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「Catch up Premier League」~Match week 3~ 2024.8.31-9.1

目次

アーセナル【3位】×ブライトン【2位】

退場が両軍の景色を変える

 レビューはこちら。

 共に3連勝を狙う両軍がエミレーツで激突。ボールを持つスタートとなったのはアーセナル。すでに今季のトレードマークとなりつつあるティンバーのインサイドへの絞りから打開策をうかがう。

 ブライトンは中央をきっちり閉じることと、3人目のプレス隊として出て行くボールサイドのSHに対してCHがスライドすることの両立が求められる守備。一番使われるとまずいところをケアしつつ、ボール周辺にプレスをかけたい!という算段だろう。

 アーセナルは外循環のポゼッションから安全地帯を探すことにトライする。外回りでも問題なかったのはサカとヒンシェルウッドのマッチアップ。特にエンド側から抜くことで三笘のダブルチームを無効化する形からの突破はかなりブライトンのボックス内の守備に動揺を与えていた。

 もう1つ、リスクヘッジされたダメージの与え方はロングボール。前線に張るサカ、ハヴァーツに向けたキックをライスなどの中盤の押し上げで回収することで一気に攻め込む算段である。

 先制点はこちらの形から。サカのロングボールに対して甘い対応となったダンクをフォローする形でファン・ヘッケが近寄ったタイミングで裏のハヴァーツにラストパス。1on1を難なく沈めたハヴァーツがブライトン戦でまたしてもゴールを決める。

 守備でもアーセナルは盤石。バックスと挟み込む形でトーマスがボールを順調に回収。中に絞るヒンシェルウッドからの楔を防いでいた。外に流れるジョアン・ペドロはやや捕まえづらそうにしていたが、こちらも堅いバックスの守備で防ぐことに成功している。

 試合の景色が変わったのは後半早々のライスの退場だろう。これによりブライトンが押し込むシーンが爆増する。アーセナルの得点の可能性を下げることはできていたが、ブライトンの得点の可能性が上がっていたかは微妙なところ。ブライトンの同点ゴールはミンテの抜け出しによってアーセナルのCB2人を釣ったところに入り込んだジョアン・ペドロが押し込むというもの。

 これくらいスペース的に空きがないと今のブライトンの動的な攻撃は生きないように思う。カラフィオーリを投入して5バックに移行したアーセナルをボックス内から動かすことにブライトンはかなり苦戦。左サイドでは三笘とエストゥピニャンという懐かしコンビが結成されるが、きっかけを作ることができずアーセナルに跳ね返され続ける。

 アーセナルもまたカウンターからチャンスを作るが、押し下げられた状態からのロングスプリントではなかなかシュートを決めるのは難しい。ハヴァーツの決定機は勝利をもたらす勝ち越し弾にはならなかった。

ひとこと

 退場が両チームの景色を変えたけども、ブライトンが人が減ったことによってやりやすくなったかは微妙なところである。

試合結果

2024.8.31
プレミアリーグ 第3節
アーセナル 1-1 ブライトン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:38‘ ハヴァーツ
BHA:58’ ジョアン・ペドロ
主審:クリス・カヴァナー

ノッティンガム・フォレスト【7位】×ウォルバーハンプトン【19位】

無敗も未勝利も継続

 開幕2試合でいまだに勝ち点を取ることができていないウルブス。ここまで無敗のフォレストのホームに乗り込んで今季初の勝ち点を取りに行く。

 立ち上がりに安定してボールを持っていたのはウルブス。バックスの数的優位を活かしてゆったりとボールを動かすと、狙いを定めたのは左のハーフスペース。降りてくるクーニャ、時々アイト=ヌーリという感じでフォレストの2CHの脇に顔を出し、反転して前を向く。ここが完全に攻撃の起点になっていた。

 この中盤で浮く選手を捕まえられるかどうかが試合の展開を分けた感がある。捕まえられれば、フォレストはカウンターを打つことができるし、前を向ければウルブスが有利という流れであった。

 明確な保持のルートを見つけていたウルブスであったが、先制点はフォレスト。セットプレーからウッドがネットを揺らして先行する。おそらく、CKにおける最重要人物ではあると思うのだが、ウルブスはあっさりマークを離してしまったのが少し不思議だった。

 しかし、ウルブスもすぐに反撃。落ち着かない中盤のポンポンとしたボールを抑えて、ベルガルドがミドルでゴールを打ち抜き、わずか2分で試合を振り出しに戻す。以降はオープンに攻撃を撃ち合う展開を経て、交互にボールを持ちながら勝負を仕掛けるターン制の様相に。

 後半立ち上がりにボールを持ったのはウルブス。前半の頭を焼き直したかのようにゆったりとした保持からサイドにボールをつけてフォレストのブロックを壊すトライを行っていく。

 それに対して、フォレストはジリジリとファウルを奪ってのセットプレーからの反撃に打って出る。前半に得点を決めたセットプレーから少しずつチャンスを作る。しかしながら、ジョンストンがファインセーブで立ちはだかるなど、フォレストのシュートは阻まれてしまう。こちらも前半同様にウッドがネットを揺らす場面もあったが、これはゴールが認められず。前半の再現とは行かなかった。

 チャンスが少ない試合ではないが、肝心なところでシュートが枠に飛ばないなどやや攻撃の試合が雑になってしまった印象があった。最後までゴールを狙った両チームだったが、これ以上ゴールは決まらず。試合は1-1のドローのまま幕を閉じることとなった。

ひとこと

 フォレストの無敗は継続、ウルブスの未勝利も継続という結果となった。

試合結果

2024.8.31
プレミアリーグ 第3節
ノッティンガム・フォレスト 1-1 ウォルバーハンプトン
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:10’ ウッド
WOL:12‘ ベルガルド
主審:サイモン・フーパー

レスター【15位】×アストンビラ【12位】

狙い通りのセットプレーで逃げ切り成功

 レスターは好調だったトップ下のブオナノッテを外すMFの構成で挑む。おそらくは守備を意識したものだと考えられるが、それでも早々にCBの間をワトキンスに打ち破られるなど幸先のいいスタートとは言えなかった。

 一方のビラも中央封鎖には後手に回るように。オナナが警告を受けるなどこちらも順調とは言えないスタートだった。ともに保持には3-2-5に変形するチームが4-4-2を相手にとって動かすという流れは基本的には保持側が優勢だった。

 そうした中で試合を動かしたのはセットプレー。FKからのデザインされたニアへの走り込みから最後はオナナがゴールを決める。明らかにビラはニアに走り込む準備はしており、ウィンクスは再三対応を確認していたのだが、トーレスにスクリーンを決められてしまい、あっさりと走り込みを許してしまったのが切ない。ハーマンセンにバチくそ怒られていた。

 相手を保持から動かすという手段に関してはビラの方が基本的には上だったように思える。レスターは外から押し下げるための手段が欠如していたし、失点後にハイプレスに出ていくレスターへの対応も落ち着いていた。先制点の場面に引き続き、ライン間のラムジーは引き続き猛威を振るっていた。

 後半は主導権を握ったのはレスター。ボールを持って押し込むところから試合を支配していく。前半は刺さらなかったハイプレスも後半の頭はかなり刺さるように。覚悟を持ったプレスに対して、ビラはかなりバタバタする入りとなった。

 流れが変わったのはバークリーの投入だろう。いそうでいない司令塔タイプのCHを投入することで幅広く動かしながらレスターのプレスを回避することに成功。左サイドからの仕掛けでデュランがゴールを決めてリードを広げる。開幕戦のゴールにそっくりの形からまたしてもデュランが決めて見せた。

 苦しんでいたレスターはこちらも交代で入ったブオナノッテが豪快なシュートを突き刺す。これで1点差まで強めることに成功した。

 しかしながら、反撃もここまで。交代選手が攻撃を活性化した後半だったが、前半のセットプレーでのリードを守り切ったアストンビラが勝利を挙げた。

ひとこと

 セットプレー対応、わかっていてもやられてしまうのはなかなかに切ない。

試合結果

2024.8.31
プレミアリーグ 第3節
レスター 1-2 アストンビラ
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:73′ ブオナノッテ
AVL:28′ オナナ, 63′ デュラン
主審:デビッド・クート

イプスウィッチ【18位】×フラム【10位】

初勝利の光が見えた1ポイント

 開幕2試合はいずれも敗戦したイプスウィッチ。プレミアリーグの洗礼と言えばそうなのかもしれないが、シティとリバプールという日程に単に恵まれなかった感もある。そういう意味では本番はここからとも言えるだろう。

 結論から言えば、この試合のイプスウィッチは相当健闘した。フラムの攻撃を引っ掛けたら素早く縦に進んでいったし、スローダウンした際もSBのオーバーラップを使いながら広く攻め手を見せていく。押し込む中でセットプレーからゴールに迫るシーンも。レノのファインセーブがなければ、あっさりと立ち上がりに先制点を奪っていたことだろう。

 プレミアでも通用しそうな強度を見せたイプスウィッチは先制ゴールをゲット。カウンターから右サイドを抜け出したデラップがネットを揺らしてリードを奪う。

 フラムは前から積極的にプレスにくるイプスウィッチに対して、対角パスから対抗。右の大外に立つトラオレで勝負を仕掛けていく。10分くらいから少しずつゆったりとした保持が増えたフラム。だが、遅攻になったとしてもトラオレ以外の攻めるポイントがなかなか見えて来ずに苦戦。逆に言えばブロック守備と特攻プレスの両面でイプスウィッチはそれなりの手応えを感じていたとも言える。

 悪くない流れだったイプスウィッチだったが、フラムは前半のうちに試合を振り出しに戻すことに成功。左サイドから抜け出したロビンソンのクロスに合わせたのはトラオレ。

 後半は互いにゆったりとした保持からスタート。前半よりは保持の局面が増えたイプスウィッチだが、フィーリングは悪くない。フラムの方がやや旗色が悪い立ち上がりとなった。

 フラムはベルゲとルキッチを並べたところから少しずつリズムを上げていく。イプスウィッチもこれに組み合っていく。目立っていたのはオグベネ。保持では抜け出し、非保持では自陣まで下がっての5バックの形成と喰らいついていく。

 終盤はカウンターの応酬となった両軍。だが、守備側の貢献が光り、これ以上のゴールが生まれることはなかった。イプスウィッチは手応えのある内容とともに今季初めての勝ち点1を手にした。

ひとこと

 イプスウィッチ。この水準の内容ならば3ポイントもそう遠くないのではないか。

試合結果

2024.8.31
プレミアリーグ 第3節
イプスウィッチ 1-1 フラム
ポートマン・ロード
【得点者】
IPS:15‘ デラップ
FUL:32’ トラオレ
主審:ルイス・スミス

ブレントフォード【13位】×サウサンプトン【16位】

2つの特大ミスがセインツの勝ち点獲得を阻む

 いまだに勝ち点を取れていないどころか、得点を取ることができていないサウサンプトン。代表ウィークに突入する前になんとかいい結果を出して、中断期間を迎えたいところである。

 そんな状況を反映するように気合の入った高い位置からのプレスでスタートしたサウサンプトン。4-3-3のブレントフォードは左右でボールを動かしながら中央に起点を作って横断させながらサウサンプトンのプレスを回避していく。

 ブレントフォードは非保持に回ると高い位置からプレスをかけていく形で応戦する。どちらのチームも保持に回った際にはきっちり解決策を用意していた印象。前に当てて一気に縦に進んでいるブレントフォードのプランとショートパスから動かしていくことでズレを作りたいサウサンプトンのプランは結構テイストが違うものだった。

 どちらかといえば序盤はサウサンプトンのペースだったように思う。ブレントフォードはカウンターの精度が悪く、戻りが早く中央を封鎖するサウサンプトンに対して志半ばで攻撃が終わってしまう。サウサンプトンはボールを下げた場合でもブレアトンが起点となることができるため、陣地回復はなんとかなる。

 前半も中盤になると展開はかなり均衡。サイドの裏抜けの折り返しに対して、互いの守備陣がギリギリで跳ね返すというシーンが続くように。

 そのようなどちらにも転がりうる展開において自陣でのミスが出てしまったのはサウサンプトン。ショートパスにこだわるチームらしく、CBが段差を作ってのパス回しをしている最中にがっちり相手のプレスに捕まってしまう。前半終了間際にブレントフォードは大きなゴールを手にする。

 後半もこの悪い流れを変えることはできなかったサウサンプトン。ハイプレスから展開を変えようという意識は見られたが、GKを絡めてサイドを変えながらボールを動かされてこれを回避されてしまい、ブレントフォードに自陣でボールを持たれてしまう。

 さらには先制点と同じくハイプレスでビルドアップを咎められたところから失点してしまったサウサンプトン。またしてもCBの移動のフェーズで失敗。アンカーのダウンズがいなくなったスペースに2人のCBが被ってしまい、プレーを躊躇したところをあっさりと掻っ攫われてしまう。

 その流れで立て続けにブレントフォードは3点目。ロングスローから最後はウィサが仕留めてあっさりと試合を片付けてしまった。

 サウサンプトンはアーチャーの裏抜けの工夫や右サイドに入ったディブリングなど途中交代の選手たちが前線を活性化するが、勝敗という観点では焼け石に水。終了間際にサウサンプトンの今季初のゴールを菅原が決めるのがやっと。ブレントフォードが華麗な逃げ切り勝利を決めた。

ひとこと

 2つ似たようなミスをしてしまえばプレミアで勝つのは難しい。

試合結果

2024.8.31
プレミアリーグ 第3節
ブレントフォード 3-1 サウサンプトン
Gtechコミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:43‘ 65′ ムベウモ, 69′ ウィサ
SOU:90+5′ 菅原由勢
主審:ジョシュ・スミス

エバートン【20位】×ボーンマス【14位】

スリリングな逆転劇でまたしてもエバートンは初勝利を逃す

 ここまで連敗で最下位に沈むエバートン。ホームで何とか今節は今季初勝利を手にしたいところである。

 そんな意気込みが前面に出る形で今節も激しい前プレからスタートしたエバートン。しかし、ボーンマスはハイプレスに落ち着いて対応。2CB+GK+アンカーのクックを使った広いポゼッションからエバートンのプレスを返り討ちにしていく。プレスの捕まえどころが見えないエバートンは徐々に撤退を余儀なくされるように。

 しかしながら、ハイプレスが機能しなくてもエバートンが主導権を握れないわけではなかった。この日のボーンマスは4-4-2で構えるものの、ブロックの網目が粗く、ライン間に差し込んだ選手が簡単に前を向ける。

マクニール、ゲイェといった選手の列落ちに対してもフリーズしてしまったボーンマス。降りる中央の選手でギャップを作ると、内側への斜めのランからWGの裏抜けで攻撃を完結させに行く。裏を狙うパスの出し手としてイロエブナムは悪くはなかった。

 一方のボーンマスもポゼッションからチャンスメイク。左右に落ちてゲームメイクするクックからボールを散らしつつ、こちらもライン間を除きながら攻略に挑んでいく。初手でエバートンのハイプレスが外されて以降は構える中盤に対して解決策を探る展開となったし、両軍それなりに道を敷くことができた前半だったといえるだろう。

 だが、後半の立ち上がりの展開はエバートンに大きく傾く。セットプレーからキーンが早々にネットを揺らすと、その7分後には右サイドの縦関係から抜け出したコールマンがキャルバート=ルーウィンのゴールをアシストする。

 2点のリードを得てもなおアグレッシブな姿勢を見せたエバートン。敵陣からボーンマスにプレッシャーをかけていく。苦しくなったボーンマスだが、アタッカーの投入で少しずつ反撃に。特に左のハーフスペースに入り込むシニステラから少しずつテンポを引き戻していく。

 エバートンのプレスをひっくり返せるようになったボーンマスは左サイドからのクロスをセメンヨが仕留めて1点差に。この時点で時計の針は87分であった。

 だが、このゴールが劇的な逆転勝利のきっかけだった。90分過ぎには後方から飛び出した状態でクックがゴールを仕留めて追いつくと、最後は勢いのままにシニステラがゴール。枚数が揃っておらず、いる人のカバーの意識が希薄なエバートンの守備ブロックを一気に叩きのめす。

 2点のビハインドから一気に試合をひっくり返したボーンマス。10分で3点を仕留めるスリリングな逆転劇でグディソン・パークを静まり返らせた。

ひとこと

 2点リードで枚数が揃っていないようなクロスの受け方を終盤にすること自体がダイチのエバートンらしくないし、ゲイェのサボりなど失点における個々人のディティールの雑さも今のエバートンの強みと反している感じがする

試合結果

2024.8.31
プレミアリーグ 第3節
エバートン 2-3 ボーンマス
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:50’ キーン, 57‘ キャルバート=ルーウィン
BOU:87’ セメンヨ, 90+2‘ クック, 90+6’ シニステラ
主審:スチュアート・アットウェル

ウェストハム【9位】×マンチェスター・シティ【1位】

自在なシティが開幕からの連勝をさらに伸ばす

 昨季は最終節で相まみえた両雄。アーセナルファンが優勝のわずかな望みをウェストハムに勝手に託した一戦でもある。今年は第3節での激突だ。

 ウェストハムはシティに対して、前から捕まえる意識の強いスタート。ロドリゲスが味方を追い越してチェイシングに行くなど、積極的な姿勢を見せる立ち上がりとなった。

 シティの対応は極めていつも通りだった。コバチッチのサリー、コバチッチとフラットな立ち位置まで下がるベルナルドと相手がどこまでついてくるかを確認。徹底的についてくるわけではないと分かったため、降りるアクションをベースにウェストハム相手にプレスを外していく。

 プレスの基準がなくなったウェストハムに対してシティは左右両側から進撃。グリーリッシュとデ・ブライネで半分こした大外からハーフスペースの裏という王道連打で攻略する左サイドと、パケタの背後のルイスから侵入する右サイド。どちらのサイドからも深さを作ってボックスに迫ることができていたシティであった。

 だが、先制したのは保持で押し込む局面ではなくハイプレスから。ウェストハムの左サイドのユニットを深追いすることで咎めたベルナルドからのカウンターをハーランドがあっという間に完結。一瞬の出来事で先制点を奪い取る。

 それでもツキが残っていたウェストハムは右サイドからの運びからのクロスをディアスが処理しきれずにオウンゴールをゲット。幸運な形で追いつく。

 しかし、両チームの差は歴然であった。IHが左右に飛び回ることで局所的にオーバーロードを作り出し、攻略のポイントを定めるシティとアントニオの裏抜けしかルートが見えないウェストハムではアタッキングサードでの余裕が違う。オウンゴールにも動揺しないシティはコバチッチとルイスがつないだ中央でのわずかな隙をハーランドが仕留めて前半の内に勝ち越す。

 あっという間に落ち着きを取り戻したシティ。後半頭からのウェストハムのラインを下げての5-4-1は非常に割り切りが感じられるものであった。シティは前半同様に左に流れるデ・ブライネからギャップを作り、押し込んでいく。

 ウェストハムもカウンターにフォーカスするとクドゥスが決定機を作るなど、割り切ったなりにチャンスを作る。55分からは少しずつボールが持てるように。SBが積極的に内側に絞るなどポジションチェンジへのチャレンジも見せたが、シティのゴールを奪うには至らなかった。

 すると、83分にはハーランドが2試合連続のハットトリックを達成。ギュンドアン→ヌネスという途中出場組のおぜん立てを受けてこの日3点目を決める。

 危なげなく勝利を収めたシティ。開幕3連勝で今季はシーズン序盤から横綱相撲を見せている。

ひとこと

 実際の点差よりも相手の心が折れるのが早い気がする。これが王者の風格とか、肌を合わせたチームの感覚なのかな。

試合結果

2024.8.31
プレミアリーグ 第3節
ウェストハム 1-3 マンチェスター・シティ
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:19’ ディアス(OG)
Man City:10‘ 30‘ 83’ ハーランド
主審:マイケル・オリバー

チェルシー【8位】×クリスタル・パレス【17位】

中央集結の目的が見えてこなかったチェルシー

 前節、ウルブスを粉砕してマレスカ政権での初勝利を手にしたチェルシー。しかしながら、大味の時間も少なくなく、スコアほどの強さを見せ続けた90分というわけではなかった。真価が問われるのはここからだろう。

 この試合のチェルシーは保持で少し工夫を施してきた。カイセドが中盤に残り、エンソは左のハーフスペースに流れて上下動。きっちり左右対称というわけではないが、降りて受けて反転して前進を狙うパルマーと近い動きを見せたといっていいだろう。

 アンカー役のカイセドは最終ラインに落ちて、実質中盤に入るのはグストという変化も見せたチェルシー。アタッキングサードの攻め手になったのはマドゥエケ。右サイドから李リチャーズの背後を取る動きを繰り返して、チェルシーの推進力となる。時にはジャクソンとレーンを変えながらの攻撃も見せており、なかなか動きとしては興味深かった。

ヘンダーソンのセーブでなんとか踏ん張るパレスだったが、再三の右サイドからの突破を狙うチェルシーについに破られてしまい失点を喫することとなった。

 もっとも、チェルシーの保持のメカニズムが効きまくっていたかは怪しいところ。降りてくるパルマーとエンソの動きはやや単調な感じもあったし、左サイドの大外でレーンを重ねたネトとククレジャの縦関係が、シャドーの鎌田が引いて受ける4-4-2っぽい枚数合わせを敢行したパレス相手に何かを生み出せていたわけでもなかった。

 しかしながら、パレスの前進はチェルシー以上に苦しい。左サイドに開くリチャーズから奥を狙う一発を軸とする動きを見せたが、チェルシーの迎撃のターゲットが非常に明確であり起点を作れず。我慢が効かなかったエゼがラインを下げて怖くないエリアまで降りてきてしまうというありさまだった。

 40分手前にチェルシーは少しずつ迎撃部隊の対応が怪しくなったこともあり、パレスはボールを持てるように。しかし、スコアは動かず。試合はチェルシーのリードでハーフタイムを迎える。

 後半もチェルシーが仕切り直してボールを持つスタート。中央に降りるパルマーの反転はさらに見切られている感があった。

 パレスの苦しさは相変わらずであったが、敵陣でのFKでのリスタートからエゼがミドルでネットを揺らして同点。一振りで試合を振り出しに戻す。このゴールから少しずつパレスはチェルシーの中盤のギャップを使ってのポゼッションができるように。

 後半のチェルシーはフェリックスを投入し、さらにインサイドの起点を増やす。だが、余計に中央がごちゃごちゃした感があり、相手を動かしての攻略まではたどり着かなかった。グストの負傷からのムドリクは少しやけくそ感もあったが、中央の渋滞は選手交代では解消できず。右サイドのエンクンクとフォファナが終盤にほんのり奮闘したが、それ以上の成果を見せることはできず。チェルシーはホーム初勝利を飾ることができなかった。

ひとこと

 尖りがすっかりなくなってしまったパレスも方向性を打ち出せているのかよくわからないチェルシーも少し気になる出来だった。

試合結果

2024.9.1
プレミアリーグ 第3節
チェルシー 1-1 クリスタル・パレス
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:25’ ジャクソン
CRY:53’ エゼ
主審:ジャレット・ジレット

ニューカッスル【6位】×トッテナム【5位】

冴えわたるニューカッスルのトランジッションがスパーズを粉砕

 ホームでエバートンを下し、前節今季初勝利を手にしたトッテナム。難敵に対峙する今節はセント・ジェームズ・パークに乗り込んで、アウェイでの初勝利を狙うチャレンジに挑む。

 序盤からボールを持つのはトッテナム。サールとマディソンをIHとする4-3-3のような仕組みからニューカッスルの4-5ブロックを崩しにいく。ニューカッスルは非常に慎重な入りだったといえるだろう。リトリートに時間をかけることができると、ジョエリントンがきっちりと列を下げて左の大外に入る5-4-1を組んでくる。移動コストはかなりかかるが、スパーズが明らかにゆったり攻めている時は明確な変形を見せたといっていいだろう。ニューカッスルはリトリートとハイプレスを使い分けながら緩急をつけてトッテナムに対峙する。

 まずは保持でどう破るかを問われるスタートとなったトッテナム。CF起用となったクルゼフスキの縦に抜け出すアクションから奥行きを作りだしたり、大外のオドベールから突っついたりなど局所的な個人での勝負が先行するが、サイドを崩し切れない感はやや先行する形かサイドから押し下げてのミドルなど深さを全く使えていないことはなかったが、そのミドルが枠をとらえることはできなかった。

 トランジッションにフォーカスしたニューカッスル。やや一本調子のカウンターが中心になったが、ファン・デ・フェンのいないトッテナムのバックスに対してはこれでも効果は十分であった。

 ポゼッションのトッテナム、カウンターフォーカスのニューカッスル。先制したのはニューカッスル。素早いリスタートから左サイドの背後を取ると、パスを受けたバーンズが先制ゴールを仕留めて見せる。

 反撃に出たいトッテナムだが、後方からの縦パスはやや強引さが先行。前半の内にスコアを戻すことはできなかった。

 トッテナムは後半に4-2-3-1にシフト。ライン間を狙うソン、クルゼフスキ、ポロ、ウドジェでニューカッスルの中盤を揺さぶっていく。

 インサイドに入り込むポイントを作れるようになったトッテナムは少しずつ押し込めるように。バーンやクラフト、ギマランイスの体を張った対応が目立つ後半のスタート。押し込まれるところは苦しいニューカッスルであったが、イサクやゴードンが単騎の裏抜けでトッテナムの守備をひっくり返すところまでたどり着くなど手ごたえがある展開に。

 押し込むことに成功したトッテナムは同点に。左サイドでブロックの外からミドルを打ち込んだマディソンのシュートのこぼれからオウンゴールをゲットする。

 追いつかれたニューカッスル。ポープのセーブで勢いに乗ったトッテナムを止めると、この試合でこだわってきたラインブレイクから勝ち越し。ジョエリントンの足の長いパスで抜け出したマーフィーの折り返しをイサクが仕留めて再びリードを奪う。

 終盤は自陣での守備にファウル奪取に大車輪の活躍を見せるギマランイスを軸として、ニューカッスルがトッテナム相手に守り切ることに成功。見事に勝ち点3を手にした。

ひとこと

 トッテナムはまだ前線の基本形と攻めの方向性が決まっていない感があった。ファン・デ・フェンがいればもう少し違った感もあったが、トランジッションの強いニューカッスルに対する試行錯誤はより失敗に対してシビアな状況だったかもしれない。

試合結果

2024.9.1
プレミアリーグ 第3節
ニューカッスル 2-1 トッテナム
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:37‘ バーンズ, 78’ イサク
TOT:56’ バーン(OG)
主審:ロベルト・ジョーンズ

マンチェスター・ユナイテッド【11位】×リバプール【4位】

充実な結果の上で懸念が出るということは

 長期政権後の新監督は一般的に成果が出ない貧乏くじとされている。しかしながら、スロットのリバプールは開幕から好調をキープ。連勝スタートでファンもひとまず不安からは解放されている。今節の対戦相手はファーガソン以降、まだリーグタイトルを取り戻すことが出来ていないユナイテッドだ。

 互いにバックラインから小気味よくパスを入れていくスタート。ユナイテッドはカゼミーロが最終ラインに入るところからマズラヴィが列を上げる形に変形。リバプールの4-4-2気味の陣形の間を取りながら前進をしていく。

 一方のリバプールはロバートソン以外の3人にマック=アリスター、グラフェンベルフを絡める形でビルドアップを行っていく。ポゼッションで優位だったのはリバプールの方だろう。ユナイテッドのプレス隊は中盤をケアしつつ、リバプールのバックスにプレスに行くが、これをあざ笑うかのようにリバプールは滑らかに縦パスを入れていく。中でもグラフェンベルフの列上げと時折左サイドのやや低い位置に顔を出すショボスライの気づかいは目を見張るものがあった。

 またインサイドでルートを作れなかった場合には、リバプールには両サイドに対角のパスを出せばいいという保険もある。ディアス、サラーを向こうに回しておいて「保険」呼ばわりはあまりにも贅沢だが、中央のパスルートが仮に開かなくても即詰みにはならないということである。

 ハイプレスに出ていけなくなったユナイテッドに対して、リバプールのプレスは勢いを増すように。インサイドに差し込むことを狙うリサンドロ・マルティネスのパスミスは何とか咎められずに済んだが、直後のカゼミーロのパスミスからリバプールは先制ゴールをゲット。ファーで合わせたディアスが完全にフリーになっていた光景に、先日のブライトン戦のジョアン・ペドロがフラッシュバックしたユナイテッドファンもいたかもしれない。

 勢いに乗るリバプールは前半の内に追加点。同じくカゼミーロのところを咎めることに成功すると、今度は中央からディアスが正確なショットでオナナの守るゴールを射抜く。ポゼッションで主導権を握り、押し下げてからのハイプレスで仕留めるというプランでユナイテッド相手に優位に試合を進める。

 ユナイテッドは2失点に絡んだカゼミーロを下げてコリア―を投入。チャレンジ枠で後半に挑む。前線への飛び出しなど見どころが全くないわけではなかったが、後半もリバプールの保持をベースに強度の高い展開が見られるようになると、少しずつおいていかれるようになったのは否定できないところだ。

 リバプールはメイヌーを捕まえたところからカウンターに成功。サラーが3点目を仕留めて完全に試合は決着ムードとなる。

 しかし、リバプールが盤石だったかといわれるとそういうわけでもない。終盤はボールを運ぶことができたユナイテッドに対してのクロス対応が非常に甘かった。ユナイテッドのアタッカー陣の精度には助けられたが、より競っている展開であれば致命傷になっていてもおかしくはない。ファン・ダイクとコナテにしては珍しい終盤の出来だなと思った。

ひとこと

 多くの人が想像するよりも上を行っている出来なのは間違いないリバプール。盤石でない部分はまだあるので、そこを伸ばしつつ安定感をどこまでつけていけるかだろう。特に後ろの迎撃のパフォーマンスは監督交代の影響が少ない部分だと思うので、ここは早急に目途を立てたい。といってもクリーンシートなんだけど。充実な結果が出ている上で懸念が出ているという時点で上々の滑り出しだろうなと思う。

試合結果

2024.9.1
プレミアリーグ 第3節
マンチェスター・ユナイテッド 0-3 リバプール
オールド・トラフォード
【得点者】
LIV:35’ 42‘ ディアス, 56‘ サラー
主審:アンソニー・テイラー

今節のベストイレブン

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