第1節 オーストラリア戦(A)
暗雲立ち込めるホーム開幕戦
またしても日本と同居することとなったオーストラリア。サウジアラビアとのいつもの三つ巴である。そんな彼らの最終予選はホームのバーレーンとの一戦からのスタートだ。
ボールを持つのはオーストラリア。アンカーにオニールが入る形で片側サイドを上げるという3-1-6の形からビルドアップを行っていく。バーレーンの4-4-2に対して外循環でボールを回していく。
しかしながら、SHがきっちりとポジションを下げてスペースを埋めるバーレーンに対して、なかなかオーストラリアは攻め切ることができず。6人を前に置くことによる奥行きだとか、あるいはレーンを重ねて相手を乱すといったアプローチもほぼなく、ただただボールを回す時間を過ごすこととなる。
バーレーンはボールを奪い返すとショートパスから時間を作り、オーストラリアのプレスを回避。即時奪回による波状攻撃を目論んでいたオーストラリアだが、バーレーンのポゼッションに対して圧力をかけ切ることができなかった。
バーレーンは右サイドのアリ・マダンへのロングボールからの前進のルートを構築。さすがにオーストラリアに対して互角のポゼッションとまではいかないが、機会があった際にはスムーズに前進することはできていた。
オーストラリアはようやく終盤になり、サイドからの裏抜けなどの工夫を見せるようになった。だが、前半はスコアレスのまま終了。ハーフタイムまでにオーストラリアはリードを奪うことはできなかった。
後半、オーストラリアはようやく前進のメカニズムを掴んだ感があった。左サイドに浮遊するグッドウィンがラインを下げて受けるバーレーンの最終ラインの手前でボールを受けると、対角の大外のパスという目先を変える大きな展開を披露。このプレーから少しずつオーストラリアはグッドウィンを起点として攻め筋を構築していく。
しかしながら、バーレーンもデュエルの威力は落ちず、球際に寄せることができた時はオーストラリアにきっちりと抵抗を見せる。接触プレーによってバーレーンの選手が痛むシーンが目立つようになる中、ハイキックによってイェンギが一発退場。オーストラリアは10人での対応を余儀なくされることに。
10人でもボールを持つ側となったオーストラリア。大外へのロングキックからブロックの切り崩しを狙っていく。しかしながら、得点を決めたのはバーレーン。左サイドの大外→ハーフスペースの裏の突破に対して、オーストラリアの対応が遅れると、これがオウンゴールを誘発。89分にスコアを動かす。
ホームでまさかの敗戦スタートとなったオーストラリア。最終予選のスタートはなんとも雲行きの怪しいものとなった。
ひとこと
オーストラリアが点を取れないのはあるかなとは思ったが、まさか取られるとは思わなかった。
試合結果
2024.9.5
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
アジア最終予選 グループC 第1節
オーストラリア 0-1 バーレーン
シーバス・スーパー・スタジアム
【得点者】
BHR:89‘ サウター(OG)
主審:オマル・モハメド・アルアリ
第2節 日本戦(H)
後半の両軍のシフトチェンジが日本の大量得点に繋がる
波乱が続くグループC。唯一、順当に初戦を勝ち抜いた日本が挑むのが初戦でアップセットを繰り広げたバーレーン。酷暑の中東での連勝を狙う。
バーレーンは4-4-2。ただし、2列目の守備意識は非常に極端でSHが2トップとフラットな位置まで追いかけ回すこともあれば、最終ラインに吸収される形で5バックや6バックのような形になることもあった。SHだけでなく、CHもDFラインに入ることもあり、非常に守備の基準は流動的だったと言えるだろう。
ボールを持つ日本はまずは王道のスタート。数的優位を有しているバックラインから大外のWBにつけて攻略を狙う。ハーフスペースの裏抜けもあったが、最もクリティカルにゴールに迫ったのは三笘からのファーへのクロス。堂安がポストを叩いたシーンが序盤の見どころということになった。
保持において日本は先にあげた極端な二極化するバーレーンの中盤のギャップは使えそうな気もしたが、細かいズレを使った前進は狙わず。守田がサリーで後方の枚数調整をしていたが、基本的には大外でWBを経由するか、あるいはシンプルな裏抜けに終始。南野が精力的に裏に抜けてボールを引き出していたのが印象的だった。
バーレーンの保持はシンプルなロングキックからスタート。日本は前3枚がスイッチを入れればバーレーンはすぐにボールを蹴る構えであったが、気温の高い環境下では頻繁にスイッチを入れることはできず。バーレーンもそれに気付いたのか、少しボールを持ちながら日本の時間を作らせないように振る舞っていた。
日本のDFを背負ってのファウル奪取からのFK、サイドにボールが出たらロングスロー。両軍のオフサイドも含めてかなり試合は止まる時間が長くなる停滞ムード。三笘→堂安のファークロス以降はどちらにも明確なチャンスはなかったが、バーレーンも押し込む時間を作るという点では試合はフラットだったと言っていいだろう。
そうした膠着した展開の中で日本は右サイドに抜け出した鎌田がハンドでPKを獲得。サイドを変えて南野の役割を踏襲した鎌田が結果を出したのは意義深いというか、停滞した戦況の中で一番試合を動かそうとした日本のシャドーがご褒美をもぎ取ってくるのは面白いなと思った。
上田がゴールを決めて日本は先制。ハーフタイムをリードで迎えることとなった。
日本はハーフタイムに伊東を投入。右サイドにスピードスターを入れる。すると、その伊東がいきなり得点に絡む。三笘がカットインしながらキープすると、右サイドの伊東に展開。折り返しをなんとか収めた上田がパワーあふれるシュートを押し込んでゴール。早々にリードをさらに広げる。
後半の日本の変化点は守田が高い位置での仕事にシフトしたことである。前半の項でいうところの「細かいこと」を始めた感がある。鎌田も同様にライン間をウロウロしつつ、前に走る機会を伺っており、守田と似たようなエリアで仕事を探るようになった。
この方向性に影響を与えたのはリードを広げられたバーレーンがかなりボールを奪いにこようとしたこと。ライン間が間延びしたことにより、守田と鎌田がライン間でボールを受けることはかなり容易になった。
加えて、伊東純也の裏抜けがライン間の守田に次の選択肢になれた事もさらに日本の攻撃力を増す手伝いをしていた。間をとり、そこから裏抜けでスピードアップをすることでバーレーンを後手に回った状態で攻略ができるようになる。
守田はここから前線への飛び出しで結果を出す。上田が強固な壁となってポストプレーで作ったスペースに飛び込んで3点目を奪うと、3分後に三笘のバックドアの並行サポートでフィニッシャーとなり、立て続けにゴールを仕留めた。
バーレーンはこのゴールで完全に諦めムードが強くなる。特にプレスに出ていく意欲が削がれてしまい、日本のボール回しを見つめるだけのシーンが増えていく。
その一方で日本は交代選手がアピールに躍起に。三笘と近いことができることをオフザボールとオンザボールで証明したい中村の仕掛けからゴールに迫ると、最後はこちらも結果が欲しかった小川がネットを揺らす。
ひとこと
後半の日本の方向性の調整と、バーレーンの追い回す姿勢が噛み合っての大量得点となった。やや混戦模様のグループCを抜け出す連勝と得失点差を得た意義は大きい。バーレーンがプレスに出てくる契機となった先制点はもちろん大きいけども、中盤の守備のチューニングがフラフラしているこの日のバーレーンであれば、ハンドがなくともどこかで解決策は見つけていた感がある。それくらい守田や鎌田の役割調整の能力は高かった。
試合結果
2024.9.10
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
アジア最終予選 グループC 第2節
バーレーン 0-5 日本
バーレーン・ナショナル・スタジアム
【得点者】
JPN:37‘(PK) 47′ 上田綺世, 61′ 64′ 守田英正, 81′ 小川航基
主審:ルスタン・ルトフリン
第3節 インドネシア戦(H)
2024年有数の超絶FK
サウジアラビアとオーストラリアに引き分けた9月シリーズでグループCの台風の目になっている感があるインドネシア。アウェイでアジア予選においてはやや格上感のあるバーレーンとの一戦に挑む。
立ち上がりは落ち着かないスタート。ロングボールでの競り合いがベースとなり、ともに痛む選手が出るというフィジカル色の強い立ち上がりとなった。
どちらかといえば保持で主導権を握ったのはバーレーンの方だろう。3-2-5っぽいボール保持から機を見たハイプレスへの移行でインドネシアを追い込みにいく。ただ、ダークホースも伊達ではなく時折このプレスを交わしながら前進することもできており、試合は一進一退の展開だったと言えるだろう。
そうした中で生まれた先制点はスーパーなFK。マルフーンの一撃は個人的には今年見たFKの中でも特大のインパクトを放つもの。無回転でのシュートを超長距離から仕留めてバーレーンが試合を動かすことに成功する。
バーレーンは先制点以降は落ち着いたゲームメイクが目立った。相手の前線の4-1のブロックを伸縮させながら自陣におびきよせ、敵陣に侵入するための動線を作ることができていた。インドネシアも保持に回ればハーフスペースへのアタックで特攻はできていたが、バーレーンはCHがこのスペースを埋めることで十分に対抗できていた感がある。
プレスに行く頻度はリードしても変わらないバーレーンは前半の主導権を握ったと言えるだろう。中盤からスピードに乗って、アリ・マダンのパンチ力のあるシュートなどで完結するバーレーンの攻撃は確かに手応えのあるものであった。
だが、前半終了間際にインドネシアは同点ゴールをゲット。右サイドをこじ開けてのオラットマングーンの得点でハーフタイムの前に試合を振り出しに戻す。
後半も展開は変わらずボール保持の主体となるのはバーレーン。インドネシアはカウンターをベースにチャンスを作るというのも前半と同じ形である。
先にスコアを動かすことができたのはインドネシア。カウンターからストゥライクがゴールを決めてついにバーレーンをひっくり返す。
バーレーンはセットプレーを中心にインドネシアのゴールを脅かすシーンを数多く作ることができていたが、なかなかこじ開けることができないまま試合は進んでいく。だが、苦しむバーレーンをVAR絡みの遅延があったとはいえ長すぎるように思える後半ATが手助け。99分のセットプレーからマルフーンが再びしたたかにゴールを決める。
あと一歩で最終予選勝利を挙げることができたインドネシア。目前でバーレーンに勝利をかっさらわれる格好になってしまった。
ひとこと
マルフーンのFK、ベラボーにすごかった。
試合結果
2024.10.10
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
アジア最終予選 グループC 第3節
バーレーン 2-2 インドネシア
バーレーン・ナショナル・スタジアム
【得点者】
BHR:15‘ 90+9′ マルフーン
IND:45+3‘ オラットマングーン, 74′ ストゥライク
主審:アフメド・アルカフ
第4節 サウジアラビア戦(A)
負傷者が開きかけた扉を閉じる
第3節で日本に敗れてしまい、首位との勝ち点差が5まで開いてしまったサウジアラビア。バーレーンとのホームゲームで日本とオーストラリアが削りあっている間に何とか勝ち点を積み上げたいところだろう。
ボールを持つスタートとなったのはホームのサウジアラビア。3-2-5をベースにポジションを取る。中盤の一角に入るアル・マルキが柔軟なポジションを取るのが特徴であり、彼がサウジアラビアの守田といえる立ち位置なのだろう。
バーレーンの4-4-2での非保持に対して、サウジアラビアの3-2-5の保持は安定。その一方でどこまでバグを生み出すか?のところははっきりしておらず。この仕組みなら率直に言えばサイドからズレを作れる方策を準備しておきたかったところだが、あまりそうしたアプローチは見られない試合となった。
だからこそサウジアラビアにとって助かったのはトランジッションの要素。保持に回ったバーレーンはロングボールから戦況を動かそうとするが、前線で収められずに跳ね返されたところからピンチに陥る。こうした動的要素を含むとアル=ブライカーンの抜け出しからアル・サハティがPKを獲得するというシーンのような決定的なチャンスになる。
だが、このPKはストップ。ルトファラのファインセーブでサウジアラビアの先制のチャンスは跳ね返されることとなる。
このPKは試合の展開を変えず。サウジアラビアの保持を主体とする静的な展開は一進一退という様相で進んでいく。先制点のような前線のサイドの裏の抜け出しに関しても、PK以降はバーレーンが迷いなくCBが潰しに出て行くようになったため、大きなチャンスにはならなかった。攻撃においてもなかなかシュートまでたどり着けなかったバーレーンだったが、トランジッションからアル・ケラシのオーバーラップで時間を作るなど、少しずつゴールまでの距離を縮めていく。
後半も試合の大枠は同じくサウジアラビアの保持がベース。サイドでボールを持った時を中心に後方の選手がオーバーラップして追い越すアクションを見せるなど、前半よりも動きをつけることはできていた。ただし、パスの精度は低く、この追い越すアクションを得点に結びつけるにはもう一声といった印象だろう。
結局のところは前半のようなカウンターをベースにスペースがある状態の方がサウジアラビアにとってはやりやすそうだった。バーレーンは後半に色気を見せていたため、サウジアラビアにとっては願ってもいない展開になる。だが、負傷者が出たことで終盤にバーレーンは10人に。こうなると、バーレーンは引き分けやむなしになるので撤退するほかない。
サウジアラビアにとってはせっかく開きかけた扉が閉じてしまった印象。結局押し込む機会をいかせないまま試合終了のホイッスルを迎えることに。サウジアラビアは10月シリーズを未勝利で終えることとなった。
ひとこと
保持ベースのチームがカウンター基調の方が全然やれそうというあるあるに陥ってしまった感のあるサウジアラビアだった。カンノとか戻ってくれば違うのだろうか。
試合結果
2024.10.15
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
アジア最終予選 グループC 第4節
サウジアラビア 0-0 バーレーン
キング・アブドゥッラー・スポーツシティ・スタジアム
主審:サルマン・ファラヒ