ボーンマス【11位】×レスター【18位】

10分の優位と80分の地力
序盤の縦に速い激しい展開において主導権を握ったのはレスター。縦に長いレンジのパスが飛び交う展開において、スムーズに縦にボールをつけつつサポートをきっちりと準備して前進していく。とりわけ冷静さが見えたのがファエス。いつもでは考えられない落ち着きで相手を見ながらのプレー選択が冴え渡り、長短のパスでゲームメイクをしていく。
非保持においても高い位置からのプレスでボール奪取に成功したレスター。前向きの矢印を出すことで敵陣に向かっていく。序盤はオープンな展開が得意なボーンマス相手に渡り合う戦いを見せていた。
しかし、時間の経過ともに展開は地力に収束。まずは左右の裏のスペースへのは知り合いで陣地回復に成功すると、10分が過ぎたあたりにはすでにボーンマスは完全に試合のリズムを掌握していく。
目立っていたのはCH。タヴァニア、アダムスはキャリーで徐々にスペースができていたレスターの中盤を突き抜いていったし、高い位置ではサイドのコンビネーションに絡むことで抜け出す選手を作るためのサポートをした。
左サイドではケルケズが素晴らしい働き。自らが抜け出すアクションだけでなく、大外からの正確なクロスなど高い位置でのサイド攻撃に絡んでいくことができており、サイド攻撃における欠かせないペースであることをアピールする。
序盤以降は完全にペースはボーンマス。即時奪回もファストブレイクもポゼッションも全てが機能し、レスターを一方的に押し込んでタコ殴りにする時間が続くこととなった。レスターはなんとかスコアレスでハーフタイムを迎えた格好だ。
後半、レスターは前半のような縦に速い展開からリズムを取り戻そうとする。だが、オープンな状況をボーンマスは鎮静化。押し込みながらボーンマスはレスターのブロック攻略のリズムを作っていく。
ボーンマスの狙いはサイドの裏から。きっちりと奥をとってからの折り返しを意識して、ボックス内の空中戦に挑んでいく。ネットを揺らすもファウルなどでなかなかゴールを決められなかったボーンマスだが、74分にようやくこじ開けることに成功。サバルニーの折り返しをセメンヨが仕留めて試合を動かすことに成功する。
後半も陣地回復に苦労したレスターにとってはこの1点は非常に重たいもの。一方のボーンマスはラストゲームとなったハイセンをピッチに送り出すセレモニーモード。セメンヨが豪快な2点目でこのセレモニーに華を添えて試合は完勝。ボーンマスがホーム最終節を見事な勝利で飾った。
ひとこと
序盤は悪くなかったレスターだが、地力がくっきり出た残りの80分はハードそのものだった。
試合結果
2025.5.25
プレミアリーグ 第38節
ボーンマス 2-0 レスター
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:74′ 88′ セメンヨ
主審:ルイス・スミス
フラム【10位】×マンチェスター・シティ【3位】

今季最後の目標は危なげなく
残り3枠となったCL出場権争い。ポールポジションにいるのは3位のシティ。しかしながら、そういう緊張感のある局面でのアウェイゲームは少し嫌なもの。クレイブン・コテージが最終節のシティの舞台となる。
序盤からボールを持つのはシティ。フラムは4-4-2でブロックを組み、相手のバックラインにはプレスをかけなかった。シティはこの日は3センターを採用。ベルナルド、ニコ・ゴンサレス、ギュンドアンの中盤がポジションを入れ替えながらのポゼッションを行っていく。大外のレーンは左の大外がドク、右のマルムシュはやや絞り気味で大外のレーンをヌネスに託すことも多かった。IHも右側のベルナルドの方が列落ちの頻度が高かったので、ポジションの流動性は右サイドの方が高かったかもしれない。
ポゼッション型のチームの必須条件であるハイプレスもこの日のシティはきっちりと。フラムは押し込まれた状態から強引に蹴らされることでロストしてしまう。
アンデルセンの対角パスからプレスを脱出することができることも出てきたフラムだったが、先制点は押し込むシティが順当に。右サイドの裏を取るアクションから折り返し、ヌネスのオーバーラップにギュンドアンが豪快に叩き込んで先制ゴールを決める。
失点以降のフラムはトラオレを軸とした根性の陣地回復が徐々に身を結ぶことも。前半の終盤には横断からのチャンスを迎えたウィルソンがようやく枠をとらえてエデルソンを脅かす。しかし、全体を見れば支配したのはシティ。計画通りの前半を過ごしハーフタイムを迎える。
後半もシティが基本的には落ち着いてコントロールしていこうとするスタートとなったが、フラムは前半よりも粘り強いCBとGKのパスワークで相手のプレスを外しながら進めるポイント探し。アンデルセンがオープンになればトラオレへの体格パスやヒメネスへの楔など、脱出のルートはある。サイドの裏を取ることで一気に敵陣を押し下げていく。
だが、相手のゴールに辿り着いたのはシティ。前半から時折見られていたドクのファストブレイクを起点にPKをゲット。オープンだったギュンドアンがルキッチのファウルを誘った。これをハーランドが仕留めて追加点。シティは勝利とCL出場権を大きく引き寄せるゴールを決める。
フラムはボール保持の時間を増やすが、きっちりと自陣を固めたシティがこのリードを守り切って勝利。ミッションコンプリートして、今季最後の目標であるCL出場権確保を達成した。
ひとこと
最後はなんとか丸め込んだシティ。最終節はほぼ危なげなかった。
試合結果
2025.5.25
プレミアリーグ 第38節
フラム 0-2 マンチェスター・シティ
クレイブン・コテージ
【得点者】
Man City:21′ ギュンドアン, 72′(PK) ハーランド
主審:アンディ・マドレー
ウォルバーハンプトン【14位】×ブレントフォード【9位】

勝ち逃げを逃したブレントフォード
互いにバックラインからゆったりとボールを持つスタートとなったこの試合。幅を広く、大きな展開を使いながら相手を押し込んでいく。
WBを活用しながらの押し下げがより効いていたのはウルブスの方か。右サイドのムネツィやセメドをターゲットとした長いボールから敵陣に入り込んでいく。
ブレントフォードはこのウルブスの様子を見て、プレスをジリジリと進めていく形。保持においては長いボールが相対的には刺さっていないように見えたブレントフォードだったが、ハイプレスから先制点をゲット。アイト=ヌーリのところでのロストからのファストブレイクを仕留め、ムベウモが先制ゴールを決める。
追いかける展開となってウルブスはポゼッション色を強めていく。サイドを使いながらの押し下げを引き続き進めていく。一方のブレントフォードは持てなくなる状況を徐々に受け入れている様子。長いボールをあえて入れて、そこをプレスのスイッチとし、ハイプレスからウルブスを追い込んでいきながら先制点の二匹目のドジョウを狙っているかのような振る舞いを見せていった。
もちろん、オーソドックスなファストブレイクでのチャンスメイクも健在。ややつんのめってしまった感があった分、枠を捉えることができなかったが、ルイス-ポッターの抜け出しは十分に決定機といってもいいだろう。リードしているブレントフォードがよりチャンスを作った状態で試合はハーフタイムを迎える。
後半、ウルブスは左右のサイドから奥を取る形から勝負を仕掛けていく。右サイドのセメドのロングボールだけでなく、左サイドのアイト=ヌーリの抜かすアクションからのクロスもアクセントになっていた。
しかしながら、ブレントフォードも2トップからのリカバリーで勝負。ロングカウンターで出ていける馬力を見せつけることができる。
どちらかというと優勢に進めていたのはブレントフォード。ポゼッションの時間を増やしながら、落ち着いた試合運びで時計の針を進めていく。速い展開になったらなったで苦しい戦いに追い込まれる状況に。
この苦境を打開したのは交代選手。ロングボールでワンタッチの抜け出しを促したラーセンのファインプレーでムネツィの同点ゴールをゲット。劣勢の状況から試合を振り出しに戻す。
ブレントフォードは保持を軸に押し込みながらチャンスを迎えるが、なかなか最後のところをこじ開けることはできず。試合は引き分けのまま終了。互いに勝ち点1でそれぞれの24-25シーズンは幕を閉じた。
ひとこと
ブレントフォード、勝ち逃げできそうだっただけに。。
試合結果
2025.5.25
プレミアリーグ 第38節
ウォルバーハンプトン 1-1 ブレントフォード
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:75′ ムネツィ
BRE:20′ ムベウモ
主審:クレイグ・ポーソン
ノッティンガム・フォレスト【7位】×チェルシー【5位】

見えないトロフィーはチェルシーの手に
CL出場権をめぐる直接対決。どちらのチームも必要なのは勝利。まさに来季の運命を決めるための重要な90分が始まる。
チェルシーの保持は3-2-5。ククレジャがインサイドに入る変形を行う。序盤の狙いは左サイドが中心。サンチョ、パルマーが主導しながらボールを動かしていく。外循環なことはフォレストが4-3-1-2というまずはインサイドを固める陣形を組んだことももしかすると影響しているのかもしれない。
フォレストはインサイドに立つIHが外に膨らむ形をとることでアクセントをつけていく。基本的には大外のレーンから背後に抜け出す形での押し下げを志向。アイナの抜け出しからチャンスを作っていく。低い位置からサイドを変えるトライを繰り返していたムリージョの存在が効いていた立ち上がりだった。
どちらも来季の欧州コンペがかかっているからこそ、展開はやや重くなった。そうした中でチェルシーが淡々と右サイドからのマドゥエケでジャブを打っていく形となった。
リズムを変えようという素振りが見えたのは守備から。じりっと前に出て行くハイプレスを仕掛けることで、相手のホルダーに与える余裕を少しずつ減らしていく。保持側はこのリズムの変化に見事に対応。チェルシーはロングボールからのネトの抜け出し、フォレストは左右にボールを動かしながらサンガレのキャリーでハイプレスを撃退していく。
しかしながら、両チームともこの縦に鋭い攻撃にも見事に対処。ハイラインでチェルシーのロングボールを撃退したフォレストは今季の良さが非常に際立っている内容だった。
スコアレスで迎えた後半。ジリジリとした展開は立ち上がりも。左右と背後へのフリーランが目立っていたネトがポストで味変を試みている一方、フォレストはエランガのファストブレイクというあからさまな普段着で挑んでいく格好となっていた。
後半も重い展開が続くのか?と思われた状況で展開を動かしたのはセットプレー。ムリージョのクリアで流れを切ったかに思われたフォレストだったが、前残りコルウィルが二次攻撃を仕留めて先制。重い試合の扉をこじ開ける。
この得点をきっかけにフォレストは一層縦に速い攻撃を敢行。チェルシーは試合を落ち着かせるのではなく、この展開に乗っかることで対抗。前半よりもアップテンポな試合となる。
フォレストは選手交代で4-2-3-1にシフト。大外からのアタックを強化していく。チェルシーは3センターにこちらもフォーメーション変更。保持というよりは守備できっちりボックス付近を埋めてもらうという方の効果が高かった。
終盤にはフォレストのチャンスもあったが、ウッドの決定機逸や、サンチェスのクロスカットで得点には結びつかず。CL出場権という見えないトロフィーを手にしたのはアウェイのチェルシーだった。
ひとこと
こういう試合がセットプレーで決まるのは納得感がある。
試合結果
2025.5.25
プレミアリーグ 第38節
ノッティンガム・フォレスト 0-1 チェルシー
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
CHE:51′ コルウィル
主審:アンソニー・テイラー
マンチェスター・ユナイテッド【16位】×アストンビラ【6位】

夢の劇場で握りつぶされた希望
まだCL出場権のチャンスは残されているが、現在の順位は6位。CL出場権争いで言えばフォロワーの位置付けのアストンビラは最終節で勝利が必要となる。対するのは最終節直前に行われたEL決勝で敗れ、一足先にCL出場権の望みが絶たれてしまったユナイテッドだ。
普通に考えればモチベーションが高いのはアストンビラ。しかしながら、この試合の立ち上がりのスタンスだけを見ればCL出場権の可能性が残されているのはユナイテッドの方だと思うだろう。吹っ切れたのか前から絶え間なく相手のバックラインにプレスをかけ続け、ロングボールを蹴らせて回収。アストンビラはペナ角に追い込まれたパウ・トーレスの選択肢はマッギンのポストしかなく苦しいものだった。
一方でユナイテッドの保持の局面ではアストンビラが前からプレスをかけることができず。ユナイテッドの保持に対しては持たせてOKというスタンスだった。
それでコンパクトな陣形を維持することができるのならば問題ないが、ユナイテッドのバックラインのキャリーにあたふたしているうちに、ライン間と背後への対応に後手になってしまい、一気にシュートまで持っていかれる。慎重というよりは及び腰と言っていいだろう。
ロジャーズやアセンシオといった選手たちがインサイドで起点を作れる場面も少しずつ出てきており、そういう意味では巻き返しの跡が出てくるアストンビラ。ただし、前プレのギアアップができないという問題点は変わらず。基本的にはライン間と大外からあっさりと侵入することでユナイテッドがシュートの数を重ねていくという展開だった。
プレスのギアアップを図った前半の終盤、ビラにミスが出るように。プレスに屈したキャッシュが雑なバックパスからマルティネスが退場に。前半終了間際にビラは10人に追い込まれる。
迎えた後半は想像通り、ユナイテッドは前半以上に押し込んでいく。ワイドのCBの攻撃参加から人数をかけて勝負をしていく。
こうなると、もはやユナイテッドがいつ点を決めるのかというところにフォーカスされた展開に。しかし、オルセンの正面や、枠をとらえなかったりなどユナイテッドのシュート精度に難が出てくる。
ユナイテッドがモタモタしているうちにビラはワンチャンスからロジャースがゴールをこじ開けたかに見えたが、ファウル判定で取り消し。リプレイで見ると、バユンドゥルから綺麗にボールだけを突っついているので、個人的にはノーファウルかと思う。
このファウル判定が最後のビラの希望を潰した格好に。ファークロスに飛び込んだディアロがこのプレーの後にビラのゴールをこじ開けると、ここからはユナイテッドが完全に制圧。PKからの追加点も奪い、ビラの希望を握りつぶした。
ひとこと
あのゴール取り消し判定は問題だなぁ。
試合結果
2025.5.25
プレミアリーグ 第38節
マンチェスター・ユナイテッド 2-0 アストンビラ
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:76′ ディアロ,87′(PK) エリクセン
主審:トーマス・ブラモール
サウサンプトン【20位】×アーセナル【2位】

ラストゲームは笑顔で
レビューはこちら。

どちらのチームも負傷者がバックラインに多く見られておりメンバー構成は非常に苦しいもの。サウサンプトンはテイラー、ウッドというなかなか見慣れないCB陣にCHのダウンズが加わるというスクランブルさ。一方のアーセナルもティアニーがCBというトリッキーなバックラインの構成を余儀なくされている。
相対的に布陣変更の影響が少なかったのはボール保持の機会が多かったアーセナルだろう。布陣が3-2-5に変形すれば左サイドはティアニー、右サイドはホワイトが後方支援型のSBのような振る舞いを見せることができる。
サウサンプトンのプレスはなかなか前に出てくることもなく、アーセナルはバックラインにボールを持たせる形だったのもビルドアップに安定感を持たせることはできていた。
しかしながら敵陣での脅威を与えられたかというとそれは別の話。左サイドも右サイドもアタッキングサードでのギャップ作りには苦戦。特に足元で受けたがるヌワネリとスターリングの右サイドはかなり攻撃が停滞していた。左サイドのマルティネッリの独力の崩しに依存していた。
一方のサウサンプトンは限られた機会を探っていく。スチュワートへのロングボールという手軽な手段や、ゆったりとしたボール保持から2CHと2CBからゆったりとしたポゼッションからボールを動かしていくこともあった。
中でも効果的だったのは左サイドのスレマナ。素晴らしい脚力を見せたカウンターでファストブレイクからチャンスを作っていく。後半戦に攻撃の主力を任された彼らしい奮闘だった。
しかし、先制点を手にしたのはアーセナル。セットプレーの流れから得点を手にしたのはこの試合がラストゲームになるティアニー。貴重な先制ゴールでアーセナルはハーフタイムの前にリードを得る。
後半、サウサンプトンはボールを持ちながら圧力をかけていく展開。ヌワネリは下がるアクションからボールを落ち着かせようとするが、ハイプレスやサイドの奮闘からチャンス構築するサウサンプトンが少しずつボール保持を回復していく。
すると、セットプレーからサウサンプトンがゴールをゲット。この試合では存在感を見せていたスチュアートが見事なヘディングで試合を振り出しに戻す。
終盤はアーセナルが一方的に押し込む展開。あとはアーセナルがこじ開けられるかどうか?というところにフォーカスされる。
その状況に終止符を打ったのはウーデゴール。最後の交代カードとなったアーセナルのキャプテンはCHを剥がしてのミドルでこじ開けることに成功する。
最終節は今年も勝利を手にしたアーセナル。2位をがっちり確保してシーズンの幕を下ろした。
ひとこと
ティアニー、素晴らしいラストゲームだった。
試合結果
2025.5.25
プレミアリーグ
第38節
サウサンプトン 1-2 アーセナル
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:56′ スチュワート
ARS:43′ ティアニー, 90′ ウーデゴール
主審:ダレン・ボンド
ニューカッスル【4位】×エバートン【13位】

ドタバタの大団円
お得意様のアーセナルに今季初めての敗戦を喫し、ニューカッスルのCL出場権の行方は最終節に持ち越し。しかしながら、まだ順位は4位。ホームでエバートンをきっちり叩くことができれば、他の会場に関係なく来季のCL出場権は手中に収まることとなる。
というわけで積極的にボールを持つのは是が非でも勝利が欲しいニューカッスル。相手の2トップに対して、噛み合わない3バックから前進を狙う。序盤はサイドからイサクに差し込むアクションなども見られたが、基本的にはインサイドをコンパクトに組むエバートン相手になかなかこじ開けられない展開だったといっていいだろう。
インサイドに差し込みきれないならば、外循環で縦に突き抜けられるか勝負になるニューカッスル。左サイドからの仕掛けが多かったがゴードンが相手との間合いを図りながらクロスを上げるくらいが関の山だったように思える。
一方、エバートンはファストブレイクが軸に。アルカラス、エンジアイなどのドリブラーからの陣地回復から縦に鋭く狙っていくのが基本線。ただし、特にアルカラスは縦に一本槍という感じではなく、ピッチを横断する形で時間を作ることも。自陣の深い位置からもピックフォードが根性でショートパスを繋ぐなど、パブリックイメージとは少し違う動かし方をしている。こういうチャレンジに対して、ニューカッスルの中盤に横断を許すスカスカ感があるのはこの3バック型の守備にシフトしてからの難点だ。
そういう側面も相まって、一方的に押し込んで解決策が見つからない!というよりは互角の保持での綱引きで決着がつかないというニュアンスが強かったこの試合。ハーフタイムはスコアレスで迎える。
後半、ニューカッスルは選手交代を踏まえて4-3-3にシフト。慣れ親しんだ形を作り、外に幅を作る形からのチャンスメイクに挑んでいく。
一方のエバートンはニューカッスルのきっちりと押し込むフェーズにおけるミスをつく形で前進。セットプレーやクロスに対して浮きやすいファーサイドを仕上げで直接狙うことでチャンスを作っていく。
押し込み感が物足りないと判断したニューカッスルはバックスを入れ替えでSBにトリッピアーを投入。だが、エバートンの先制点はこの変わったばかりのトリッピアーのサイドから上がったクロスが起点。ボックス内でシュートを決めたアルカラスが簡単に浮いたことを踏まえると、ややバックスの配置を動かした弊害があったのかもしれない。
終盤はゴールに迫るニューカッスルだが、エバートンもカウンターから決定機を迎える機会を得るなど得点の匂いは互角のまま。最後まで追いつけなかったニューカッスルだったが、他会場にも救われてCL出場権は確保。なんとか大団円を迎えることとなった。
ひとこと
ちょっとチグハグなニューカッスルが最後まで続いてしまった感。
試合結果
2025.5.25
プレミアリーグ 第38節
ニューカッスル 0-1 エバートン
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
EVE:65′ アルカラス
主審:トニー・ハリントン
リバプール【1位】×クリスタル・パレス【12位】

勝者同士の円満なドロー
ホームチームはリーグタイトル、アウェイチームはFA杯とそれぞれタイトルを取って24-25シーズンを締め括ろうとしている両チーム。ピッチに残る続ける風船はセレモニーモードを感じるものだし、時折抜かれる観客はスコアに関わらず、笑顔なことが多かった。
パレスはCBが下がって繋ごうという意思を見せる立ち上がり。それでもマンツー気味にプレスにくるリバプールに対して、マテタに対して蹴ってしまおうというスタンスも見えた。
一方のリバプールの保持に対して、パレスはバックスに自由にボールを持たせるスタイル。サイドにボールをつけながらボールを動かしていく。しかしながら人数をかけてブロックを組むパレスに対してなかなか有効打を打つことができない。右サイドの攻めよりも、左サイドからのロバートソンのファークロスが効いていた感がある。
パレスの基本線はロングカウンターではあるが、先制点はハイプレスから。ブラッドリーのサイドに追い込む形からボールを奪い取ると、中央で浮いたサールが余裕を持って仕留める。
リードを奪われても試合の展開は変わらず。押し込みながらリバプールはサイドで打開策を探っているし、パレスはサールやマテタを生かしたファストブレイクを狙っていく。時間の経過とともにリバプールはゴールに迫っていくが、サイドにボールをつけるフェーズでミスが出るなどイマイチ安定しない。ディアスは瞬間的にチャンスを作るがゴールには至らず。試合はパレスがリードでハーフタイムを迎える。
リバプールはアレクサンダー=アーノルドを投入。メモリアル的な意味合いが強いのは確かだろうが、右サイドの攻撃を強化する交代なのも事実。サラーの相棒として手前からガンガンクロスを上げていく形でチャンスを作る。
交代選手の投入でアレクサンダー=アーノルドのクロスに合わせた動きだしも強化。ヌニェスのアクションはこの日足りなかった前線の奥行き作りをサポートするものだった。
しかし、アグレッシブな交代は時に逆噴射を起こす。CBに立っていたフラフェンベルフが一発退場で10人となる。
それでも押し込む展開は変わらないリバプール。パレスは前に出て行こうとするが、その結果オープンな展開を生み出してサラーに同点ゴールを決められてしまう。
流石に終盤は押し込むアクションを見せていたパレスだが、この試合に勝者はなし。トロフィーを持つ両者にとっては円満なドローだったということができるだろう。
ひとこと
パレスは勝ちたかっただろうなぁ。
試合結果
2025.5.25
プレミアリーグ 第38節
リバプール 1-1 クリスタル・パレス
アンフィールド
【得点者】
LIV:85′ サラー
CRY:9′ サール
主審:ダレン・イングランド
イプスウィッチ【19位】×ウェストハム【15位】

最後は洗礼を浴びて
1シーズンでプレミアを去ることがすでに決まっているイプスウィッチ。しばしのお別れの前のラストマッチはウェストハムとのホームゲーム。ポートマン・ロードのファンにとってはこの光景を目に焼き付けておきたい90分となる。
序盤からチャンスを探っていくのはイプスウィッチ。ハーストをターゲットとしたロングボールから手数の少ないチャンスメイクで立ち上がりに臨む。
一方のウェストハムもフュルクルクへのロングボールからサイドへの展開で勝負を仕掛けていく。パワー系の形だけでなく、ボーウェンの裏に抜けるようなロングボールからもチャンスを作るウェストハム。トゥアンゼベはあわやという冷や汗をかく対応となった。
序盤はボールを持つ側を見るような守備が多かったが、徐々にハイプレスのシーンもでてくるように。互いにロングボールを軸にファストブレイクからチャンスを作りにいくが、よりクリティカルだったのはイプスウィッチの方か。抜け出したブロードヘッドが足を滑らせていなければ、相当なチャンスとなっていたはずだ。
以降もハッチンソンのファストブレイクなど、イプスウィッチの方が速攻ではいい手応え。ウェストハムはボール保持から作っていく形でより手数をかけていく。
少し切り口の違う攻め筋の勝負で結果を出したのはウェストハム。素早いリスタートで裏抜け出したボーウェンからウォード=プラウズが先制ゴールをゲット。前を向いたボーウェンがゴールをお膳立て。ボーウェンがオープンな状態でボールを持てるということが両チームを通じて最も高い殺傷性を持っていた感があった前半の終盤だった。
後半もハイプレスに出ていくイプスウィッチだったが、ウェストハムはゆったりとしたボール回しでこれを回避。前を向いたウォード=プラウズからのドリブルで加速していくなどイプスウィッチを剥がして進んでいく。
やや劣勢気味かと思われた状況をひっくり返したのはイプスウィッチのワンプレー。カユステからの縦パスを受けたブロードヘッドが見事にこじ開けて試合を振り出しに戻す。
だが、直後にイプスウィッチムードを引き戻したのはのはボーウェン。右サイドからカットインからの左足でゴール。再びウェストハムがリードを奪う。
ゴールがまたしても必要となったイプスウィッチは交代で入ったデラップとクラークが投入直後にチャンスメイク。少ない手数でゴールに向かう。だが、このチャンスを逃すときっちりとブロックを組むウェストハムに苦戦する。
終盤のウェストハムは前線の入れ替えでハイプレスを装填し、敵陣での守備にエネルギーを使っていく。右サイドからのカットインを見せたクドゥスの一撃でウェストハムは仕上げ。プレミアラストゲームとなるイプスウィッチに手痛い敗戦を浴びせた。
ひとこと
イプスウィッチ、また待っているよ。
試合結果
2025.5.25
プレミアリーグ 第38節
イプスウィッチ 1-3 ウェストハム
ポートマン・ロード
【得点者】
IPS:52′ ブロードヘッド
WHU:43′ ウォード=プラウズ, 55′ ボーウェン, 87′ クドゥス
主審:ティム・ロビンソン
トッテナム【17位】×ブライトン【8位】

整ったサイド攻撃で凱旋ゲームを破壊
ついに悲願のメジャータイトルを獲得。ボロボロだったリーグ戦のシーズンに長年手が届かなかったヨーロッパカップ王者のタイトルを手にして、最終節は凱旋という形でブライトンを迎え撃つ。
目についたのはブライトンのフォーメーション。人がいないこともあり、前線はMF陣祭り。バックラインも含めて並びは不可思議で、ここは決まりだろう!というWG陣も左右が逆という有様だった。
序盤はこのフォーメーションを採用したブライトンが配置を確かめながらボールを動かしていくシーンが目立つように、トッテナムも無理にハイプレスにはいかず、自分たちもゆったりとした保持を敢行する。
徐々に保持の時間が長くなるのはトッテナム。バックラインの列移動も絡めながら、後方の陣形を変化させつつ、枚数を確保して保持の安定化を図る。
しかしながら、パスミスが目立つなどプレーの精度はイマイチ。ブライトンのパスカットからのファストブレイクを受けて窮地に陥る場面もあった。
だが、ミスが失点に繋がったのはブライトン。アヤリとオライリーのパスワークに乱れが発生すると、この日のトッテナムの勝負を一手に引き受けていたテルがPKを奪取。本職ではないウィーファーにはかなり厳しいマッチアップだったという情状酌量の余地はありつつも、軽率なファウルであったのは確かだ。このPKをソランケが仕留めてトッテナムが先制する。
以降もテルはトッテナムのチャンスの中心に。追加点のチャンスに立ちはだかったフェルブルッヘンがいなければ、前半でリードはさらに広がっていただろう。
流れが悪いブライトンは後半に選手交代。前半から左右を通常モードに戻していたWGに三笘を入れてさらなるテコ入れを敢行。押し込んだ後のサイド攻撃を強化する。
すると、その効果はすぐに。セットプレーからヒンシェルウッドがゴールを仕留めて同点。さらに同じようにCKからヒンシェルウッドは追加点。後半は一方的に押し込むブライトンが一気に逆転まで持っていく。
EL制覇したトッテナムは先制点ですでにシーズンの店仕舞いをしてしまったかのよう。後半は単発でカウンターに打って出る程度でブライトンの勢いを止めきれず。ビスマが雑なプレーで献上したPKから3点目を許すと、最後はゴメスにスーパーな4点目を与えての完敗となった。
ひとこと
それだけじゃないにしても三笘が入ってあっという間にサイド攻撃の軸となったのは流石であった。
試合結果
2025.5.25
プレミアリーグ 第38節
トッテナム 1-4 ブライトン
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:17′(PK) ソランケ
BHA:51′ 64′ ヒンシェルウッド88′(PK) オライリー, 90+3′ ゴメス
主審:ロベルト・ジョーンズ
今節のベストイレブン
