン

第5節 マンチェスター・ユナイテッド戦(H)

効いてる動きを繰り返せずスコアレスドロー

 前評判の高さとは異なり、なかなか今季は勝利が掴めないパレス。前節サウサンプトンを下してアウェイ連勝を狙うユナイテッドと対戦する。

 前節はかなり慎重な入りだったパレスだが、今節は高い位置から積極的なプレスに出ていく。奪ったら縦という形も徹底。マテタへの長いボールからチャンスを作っていく。立ち上がり直後のデ・リフトはかなり冷や汗をかいたことだろう。

 だが、パレスはマテタへのロングボール以外に前進の手段が皆無。降りるエゼは潰されてしまい、エンケティアは存在感が薄くボールを受けることができずに苦戦する。

 さらにはバックスの連携不足も露呈。一つずれを作られるとラインが簡単にガタガタになってしまうという苦しい状況であった。つまり、ユナイテッドからすると縦パスを入れてパレスのバックラインの誰かを引っ張り出せればチャンスになるということ。オフサイドにかからない裏抜けからチャンスを作るユナイテッドがパレスのゴールに迫る中盤戦に。

 だが、ヘンダーソンのセーブやクロスバー連打などシュートの精度に欠けるユナイテッドはこのチャンスを活かすことができない。チャンスの数では優位に立ったユナイテッドだが、セットプレーのデ・リフトを含めてネットを揺らすことはできなかった。

 パレスはきっかけが見つけられない状況であったが、大外を起点にする手数をかけた攻撃が前半終盤にほんのり見られるように。後半に希望をつなぐ形でハーフタイムを迎える。

 後半、パレスは2枚替えを敢行。下がるのはマテタとウォートン。タクティカルな判断であるならば驚きの交代であった。これにより前線で体を張る役目はエンケティアに回ってきた感があったが、マテタに比べると収めることができずに苦戦。パレスは前半の最後のペースを手放してしまう。

 後半もユナイテッドの有効打の基準は同じ。クリスタル・パレスの最終ラインからを人を釣り出し、その背後に侵入できるかどうかであった。ザークツィーとブルーノの2人はこの原則を守りながらボックス内への侵入を試みることができた。

 だが、徐々にユナイテッドは個々人の突破に頼る力押しにシフトしてきた感がある。交代選手のパフォーマンスがそういった点では迫力が物足りなかったため、ユナイテッドの勢いは少しずつ停滞するように。

 一方でパレスは交代選手を有効活用した感がある。サールはオフザボールの動きでユナイテッドを押し下げていたし、ヒューズはサイドから押し下げられた局面から前線への飛び出しで存在感を発揮。終盤にかけて得点の機会をフラットに引き戻す。

 だが、オナナという最後の牙城は強力。こちらも最後の一山を越えることができないままタイムアップ。試合はスコアレスドローでの決着となった。

ひとこと

 ユナイテッドはもっと愚直にパレスの仕組みを壊すことにフォーカスしたかったところ。ホイルンドが収まらないのとかは仕方ないけども、もう少しこの日効いてる攻撃を繰り返したかった。

試合結果

2024.9.21
プレミアリーグ 第5節
クリスタル・パレス 0-0 マンチェスター・ユナイテッド
セルハースト・パーク
主審:デビッド・クート

第6節 エバートン戦(A)

4回目の正直で未勝利沼脱出

 前節に続き未勝利対決に挑むエバートン。自チームと同じく不調にあえぐパレスを叩いて何とか上位浮上のきっかけを作りたい。

 互いに相手のバックスにはボールを持たせてOKというスタンス。インサイドをきっちり閉めることで、保持側にクリティカルなパスを通されることをとにかく避けたいという姿勢だ。

 どちらのチームも非保持のブロックは悪くなかったが、特に目立っていたのは鎌田とウォートンのパレスのCHコンビ。シャープなボール奪取でエバートンの攻撃を寸断する。

 そんないい流れが響いたのかパレスはセットプレーから先制点をゲット。ウォートンのファーへのクロスの折り返しをグエイが沈めてスコアを先に動かす。

 リードを許したエバートンだが、特にプレスの強度を極端に引き上げることなく淡々と攻略ルート探しに終始。中央が少し硬いので、トップ下のマクニールがサイドの裏に流れるなどオフザボールの動きに変化をつけていく。だが、このルートはグエイの先読みが効いており、パレスが優勢。セットプレーからのチャンスメイクや中央からのボール配球が安定したパレスは得点以降もエバートンに流れを渡さずに時計の針を進めていく。

 ただし、エバートンも中央の守備は相変わらず堅い。互いに縦のパスを引っかけ続け、なかなかチャンスを作れない展開のまま、試合はハーフタイムに突入した印象だ。

 後半も似たような渋い展開になりそうなところを早々に変えたのはエバートン。マクニールがミドルで仕留めたこのゴールで勢いに乗ると、さらにはハリソンからマクニールへのルートでエバートンは一気に逆転に成功する。

 パレスはスコアをひっくり返されたことでバタバタ。試合のリズムを失ってしまい、エバートンに苦しめられる後半の立ち上がりとなった。

 ようやく押し込めるようになったのは60分過ぎ。サイドに枚数をかけた攻撃からクロスを上げたり、対角のパスで薄いサイドを作ったりなど攻め筋の工夫は確かに見られた。

 しかしながら、ここ数試合の逆転劇を教訓にするかのようなエバートンの落ち着いた水際対応を前になかなかゴールを脅かすことが出来ない。

 最後までボールを動かしていくアプローチは捨てなかったパレスだが、終盤は逆にエバートンにボールを持たれなおして押し返される展開もしばしば。時計の針を順調に進めることに成功する。1点差を守り切り、ついに成立した塹壕戦からの逃げ切り勝利のパターン。4度目の正直に成功したエバートンが一足先に未勝利沼からの脱出に成功した。

ひとこと

 この試合での落ち着きがあれば、少なくとももう3くらいは勝ち点を取れていそうなエバートン。マクニールの連続ゴールが流れをかえるきっかけになるか。

試合結果

2024.9.28
プレミアリーグ 第6節
エバートン 2-1 クリスタル・パレス
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:47’ 54‘ マクニール
CRY:10‘ グエイ
主審:アンディ・マドレー

第7節 リバプール戦(H)

逃げ切り成功で首位で代表ウィークに

 中断前、最後の週末。土曜のランチタイムのカードに選ばれたのはセルハースト・パーク。首位のリバプールを迎えてパレスは初勝利を狙う。

 パレスは電光石火のファストブレイクでスタート。いきなりネットを揺らすが、エンケティアはオフサイド。奇襲はスコアには繋がらなかった。

 以降はリバプールがボールを持って動かす展開に。3-2型の後方ブロックをビルドアップの主役として、対角を使いながら押し下げていく。

 リバプールが目をつけたのはパレスのシャドーのポジション。CB-SBで揺さぶってフリーの選手を作る。先制点のきっかけとなったのはツィミカス。ガクポのバックドアからの折り返しでジョッタが先制ゴールを決める。

 以降も展開は変わらず。対角を使いつつ、時にはインサイドにも差し込みながらボールを動かしパレスを圧倒。パレスは前にポイントを作りたいところだが、リバプールのバックスの強度に苦戦。前を向くことができない。

 アンカーのグラフェンベルフのマークに関してはパレスの受け渡しが整理されたように見えたが、グラフェンベルフは1枚上手。シャドーがSBのケアにフォーカスすると、ファン・ダイクが縦パスを通すなどここでも中央のパスルートが効く。

 ややリバプール側のファウルが嵩むことになった終盤。パレスは押し上げる展開が増える中でトランジッション局面から背後にお祈りパスを通しにいくことで勝負に出る。ラクロワのパスが通り、パレスが後半はじめの決定機を迎えるが、アリソンがこれを阻止。リードをキープしてハーフタイムを迎える。

 後半、パレスは出ていく局面とリトリートの局面を整理。メリハリのあるプレスでリバプールの中盤の受け渡しを整理する。それでもツィミカスのところを捕まえることができず、ここからリバプールにボールを運ばれる。だが、そこから縦にしか進む選択肢がなく、効果的にゴールに向かうことができない。

 パレスはゆったりとボールを動かしつつ、大外をポイントにすることで前半よりも着実に押し込むことができるように。後方でのボールハントと徐々に前進のフェーズがつながり始める。ヒューズの投入で中盤が引き締まり、マテタの投入で前線に起点ができるように。前半のような祈るような強引な縦パスも収まるようになる。

 終盤はアリソンの負傷もあり、冷や汗をかいたリバプールだったがディアスとガクポを軸として時間を稼ぎ、なんとか逃げ切りに成功。パレスはエゼにチャンスが巡ってくるが、シュートは正面に飛んでしまった。

 難しいCL後の試合を制したリバプール。首位で10月の代表ウィークを迎えることとなった。

ひとこと

 インサイドを覗けるのが今のリバプールの強み。押し込んでのボール回しが単調にならなかった。

試合結果

2024.10.5
プレミアリーグ 第7節
クリスタル・パレス 0-1 リバプール
セルハースト・パーク
【得点者】
LIV:9′ ジョッタ
主審:サイモン・フーパー

第8節 ノッティンガム・フォレスト戦(A)

勢いの差が反映された後半に

 ここまで堅実な戦いが続いているフォレストとトンネルから抜け出すきっかけを見つけることができないパレス。対照的なシーズンとなっている両チームとの試合となった。

 どちらも守備の起点となるのは中盤。バックラインまで無理にボールを追うことなくある程度持たせてOKというイメージのスタートとなった。

 パレスは左サイドにアタッカーを集約するオーバーロード気味な姿勢を見せる。サイドから奥を取る形でスムーズに攻め切る形を作るのがこの日のエゼの右サイドへのコンバートへの意図だっただろうか?フォレストはサイドで早めに止める狙いよりも早くボールをつけられるかどうかが攻撃が機能する争点だった。

 一方のフォレストも左から。1stプレスラインを避けるように立つモレノやムリージョからボールを運ぶと、ここから奥を取る形を狙っていく。ハドソン=オドイのバックドアなどはその好例と言えるだろう。

 押し込む機会が多かったのはフォレスト。攻撃に枚数をかける分、リスクもあるが、後方を同数で止めることができるという信頼があるのだろう。実際にミレンコビッチはきっちりと高い位置からストッパーとして機能することを示すように。

 試合は徐々にフォレストペースに。押し込むフェーズが増えていくと、パレスからカウンターの機会が明らかに目減りしていく一方、アンダーソンのカットインなどアクセントになる動きからフォレストは攻め切るチャンスを手にする。飛び込むウッドにもかなり手を焼くことになっていた。CKからも決定機があるなど、セットプレーでもフォレストは手応えを感じる展開だった。

 パレスが押し込む機会を作ることができても、フォレストのブロックは強固。逆にフォレストにカウンターを喰らってしまうような展開となった。

 後半、フォレストはボールを持つスタート。鎌田を1列下げる5-3-2で構えつつ左サイドのラインブレイクからカウンターを狙うパレス。だが、その攻撃をさらにひっくり返されることでむしろフォレストがスピードアップしてカウンターに出ていく。

 時間の経過とともにフォレストは保持の機会をリカバリー。押し込むフェーズに突入する。相変わらずキレのいいアンダーソンの押し下げる動き出しからのセカンドボールを回収したのはウッド。虚をつくミドルシュートから先制点を決める。

 先制点以降も堅実に試合を進めることができたフォレスト。順当に逃げ切りに成功し、パレスに勢いの差を見せつけた。

ひとこと

 パレスはなかなか攻撃のブレイクスルーを見つけられず。おとなしくマテタじゃだめなのだろうか。

試合結果

2024.10.21
プレミアリーグ 第8節
ノッティンガム・フォレスト 1-0 クリスタル・パレス
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:65′ ウッド
主審:ティム・ロビンソン

第9節 トッテナム戦(H)

エースの復活でついに掴んだ初勝利

 ここまで未勝利と想定外の不振に喘ぐクリスタル・パレス。シーズン前の高い下馬評とは裏腹に降格圏に沈んでいる。エースのマテタのスタメン復帰をなんとか原動力にしたいところだろう。

 立ち上がりはそのマテタをめがけたロングボールでスタートするパレス。高い位置からチェイシングしたいトッテナムの狙いを外すように割り切った戦法で立ち向かっていく。

 ロングボールでボールを失った後は高い位置へのプッシュアップでトッテナム陣内に迫っていくところまでがセット。ただし、深追いはしすぎない。前線がステイするときは一気にラインを下げてブロックを組んでいく。

 トッテナムはブロックの外からポロやマディソンが大きな展開で動かしていくスタート。パレスのハイプレスに関しては横に振ることでいなせそうな立ち上がりだったが、ブロック攻略となると手応えがないという感じだろうか。

 風向きが変わってきたのは15分を過ぎたことから。パレスが押し込んでの即時奪回を機能させることでトッテナム陣内の時間が増えていく。トッテナムはパレスの攻撃を終わらせた後の1本目のパスが非常に雑。縦につけるパスをあっさりとパレスに渡してしまうことで相手の攻撃のターンを継続させてしまう。

 序盤はプレスを回避できていたが、自陣での動き直しの少なさからかポゼッションで脱出できる機会も激減。高い位置から中盤とバックスが捕まえて延々と攻撃を続ける姿は快進撃を続けている時期のグラスナーのチームの片鱗であった。

 延々と攻撃を続けることができたパレスは31分に先制点をゲット。ファーで構えていたマテタが先制ゴールをもたらす。

 後半はハイプレス合戦でスタート。高い位置からプレスに出ていく相手に対して、ひたすらバックラインの裏を取り合う攻撃を志向する。

 ジョンソンが裏をとったトッテナムが先制攻撃を仕掛けるが、より頻度が多かったのはパレスの方。切れ味抜群なのはエゼ。久しぶりの好パフォーマンスでパレスの攻撃を牽引する。

 トッテナムは前線の入れ替えからオフザボールを活性化。ジョンソンに加わるようにリシャルリソン、ヴェルナーが裏を取るアクションを見せにいく。

 だが、パレスの対応は安定。裏抜けに対しても安定したリアクションでピンチの芽を摘み取る。押し込んだ後のパターンとして積極的に活用していた左サイドからのクロスもヘンダーソンが問題なく処理をする。時折見せるカウンターでヴィカーリオに冷や汗をかかせることも忘れなかった。

 試合はこのまま終了。ついにパレスは未勝利沼を脱出。トッテナムを下し、悲願の今季初勝利を手にした。

ひとこと

 パレスが昨季の片鱗を取り戻した試合だった。

試合結果

2024.10.27
プレミアリーグ 第9節
クリスタル・パレス 1-0 トッテナム
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:31′ マテタ
主審:ダレン・ボンド

第10節 ウォルバーハンプトン戦(A)

種類の違う両チームの苦しみ

 昇格組以外で結果を出すことができないチームといえば、今はこの2チームの名前が上がることになるだろう。この90分もどことなくうまくいかなさが先行する展開だった。

 チャンスをより多く作ったのはパレスの方。ハイラインで相手を捕まえにいく形はそこまでひっくり返されることはなかったし、3人のアタッカーが前を向くファストブレイクは形を作ることができていた。

 だが、エゼの欠場の影響もあり、パレスは3人が前を向く形を作った後の展開を作ることができない。この点で悪目立ちしてしまったのはエンケティア。相手の中盤の背後でボールを受けるところまではスムーズなのだが、そこから状況をさらに前に進めることができない。プレッシャーで消えることで存在感を発揮できないなら、チームとしての枠組みの形になるが、この試合ではむしろいい形は作れていた(エンケティアの受けかたが上手いのは間違いない)だけに、エンケティアのボールを持った後のプレー選択が悪く目につく格好になってしまった。

 敵陣でのスムーズな攻撃が見られないパレスは徐々に後方のポゼッションの安定感が失われるように。ボールを動かすところでミスが出ることでウルブスに攻撃の機会を渡してしまうこともしばしばだった。

 一方のウルブスは得意パターンの構築がやりきれなかった感。左のハーフスペースに落ちるクーニャのポストからの展開はもっと見たかったが、周りがこれに合わせることはできず。前半終了間際にようやくサラビアの抜け出しを演出するが、セットプレーを軸にチャンスを作ったパレスに決定機を上回られる展開となった。

 後半は両チームとも攻撃に出る機会が多いオープンな展開に。セットプレーから先に動かしたのはパレス。ファーの角度のあるところからチャロバーがスーパーなボレーを叩き込み、リードを奪う。

 前後半の出来のギャップがいい方側に大きかったウルブスは2トップを生かして反撃。サイドに流れることでチャンスメイクしたストランド=ラーセンがボールを収めてクーニャにボールを渡す。ここから左サイドに流して先制点をゲット。ちなみにこの場面もエンケティアがボールをカットされたところからだ。もちろん、チャロバーの一発タックルが失敗したのも影響が大きかった。

 同点ゴールから勢いに乗ったウルブスは一気に逆転まで。見事な横断から逆サイドまで展開し、最後はゴメスが仕留める。ウルブズの攻撃の視界が一気に開けたのは鎌田がターンを許したところからだった。

しかし、パレスもセットプレーからすぐに同点。グエヒのゴールで試合を振り出しに戻す。

最後は両チームとも決め手に欠いてのドロー決着。上昇気流に乗れるきっかけを掴んだチームはこの日のモリニューにはいなかった。

ひとこと

種類の違ううまくいかなさに苦しんでいる感がある両チームだった。

試合結果

2024.11.2
プレミアリーグ 第10節
ウォルバーハンプトン 2-2 クリスタル・パレス
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:67’ ストランド=ラーセン, 72‘ ジョアン・ゴメス
CRY:60‘ チャロバー, 77’ グエヒ
主審:アンソニー・テイラー

第11節 フラム戦(H)

失われたフィードに翻弄されて

 立ち上がりから試合の流れはくっきり。ボールを持つ側になったのはフラム。パレスはフラムのバックラインには無理にプレスにはいかない。

 ということでフラムはパレスの1stプレスラインをきっちりと越えていくところからの前進を狙っていく。テテの大胆な持ち上がりから一気に侵入する。

 すばやくサイドを変えるという点ではCBのアンデルセンの存在も非常に効いていた。対角のフィードでパレスの左右のスライドに負担を強いる形でフラムのサイドアタックを効果的なものにしていく。特に、左に振るアクションからスミス・ロウ→ロビンソンのオーバーラップ活用という流れは一つの攻撃のスキームとして見事に成立していた感がある。

 中盤の横断などこの対角パターン一辺倒にならないところがフラムのいいところ。柔軟さを生かす崩しからパレスを追い込んでいく。

 一方のパレスは一点突破主義。やや左サイドに流れるマテタが頼みの綱という感じ。アンデルセンのコントロールミスなどたまに対応を誤るフラムのバックスに対して、容赦なく襲い掛かっていくマテタがこの試合におけるパレスの前半の唯一の攻め筋だった。

 セットプレーや流れの中からなど少しずつチャンスを作る時間も作れるようになったパレスだったが、きっかけはすべてマテタ。相対的にチャンスの色の濃いフラムが先制。ラクロワのコントロールミスからのショートカウンターでスミス・ロウがゴールをゲット。44分のマテタの決定機をフイにしたパレスとは対照的にチャンスをきっちりスコアに結びつけたフラムが先制点を決める。

 迎えた後半はパレスがゲームチェンジに挑む。鎌田の縦パスから抜け出したムニョスがチャンスを作るなど、押し込む流れを増やしながらフラムを攻め立てていく。

 フラムもこれに対抗。中央を経由して左右に素早く動かす横断や、右サイドのイウォビ→ペレイラなど前半と異なるルートからチャンスを迎える。

一進一退の攻防となった試合だがフラムはスミス・ロウのオフサイドの場面から再びリズムを掌握。少しずつ攻める時間を増やしていく。

 すると、パレスは鎌田が危険なタックルで一発退場。これで試合の均衡は完全に崩れることに。

 ややオープンながらも試合の主導権を握ったのはフラム。仕上げ役として前節大車輪の活躍を見せたウィルソンは今節もダメ押しゴールをゲット。またしても複数ゴールかと思われたシーンはハンドでお預けになったが、ジョーカーとして今節も存分に暴れまわった。

 チームとしての勢いの差を見せたフラムはパレスを圧倒。ロンドン・ダービーを危なげなく制した。

ひとこと

 アンデルセンの対角パス、まさしくパレスが昨季失ったものという感じであった。

試合結果

2024.11.9
プレミアリーグ 第11節
クリスタル・パレス 0-2 フラム
セルハースト・パーク
【得点者】
FUL:45+2‘ スミス・ロウ, 83‘ ウィルソン
主審:マイケル・サリスベリー

第12節 アストンビラ戦(A)

第13節 ニューカッスル戦(H)

第14節 イプスウィッチ戦(A)

第15節 マンチェスター・シティ戦(H)

第16節 ブライトン戦(A)

第17節 アーセナル戦(H)

第18節 ボーンマス戦(A)

第19節 サウサンプトン戦(H)

第20節 チェルシー戦(H)

第21節 レスター戦(A)

第22節 ウェストハム戦(A)

第23節 ブレントフォード戦(H)

第24節 マンチェスター・ユナイテッド戦(A)

第25節 エバートン戦(H)

第26節 フラム戦(A)

第27節 アストンビラ戦(HA)

第28節 イプスウィッチ戦(H)

第29節 ニューカッスル戦(A)

第30節 サウサンプトン戦(A)

第31節 ブライトン戦(H)

第32節 マンチェスター・シティ戦(A)

第33節 ボーンマス戦(H)

第34節 アーセナル戦(A)

第35節 ノッティンガム・フォレスト戦(H)

第36節 トッテナム戦(A)

第37節 ウォルバーハンプトン戦(H)

第38節 リバプール戦(A)

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