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「Catch up Premier League」~Match week 37~ 2025.5.16-5.20

目次

アストンビラ【6位】×トッテナム【17位】

このルートはビラのもの

 CL出場権争いではフォロワーとなるアストンビラ。ELルートからのCL出場にフォーカスしているトッテナムを叩き、最終節に望みをつなぐことが求められる一戦となる。

 序盤からペースを握ったのはホームのアストンビラ。トッテナムはハイプレスに出ていきたそうな姿勢を見せるが、主に右サイドがしっちゃかめっちゃかでボールホルダーをちっとも捕まえることができず。ということで早々にプレスを諦めてビラのバックラインにはボールを持たせてOKというスタンスに変容する。

 ボールを持つアストンビラは両SBを高い位置に構えさせる形で組み立ては2CBと2CHが中心。3-1に変形する形を作り、広がったCBからボールを運ぶことを狙う。左サイドを運ぶパウ・トーレスにどのように対応するかが迷子だったトッテナムはここからチャンスをガンガン作ることを許してしまうことに。

 押し込まれるトッテナムは左サイドからのファストブレイクが生命線。トランジッションからのソンという往年のスタイルにトップ下に入ったオドベールが加勢する形で反撃に出ていく。序盤はこの左サイドからの反撃は少し苦し紛れではあったが、徐々に板についてきたことでカウンターからアストンビラに脅威を与えるシーンが少しずつ出てくる。

 広いスペースを守るとなると難があるため、トッテナムも完全にペースを握ったわけではない。だが、序盤の一方的な劣勢をハーフタイムまでに少しはフラットに戻すことができた手応えはあったかもしれない。

 後半、アストンビラは前半の立ち上がりのように左サイドのパウ・トーレスからの進撃。一方的に押し込んでいく形に。ハイプレスでもトッテナムよりも高い完成度からチャンスを作っていく。

 押し込む局面を作ったアストンビラはCKから先制。折り返しをコンサが沈めてリードを奪う。トッテナムはテルやデイビスの受け渡しの甘さによって、コンサに信じられないくらいスペースを与えて気持ちよくシュートを打たせてしまった。

 このゴールでアストンビラは一気に畳み掛けるスイッチを入れて勝負を仕掛けていく。トッテナムは前半の生命線となっていた左サイドの陣地回復もキレ落ち。反撃のチャンスがない状態に。

 次のゴールは試合の展開の流れるままに。押し込んだ局面からビラが追加点。カマラのゴールは素晴らしいものであったが、守備側のホルダーへのチェックの緩さが目立ったのは事実だ。

 後半は緊張感が持たなかったトッテナム。この試合の優先度の差がきっちりとスコアに反映された結果となった。

ひとこと

 後半は一方的な展開。この試合における勝利の必要性の差が見えた展開となった。

試合結果

2025.5.16
プレミアリーグ 第37節
アストンビラ 2-0 トッテナム
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:59′ コンサ, 73′ カマラ
主審:ピーター・バンクス

チェルシー【5位】×マンチェスター・ユナイテッド【16位】

両SBの素晴らしい連携で勝負は最終節へ

 ELのファイナリストとなっているユナイテッドとトッテナムは早めの第37節。そのスケジューリングに巻き込まれたのはCL出場権を争っている只中の2チーム。チェルシーとアストンビラは全く異なるルートでCL出場権を狙うチームと対峙することとなる。

 序盤からボールを持つ相手に対して前からプレスに出ていく両チーム。チェルシーはカイセドのキャリーからの脱出などハイプレスに真っ向勝負での回避を狙っていくが、ジャクソンというターゲットがいない分、ロングボールで逃げるプランが不安定。早めに捕まえにいく形が成功するとペースはユナイテッドに流れることとなる。

 ユナイテッドは外を回してじっくりと押し下げる形から進んでいく。アタッキングサードでの迫力不足はやや感じたが、それを補ったのはセットプレーの攻め残りとなったマグワイア。左サイドからのクロスを叩き込んでネットを揺らすが、これは惜しくもオフサイドとなった。このゴールで勢いに乗ったユナイテッドは左サイドから奥を取る形を少しずつ増やしながらチャンスメイクをしていく。

 マグワイアのシュート前後の時間を凌いだチェルシーは反撃開始。サイドで深い位置をとるとマイナスのクロスからのミドルでチャンスを作っていく。ユナイテッドの跳ね返しもハイラインで迎撃し、少しずつ一方的な時間を増やしていく。

 終盤はチェルシーペースとなったこの試合。マドゥエケからのパスを受けたパーマーのやや間合いを外すシュートをオナナが止めてハーフタイムを迎える。

 後半に存在感を増したのはホイルンド。左右に流れて縦パスを差し込むことで前半とは異なる起点の作り方にトライしていく。ただ、ボックスが近づくとホイルンドは無駄なタッチの多さからチャンスを潰してしまう場面もあり、働きとしては一長一短という感じであった。

 リトリートする場面を増やすユナイテッドに対して、カイセドのラストパスからジョージがPKを獲得するが、これはOFRで取り消し。まぁ、取り消しは妥当だとは思うが、もう少しCBがカバー範囲を広く持って欲しいなという気持ちもあった。

 そんな危ういボックス内での対応は70分に決壊。右サイドからジェームズが華麗な身のこなしでクロスを上げると、ボックス内に入り込んだククレジャが先制ゴールをゲット。この時間でリードを奪い取る。

 チェルシーはやや試合運びが定まらなかった感があるが、カイセドが強引に単独プレスを仕掛けて全体を引き上げてプレスを起動させることでなんとか方向性は収束。後ろの選手を増やす用兵とは逆に前がかりな姿勢で試合をクローズしていく。

 逃げ切りに成功したチェルシー。CL出場権に向かってラストゲームにきっちりのぞみを繋いだ。

ひとこと

 両SB、素晴らしい仕事だった。

試合結果

2025.5.16
プレミアリーグ 第37節
チェルシー 1-0 マンチェスター・ユナイテッド
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:71′ ククレジャ
主審:クリス・カヴァナー

エバートン【13位】×サウサンプトン【20位】

最終幕は勝利と無失点で

 歴史あるグディソン・パークで迎える最後のプレミアリーグのゲーム。ホームのエバートンとしてはこの試合は是が非でも勝利で飾りたいところだろう。指揮官がモイーズ、そしてRSBにはコールマンが先発と花道としては万全の体制が整っていると言える一戦だ。

 序盤から勢いよくハイプレスで飛び出したエバートン。ロングボールに逃げるサウサンプトンを弾き返し、一方的に押し込んでいく。非保持では中盤をスタートポジションにするサウサンプトンだが、サイドのケアが甘くあっという間に自陣に釘付けの展開に。

 クロスからの千本ノックの様相を呈していた序盤戦。ラムズデールのファインセーブでサウサンプトンも粘りを見せるが、外をフリにインサイドに切り込んだエンジアイが先制ゴールをゲット。ホームの観客の爆発したような歓声で試合はテンションが高まる。

 雰囲気に飲まれたこともあり、この試合はサウサンプトンの出る幕はなし。瞬間的には非保持で自重する姿勢を見せたエバートンだが、保持におけるサイドの押し込みからチャンスを作ると再び一方的に押し込む展開に。

 ベトが右サイドからのクロスを度重なるオフサイドでフイにしてしまったという誤算はあったが、中央を縫うようなパスワークからエバートンはサウサンプトンを真ん中から侵食する。ラムズデールは再び粘る展開を強いられるが、その粘りを再び前半追加タイムにエンジアイが断ち切ることに成功。ハーフタイム直前に再びホームスタジアムを歓声に巻き込んだところで前半を終える。

 後半はエバートンのFKからスタート。リードしているホームチームが早速得点のチャンスを迎えるが、このシーンではネットを揺らすことができず。

 展開としては総じて前半よりはフラットと言えるだろう。プレスに関しては自重気味なエバートンにサイドから押し下げるアクションを見せていく。

 一方のエバートンも保持に回ればサイドからのシンプルクロスで応戦。ベトやドゥクレといったフィジカルモンスターの面々はマークが付いている状態からでも高い位置から叩くことができた。

 しかしながら、後半のメインテーマはそうした試合展開以外のところ。グディソン・パークでの最後の45分を噛み締めるように過ごすことに軸足が置かれている。おそらく契約満了で退団するであろうドゥクレの交代もその一幕だった。

 終盤はサウサンプトンの攻勢をピックフォードが凌ぎ、ラストゲームをクリーンシートで飾るために奮迅。なんとかミッションをコンプリートしたエバートンはグディソンの最終幕を勝利と無失点で終えることとなった。

ひとこと

 噛み締めるような惜しむようなサポーターの表情が印象的だった。

試合結果

2025.5.18
プレミアリーグ 第37節
エバートン 2-0 サウサンプトン
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:6′ 45+2′ エンジアイ
主審:マイケル・オリバー

ウェストハム【15位】×ノッティンガム・フォレスト【7位】

持ち込まれた乱戦を守護神と共に凌ぐ

 金曜日のプレミアリーグの結果はフォレストの思い通りにはならず、アストンビラとチェルシーは仲良く3ポイントの積み上げに成功。CL出場権への道は2連勝の上で他会場次第。まずは最終節に可能性を残すための37節。対するは多くの選手の退団の花道をホームで飾りたいウェストハムだ。

 いきなりにチャンスを迎えたのはウェストハム。右サイドからのクロスに合わせたのは3人目のストライカーのソーチェク。いきなりセルスには大きな仕事がやってくることに。以降も、右サイドでは退団を発表した一人であるコーファルのシュートがチャンスとなるが、こちらもセルスのセーブで事なきを得る。

 一方のフォレストもロングスローからのこぼれをギブス=ホワイトがシュートで狙うなどいきなりアレオラにセーブを強いる。この日のフォレストはとにかくフリーダム。特にエランガのフリーマン化が顕著。右サイドがスタートポジションだと思ったが、ボックス付近の最前線でポストを連発しつつ、最終的には左サイドに移るというアナーキーな仕草を見せる。

 そんなアナーキーなエランガの前向きな矢印でフォレストは先制ゴールをゲット。何回から成功していた前からのプレスでアレオラのミスを誘発すると、ギブス=ホワイトが無人のゴールに流し込む。3ポイントがどうしても欲しいフォレストが試合を動かす。

 以降も、フォレストの無秩序な攻守の配置はウェストハムを翻弄。圧力を生かしてウェストハムを追い込んでいく。

 しかしながらウェストハムもクドゥス、の3枚がナローに構えることで時間をもらえるSBを生かし、大外からのキャリーで押し返していく。ただし、シンプルなクロスはフォレストの攻撃に跳ね返されており、決め手という感じにはならず。試合はフォレストがリードをキープして、ハーフタイムを迎える。

 後半は前半と打って変わってゆったりとしたスタート。攻守の切り替えが明らかにトーンダウンし、探り合うような立ち上がりとなった。

 このままで良くないのはビハインドのウェストハム。4枚交代を敢行し、フォーメーションも4-2-3-1にシフトする。

 しかし、再びスコアを動かしたのはフォレスト。セットプレーからミレンコヴィッチが肩で押し込んで追加点。長い長いVARチェックの末にリードを広げる。

 フォレストは80分の3枚交代で5バックに移行。ウェストハムはボール保持の機会を増やしていく。だが、5バックとはいえ明確に受けに回るわけではないフォレストはあまり綺麗にゲームクロースができず。一方のウェストハムはソレールの進撃から確実にチャンスを作っていく。

 押し込むウェストハムはモラートのクリアが甘くなったところからボーウェンが一撃を仕留めた。このゴールで試合は一気にムードが変わることに。

 追撃ムードに苦しめられることとなったフォレストだが、最後は乱戦に持ち込みつつ再びセルスに祈ることで防衛に成功。およそ15分に及ぶ追加タイムを逃げ切り、最終節に望みを繋いだ。

ひとこと

 絶対、初めの方ウェストハムはそんな必死じゃなかったよね。意地に着火したプレミアのチームは恐ろしい。

試合結果

2025.5.18
プレミアリーグ 第37節
ウェストハム 1-2 ノッティンガム・フォレスト
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:86′ ボーウェン
NFO:11′ ギブス=ホワイト, 61′ ミレンコヴィッチ
主審:サム・バロット

ブレントフォード【8位】×フラム【11位】

交代選手があっという間の逆転劇を演出

 共に近年は中位で立場を確立しつつあるロンドンのチーム同士の一戦。今季も残留争いはどこ吹く風という形で1年を終えた両軍の対戦だ。

 序盤に主導権を握ったのはブレントフォード。際立っていたのは保持よりもプレスの圧力。サイドに誘導する形から一気に相手との間合いを詰めつつ、長いボールを蹴らせて回収というメカニズムを成立させていく。キープができるイウォビ、ロングボールの的になるヒメネスといった収めどころになりそうなところを集中して潰していく。

 敵陣にボールを運んでいくと、右サイドのムベウモからのクロスでチャンスメイク。フラムのラインの背後を狙う形でファー寄りのクロスを入れていく。

 フラムは相手の圧力に苦しみながらも少しずつ敵陣に運ぶシーンを作っていく。なんとかクロスまで持っていくところが精一杯であったが、インサイドでの強さが味方に。16分にパワーヘッダーぶりを見せたヒメネスが先制ゴールをもたらす。

 だが、ブレントフォードもトランジッションから反撃。トラオレの曲芸プレイを奪い取ったムベウモがカウンターへ移行し、スコアをすぐに振り出しに戻す。

 勢いに乗ったブレントフォードはヤルモリュク→シャーデの裏抜けのパスからPKを獲得するが、これをムベウモが決めることができず。前に出る絶好機を逃してしまう。

 それでも縦へのシャープさを失わないブレントフォード。押し込む機会を作ると、前半終了間際に右サイドからのカヨーデのロングスローからウィサがゴールを沈めて逆転に成功する。

 リードをしてもブレントフォードは後半もハイプレスから勝負。トランジッションが増える展開の中でトラオレのファウル奪取からチャンスを対抗していくのがフラムという構図となった。

 後半の立ち上がりが落ち着くと保持の機会を増やしたのはフラム。バックラインのアンデルセンの左右に揺さぶるフィードからチャンスを作っていく。非保持の圧力もアップし、ブレントフォードはショートパスでの繋ぎでプレスを回避することができず。一撃でロングボールでのムベウモから反撃を狙う。

 押し込む状況が増えたフラムで結果を出したのは交代選手。右サイドからのクロスに飛び込んだのはハーフタイムに交代したケアニー。肉弾戦からのゴールというイメージとは異なるプレーで試合を振り出しに。さらに2分後にはウィルソンのミドル。こちらはイメージ通りの一撃で試合はフラムがあっという間にリードを奪う。

 終盤はボックス内での対応が増えたフラムだったが、ブレントフォードの攻勢を凌ぎ切ってゲームクロース。逆転で勝ち点3を手にした。

ひとこと

 交代選手のクオリティが見事。

試合結果

2025.5.18
プレミアリーグ 第37節
ブレントフォード 2-3 フラム
G-techコミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:22′ ムベウモ, 43′ ウィサ
FUL:16′ ヒメネス, 68′ ケアニー, 70′ ウィルソン
主審:ジャレット・ジレット

レスター【19位】×イプスウィッチ【18位】

確かな差で18位争いを制する

 すでに来季の降格が決まっている両チーム同士の一戦。来季のチャンピオンシップでの前哨戦をプレミアリーグで行うこととなる。

 互いに非保持では4-4-2のミドルブロック気味。保持側はゆったりとボールを動かしながら勝負を仕掛けていく。機会が多かったのはアウェイのイプスウィッチの方だろう。カユステの列を降りるアクションからレスターの2トップ脇からボールを持ち、ここからサイド攻略を狙っていく。

 レスターの4-4-2の守備は縦方向にコンパクトではあるが、ホルダーにプレスがかかっていないのが気になるポイント。そして、サイドの守備の連携が甘く、2人が1人の選手を管理してしまうことでフリーになる選手が出てきていた。特に左のSBのデイビスのオーバーラップを捕まえられず、大外から一気に押し下げられる。

 レスターは3-2-5ベースのポゼッションを行うが、こうした保持のズレよりも有力なのはカウンター。CKを跳ね返す形のカウンターは形としては数的優位な状況。しかしながら、数の優位を活かし切ることができず、なかなかシュートまで持っていくことができない。

 保持の時間が長いイプスウィッチがペースを握る展開となったが、試合を動かしたのはレスター。中盤でのトランジッションの連続からキャリーに成功したのはジャスティン。裏に抜けるヴァーディへのパスからレスターが先制ゴールを決める。

 このゴールでペースは少しずつレスターに。イプスウィッチのサイドのズレの起点となっていたデイビスの捕まえ方をレスターは少しずつ整理。保持ではアイェウがライン間で浮く形からチャンスを作るように。スコアを動かしたレスターが優勢のままハーフタイムを迎える。

 後半、レスターはロングボール主体の攻撃。簡単にボールを手放す形も少なくはなかったが、回収をする側のイプスウィッチもこの機会をあまり活かし切ることができず。

 そうこうしている間にセカンド回収からレスターがペースを握っていくように。後半に目立っていたのは右サイドのマカティア。セカンド回収にシュートに攻撃で存在感を見せる。

 追加点はこのマカティアから。選手交代からトップ下にスライドしたエル・カンヌスを起点とした右サイドへの展開の終点となり、角度のあるところから追加点を奪う。イプスウィッチはンディディにデイビスが釣られてしまったことで大外のケアが浮いてしまった。

 このゴールで実質試合は決着。80分にはこの試合がホームでのラストゲームとなるヴァーディをみんなで称えるなど勝負と違うところにフォーカスがいく展開となった。

 降格が決まっているチーム同士の一戦はレスターが勝利。18位争いを制し、意地の3ポイントを確保した。

ひとこと

 圧倒的ではないが確かな差を感じる内容だった。

試合結果

2025.5.18
プレミアリーグ 第37節
レスター 2-0 イプスウィッチ
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:28′ ヴァーディ, 69′ マカティア
主審:アンドレ・キッチン

アーセナル【2位】×ニューカッスル【3位】

2抜け決定戦を制したのはアーセナル

 レビューはこちら。

 金曜日のアストンビラとチェルシーの勝利により、CL出場権争いは最終節まで多くのチームがもつれる展開となることが確定。アーセナルとニューカッスルのこの一戦はリバプールに続き2抜けするチームを決める試合となる。

 どちらも主要メンバーの欠場が目立つスカッドだが、ニューカッスルはサイドアタッカーをフル投入。5-4-1とはいえ前から追う積極策で勝負に出る。

 アーセナルは相手の中盤が前に出てくることを利用し、中盤の浮いたスペースに長いボールを落としたい展開。だが、この日はラヤが不安定であり、フィードの質がいまいち。その分、セービングで(自分が起こしたミス由来のものも含めて)あらゆるピンチを防いでしまうのはいかにもラヤという感じだろう。

 そういうわけでやや前進には苦戦したアーセナル。そんなアーセナルを尻目にニューカッスルは保持時に4-3-3に変形することでアーセナルの中盤の背後をつく。相手が出来なかった保持時に背後をつくアクションからチャンスメイクに成功したニューカッスルは前半を優位に進める。

 一方のアーセナルは相手を押し込むことが出来てもジリジリとした展開から逃げることが出来ず苦戦が続く。アタッキングサードでの連携は右サイドを軸に苦しい部分が先行しており、ニューカッスルは問題なく跳ね返すことが出来ていた。

 前半のアーセナルの出来は褒められたものではなかったが、CL出場権確保という観点で言えば引き分けはミッションコンプリート。ジリジリとした展開で焦る必要は一つもない。ハーフタイムをスコアレスで折り返したのは上々だろう。

 だが、後半のアーセナルにはサリバが負傷してしまうというアクシデントが襲い掛かることに。広い範囲をカバーできるCBがいないとなると、アーセナルは押しこむにしても引くにしてもはっきりした方がいい。カラフィオーリの攻撃性能を生かすならば押す一択。ということで強化された左サイドからガンガンワンサイドゲームを仕掛けていく。

 押し込むアーセナルに屈するニューカッスルは自陣から出ることが出来ず。パスカットからのキャリーに成功したかと思われたゴードンのアクションが咎められると、ライスのスーパーなミドルが刺さり、アーセナルが試合を動かす。

 追いかけたいニューカッスルだが、サイドアタッカーを全てスターターで使い切ったこともあり、攻撃はジリ貧。割り切って構える回数を増やしたアーセナルに対して、なかなか壁を破ることが出来ない。

 狡猾に時間を使うアーセナルは火力不足のニューカッスルの追撃を振り切ることに成功。熾烈なCL出場権争いで2抜けを果たし、ホーム最終節を笑顔で飾った。

ひとこと

 追いかける展開になるとアーセナルだろうとニューカッスルだろうとこのカードは難しくなるのだろうな。

試合結果

2025.5.18
プレミアリーグ
第37節
アーセナル 1-0 ニューカッスル
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:55′ ライス
主審:サイモン・フーパー

ブライトン【9位】×リバプール【1位】

三笘が起爆剤となり王者をホーム最終戦で撃破

 すでに大会の大勢は決していることを印象付けるスタートだった。どちらのチームもポゼッションベースでゆったりと。特にブライトンが非保持の場合はリバプールのバックラインにボールを持たせるカラーが強い。

 リバプールも広がるCBのところにCHが列落ちをして後方の人数を確保。ブライトンの中盤がスペースを開けることができれば、インサイドにパスを差し込むし、そうでなければ大きくサイドに振りながら攻撃を仕掛けていく。

 ブライトンの保持も同じくCBが広がりながらビルドアップをしていくが、縦に絞ってボールを奪うというリバプールのメカニズムに吸収されてしまい、カットされる。保持で押し下げていくスタンスはリバプールのほうが貫くことができた。

 先制点を得たのはリバプール。大きなサイドへの展開を引き取ったブラッドリーが相手を剥がしてスペースを作り出し、マイナスの折り返しをエリオットが沈めて先制する。

 ブライトンはサイドからのスピードアップにフォーカスすることで反撃に出ていく。バレバ、アディングラ、エストゥピニャンなどのタイプの違うドリブルは攻撃のいいアクセントになっていた。リバプールは後方に人数をかけるビルドアップからテンポを落としてスローに進めていきたい所存。

 保持の局面を増やしたブライトンは自陣からのビルドアップで同点。ウェルベックのポストの落としに合わせて抜け出したアヤリがゴールを簡単に陥れる。

 だが、終盤にリバプールも勝ち越し。セットプレーからの流れで右サイドからショボスライがゴール。おそらくはクロスを意識していたブライトンの守備陣は虚を疲れた格好だろう。リバプールがリードでハーフタイムを迎える。

 後半、追いかける立場となったブライトンはセットプレーからチャンスメイク。リバプールはこれに対してサラーを軸としたファストブレイクから得点のチャンスを狙っていく。ブライトンはこの流れに乗ってオープン合戦で応酬する。

 アリソン、フェルブルッヘンの両名のファインセーブで試合はスコアが動かない状況が続く。前半と打って変わってオープンな展開をものにしたものはブライトン。バレバのキャリーから左サイドに展開すると、三笘とウェルベックのコンビネーションから最後は三笘がボレーを放って同点に。

 さらにブライトンの左サイドは勝ち越しゴールまで。左奥をラインブレイクで取ると、ファーで待ち構えていたヒンシェルウッドがリードを奪う得点を決める。

 王者相手に堂々たる逆転勝ちを見せたブライトン。ホームラストゲームを華々しく飾った。

ひとこと

 後半のオープン合戦で殴り勝ったブライトン。三笘も見事な活躍だった。

試合結果

2025.5.19
プレミアリーグ 第37節
ブライトン 3-2 リバプール
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:32′ アヤリ, 69′ 三笘薫, 85′ ヒンシェルウッド
LIV:9′ エリオット, 45+1′ ショボスライ
主審:アンディ・マドレー

クリスタル・パレス【12位】×ウォルバーハンプトン【14位】

凱旋感溢れるホーム最終戦

 週末はFA杯優勝という美酒に酔いしれたクリスタル・パレス。今季のホーム最終節は優勝カップを持ち帰っての堂々凱旋マッチとなった。

 ボールを持つのはウルブス。左右に大きく動かしながら打開のポイントを探っていく。パレスは無理匂いに行くことはせず、中盤をきっちり閉める守備。ボールを奪うと素早いカウンターから一気に縦に進んでいく。エゼ、マテタといった面々はお休みだったが、代わりに入ったエンケティアやエッセがカウンターの旗手を担う。

 好調だったのはウルブス。インサイドに積極的に縦パスをつけては左右に展開する形で敵陣に進撃していく。カウンターに関してもハイライン対応をきっちりやることでパレスの速攻を封殺。DFラインはもちろん、ベントリーも見事な飛び出しで裏抜け一発を防ぎ、試合勘がきっちり備わっていることをアピールした。

 インサイドが閉じられたら大外からという保持における柔軟性も見せたウルブス。押し込む時間を増やすとそのまま先制。ファーからの折り返しを仕留めたアグバドゥがスコアを動かすことに成功する。

 しかし、この得点に逆らうように流れを掴んだのはパレス。左サイドで粘り切ったエッセとエンケティアによって突破に成功すると、エンケティアが長めのレンジのシュートを仕留めてゴール。

 このゴールをきっかけにパレスのファストブレイクは火がつくように。ボールを奪った後の縦への鋭さのギアが上がり、敵陣に破壊力のある攻撃を仕掛けていく。勝ち越し弾は右サイドのトランジッションから。背後をとってラインを抜け出して送られたラストパスを再びエンケティアが仕留めた。

 勢いに乗るパレスは後半も保持ベースで試合を支配。前半よりも幅を使ったポゼッションでウルブスを押し込んでいく。今度はウルブスが縦へのパスからスピードアップをする必要があるターンである。

 だが、スコアを動かしたのはリードをしているパレス。チルウェルの直接FKが相手に当たって変化し、3点目が決まることとなる。

 リードを広げたパレスはリトリートをベースとしてきっちり構えての逃げ切りを狙う。ウルブスは押し込む機会を得ると、セットプレーから追撃。ストランド=ラーセンのゴールで1点差に詰め寄る。

 引く選択をしたパレスは終盤に苦しむこととなったがヘンダーソンのセーブでウルブスが追いつくことを許さない。乱打戦の仕上げは後から出てきた「真打ち」。マテタが起動した速攻をエゼが仕上げるといういかにも凱旋感がある4点目で試合は完全に決着。FA杯のタイトルに華を添える勝利をパレスは挙げることとなった。

ひとこと

 4点目のダメ押しゴールはお祝い感。交代でホームのファンに最後の挨拶を行ったウォードにとってもいい日になったはずだ。

試合結果

2025.5.20
プレミアリーグ 第37節
クリスタル・パレス 4-2 ウォルバーハンプトン
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:27′ 32′ エンケティア, 50′ チルウェル, 86′ エゼ
WOL:24′ アグバドゥ, 62′ ストランド=ラーセン
主審:デビッド・ウェブ

マンチェスター・シティ【4位】×ボーンマス【10位】

最後の一踏ん張りで来季に繋がる3ポイント

 FA杯ではクリスタル・パレスに敗れてしまい今季の無冠が決定したマンチェスター・シティ。来季に繋げるためにもCLの出場権は最低限確保する必要がある。ボーンマスとの一戦でもう一回最後の踏ん張りを見せる必要がある状況だ。

 立ち上がりからの積極的なハイプレスにはシティの落胆は見えなかった。特にホーム最終戦となるデ・ブライネが気合を入れたハイプレスでスタートしていたことは非常に印象的であった。

 早いテンポで戦うこと自体はボーンマスは本来は得意なはずなのだが、今日に関してはシティに飲み込まれてしまった感がある。前に出ていってもシティのポゼッションが今日は優勢。ぬるっとプレスに出ていっている感が否めなかった。

 シティは間延びしたライン間から前進したり、ハーランド一気を使ったりなど手段も豊富。先制点を決めたのはドリブルで加速したマルムシュ。フリーで敵陣まで運ぶと長いレンジのシュートを見事に沈めた。

 先制してもシティの勢いは止まらず。ボーンマスのプレスを抑え込んで左右に揺さぶりながらテンポをコントロール。反撃に前がかりになるボーンマスを鎮圧する。

 アタッキングサードではサイドに流れるデ・ブライネがクロスを軸にチャンスを演出。22分のハーランドのゴールは決まっていれば超アクロバティックなスーパーゴールであった。

 30分が過ぎた頃にはボーンマスもタヴァニアの抜け出しなど徐々にハイライン破りからのチャンスに成功。しかし、スコアを動かしたのはシティ。押し込んでからの二次攻撃をベルナルドが押し込みリードをさらに広げる。

 後半もシティの圧力に苦しむ展開が続くボーンマス。ハイプレスでサイドに追い込まれつつもWGのスピードで打開を挑んでいく。このプレス回避の成功率は五分五分という感じ。ブルックスが綺麗に抜け出したシーンもあれば、相手に詰まらされるなど自陣から脱出できないケースもあった。

 順調に時計の針を進めていたシティだが、グバルディオルのパスミスがトリガーとなりコバチッチが退場。これで残り時間を10人で戦うこととなってしまう。チャンスを迎えたボーンマスだが、こちらもすぐにクックの退場で帳消し。数的優位をフイにしてしまう。

 10人同士の試合は終盤に動く。ニコ・ゴンサレスがキャリーからのゴールでロドリとの来季の共存をアピールすると、ボーンマスもジャビソンがプレスからのカウンターで仕留めて意地の一点を返す。

 勝ち点3を得たのはシティ。見事にFA杯からのリカバリーに成功した。

ひとこと

 色々あったシティだったが、最後はらしい90分をホームのファンに見せられたと思う。

試合結果

2025.5.20
プレミアリーグ 第37節
マンチェスター・シティ 3-1 ボーンマス
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:14′ マルムシュ, 38′ ベルナルド, 89′ ゴンサレス
BOU:90+6′ ジェビソン
主審:トーマス・ブラモール

今節のベストイレブン

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