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「Catch up Premier League」~Match week 25~ 2025.2.14-2.16

目次

ブライトン【10位】×チェルシー【4位】

中央に起点を見出したブライトンが同一カード連勝

 この時期になるとちらほら見られるFAカップを絡めた同一カードの連戦。このカードもまさしく先週末に全く同じカードをFAカップでやったばかりの一戦だ。

 まず、立ち上がりのアクションとして押さえておきたいのはブライトンの非保持。ベースが5バックというかは悩ましいところではあるが、ミンテが列を下げて大外のネトについていくスタート。グストがインサイドに入り3-2-5に変形するチェルシーの形にマンツーでつきやすいように合わせる形で勝負に出る。

 チェルシーとしては大外のマッチアップの相手がランプティ、ミンテになるのでWGで勝利をもぎ取りたいところ。だけどもなかなかここで明確な優位が取れず。そうなると、ジャクソン不在でインサイドから攻撃を作れないチェルシーは厳しい。右サイドでようやくエンクンク(この日はパーマーと位置関係が逆で自由に動きやすいポジションだった)のフォローを受けたマドゥエケがチャンスメイクをしたと思ったら負傷するという流れの悪さも気になるところ。

 ブライトンも悪い時は外循環一辺倒の攻撃になりやすいチーム。この日もまずは奪ったら三笘!という形で外をつっつくことを優先する流れ。ただ、時間帯の経過とともにこちらはインサイドにパスを差し込んでのポストからサイドに展開する形を作れるように。エンソを外に釣り出して、カイセド周りのスペースをラターとウェルベックで使うことで外への景色をよくすることでブライトンは少しずつサイドにいい形でつけていく。

 ただ、先制点はそうした流れとは少し切り離されたものだった。フェルブルッヘンからのフィードを一発でコントロールした三笘がチャロバーを振り回し、そのままゴールにシュートを捩じ込む。

 先制の後はややラインを下げたブライトン。左右のサイドから押し下げるところからチェルシーは工夫を強いられる。クロス攻勢は悪くなかったが、エンソのゴールがプッシングで無効化されてしまうとトーンダウン。逆に自陣でブライトンの波状攻撃を浴び、ボックス内の処理が怪しくなったところをミンテに押し込まれて追加点。複数失点のままハーフタイムを迎える。

 迎えた後半、チェルシーはマイナーな配置変更。カイセドの横が定位置だったグストがもう1列前に入る形。前半は右に流れがちだったエンクンクは左サイドにも顔を出すように。これに伴ってエンクンクが高い位置に残ったまま、パーマーが降りるアクションも見せていたので、役割は少し均質的になったのかもしれない。

 グストは移動距離が長くなるので、トランジッションでは時間を稼げないとチェルシーは守備がより厳しくなるところ。ブライトンに一発でサイドにつけられるとまずい形で受けることになることも多かった。

 時間経過とともにチェルシーは押し込む流れを作りにくくなるように。するとブライトンは右サイドから3点目。ワンツーから抜け出したミンテがまたしてもゴールを決める。サンチョがワンツーについていけないサイドの守備とキャリーに失敗したコルウィル。背後のブロックの対応に苦しいものがあった。

 このゴールで試合はかなり決着ムード。チェルシーも交代枠でフレッシュな選手に託す形に。前半のように左右のクロスからチャンスを作ってはいたが、ブライトンはよりクリアな決定機で4点目に向かう。投入直後のペドロへのヨルゲンセンのプレゼントパスや、フェルトマンの抜け出しなどダメ押しの一発がいつ生まれてもおかしくない状況だった。

 チェルシーは反撃の一刺しもできないままゲームセット。ブライトンがFA杯と合わせてチェルシー戦の連勝を重ねた。

ひとこと

 前節、ボーンマスにむちゃくちゃにされたフォレストにむちゃくちゃにされたブライトン。大敗からの完勝という流れができている感。

試合結果

2025.2.14
プレミアリーグ 第25節
ブライトン 3-0 チェルシー
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:27‘ 三笘薫, 38’ 63′ ミンテ
主審:クリス・カヴァナー

レスター【18位】×アーセナル【2位】

救世主が勝ち点3をもたらす

 レビューはこちら。

 サカの不在に何とか立ち向かっているアーセナル。しかしながらそのアーセナルに追い打ちをかけるように立て続けにマルティネッリとハヴァーツが離脱。アーセナルの前線は先を見据えるのが難しいくらいの台所事情になってしまった。

 そんなロングボールの逃げ場がなさそうなアーセナルに対してレスターはまずは様子見のハイプレスからスタート。序盤は少し戸惑っていた感じを見せていたアーセナルだが、徐々に保持でテンポをおちつかせるように。ハイプレスに出てくるレスターを撃退し、自陣でのゆったりとしたポゼッションを行っていく。

 前に明確な起点がいない分、アーセナルの保持はいつも以上にシームレス。大きく動きながらマークを外すことで相手になかなか起点を絞らせない。ネガトラの時の脆弱性につながる部分はあるかもしれないが、そこは背に腹は代えられないという感じだろう。降りてくる前線が多い分、前に飛び出していく意識の高かったライスが非常に印象的だった。

 しかしながら、アーセナルはトーマスのミスやスターリングのノッキングなどでなかなか前進することもままならない。対するレスターは高い位置でのポストから少しずつ前進のきっかけを見せていく。ヴァーディ、アイェウといった左サイドの面々からクリスチャンセンのオーバーラップで一気にサイドに駆け上がっていく。だが、スコアは動かず。ハーフタイムはスコアレスで迎える。

 後半、アーセナルは縦にパスを付けるルイス=スケリーの躍動が目立つスタート。レスターのブロックに対して穴を空けに行くスタート。レスターは構えるだけでなくハイプレスにも出て行っていたが、ライスの前線への飛び出しや前半よりも冴えているトーマスがこのプレスを回避する。

 それでもなかなか決め手に欠けるアーセナルを救ったのは途中交代で入ったメリーノ。右サイドからのヌワネリのクロスを豪快に叩き込んでチームに貴重な先制点を生み出す。

 そして、さらにはカウンターから追加点。トロサールが近頃よく見せる左サイドからの縦突破でファーのメリーノを狙い撃ち。試合を完全に決める2ゴールを仕留める。

 苦戦が続いたアーセナルを作ったストライカーとなったのはメリーノ。ファストブレイクとクロスから生まれた効果を見逃さず、前線欠乏症のアーセナルになんとか勝ち点3をもたらした。

ひとこと

 1点目を作り上げたヌワネリとメリーノがこの試合の救世主といえるだろう。

試合結果

2025.2.15
プレミアリーグ
第25節
レスター 0-2 アーセナル
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
ARS:81‘ 87’ メリーノ
主審:サム・バロット

ウェストハム【16位】×ブレントフォード【11位】

局面の完成度が反映された一戦に

 新監督就任以降も試行錯誤が続くウェストハム。直近は3バックの採用が続いていたが、この試合では4バックに回帰。ポッターらしさを出すためのテストは継続している。

 ブレントフォードは今季お馴染みのゆったりとしたビルドアップ。バックスに無理にプレスに行かないウェストハムに対して、ポゼッションからボールを動かしていく。

 ウェストハムの保持はワン=ビサカが低い位置に入り、エメルソンが高い位置に入る左右対称型。トップ下のパケタが動きながら縦パスのルートを探すポゼッションを探っていく形だ。

 早い時間に試合を動かしたのはブレントフォード。リスタートから先制ゴールをゲット。仕留めたのはシャーデ。ウェストハムは局地的に負け続けたことが失点に繋がってしまった。

 反撃に出たいウェストハム。だが、なかなかパスワークで穴を空けることが出来ずに苦戦。外循環からゴールに向かっていくが、むしろブレントフォードから痛烈なカウンターを食らってしまうことも。ハイプレスでジリジリと圧力を高めていくブレントフォードに対してなかなか脱出ができない。

 サイドで相手を止める動きも4バックにしたことで機能低下。ブレントフォードのサイドからの進撃に対して、どこから止めるかが定まらずにズルズルと自陣に下がっていってしまった。

 逆にブレントフォードは攻撃に明確な手ごたえがある前半。幻の2点目になった繋ぎはオフサイドになったものの、明確にウェストハムの守備ブロックを上回るクオリティのもの。ウェストハムの裏抜けに常にギリギリの対応を強い続けた。

 劣勢のウェストハムはハーフタイムにガラッとメンバーを入れ替え。システムはキープをしつつ、ポジションの入れ替えというキャストの変更で対策を打つ。ブレントフォードは大幅な方向転換はなし。ポゼッションで相手を動かしつつ、間に穴を空けながらボールを前に進めていく。

 なかなか相手の守備に対して捕まっている感からは逃れることが出来ないウェストハムだが、個々のアタッカーのシャープさはさすが。ボーウェンがルイス-ポッターを出し抜いたシーンにおいてはPKを貰えてもおかしくはなかったのでは?と思うくらい相手に先手を打つことが出来ていた。

 ただ、CFは本職の覚醒が欲しい感。この試合ではファーガソンがリーグ戦でデビューをしたがやはりシュートの力強さは今一つという感じだ。

 最後はブレントフォードが2列目のポジションを下げることで堅い守備ブロックで逃げ切りに成功。序盤のゴールでリードをキープしたブレントフォードがしたたかに勝ち点を奪い取った。

ひとこと

 やることに対するシャープさが両チームの間では少し違ったかなという印象。

試合結果

2025.2.15
プレミアリーグ 第25節
ウェストハム 0-1 ブレントフォード
ロンドン・スタジアム
【得点者】
BRE:4’ シャーデ
主審:ダレン・イングランド

サウサンプトン【20位】×ボーンマス【7位】

踏めない二歩目のステップ

 イプスウィッチとの一戦には勝利したものの、依然としてトータルの勝ち点は9。19位との試合ながらも両者の勝ち点差を踏まえると、先の試合はシックスポインターとは程遠い。ただの勝利だけでなく、この勝利を連勝に結びつけなければサウサンプトンの残留はない。

 いつも通り、高い位置からプレスに出て行くボーンマス。サウサンプトンはそんなボーンマスに対して強気に対抗。プレスを誘引するようにショートパスをつなぐことでボールを動かしていく。

 保持では意地を見せる姿勢だったサウサンプトンだが、非保持に回ればボーンマスに好き放題やられてしまう。WB手前のところを使いながら横断すると、押し込むことによってアタッカーの優位をきっちりと発揮。クリスティの素晴らしいクロスからワッタラがゴールを生みだす。

 反撃に出たいサウサンプトンは左サイドからのカウンターに打って出る。序盤戦にチームを救っていたのはディブリングだったが、直近ではこの役割を果たしていたのはスレマナ。左サイドからの鋭い一撃から反撃を狙っていく。

 だが、どうしても自陣でのプレーのクオリティに問題があるサウサンプトン。奪ってから一つ目のプレーの質が低く、ここからボールを奪われてしまい波状攻撃を食らうことに。ゴールを決めたのは1点目でアシストを決めたクリスティだ。

 2点のリードを奪ったボーンマスは完全に試合の主導権を掌握。左右の大外を起点に斜めにパスを差し込み続けることで圧倒的に押し込んでいく。

 得点どころかシュートすら遠いのがサウサンプトン。押し上げる機会があってもカウンターで跳ね返されてしまうことを考えると、あまり収支はプラスになっていないのがつらいところである。

 後半、ビハインドとなったサウサンプトンはマンツー型のハイプレスを敢行。人に噛合わせる前半以上の強気なプレスからゴールを狙っていく。アリボは今日もバックラインに組み込まれることとなった。

 前がかりに勝負に出るサウサンプトンだが、セメンヨの個の力にも苦しめられて徐々に苦しい展開に持ち込まれる。クリスティのCKからの決定的なピンチは何とか防ぐなど逆に気にしなければいけないのは失点の方だった。

 苦しい中でもスレマナがやり返すことで何とか追いすがるサウサンプトン。しかしながら、ボーンマスもタヴァニアの一撃でおあいこに。セーフティリードを譲らない。

 連勝は飾れず、停滞は今節も続いてしまったサウサンプトン。ボーンマスに屈し、1桁台の勝ち点を脱出することが出来なかった。

ひとこと

 初手であっさりと2つ取られてしまうのはあまりにも苦しい。

試合結果

2025.2.15
プレミアリーグ 第25節
サウサンプトン 1-3 ボーンマス
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:72′ スレマナ
BOU:14‘ ワッタラ, 16’ クリスティ, 84′ タヴァニア
主審:ジャレット・ジレット

アストンビラ【8位】×イプスウィッチ【19位】

手応えと実入りのジレンマ

 ジリジリと上位から離されておりやや欧州カップ戦の出場権争いから遠ざかりつつあるアストンビラ。ボールを動かしながらイプスウィッチのプレスをいなしていく。GK-CB-CHの5枚で縦にボールを入れながら相手の守備陣形をコントロールしているのが印象的。ちょっと、デ・ゼルビっぽい。

 段差作りでイプスウィッチを動かしていくアストンビラは問題なくサイドの深い位置を取ることに成功。パーマーはいきなり裏への飛び出しを失敗するなど冷や汗をかくスタートとなった。イプスウィッチとしては元気にプレスに出て行った結果、簡単に裏を取られてしまい、非常に苦しい立ち上がりとなった。

 そうした中でイプスウィッチは少しずつライン間での起点をつくることに成功。保持でのインパクトを少しずつ増やしていくように。ハッチンソンのような前を向けば怖さを作ることが出来るタレントの活躍で、アストンビラの保持が優勢な中からなんとか反撃のきっかけを探っていく。

 だが、そんなイプスウィッチの反撃を阻んでしまったのは味方。トゥアンゼベの退場により、前半の内にアストンビラは数的優位を確保することとなる。これでアストンビラのボール保持はより強固なものとなった。

 というわけで後半もボールを持つのはアストンビラ。退場直後は4-4-1で受けることを前提として守備を組んでいたイプスウィッチだったが、後半の頭からは5-3-1にシフト。きっちりと自軍で守備を組みつつ、高い位置に出て行くのは少人数という方向性を打ち出して数的不利と向き合っていく。

 押し込みながら左右で押し下げてミドルという形からチャンスを作っていくアストンビラ。だが、押し下げたところから意外と苦しむのがエメリのアストンビラ。誘引ビルドからの加速は得意な一方で、押し込んだ状態からなかなか状況を動かすことが出来ない。

 踏ん張っている状況から結果を出したのはデラップとハッチンソン。前者のキープと後者の加速の組み合わせで先制点をゲット。これしかない!という形で試合を動かす。

 保持の局面から解決策を探していかなければいけないアストンビラ。助けになったのはラッシュフォード。左の大外からのカットインでパワーを見せつける。すると、同点ゴールはそのラッシュフォードの右足から。彼のFKの跳ね返りをワトキンスが押し込んで試合を動かす。

 終盤はアストンビラが押し込んで勝負を仕掛けていくが、イプスウィッチはひたすら跳ね返すことで対抗。この跳ね返しは今後を見据えても十分に手応えがあるクローズと言えるだろう。数的不利ながらも勝ち点1を確保することとなった。

ひとこと

 10人ながらなんとか勝ち点を取ったのは大きいけども今後を見据えると欲しかったのは3ポイントのイプスウィッチだった。

試合結果

2025.2.15
プレミアリーグ 第25節
アストンビラ 1-1 イプスウィッチ
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:69′ ワトキンス
IPS:56′ デラップ
主審:ロベルト・ジョーンズ

マンチェスター・シティ【5位】×ニューカッスル【6位】

不完全マンツーのお得意様を悠々と撃破

 前日に4位のチェルシーが敗北。5位と6位の直接対決であるこのカードを制した方がこの節を4位で終えることとなる。

 ニューカッスルはハイプレスに出ていく積極策。マンツー気味に各所で選手を捕まえていく。あくまで人を捕まえるのが目的のため、大外で攻め上がるグバルディオルにマーフィーがついていくなど列を下げて対応する場合もあった。

 対するシティは4-4-2。ミドルブロックを組んでニューカッスルをコンパクトに迎え撃つ形である。

 相手に対して差をつける攻撃を見せたのはシティ。マンツーマンの前提である対面の相手についていくというところを破壊したのはマルムシュ。トリッピアーを完全に置き去りにする形でプレミア初ゴールを決めることに成功する。

 このマッチアップの力量差は以降も如実に。2点目もこのミスマッチをつくことでシティに追加点が生まれる。シティはファストブレイクが刺さる展開であれば得点を量産できるので、前提が成立しないマンツーをやってくるニューカッスルは三顧の礼で迎えたい貴重な客人のようなものだろう。

 左のマルムシュだけでなく、右のサヴィーニョも好調。シティは両サイドのSBに対してニューカッスルに明らかな優位を握る。

 ニューカッスルは攻撃でも普段の調子を出すことができない。左サイドからスペースをもらってカウンターの機会を得ることがあったが、ゴードンやウィロックはまるでこのスペースを活かすことができず。アーセナル戦ではお馴染みのパワフルさの半分にも満たない出来だった。

 そんなニューカッスルを尻目にシティは悠々と3点目を追加。マルムシュはハットトリック。彼はこの冬の新加入選手だが、シティはホームでニューカッスル相手に15連勝という伝統的な相性の良さをもう身に纏っている感じがした。

 迎えた後半、ニューカッスルはボールを持ちながら解決策を探っていく。ピッチを広く使いながらボールを動かしていき、前半よりは色の濃いチャンスを作り出す。

 だが、その一方で一度ボールを奪われてしまうと一気に自陣までシティのWGにキャリーを許してしまう。自陣でのサイドの封鎖の緩さは前半と全く変わらぬクオリティ。陣地回復の上でポゼッションで息をつくことまで許してしまうのであれば、3点差をひっくり返すための波状攻撃など望むべくもないだろう。

 仕上げの4点目を決めて大勝を決めたシティ。ハーランドの怪我は心配ではあるが、逆転突破をかけてベルナベウに乗り込むミッドウィークにはなんとか弾みをつける結果となった。

ひとこと

 相性の力は怖い。シティはこんな楽な試合運び久しぶりではないだろうか。

試合結果

2025.2.15
プレミアリーグ 第25節
マンチェスター・シティ 4-0 ニューカッスル
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:19′ 24′ 33′ マルムシュ, 84′ マカティー
主審:アンディ・マドレー

フラム【9位】×ノッティンガム・フォレスト【3位】

強度で優位に立ったフラムが手堅いフォレストに穴を空ける

 この2チームは比較的ソリッドな試合運びを信条としているイメージなのだが、立ち上がりは非常にアップテンポ。個人的にはフラムが仕掛けて、そこにフォレストが乗っかる形の試合運び。立ち上がりとしてはあまりこのカードっぽくない展開となった。

 徐々にフォレストは静的な展開にシフト。攻撃では3バックでボールを落ち着かせつつ、守備では5バックを形成することで重心を下げて、中盤より前の5枚でなるべくフラムの保持を食い止める流れとなった。

 だんだんとクローズドな状況にシフトしていくフォレストに対抗する形となったのはフラム。トラオレ→スミス・ロウのクロスで先制点を生み出す。

 得点以外の局面でも主導権を握っていたのはフォレスト。後ろに重く組む布陣の影響か、2トップだけの速攻だけではリトリートが間に合ってしまうフラムのブロックを崩すに至らず。早いテンポにおいてもフラムはより有力な攻撃を繰り出していたし、押し込む形でもサイドでトラオレを起点に縦方向に揺さぶりを入れながら、ルキッチがクロスを入れる。

 ボックス内に人は揃っているフォレストの守備だが、人がいる割にブロックは強固ではなく、相手のマークを外してしまうこともしばしば。サイドから入ってくるクロスにもそこまで制限はかからない苦しい状況となる。

 それでも意地をみせたのはギブス=ホワイト。上下左右に動き回りながらなんとか対面を振り切ると、ウッドに向けて意地のアシストに成功。何とか試合を同点に引き戻す。

 後半はバチバチのデュエルを受け入れる格好となったフォレスト。前からの守備でフラムを追い込みに行く。しかしながら、フラムはこのプレスを広く使ったポゼッションで回避。押し込む機会を作ると、セットプレーからバッシーがゴールを仕留めて勝ち越しに成功する。

 再びビハインドに追い込まれたフォレストはWGを投入することで攻撃を強化。4バックにシフトし攻撃を強める。しかしながら、ボックス内の守備は堅く、なかなかフラムに穴を空けることが出来ない。

 この日のフォレストは前半から攻撃の際にうまく味方とつながることが出来ず。個人勝負での様相が強かった。その影響からか、人数増加による迫力増加は限定的。個々人が挑みに行ってもフラムの組織だった守備はなかなか割ることが出来ない。

 結局試合はそのまま終了。したたかに得点を重ねたフラムがフォレストの足止めに成功した。

ひとこと

 手堅いフォレストにあえてトランジッションで挑むのは個人的には興味深かった。

試合結果

2025.2.15
プレミアリーグ 第25節
フラム 2-1 ノッティンガム・フォレスト
クレイブン・コテージ
【得点者】
FUL:15′ スミス・ロウ, 62′ バッシー
NFO:37′ ウッド
主審:トーマス・ブラモール

クリスタル・パレス【12位】×エバートン【15位】

好調キープのマージーサイド勢

 期待通りのロングボールの応酬からスタートしたこの試合。バックラインは簡単にリリースするという立ち上がりではあったが、そうした中でもハイプレスへの意欲が見えたのはエバートン。ミドルプレスからラインを上げてハイプレスに移行する隙を窺っていく。

 ただし、ハイラインを敷いた時のバックスの不安定さは今節も健在。ボールを奪った後の処理が安定せず、なかなか奪ったボールをチャンスに繋げることが出来ない。

 一方のパレスのバックスもタフなマークでエバートンにチャンスを与えず。好調のベトもなかなか序盤は存在感を見せることができない。保持でも少しずつ対角の長いレンジのパスからWBのフリーランを使って押し下げていこうとするトライで、エバートンの同サイドへの圧縮を外していく。

 パレスの陣形として少し気になったのはラクロワとリチャーズの間がたまにぽっかりと空いてしまうというアクションなのだが、あまりエバートン側にそこをつく感じは見えず。構造の隙をつく感じではないのはエバートンのカラーでもあると言えるだろう。基本はファストブレイクでの一点突破だ。

 CKから高さでゴールに迫っていたのはクリスタル・パレス。空中戦では優位の状況を作りつつ、圧でゴールに迫っていく。

 だが、そんなパレスに痛恨のミス。ミッチェルのスローインのミスを掻っ攫われてしまい、手痛い先制点を献上してしまう。

 なんとかこのミスをリカバリーしたいパレス。ハーフタイムには2枚の交代を行う積極策。するとわずか2分でマテタが同点ゴールをもたらすことに成功する。

 一方のエバートンも前半と同様のファストブレイクベース。左サイドからカウンターを狙い、リンドストロムが決定機を迎える。前半以上にオープンな展開で両軍のチャンスメイクが進んでいく。

 ゆるっとした展開で両軍が前線へのロングボールを生かすことができるか?という流れになった終盤戦。差を分けたのはセットプレー。押し込んだのはアルカラス。冬の市場で加入した新戦力がエバートンに貴重な勝ち越しゴールをもたらす。

 苦戦しながらもミスとセットプレーを活かして強かに勝利を手にしたエバートン。リバプールと共に好調なマージーサイドの雄が今節も勝ち点3を手にした。

ひとこと

 パレスは悪くない流れだっただけにミッチェルのミスから後手を踏む展開になったのは痛かった。

試合結果

2025.2.15
プレミアリーグ 第25節
クリスタル・パレス 1-2 エバートン
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:47′ マテタ
EVE:42′ ベト, 80′ アルカラス
主審:アンソニー・テイラー

リバプール【1位】×ウォルバーハンプトン【17位】

リバプールの後半失速の要因は?

 延期分と繰り上げ開催分を割り当てられ、リーグ戦という点では1チームだけ圧倒的な過密になっているリバプール。少しずつ負けにくくなっているウルブスというのもほんのり嫌な巡り合わせではあるだろう。

 ボールを持つのはリバプール。コンパクトな5-4-1で陣形を組むのはウルブス。リバプールは外循環のWGでの1on1の勝負を仕掛けていく。

 ウルブスの保持に対してはリバプールは4-4-2で構えるが、ミドルブロックの精度はそこまで高くなく特にFW-MF周辺のスペースには空きがある状態が出てくる。ウルブスは中盤の前後にパスを出し入れして前進をすることができていたが、そこは多少難しい状況を任されても守ることには長けているリバプールのバックス。コナテとファン・ダイクを中心に落ち着いた対応を見せる。

 リバプールの攻撃陣はプレスやブロックにおいてはそこまで貢献はできていないものの、トランジッションでその分を帳消しに。奪ったら素早く両翼に当てる形でのスピードアップは押し込んで壊しにいく形よりも十分に攻撃の手応えがあるもの。

 リバプールは奪ったら素早くトランジッションでWGにボールを預けてカウンターでのスピードアップに成功。ウルブスのバックスは当然リバプールのバックスよりはこういったクライシスへの耐性はなく、クリーンに対応することに苦慮していた。

 前半の2点はいずれもこの形であった。ディアスの抜け出しからピンボール状に得点に繋がったシーンとPKと2つのシーンがゴールに結実。前半にセーフティリードを奪う。

 ウルブスはリバプールのこの日の特性を考えると、攻撃の終わらせ方に注意を払うべきではあったが、時間の経過とともに雑な攻め筋を選択し、むしろリバプールに速攻の燃料を与える結果に。審判にフラストレーションを貯めながらクールにプレー選択をできていなそうな選手が多いのが気になる前半だった。

 後半、リバプールはコナテをおそらくカードマネジメントの観点で交代。ウルブスは前線のメンバーを入れ替えて勝負に出る。左サイドを軸にウルブスは前半以上に速攻が刺さる立ち上がり。クーニャの決定機から始まり、中央を抜け出したシーンを演出したムネツィがよりビッグなチャンスを迎えるが、これはアリソンがセービング。

 一方のリバプールもサラーがファストブレイクからネットを揺らす。だがこれは僅かにオフサイド。それでもウルブスに脅威を突きつけるには十分なシーンだった。

 時間の経過とともに流れはウルブスに。まずはコナテの交代により、前半よりも両チームのバックラインの迎撃のクオリティの差がなくなったのが1つ。さらにはリバプールのアタッカー陣がオフサイドにかかる頻度が増えて攻め切る頻度が激減する。

 そして、最も大きい要素はリバプールの前半の生命線である速攻につながっていた奪った直後のパスの精度が落ちていること。このパスをウルブス相手にひっかけ続けてしまい、カウンターの波状攻撃のピンチを迎えることが多かった。クーニャに与えたゴールも間違いなくその文脈に載っているものだろう。

 1点差となった上に、前線の入れ替わりによる活性化を図ることができないリバプール。緊張感のある終盤戦となったが、前節の反省を踏まえて丁寧に試合をコントロール。いつもより早い出番となった遠藤も少しファウルの献上が目立ったが、最後はサイドで相手を潰し切り、クローザーとしての役目は果たした。

 苦しんだリバプールだが、勝ち点3は確保。後半はシュート0ながらも粘りの勝利を手にした。

ひとこと

 過密日程のダメージを感じる精度のリバプール。難敵が続く次の一週間を連勝で乗り切れれば、少しずつトロフィーは見えてくることになるだろう。

試合結果

2025.2.16
プレミアリーグ 第25節
リバプール 2-1 ウォルバーハンプトン
アンフィールド
【得点者】
LIV:15′ ディアス, 37′ サラー
WOL:67′ クーニャ
主審:サイモン・フーパー

トッテナム【14位】×マンチェスター・ユナイテッド【13位】

無秩序な中盤を味方に付けれずシーズンダブルを喰らう

 第25節にしてビッグ6の対決が「勝てば13位」というのは少し寂しい気もするが、そこはシンプルに事実なので仕方がない。今季は苦しむ両チームの一戦だ。

 序盤からボールを持つのはトッテナム。主にマディソンが落ちる左サイドからボールを動かしていく。スペンスばだいぶ滑らかに位置を動かせるようになっている。

 一方のユナイテッドはファストブレイクから一気に押し上げ。いきなり決定機を得るなど押し込んでからやり切るところまでたどり着くシーンが多かった。

 しかし、先制点はトッテナム。右サイドからのクロスに対して、折り返しをすると弾かれたボールを最後はマディソンが仕留める。

 先制してもトッテナムが保持、ユナイテッドはカウンターがベース。シンプルな動きだしで背後を取ることを狙ったりすることで、両チームの中盤は簡単に無効化。あっという間にオープンな展開が発生することに。

 より決定機が多かったのはユナイテッド。24分のガルナチョの決定機はかなりクリティカル。まずは枠に飛ばしたいところで完全に力んだシュートを放つことになってしまった。

 トッテナムは押し込むところは主導権を握ってできていたが、サイドからシンプルにボールを入れてしまうと高さがないので攻撃が淡白になる。そういう意味で有効打は少なめ。中盤省略で展開を制御できないというのはお互い様なので、試合をコントロールできずに暴れているところに関しては流れに乗っかる以外のことはできていなかった印象だ。

 後半、トッテナムはクルゼフスキを使ったチャンスメイクで先制攻撃に打って出る。ハイプレスからリズムを掴むなど上々の入り。ユナイテッドは地上戦ではプレス回避は難しいと思ったのか、ホイルンドが背後に引っ張る動きでロングボールを引き出す。

 このプレー自体はオフサイドだったが、これ以降右サイドを軸に抜け出すシーンが徐々に出てくるように。角度のあるところとはいえ、ヴィカーリオがセービングを披露する機会がちょくちょく見られている。

 70分前後に差し掛かると展開は非常にオープン。交代策を使ったトッテナムよりもベンチに交代カードがないユナイテッドの方が足が残っている感があるのが不思議ではあったが、そのユナイテッドも少しずつアタッキングサードの精度が削られていっている感。終盤は疲れが先行して、シュートシーン付近はジリ貧気味だ。

 そうなった時に切る交代カードはないユナイテッド。トッテナムは前に出ていく姿勢を軽減し、自陣を固めてユナイテッドを迎え撃つ。ユナイテッドは結局この状況を打破する一手を見つけられないまま終了。トッテナムに敗れ、35年ぶりのシーズンダブルを喫することとなった。

ひとこと

 まぁこれは離脱者が帰ってこないとどうにもならなそうなユナイテッドだなという感じ。

試合結果

2025.2.16
プレミアリーグ 第25節
トッテナム 1-0 マンチェスター・ユナイテッド
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:13′ マディソン
主審:ピーター・バンクス

今節のベストイレブン

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