エバートン、24-25シーズンの歩み。
第1節 ブライトン戦(H)
若き指揮官はロケットスタートを決める
功労者であるデ・ゼルビに別れを告げ、31歳のヒュルツェラーと新しいチャレンジに臨むこととなったブライトン。年下の指揮官のチームの記事を書くのはあまりない経験である。
戦い方がわかりやすいダイチのエバートンは今季のブライトンのスタイルを観察するのにうってつけであった。ロングボールベースのエバートンに対しては、ライン間を圧縮しながら潰すように対抗。そのため、DFラインは非常に高い傾向になる。
よって、エバートンの狙い目はロングボールのターゲットのCFの背後。キャルバート=ルーウィンを追い越すように出て行くドゥクレが非常に目立つ立ち上がりとなった。オフサイドにかかることもありながら、時折押し返すことに成功するエバートン。お馴染みのファーに待ち構えるCBを生かしたセットプレーからネットを揺らすが、オフサイドで惜しくもこれは認められなかった。
時間の経過と共に保持が増えるブライトン。ビルドアップは左右に大きく広がる形がベース。SBが長いパスのレシーバーになるのだが、SBからのボールの出しところとして、WGの三笘orミンテ、IH役のペドロorミルナーがそれぞれ内外でレーンを分けながらボールを引き出す。
これまでであればWGは大外固定だが、今季のブライトンは異なるようだ。低い位置まで下がって引き取りつつ、内側にドリブルで運ぶなど、大外との仕上げ役とは少し異なるタスクを背負う形になっている。守備でも逆サイドにボールがあるときにSHまでスライドに行くなど、今季のブライトンのWGはハードワークを課されている。
序盤はスティールを中心にバックスからSBへの長いレンジのパスが安定せず、自陣でのパスミスが多かったブライトンだが、徐々にサイドからの攻勢が安定。特に右サイドのミンテのスピードを生かしたアタックが光る。WG→WGとなった三笘の先制点はこの日のブライトンの狙いが活きたゴールだった。
後半、エバートンはハイプレスの成功からPKを得るが、OFRで取り消し。めっちゃチャンスだったのに笛を吹かれた結果、取り消されてチャンスごとなくなりました!というのはエバートンにとってはかなり不憫なものであった。
逆にブライトンはゲイェの持ち上がりのミスをひっくり返す形で追加点をゲット。ウェルベックがさらにエバートンを突き放すゴールを叩きこむ。
このゴールで意気消沈したエバートン。長いボールの対応で三笘に入れ替わられてしまったヤングが一発退場に追い込まれると試合はさらにブライトンペースに。途中交代のアディングラが仕上げの3点目を決める完勝劇を締めくくる。
欲を言えば終了間際のアヤリのゴールも認めてもらえば満点だっただろうが、これはわずかにオフサイド。とはいえ、ブライトンはまずは好発進。ヒュルツェラーのプレミア初陣は大勝による首位スタートとなった。
ひとこと
序盤は危なっかしかったブライトンだったが、エバートンがもたもたしている間にリズムをつかんだ。
試合結果
2024.8.17
プレミアリーグ 第1節
エバートン 0-3 ブライトン
グディソン・パーク
【得点者】
BHA:25′ 三笘薫, 56′ ウェルベック, 87′ アディングラ
主審:サイモン・フーパー
第2節 トッテナム戦(A)
ド派手な4得点のゴールショーで今季初勝利
開幕節ではレスターに不覚を取ってしまい、3ポイントを手にすることができなかったトッテナム。エバートン戦では何とかして今季初白星を挙げたいところだろう。
立ち上がりからゆったりとボールを持つことになったのはトッテナム。相手のプレスがバックラインまで来ないことをいいことに、ゆったりとボールを持つスタート。内側をきっちり閉じられているため外循環にはなるが、オドベールのお披露目にはちょうどいい流れだったかもしれない。
基本的には対角にパスを飛ばしつつ、マディソンの裏抜けというアクセントも挟むトッテナム。大外からガンガン攻め込むルートを開拓したトッテナムは押し込む流れからセットプレーからチャンスを作っていく展開となる。序盤からピックフォードは大忙しである。
押し込むトッテナムは順当に先制点をゲット。ブロック全体が圧縮されていることを利用し、ビスマのミドルでブロックの外から打ち抜くことに成功する。
ハイラインを手早くひっくり返すことで反撃を狙いたいエバートン。しかしながら、かなり強気のライン設定のトッテナムをなかなかひっくり返すことができずに苦戦が続く。
粘りのセーブを見せていたピックフォードもコントロールミスからトッテナムにプレゼントゴールを献上。逆噴射でさらにリードを広げられてしまうことに。開幕戦であまりうまくいかなかったソンにとっては大きなゴールといえるだろう。
後半はトッテナムが押し込みながら解決策を思案していた前半に比べると、互いに攻めあうという非常にアップテンポな展開に。そうした中でもどちらかといえば優勢だったのはトッテナム。エバートンのバックラインを背走させる機会を作っており、よりクリティカルに敵陣に攻め込むことができていた。
エバートンの巻き返しは選手交代に伴い、中央にマクニールが移動したタイミングから。機動力のあるマクニールに対して、トッテナムの中盤は後手を踏んでしまい、ややエバートンに攻め筋を作ることを許してしまう。
しかしながら、スコアを動かしたのはまたしてもトッテナム。セットプレーからロメロが仕留め、完全に試合を終わらせる追加点を決める。
ゴールショーのトリを飾ったのはソン。カウンターから左サイドを打ち破ると、角度のないところからゴールを仕留めてこの日2点目。速攻からのソンらしい高い決定力で大量得点劇の最後を飾った。
終わってみれば4得点。ホーム開幕戦はド派手なゴールショーでトッテナムが今季初勝利を収めた。
ひとこと
ラインを下げさせられてしまって、ブロックの外から打ち抜かれてしまうとエバートンは苦しい。押し返す手段の薄さも苦しい。
試合結果
2024.8.24
プレミアリーグ 第2節
トッテナム 4-0 エバートン
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:14’ ビスマ, 25‘ 77’ ソン, 71‘ ロメロ
主審:アンソニー・テイラー
第3節 ボーンマス戦(H)
スリリングな逆転劇でまたしてもエバートンは初勝利を逃す
ここまで連敗で最下位に沈むエバートン。ホームで何とか今節は今季初勝利を手にしたいところである。
そんな意気込みが前面に出る形で今節も激しい前プレからスタートしたエバートン。しかし、ボーンマスはハイプレスに落ち着いて対応。2CB+GK+アンカーのクックを使った広いポゼッションからエバートンのプレスを返り討ちにしていく。プレスの捕まえどころが見えないエバートンは徐々に撤退を余儀なくされるように。
しかしながら、ハイプレスが機能しなくてもエバートンが主導権を握れないわけではなかった。この日のボーンマスは4-4-2で構えるものの、ブロックの網目が粗く、ライン間に差し込んだ選手が簡単に前を向ける。
マクニール、ゲイェといった選手の列落ちに対してもフリーズしてしまったボーンマス。降りる中央の選手でギャップを作ると、内側への斜めのランからWGの裏抜けで攻撃を完結させに行く。裏を狙うパスの出し手としてイロエブナムは悪くはなかった。
一方のボーンマスもポゼッションからチャンスメイク。左右に落ちてゲームメイクするクックからボールを散らしつつ、こちらもライン間を除きながら攻略に挑んでいく。初手でエバートンのハイプレスが外されて以降は構える中盤に対して解決策を探る展開となったし、両軍それなりに道を敷くことができた前半だったといえるだろう。
だが、後半の立ち上がりの展開はエバートンに大きく傾く。セットプレーからキーンが早々にネットを揺らすと、その7分後には右サイドの縦関係から抜け出したコールマンがキャルバート=ルーウィンのゴールをアシストする。
2点のリードを得てもなおアグレッシブな姿勢を見せたエバートン。敵陣からボーンマスにプレッシャーをかけていく。苦しくなったボーンマスだが、アタッカーの投入で少しずつ反撃に。特に左のハーフスペースに入り込むシニステラから少しずつテンポを引き戻していく。
エバートンのプレスをひっくり返せるようになったボーンマスは左サイドからのクロスをセメンヨが仕留めて1点差に。この時点で時計の針は87分であった。
だが、このゴールが劇的な逆転勝利のきっかけだった。90分過ぎには後方から飛び出した状態でクックがゴールを仕留めて追いつくと、最後は勢いのままにシニステラがゴール。枚数が揃っておらず、いる人のカバーの意識が希薄なエバートンの守備ブロックを一気に叩きのめす。
2点のビハインドから一気に試合をひっくり返したボーンマス。10分で3点を仕留めるスリリングな逆転劇でグディソン・パークを静まり返らせた。
ひとこと
2点リードで枚数が揃っていないようなクロスの受け方を終盤にすること自体がダイチのエバートンらしくないし、ゲイェのサボりなど失点における個々人のディティールの雑さも今のエバートンの強みと反している感じがする
試合結果
2024.8.31
プレミアリーグ 第3節
エバートン 2-3 ボーンマス
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:50’ キーン, 57‘ キャルバート=ルーウィン
BOU:87’ セメンヨ, 90+2‘ クック, 90+6’ シニステラ
主審:スチュアート・アットウェル
第4節 アストンビラ戦(A)
悪夢が過ぎるエバートンを絶好調のスーパーサブが仕留める
開幕3戦で3連敗。中でも前節はあっという間に2点のリードを溶かしてしまうというパンチのある負け方をしてしまったエバートン。ビラ・パークという難所ではあるが、なんとか勝ち点をもぎ取っていきたいところである。
前節の反省をしたのかエバートンは前からプレスに出ていかないプラン。トップの守備位置は中盤スタートであり、ガッチリとブロックを組む。
引きながらも人についていく形がメインのエバートン。ビラはいつもよりも細かくレーンを変える斜めのランを頻発して少しずつズレを作る。例えば、序盤のハーフスペースに突撃したラムジーがボールを持ちながらサイドに流れて、ハーフスペースに遅れて突撃したティーレマンスがフリーでクロスを挙げたシーンなどは一例と言える。
このように保持からブロック攻略を取り組むビラは優勢。エバートンは時折見せるハイプレスも空振りが続き苦戦する。しかし、先制点はエバートン。その空振り続きのハイプレスでオナナを咎めることに成功すると、マクニールがタイミングを外す技ありのシュートでマルティネスが守るゴールマウスを撃ち抜く。
さらには、エバートンはセットプレーから追加点まで手にする。自慢の打点の高さを発揮したキャルバート=ルーウィンがセットプレーからネットを揺らし、リードを広げる。ここまでは前節と同じシナリオだ。
追いかけるビラは前半のうちに1点を返す。左サイドからのふわっとしたクロスをワトキンスが叩き込み追撃。ようやくエースが目覚めてゴールを決めた。
後半、アストンビラはバークリーが登場。前節も登場とともに左右に動かしながらポゼッションの礎を取り戻したバークリーは今節もビラに安定をもたらす。オナナは前半に痛めるシーンもあったため、完全にタクティカルな交代とは言えないが、少なくとも実際の効果としてポゼッションの傾向に変化はあった。
押し下げられるのを嫌がるエバートンはプレスを強めるが、ここはアストンビラが一枚上手。押し込みながらエバートンのブロック攻略を狙っていく。それであればということでエバートンはキャルバート=ルーウィンのカウンターで少ない手数で押し下げにいく。エバートンが縦に速い選択をした結果、少しずつ展開はアップテンポになっていく。
オープンな状況でスコアを動かしたのはアストンビラ。左サイドからのクロスに反応したハリソンが不運な形でゴールをアシスト。前節に続いてエバートンは2点のリードを溶かしてしまう。
このゴールでエバートンのイレブンは完全に意気消沈。自陣から出ることができない状態が続き、ひたすら耐える展開に。そのエバートンとは対極であるノリに乗っているデュランがこの試合のマッチウィナー。衝撃のミドルを叩き込み、これで途中出場の3試合でゴールを決めたこととなった。
落ち着いて逆転勝利を引き寄せたアストンビラとまたしても2点差からの逆転負けを喫したエバートン。ダイチにとっては代表ウィーク明けも苦しい状況が続くこととなってしまった。
ひとこと
ビラの2点目でエバートンの心が折れる音が聞こえてきたような試合だった。
試合結果
2024.9.15
プレミアリーグ 第4節
アストンビラ 3-2 エバートン
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:36′ 58′ ワトキンス, 76′ デュラン
EVE:16′ マクニール, 27′ キャルバート=ルーウィン
主審:クレイグ・ポーソン