MENU
カテゴリー

「Catch up Premier League」~Match week 1~ 2024.8.16-8.19

目次

マンチェスター・ユナイテッド×フラム

理想的な自己紹介でユナイテッドがオープニングを飾る

 24-25のプレミア開幕を告げる一戦はオールド・トラフォードから。ユナイテッドがホームにフラムを迎える試合である。

 立ち上がりからボールを持つ機会が多かったのはユナイテッド。2人のCBに加えて、カゼミーロもしくは片方のSBが入る形で3バックに変形する。カゼミーロが落ちる時はメイヌーをアンカーとする3-1-6、どちらかのSBがバックスに入る時は3-2-5。ビルドアップの枚数を流動的に変えながら相手を動かしていく。

 フラムは冷静な対応。バックラインには無理にプレスに行かず、縦と横にコンパクトな守備でユナイテッドを迎え撃つ。ライン間へのパスは厳しく挟み込みをしていたし、サイドに人を多くかけるユナイテッドの攻撃に対しても4-4-2の陣形を大きく崩さないまま圧縮することに成功していた。

 保持に転じた際には右サイドのトラオレを使ったカウンターが軸となる。スピードはさすがであるが、仕上げのところが物足りないといういつものトラオレらしい陣地回復であった。

 自陣からのビルドアップではショートパスを軸に降りてくる中盤に縦パスをつける場面がしばしば。ユナイテッドはフラムと同じく4-4-2で構えることが多かったが、降りていく選手にはかなり積極的についていく。フラムは背中にマークを背負っているマーカーにもボールをつけてしまうため、保持での安定感はかなり怪しいものがあった。バックスの中でこの人にボールを預けておけばOKという人はおらず、レノのパスミスから決定的なピンチを迎えることもあった。

 しかしながら、縦パスの刺す場所としてはムニスは別格。ユナイテッドのCBが捕まえきれない9番にボールを届けることができれば左右への展開からクロスまで視野に入れることができそうなフラムの攻撃であった。

 優勢だったのはどちらかといえばユナイテッドだろう。しかしながら、前線のポジションを自在に入れ替える効果は限定的。22分のマズラヴィの瞬間的な列上げや、34分のルキッチを釣り出してのワンツーでの中央突破など単発で効きそうなものはあったが、外に流してファーにラインを下げるようなクロスを狙う形はフラムが十分に対応できるものであった。逆にいえば、パリーニャがいなくなったフラムがそれだけきっちりと締めるところの優先度を決めながら対応できたということだと思う。

 後半も保持でユナイテッドが解決策を探る立ち上がり。ハイプレスに出ていき、フラムの自陣でのミスを探るなど保持と非保持の両面で得点を狙っていく。

 前半よりも存在感を増したのは左の大外のラッシュフォード。大外で起点となることでマウントのボックス内の侵入やメイヌーのミドルを誘発する。

 フラムのベースとなるのはトランジッション。前半より前がかりになったユナイテッドに対して、カウンターから時には数的優位の場面を作るときも。しかしながら、ペレイラやトラオレなど個々の判断がカウンター完結の障害になり、攻め上がり時の数的優位を思ったようにシュートにつなげることができなかった。

 トランジッション局面が増えることでユナイテッドも前線の交代を行うが、交代した選手がなかなか存在感を示すことができず。アタッキングサードのクオリティで難を抱える両チームは徐々にジリジリとした展開を迎えることとなる。

 そうした状況で一発回答を見せたのは新加入のザークツィー。自陣深い位置まで下がることで前進のスイッチを入れたブルーノに連動するように中盤に下がりサイドに展開すると、遅れてボックス内に入りワンタッチで貴重な先制点を決める。

 フラムのバックスはファーの山なりのクロスもグラウンダーの速いクロスにもどちらにもかなりシャープに対応していたが、ボックス内にマクトミネイという最終兵器がいたこともあり、遅れて入ってきたザークツィーへのチェックが間に合わなかった。

 以降はユナイテッドがきっちりと時間を使ってゲームクローズ。新加入ストライカーがいきなり結果を出すという理想的な形で開幕戦を飾ることとなった。

ひとこと

 ゴールの場面はザークツィーらしい中盤での関与とフィニッシャーとしての両面の働きが見える。オールド・トラフォードの観客への自己紹介としてはかなり理想的なものだった。

試合結果

2024.8.16
プレミアリーグ 第1節
マンチェスター・ユナイテッド 1-0 フラム
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:87‘ ザークツィー
主審:ロベルト・ジョーンズ

イプスウィッチ×リバプール

裏の駆け引きの精度で上回り就任初陣を制する

 一時代を築いたユルゲン・クロップに別れを告げ、新監督にアルネ・スロットを迎えたリバプール。その初陣は23年ぶりにプレミア復帰を果たしたイプスウィッチのホームスタジアムであるポートマン・ロードからのスタートだ。

 立ち上がり、リバプールはゆったりとした保持からスタート。アレクサンダー=アーノルドがインサイドに入り、アンカー役のグラフェンベルフをサポートするという昨季も見られた形であった。強いていえばマック=アリスターとグラフェンベルフが位置を入れ替えてプレーすることを普通に行っていたのがオリジナリティかもしれないが、これはアンカーの位置にグラフェンベルフが入ったというパーソナティによるものかもしれない。

 イプスウィッチはバーンズが列を下げ、トップ下のチャップリンがサイドを埋めるなど、序盤は自陣をきっちり埋めるモードかと思われた。しかしながら、以降は枚数を合わせて高い位置からのプレスに出ていくように。序盤のフィーリングは悪くなかったが、1枚目の警告が早々に出るなど後方の同数受けはやや無理が出てくる。徐々に裏に走るサラー、降りてくるジョッタ、陣地回復をするディアスといった面々にハイラインを突かれるようになる。

 イプスウィッチも前3枚が同数や数的優位でカウンターに打って出る場面もあったが、そこから1本有効打となるパスが繋がらず。ミスになってしまったり、コネることでスローダウンしてしまったりなど、シュートを打ち切ることができない場面が目立つ。

 むしろ、そうした状況に漬け込んだ感があるリバプール。定点保持よりもファストブレイクの方が効果的だった前半ではイプスウィッチの精度の低いカウンターは、自分たちの速いテンポでの攻撃の養分。前3枚の陣地回復力を生かした速攻とセットプレーをベースに前半はチャンスを作ったリバプールだった。

 迎えた後半、ゆったりとボールを持つリバプールに対して、カウンターベースで対抗するイプスウィッチ。そうした中で左サイドの突破からイプスウィッチはあわやPKというシーンを迎える。だが、これは左サイドを抜け出した際のデイビスのオフサイドで検証されることはなかった。

 この場面のようにハイライン破りにおけるオフサイドはこの試合の命運を分けたように思える。サイドから抜け出したと思っても、ラインを上げられてオフサイドに引っかかり続けたイプスウィッチと、ラインの駆け引きに関してはほぼノーミスで出し入れができたリバプールでハイラインの攻略の精度には差が出ていた。

 というわけでファストブレイクの精度で上回ったリバプールが先制。サラーのラインブレイクからジョッタのヘッダーでゴール。スロット政権での初ゴールを仕留める。さらにリバプールはまたしてもサラーの裏抜けから今度は自身がゴールを決めて追加点を奪いきる。

 ゴールを奪われるのであれば出て行きたいところではあるが、裏の駆け引きが完敗という事情もあり、イプスウィッチは出て行けば行くほど苦しむというジレンマに悩まされていた感があった。3失点目に至らなかったのはGKのウォルトンの奮闘によるものであり、いつ更なる失点を喫してもおかしくはなかった。

 スロットの初陣を制したリバプール。23年ぶりのプレミア帰還を果たしたイプスウィッチを下してリーグ戦好発進だ。

ひとこと

 本文で述べた通り、前線とバックスの駆け引き勝ち。

試合結果

2024.8.17
プレミアリーグ 第1節
イプスウィッチ 0-2 リバプール
ポートマン・ロード
【得点者】
LIV:60‘ ジョッタ, 65’ サラー
主審:ティム・ロビンソン

アーセナル×ウォルバーハンプトン

ミスにつけこませずに開幕戦を飾る

 レビューはこちら。

 昨年は最後までタイトルレースに食らいついたものの、2位という結果に終わったアーセナル。反撃を期す今季はウルブスをホームに迎えての一戦からスタートとなる。

 立ち上がりが過ぎると落ち着いてボールを持つことに成功したアーセナル。ゆったりとした保持から前進のルートを探っていく。この日のアーセナルのポイントはウルブスの4-4-2のそれぞれのライン間を広げること。特にFW-MFの間の選手が出たり入ったりすることでウルブスの2列目を動かし、意図的にスペースを空けることである。

 その中でも象徴的だったのはサイドに流れるライスやウーデゴールの動き。ライスはサイドに流れることでSHのヒチャンの背後に立つことでプレスを回避する。さらには、CHのジョアン・ゴメスを引き付けることで中央のスペースを空けてトーマスやジンチェンコにスペースを供給していた。

 ウーデゴールはレミナががっちりとマンツー。どこまでもついてくるので、むしろこちらの方がアーセナルとしては利用しやすい動きだった可能性もあるだろう。トーマスとのスイッチやサカのインサイドへの絞りを誘発し、スペースを作るウーデゴールの働きもまたアーセナルの助けになっていた。

 押し込むことができたアーセナルはシンプルなクロスから先制点をゲット。セットプレーの流れから前線に残っていたガブリエウを囮にニアに飛び込んだハヴァーツが先制ゴールを決める。

 反撃に出たいウルブスだがプレスに出て行けば全体の陣形は間延びして相手の思うツボ。高い位置から厳しくプレスに来る序盤のアーセナルも、得点を決めてラインを下げてブロックを組むアーセナルにもどちらに対しても明確なゴールに対するアプローチを打つことができず。唯一、トーマスやサリバのミスが絡めばチャンスを作れる状態だったが、貴重なラーセンの決定機はラヤのファインセーブに阻まれてしまい追いつくことができなかった。

 後半もウルブスは広く使いながらアーセナルを攻め立てに行くが、アーセナルもブロック守備からのカウンターで反撃。ミス以外にはウルブスに付け入る隙をなかなか与えないまま時計の針を進めていく。

 どちらにもなかなかクリーンなゴールチャンスが生まれないジリジリとした展開の中で先に状況を動かしたのはまたしてもアーセナル。右サイドでトーマスのクイックリスタートを受け取ったサカがカットインからニアを抜く強烈なシュートをお見舞い。決定的な2点目を決める。

 瞬間的な輝きを見せたサカが1ゴール、1アシストで勝利に大きく貢献。悲願達成の一歩目としてアーセナルは上々のスタートを切った。

ひとこと

 堅さが光るアーセナル。できれば、昨季序盤戦も苦しんだミスはもう少し減らしていきたいところだろう。

試合結果

2024.8.17
プレミアリーグ 第1節
アーセナル 2-0 ウォルバーハンプトン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:25′ ハヴァーツ, 74‘ サカ
主審:ジャレット・ジレット

エバートン×ブライトン

若き指揮官はロケットスタートを決める

 功労者であるデ・ゼルビに別れを告げ、31歳のヒュルツェラーと新しいチャレンジに臨むこととなったブライトン。年下の指揮官のチームの記事を書くのはあまりない経験である。

 戦い方がわかりやすいダイチのエバートンは今季のブライトンのスタイルを観察するのにうってつけであった。ロングボールベースのエバートンに対しては、ライン間を圧縮しながら潰すように対抗。そのため、DFラインは非常に高い傾向になる。

 よって、エバートンの狙い目はロングボールのターゲットのCFの背後。キャルバート=ルーウィンを追い越すように出て行くドゥクレが非常に目立つ立ち上がりとなった。オフサイドにかかることもありながら、時折押し返すことに成功するエバートン。お馴染みのファーに待ち構えるCBを生かしたセットプレーからネットを揺らすが、オフサイドで惜しくもこれは認められなかった。

 時間の経過と共に保持が増えるブライトン。ビルドアップは左右に大きく広がる形がベース。SBが長いパスのレシーバーになるのだが、SBからのボールの出しところとして、WGの三笘orミンテ、IH役のペドロorミルナーがそれぞれ内外でレーンを分けながらボールを引き出す。

 これまでであればWGは大外固定だが、今季のブライトンは異なるようだ。低い位置まで下がって引き取りつつ、内側にドリブルで運ぶなど、大外との仕上げ役とは少し異なるタスクを背負う形になっている。守備でも逆サイドにボールがあるときにSHまでスライドに行くなど、今季のブライトンのWGはハードワークを課されている。

 序盤はスティールを中心にバックスからSBへの長いレンジのパスが安定せず、自陣でのパスミスが多かったブライトンだが、徐々にサイドからの攻勢が安定。特に右サイドのミンテのスピードを生かしたアタックが光る。WG→WGとなった三笘の先制点はこの日のブライトンの狙いが活きたゴールだった。

 後半、エバートンはハイプレスの成功からPKを得るが、OFRで取り消し。めっちゃチャンスだったのに笛を吹かれた結果、取り消されてチャンスごとなくなりました!というのはエバートンにとってはかなり不憫なものであった。

 逆にブライトンはゲイェの持ち上がりのミスをひっくり返す形で追加点をゲット。ウェルベックがさらにエバートンを突き放すゴールを叩きこむ。

 このゴールで意気消沈したエバートン。長いボールの対応で三笘に入れ替わられてしまったヤングが一発退場に追い込まれると試合はさらにブライトンペースに。途中交代のアディングラが仕上げの3点目を決める完勝劇を締めくくる。

 欲を言えば終了間際のアヤリのゴールも認めてもらえば満点だっただろうが、これはわずかにオフサイド。とはいえ、ブライトンはまずは好発進。ヒュルツェラーのプレミア初陣は大勝による首位スタートとなった。

ひとこと

 序盤は危なっかしかったブライトンだったが、エバートンがもたもたしている間にリズムをつかんだ。

試合結果

2024.8.17
プレミアリーグ 第1節
エバートン 0-3 ブライトン
グディソン・パーク
【得点者】
BHA:25′ 三笘薫, 56′ ウェルベック, 87′ アディングラ
主審:サイモン・フーパー

ニューカッスル×サウサンプトン

想定外の展開で3ポイントを確保する

 早い段階でイサクやギマランイスへのオファーをブロックする方針を打ち出し、RC行使以外には断固とした姿勢で欧州カップ戦に再チャレンジするための24-25シーズンを迎えたニューカッスル。開幕戦の相手はプレーオフを勝ち上がり、20枠目として1年でのプレミア復帰を果たしたサウサンプトンだ。

 立ち上がりは非常にバタバタとした展開。高い位置からのプレスにやってくる相手に対して、ニューカッスルはボールをつなぎながら、サイドからの押し上げを狙っていく。しかしながら、テンポが速くボールをつなぐ際にはミスが目立つ展開となった。

 保持面が安定しないニューカッスルは非保持に回るとそこまで強烈なプレスにはいかず、自陣できっちりと陣形を組む。4-5-1のブロックに対して、サウサンプトンは3バックをベースに大きく左右にボールを動かしながら勝負を仕掛けていく。

 キーポイントはサウサンプトンがニューカッスルの中盤5枚を越えられるかどうか。ここを問題なく超えることができれば、サウサンプトンは押し込めるし、跳ね返されればニューカッスルからカウンターが飛んでくるという状況。ニューカッスルはカウンターからセットプレーが主な攻め筋である。

 サウサンプトンはニューカッスルの中盤を越えて、セットプレーから先にネットを揺らすが、これはオフサイド。アリボのキャリー→ブレアトンの抜け出しなど、中央に入っていった先に解決策を見つけることもあった。

 異なる手段でゴールを探っている中でブレアトンとシェアの乱闘が勃発。これにより、シェアが退場したニューカッスルは前半の内に10人で戦うことを余儀なくされる。

 ニューカッスルは4-3-2という攻撃的な布陣で対抗。ボールを持つ時間を長くするサウサンプトンだが、ニューカッスルが押し返してきたタイミングで痛恨のエラー。つなぎのパスミスを拾われ、ジョエリントンに先制ゴールを叩き込まれてしまう。

 後半、サウサンプトンは菅原に代えてエドジーを投入。よりアタッカー色の強いワイドプレイヤーでニューカッスルの4-3-2を壊しに行く算段だろう。後半は4-3-2では抑えにくい外からの押し下げを重視。特に左サイドを軸に抜け出す選手をきっちり作ることで前半以上にニューカッスルに押し込まれる展開を作る。

 アームストロング、ブレアトンと実際に決定機を作る場面も。しかしながら、ホールやポープのギリギリの対応でゴールを許さない。

 形としては悪くないニューカッスルはアタッカーを増員で畳みかけ。アーチャーの投入でボックス内の圧力を高めていくと、ベドナレクに代えてアルカラスを入れる采配で総攻撃に打って出る。

 だが、この総攻撃をローブロックでしのぎ切ったニューカッスルが逃げ切りに成功。10人で45分以上を耐え忍び、苦しみながら勝ち点3を手にした。

ひとこと

 思っていたのとは違う3ポイントだけど、ニューカッスルは上々のスタートといえるだろう。

試合結果

2024.8.17
プレミアリーグ 第1節
ニューカッスル 1-0 サウサンプトン
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:45‘ ジョエリントン
主審:クレイグ・ポーソン

ノッティンガム・フォレスト×ボーンマス

崩し切るミッションを達成し開幕戦での敗戦を回避


 昨年はギリギリのところで降格を回避したフォレスト。ここ数年は残留争いとは無風のシーズンが続いているボーンマスとの開幕戦を迎える。

 アグレッシブなスタイルから勝負するのが昨季の持ち味だったボーンマス。今季も前からのプレッシングでフォレストのバックスに圧力をかけていく。フォレストも非保持に回れば機を見てプレスに出て行く。ボーンマスはこれに対して、積極的に長いボールを蹴ることで応戦。試合はバタバタとしたスタートとなった。

 そうした中で起きてしまったのはアクシデンタルなダニーロの大怪我。おそらく長い期間の離脱になると考えられるが、一日も早くピッチに戻ってくることを祈りたい。

 この出来事でプレッシングはクールダウン。試合のテンポは少しずつ落ち着いていくようになった。保持で時間を作ることができるようになった両チームはそれぞれポゼッションからの解決策を求められるようになる。

 先に解決策にたどり着いた感があったのはフォレストだった。CBが広がり、ゆったりとボールを持つと狙いを定めたのは左サイドのDF-MF間のハーフスペース付近。このスペースに入った選手に縦パスを入れて起点として活用。そこからのコンビネーションでボックス内に迫っていく。

 先制点はまさにこの形であった。エランガとイエ―ツのコンビネーションからボックスに侵入すると、イエ―ツのシュートのこぼれをウッドが押し込んで先制。フォレストが先に試合を動かす。

 先制点以降もフォレストはこの周辺のスペースを狙いながらの前進を敢行。大外のハドソン=オドイも含めて、フォレストが狙いを定めた左サイドから奥を取るアクションはボーンマスの攻略にとても効いていた。

 その一方でボーンマスは苦戦。ソランケ不在の前線は簡単に長いボールが収まらず。せっかくセットプレーからゴールに押し込んでもオフサイドの判定で取り消しなどツキもない。前半の終盤にようやくサイドからワッタラ、セメンヨを軸に攻めることで押し下げることができたが、同点ゴールを手に出来ないまま前半を終える。

 迎えた後半もペースは同じ。追いかけるボーンマスがフォレストの2トップの脇から前進のルートを探り、フォレストはきっちりとローブロックでこれを受ける。保持に転じたら左サイドのハドソン=オドイで広げながらライン間の攻略を狙うという風情であった。

 リードしているフォレストはセットプレーからの決定機を迎えるなど、追加点のチャンスもあったがネトのファインセーブがあり、仕留めることができない。すると、終盤にボーンマスは左サイドからの切り崩しに成功。抜け出したクリスティからの折り返しを仕留めることで成功し、終盤に同点に追いつく。

 押し込むフェーズでの解決策に最後の最後でたどり着いたボーンマス。土壇場で勝ち点1をもぎ取り、開幕戦での敗戦を免れた。

ひとこと

 リードをしながら終盤でポイントを落とすというのはフォレストの昨季数多く見られたムーブ。癖にならなければいいが。

試合結果

2024.8.17
プレミアリーグ 第1節
ノッティンガム・フォレスト 1-1 ボーンマス
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:23’ ウッド
BOU:86‘ セメンヨ
主審:マイケル・オリバー

ウェストハム×アストンビラ

交代選手で引き寄せた得点パターン

 実力者の数多くの補強でメルカートでは注目チームとなっているウェストハム。開幕戦はCLにチャレンジするアストンビラをホームに迎えての一戦である。

 序盤から縦にボールを刺し続けるポンポンとした展開。そうした中であっという間にアストンビラがセットプレーから先制する。ボックス付近の選手たちが手前に引き、空いたところにオナナが飛び込むことで先制。飛ぶ前に助走をつけてジャンプしてきたオナナは止めようがないという感じであった。

 以降も優勢だったのはビラ。ライン間に入るロジャーズを出口にして、一気に加速をしてゴールに向かっていく。パウ・トーレスの持ち上がりも含めて、ウェストハムの間延びした中盤にアプローチすることで攻撃を仕掛ける。

 一方のウェストハムはゆったりとした保持から。パケタやギド・ロドリゲスが1列ずつ降りるなど後方に枚数を揃えて、手前に引くことでギャップを作りにいく。パケタのズレたスペースに絞ったクドゥスなどが代表例だ。

 しかしながら、強引な縦パスはビラのブロックにつかまっていた印象もあったし、トップのアントニオを始めとして裏への動きが少ないので、ライン間を広げることもできず。そうして狭いスケールでのスペースメイクに終始した印象だった。

 それでも劣勢だったウェストハムは前半の内に追いつく。前線に飛び出したソーチェクの力技でPKというまるでモイーズ政権のような攻め筋で決定機を獲得。これを仕留めてハーフタイムの内に追いつく。

 ビラはできればもう少し引き付けながらプレー出来れば試合をさらに優勢に進められたのだろうが、この日はライン間に入れるスピードがかなり早く、前線の打開力に依存していたように思えた。バックスで引き付けるリスクを負いにくかったのはひょっとすると、早くて強引なゴールでも収めてくれるワトキンスの不調もあったからかもしれない。

 後半は前半よりは引き付ける動きはあったが、昨季のような疑似カウンターといえるほどウェストハムを自陣に引き寄せることはできず。この辺りはウェストハム側のプレス意識も絡んでくる話なので、一概にビラの粘りが足りないという話ではないのかもしれない。

 同点に追いついたウェストハムはゆったりとした保持から深さを作るアントニオ+高い位置に入り込むソーチェクでビラのボックス内に侵入する。前半の終盤の力技を生かした流れである。

 終盤戦の行方を決めた感があったのは交代選手。サマーフィル、フュルクルクの投入が決め手にならなかったウェストハムに対して、マートセンとラムジーのコンビで左サイドの攻め手を確立したアストンビラが優位に立つ。

 その左サイドのコンビが抜け出してあげたクロスをデュランが叩き込んでゴール。ビラがリードを奪う。

 終盤は1点差にも関わらず、なかなかテンションが上がらないまったりとした展開が続いたこの試合。そのままビラがリードを守り切り、アウェイでの開幕戦勝利を飾った。

ひとこと

 誘引ビルドの不徹底がこの先のビラにどう効いてくるかは気になるところである。

試合結果

2024.8.17
プレミアリーグ 第1節
ウェストハム 1-2 アストンビラ
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:37‘(PK) パケタ
AVL:4’ オナナ, 79‘ デュラン
主審:トニー・ハリントン

ブレントフォード×クリスタル・パレス

ノーゴール判定で変わった流れをモノにしたブレントフォード

 23-24シーズンにおける終盤戦の主役だったクリスタル・パレス。オリーズこそミュンヘンに旅立っていったが、他の主力はキープに成功。エースのトニーが「総合的な判断」で欠場したブレントフォードのホームに乗り込み、開幕戦の勝利を狙う。

 立ち上がりは一方的なパレスのペースと言っていいだろう。バックスが余裕を持ってボールを持つと、インサイドに差し込みエゼが前を向いて左右に自在に展開。大外を取ったWBを生かして速いクロスをボックス内で入れるという攻撃のテンポにブレントフォードはついていけていなかった。

 さらに状況を悪くしたのはなかなかブレントフォードに前進の見込みが立たなかったこと。トップに残ったウィサはロングボールのターゲットとしては心許ない。だが、ショートパスを繋げばフレッケンがあわや鎌田に咎められてしまうという冷や汗をかく場面も。というわけで立ち上がりはイェンセンがバックラインに入って5バックでパレスを迎撃していたが、徐々にプレスからの陣地回復を模索していく。

 だが、このプレスはさらに事態を悪くする。遅れて出ていくプレスは逆にパレスの縦パスのタイミングの合図に。ライン間のエゼに取っては養分のようなプレスとなってしまった。

 試合の流れを大きく変えたのはエゼの直接FK。ネットを揺らした衝撃的な一撃はヒューズのオブストを取られてしまいノーゴール。さらには主審の笛がネットを揺らす前に吹かれたためにVARも介入することができないものとなってしまった。

 このプレーで一気に流れは変化。その直前からややつなぎからサイドの突破の目処が立ったブレントフォードは右サイドのムベウモの裏抜けから先制ゴールをゲット。カットインからのシュートは十八番パターンなので、シュートに対して後手を踏みやすい体の向きをしていたグエイにとっては悔いの残るプレーであった。

 出ていく必要のなくなったブレントフォードは自陣でのコンパクトな守備に終始。これにより猛威を震っていたエゼは完全に幽閉されることに。さらにはプレスにでも出ていくことができず。得点以降、パレスは反撃の目処が立たないままハーフタイムを迎えることとなった。

 後半もいい入りを見せたブレントフォード。ウィサとムベウモのコンビで右サイドを蹂躙すると、いきなりゴールを脅かしていく。

 対するパレスはロングボールを頻発。オリンピックで合流が遅れているマテタ→エドゥアールの交代はある程度用意されていたものかもしれないが、それでもロングボールを増やした理由としてはやや弱い気もする。

 前半と異なり、インサイドにボールをつけることができず、外への突破の負荷が高まるクリスタル・パレス。サイドに流れたエゼからそういう状態もなんのその!というクロスがガンガン上がるように。そうした中でブレントフォードはピノックがオウンゴールを犯してしまい、再び試合は同点になる。

 以降も左サイドからクロスを積極的に狙っていったパレス。インサイドに起点と作らなくてもなんとかしてしまうエゼの馬力で強引な解決策に辿りつく。このシーン以降も左サイドからのクロスで勝負に出ており、やや力づくでパレスと張り合っていく。

 勝ち越し点を狙うパレスだったが、それをあざ笑うかのように再び前に出るブレントフォード。右サイドからのクロスを起点としたプレーから最後にボールを押し込んだのはウィサ。仕事人ストライカーの一撃からまたしてもリードを奪う。

 以降も、ローブロックを組むブレントフォードに対して、パレスが力づくでの解決策を探る展開。だが、最後までゴールは奪えず。2トップが躍動したブレントフォードが勝利を収めた。

ひとこと

 完全にエゼのFKの判定から流れが変わった感はあるが、それ以前にもきっちりとつなぐトライから反撃の糸口を探っていたことは忘れてはいけない。

試合結果

2024.8.18
プレミアリーグ 第1節
ブレントフォード 2-1 クリスタル・パレス
Gtechコミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:29’ ムベウモ, 76‘ ウィサ
CRY:57‘ ピノック(OG)
主審:サム・バロット

チェルシー×マンチェスター・シティ

先制点で試合をコントロールした王者

 開幕節の大一番。マレスカを指揮官に招いて再建を図るチェルシーが王者のシティをホームに迎える一戦である。

 シティはかなり積極的な立ち上がりだった。前からのプレッシングに動いてチェルシーからボールを取り上げにかかるなど、保持でボールを支配していこうというスタンスが目立つスタートとなった。潰しの観点で言えば目立っていたのはアカンジ。高い位置に出て行く潰しでエンソを封じ、ボールを即座に奪い返す姿勢を体現するプレーを見せていた。

 ビルドアップではいつものようにSBのリコ・ルイスが1列前に上がるポジションどり。3バックをベースとしてボールを動かしていく。エデルソンも絡めたバックラインのパス回しではゴールライン付近スレスレの横パスをつなぐというアクロバティックなパスワークでチェルシーのプレスを回避する。

 前からのプレスは難しそうなチェルシーはミドルゾーンに構える形で迎撃するが、シティはこのブロックを攻略するところから先制。左サイドからの斜めのパスの差し込みをベルナルドがすらして、最後はハーランド。少し難しいコントロールになったが、最後は押し込んでしまうのだから見事である。チェルシーはCHが守備でかなり動き回る分、斜めから入り込んだパスを消し切れない瞬間が生まれてしまった印象だ。

 反撃に出たいチェルシー。GKのサンチェスも加えつつ、コルウィル、ククレジャ、フォファナの3枚をベースにビルドアップを行っていく。グストとエンクンクは1つ前で幅を取る役割で、バックスは先に挙げた3枚が目いっぱい幅を取る形になっていた。

 シティのプレスに対抗できていたかは非常に微妙なところである。ラヴィアを軸に1つプレスを外すことができればワイドや前線に一気にパスが通り、ここからボックス内に向かっていけるが、プレスにハマってしまえば後方で延々とU字でポゼッションを繰り返すことも。

 さらには前にボールを運べたとしても、トップ下にエンソを起用したこともあり、中盤のキャラクターが全員深い位置のゲームメイカー寄りのため、全体の重心が下がってしまう問題があった。エンクンクはサイドでのタスクがあり、ジャクソンは本来の馬力がないという状況。そんな限られたボックス内でのリソースでも全くチャンスはないことはなかったので、チェルシーの後方から出てくるボールの質は高いのだろう。

 迎えた後半も前半と陸続き。前半にリードを得たシティは前プレ要素を減らしながら、堅く堅くブロックを組みながら時計の針を進めていく方向性。チェルシーはラヴィアのプレス回避を起点として、ボールを動かしていくが、前半と同じく前線の厚みが足りておらず、シティの守備に穴を開けることができない。

 ギウ、ネト、デューズバリ―=ホールといった新加入組の投入で攻撃の活性化を図りたいところだが、これで前線の動きはさらに停滞。互いのプレーの理解があまり進んでおらず、探り探りでのプレーが続くことに。

 70分にボール保持のカラーを強めたシティ。前に出て行けないチェルシー相手にゆったりとしたポゼッションでボールを動かしていくと、仕上げはコバチッチのスーパーゴール。2点のリードを手にして試合を完全に終わらせたシティが敵地で開幕戦を飾った。

ひとこと

 チェルシー、悪くはないように思えるけども、どこが強みのどういうチームなのかという自己紹介を早めにしないと、よくわからないまま飲み込まれてしまう怖さもあるなと思った。

試合結果

2024.8.18
プレミアリーグ 第1節
チェルシー 0-2 マンチェスター・シティ
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
Man City:18‘ ハーランド, 84’ コバチッチ
主審:アンソニー・テイラー

レスター×トッテナム

帰還を果たしたヴァーディの一撃で昇格組唯一の勝ち点確保

 首位でチャンピオンシップを制し、プレミアへの1年復帰を果たすというミッションをコンプリートしたレスター。ポステコグルー政権2年目を迎えるトッテナムをホームに迎えて残留という新たなミッションに挑むシーズンが始まる。

 ボールを持つのはトッテナム。2-3-5の形からポゼッションし、4-4-2で構えるレスターを押し込んでいく。3センターは2CHに加えて左のIHにウドジェが入るのが基本線ではあるが、マディソンにスイッチすることも。この辺りは流動性を持たせる形になっていた。

 この左のIHがレスターの2トップの脇に立つことでトッテナムは攻撃の入り口を作れていた感があった。そういう意味ではむしろ、ここに入るのはウドジェよりもマディソンの方がしっくりくる。ここから同サイドを崩し切る、もしくは逆サイドに大きく展開することで攻撃のスイッチを入れていく。

 ミドルゾーンからアタッキングサードに侵入するフェーズはとても良く整っていたトッテナムだが、仕上げの部分が心許ない。左の抜け出しではソンの精度がイマイチ。外すアクションはできているのだが、左足での折り返しが単調だったり、ダイレクトプレーのパスが繋がらなかったりなど、物足りなさが先行する。

 マディソンのサイドチェンジを引き取った右サイドもクルゼフスキがいないこともあり、そこからボックス内に有効なクロスを入れることができなかった。そうした中で得たシュートのチャンスもことごとくハーマンセンの正面。チャンスを生かせない。

 レスターは自陣深くまで下げられてしまうので前進はとても苦しい。右に流れたブオナノッテが根性で時間を作りにいくが、とてもゴールに近づけるまで持っていけるシーンはなし。陣地回復すら困難という感じであった。

 しかしながら、トッテナムが攻めながらもリズムを崩す時間帯に突入したため、ここからどう転ぶかが非常に大事な25分過ぎ。スコアを動かしたのはトッテナム。お馴染みの2トップ脇を起点としたマディソンからボックスにクロス。ソランケで固定されたバックラインに遅れて突撃するという巧みさを見せたポロがトッテナムに今季初のゴールをもたらす。

 レスターはプレスを強め、少しずつ高い位置からボールを奪えるように。しかしながら、奪った後のプレーの精度がついてこず。シュートはリードのロングシュート1つのみで前半を終えることとなった。

 後半もボールを持つのはトッテナム。右サイドにマディソンが顔を出すなど、味を変えながら敵陣に迫っていく。押し込むことはできていた立ち上がりのトッテナムだがボックス内での急ぎすぎな選択が目立ち、レスターのシュートブロックにかかる場面もあった。

 レスターも前プレスから少しずつ店舗を掴めるように。すると、早々に成功体験をゲット。一本道での苦しいカウンターになることが多かったが、左サイドにエンディディとクリスチャンセンが粘りを見せてクロスを入れると、最後は逆サイドからのクロスにフリーのヴァーディがゴール。試合を振り出しに戻す。

 このゴールを機に前に出ていくレスター。エンディディが前プレに連動して圧力を高めると、トッテナムがこれに屈して自陣でのパスミスが増えるように。レスターはここから一気にチャンスを増やしゴールに迫っていくように。トッテナムはひっくり返せば敵陣に一気に侵入できるが、トッテナム一色という前半のムードとは明らかに違う展開になった。

 ベンタンクールの負傷、そして両チーム合わせて6枚の交代で試合は80分を前にリセット。ベリヴァルが左右に流れながらボールに触り、トッテナムにリズムをもたらしたかのように見えたが、下手なロストからの大ピンチでヴィカーリオのお説教を招くと、レスターもチャンスを作れるように。

 前半と異なり、終盤のもつれた展開でスコアを引き戻したレスターが引き分けをもぎ取ることに成功。昇格組の中で唯一開幕戦で勝ち点を取ることとなった。

ひとこと

 前半に複数リードを取れなかったトッテナム。時間が立つにつれて落ち着いて対応するレスターのバックスが印象的だった。

試合結果

2024.8.19
プレミアリーグ 第1節
レスター 1-1 トッテナム
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:57′ ヴァーディ
TOT:29‘ ポロ
主審:クリス・カバナフ

今節のベストイレブン

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次