このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。
Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第21節
2020.10.10
川崎フロンターレ(1位/18勝2分1敗/勝ち点56/得点62 失点19)
×
ベガルタ仙台(16位/2勝6分11敗/勝ち点12/得点21 失点38)
@等々力陸上競技場
戦績
近年の対戦成績
直近14試合で川崎の10勝、仙台の1勝、引き分けが3つ。
川崎ホームでの成績
直近10試合で川崎の7勝、引き分けが3つ。
Head-to-head
<Head-to-head①>
・川崎は直近7戦の公式戦における仙台戦で無敗(W5,D2)
・仙台のリーグでの川崎戦勝利は2013年が最後。
この試合で川崎が勝てば、仙台は川崎が最も勝ち点を稼いでいる対戦相手になる(合計勝ち点85)。このデータからも分かるように仙台は川崎にとってはお得意様。ルヴァンカップでは1stレグで先手を取られたりもしたが、直近7年間はリーグ戦では無敗。2013年以降の13試合で川崎は仙台相手にリーグでは負けていない(W8,D5)
<Head-to-head②>
・川崎はホームでの仙台との公式戦で5連勝中。
・仙台にとって等々力での川崎戦の勝利は2011年までさかのぼる。
ホームになるとさらにその傾向は顕著。現在公式戦でのホーム仙台戦は5連勝中である。うちクリーンシートは1つと少ないものの、それ以上に点をとって勝利しているということである。
仙台の最後の等々力での勝利は9年前の2011年。太田吉彰と鎌田次郎の得点で逆転勝ちした試合が最後である。
<Head-to-head③>
・仙台は等々力での公式戦を無失点で終えたことがない。
・ただし、川崎も等々力での仙台戦の完封は過去に3回だけ。
川崎ホームでの仙台戦はここまで21試合が行われているが、仙台はこの21試合を一度も無失点で終えたことはない。ただし、川崎もクリーンシートは3回だけ。両チームとも得点を取るケースが多い試合となっている。
スカッド情報
【川崎フロンターレ】
・長谷川竜也は負傷後未だベンチ入りはなし。
【ベガルタ仙台】
・蜂須賀孝治は右ひざ関節軟骨損傷で全治約4週間の離脱中
・吉野恭平は反復性右肩関節脱臼で手術を敢行。4-6ヶ月の離脱。
・ジャーメイン良は右足舟状骨骨折で約3ヶ月の離脱。
・兵藤慎剛は右足内転筋肉離れで5週間の離脱。
・松下佳貴は右ひざの靭帯損傷で8-10週間の離脱中。
・赤﨑秀平は左足第2中足骨骨折で8-10週間の離脱中。
・富田晋伍は左ひざ前十字靭帯損傷で約半年の離脱中。
予想スタメン
Match facts
【川崎フロンターレ】
<川崎のMatch facts①>
・勝てば今季2回目のリーグ戦9連勝。
・公式戦連敗になれば今季初。
連勝と連敗が共にかかる一戦となる。「リーグ戦」という観点で見れば8連勝中。この試合に勝てば今季2回目の10連勝をかけて次節広島に挑むことになる形である。
「公式戦」という観点ならば連敗の危機。最後の連敗は2019年の9月。天皇杯→リーグ戦という神戸との連戦で喫したものだ。仮にホームでの連敗となると2018年5月が最後。浦和とFC東京に立て続けにしてやられた地獄のゴールデンウィーク以来である。
<川崎のMatch facts②>
・直近8試合の公式戦の敗戦はいずれも前半に失点をしている。
・その年のJリーグカップ最終戦直後のリーグ戦は直近11戦で10勝。
負けた試合の共通点を挙げてみると直近の8試合はいずれも前半に失点をしている。FC東京戦や名古屋戦などじりっと構えられて敗れるケースもあれば、昨年の横浜FM戦や神戸戦のように前半から圧倒されて耐えられない場合もある。
興味深かったのはこの8敗からさらに遡った4敗(2019年:上海、G大阪、蔚山 2018年:C大阪)はいずれも89分以降に決勝点を決められているという傾向がある。確かにここしばらくは終盤の失点で泣いた試合はないかもなぁ。
ちなみにその年のJリーグカップでの川崎の戦いが終わった次のリーグ戦の成績を見てみるとかなり好調。直近11試合で10勝を挙げている上、その試合がホームゲームだった場合に限定すれば8連勝中。リーグカップからの反発は期待できそう。去年は優勝だったから反発じゃなかったけど。
<川崎のMatch facts③>
・小林悠は直近6試合の出場した仙台戦で6得点3アシスト。
・レアンドロ・ダミアンは今季ホームで6得点。チーム内で最もホームで得点を取っている選手。
このカードの最多得点者は小林悠。通算12得点でそのうちホームでは8得点。今年のユアスタでは仙台サポーターにがっちり嫌な思い出を植え付けることに成功したように名も実も仙台キラーである。
そんな小林の今季11得点の内訳を見てみると、ホームではわずかに3得点。ホームでのゴール数が多いのはむしろダミアンのほうだ。相変わらずの異分子感は否めないが、体のキレは悪くなさそうでC大阪戦ではワンタッチで価値を示し、FC東京戦ではCBが非常に対応に苦慮していた。調子が見極めづらい選手だが、上昇気配のような気もする。三笘が入るとやたら左に流れる現象は不思議なのだけども。
【ベガルタ仙台】
<仙台のMatch facts①>
・リーグ戦は直近10試合勝ちなし(D3,L7)
・ここ9試合はクリーンシートがない。
仙台の話をするとどうしても暗い話題は避けて通れない。チームは苦しんでいる。リーグ戦は10試合連続で勝ちなしでここ9試合はクリーンシートがない。複数失点はこの間に7試合と守備の部分で踏ん張り切れない結果になっている。
<仙台のMatch facts②>
・直近2試合はいずれも複数得点を記録している。
・今季の勝利は2試合ともアウェイゲームで挙げたもの。
兆しがあるとすれば直近2試合はいずれも複数得点を決めていることである。仮に3試合連続になれば2018年8月以来2年ぶりのこと。仙台が1-0で勝つイメージはわかないので、この試合も勝ち点を取るには複数得点が必要そうである。
さらに今季の勝利は2試合ともアウェイでのもの。ホームのサポーターに勝利を届けられていないのは心苦しいが、今季の成績だけで見ればアウェイの方がチャンスがあるということになる。
<仙台のMatch facts③>
・直近3試合においてアレクサンドル・ゲデスは3得点を挙げている。
・長沢駿は直近3試合の川崎戦で3得点1アシスト。
ワントップに定着したゲデスはここ3試合で3得点と好調。序盤ではサイドのポジションを争っていたが、ここに来て中央での起用が目立つようになっている。この3得点はすべてアウェイゲームで挙げたもの。初めての凱旋となる等々力でも結果が出せるかどうか。
ただ、印象でいえば川崎サポが恐れているのはむしろ後から出てくるであろう長沢の方か。直近3試合の川崎戦では4得点に絡んでおり、苦しめられた印象が強い。G大阪時代も含めてここ3年間の等々力の試合ではすべて得点を挙げており計4ゴール。嫌な思い出の上塗りを狙ってくるだろう。
展望
■食いつかせて間延びさせたい
仙台は直近の試合でのフォーメーションは4-2-3-1。メンバーも固定気味でC大阪戦→札幌戦で入れ替えは1人だけ。それもGKのスウォビク→小畑へのスイッチである。フィールドプレイヤーは直近2試合で固定されたメンバーとなる。非保持の時はトップ下の関口が前に出て4-4-2に変形。ゲデスと共にプレス隊に加わる。
C大阪戦の守備で気になったのはボールの取りどころが定められていないこと。2トップがボールを追い込む方向を示唆できていないので、後方からのプレスはやや後追いになる。中盤の出足そのものは悪くないのだが、ボールが出てからの後追いになるとワンテンポ遅れるため、ボールホルダーには隙ができることが多い。このワンテンポの隙間を突かれて仙台は相手にラインを超えるを許してしまう印象である。
したがって川崎のボール保持では縦になるべく間延びさせたいところ。木山監督の方針を考えても相手の強度にとらわれずに序盤から積極的にプレスをかける姿勢で来る可能性は高い。プレスに対しての仙台のワンテンポの隙から縦へのパスでラインブレイクをしていきたいところ。仙台は最終ラインの強度が高いわけではないので、川崎としてはこのシチュエーションを作れればチャンスにつながるはずだ。
ボール保持の局面においては、CBが大きく開きSBが高い位置を取る。このバックラインを使った外回りのボール循環が1つのレパートリー。怖いのは左サイドのパラで、レーンの使い分けに加えてエリア内への供給の精度も高い。逆サイドの柳も積極的な持ち上がりと懐の深さが持ち味のSB。その分SHは絞ることが多い。西村はエリア内で勝負できるストライカーだし、道渕がミドルゾーンからも狙えるシュートをもっていることは川崎サポならよく知っているだろう。
ただし、仙台は内側をうまく使えずにボールの循環が外→外になっていくと前のアタッカーにいい形で渡すのは難しい。ゲデスに収まらなければ、中央から前を向いてチャンスメイクできる機会は比較的少ない。仙台ファンのフォロワー諸兄がCHにボヤいているシーンが多いのはボール回し、プレスいずれにおいてもやや彼らの存在感が薄いせいだろう。
前から後ろまで仙台が苦しい戦いになるのは間違いないが、勢いのある前半にリードを取りなんとか川崎を慌てさせたいところである。
■様子見はいらない
と、まぁここまで仙台につらつら書いてきたが、この試合で川崎ファンが見たいのは一つのコンペティションから脱落した川崎の反発である。FC東京戦では特に中盤3枚の攻撃における判断の遅さが目立つ結果になった。FC東京の強靭な選手たちに守備ではうまく食らいつく場面もしばしばあったし、田中や守田は向こうの外国籍選手にも退かない強さは見せられたと思う。
ただ、攻撃で加速する役割を果たすことが出来なかった。もちろん、ジョーカーとして今季活躍が目立った三笘や旗手の不発もあるが、ゲームを序盤に作る役割を任されていたのは中盤の3人であるはずだ。立ち上がりから悪くはないながらもFC東京陣に深く入り込めなかった一因である。
もっともその3日前のC大阪戦では光る活躍を見せていた3人である。まだまだ強度が高い連戦ではクオリティを維持できないということだろう。この過密日程の中での強いチーム相手での連戦であり、やむを得ない部分も大きいと思う。C大阪もFC東京も堅いチームであった。
仙台との対戦において見ておきたいのは2つ。1つは局所的な崩しにどこまでこだわるか?という部分である。家長を逆サイドに出張させてまで狭い局面を打開するという賭けはヤンマースタジアムでは勝つことが出来た。
しかし、FC東京戦ではサイドでの狭い崩しにこだわりすぎてしまった感がある。家長の逆サイド出張こそ一時的なもので終わったが、同サイドで崩すという姿勢は同じ。FC東京はSH-CH-SBの三角形で外に追いやるようにサイドに圧力をかけてきており、対策も十分に感じられたにも関わらず、サイドにこだわり執着してしまった感がある。大きな展開を使って相手を横に揺さぶるという今季の頭からの姿勢はほとんど見られなくなってしまい、前節のレビューの言葉を使えば「用法用量を守れずに」狭いところの崩しにこだわってしまった印象だ。ピッチを広く使う2020年の原点回帰には取り組んでほしいところである。
もう1つは立ち上がりである。多摩川クラシコの展開を想定した時に否が応でも序盤からガチガチのぶつかり合いになり、ボールが行きかう状況になるのではないかと思っていた。FC東京は中盤に前に出ていける選手たちを多く起用していたし、多摩川クラシコという舞台装置も手伝ってハイテンションになる想定を勝手に頭で思い描いていた。
しかし、実際はブロックを組んで腰を据えた戦い方を選んだ長谷川監督。セットプレーからの先制点もそれに拍車をかけたといっていいだろう。「テンポを合わせるな」ということを鬼木監督は試合中にも口にしていたし、試合後の会見でも「テンポが上がらなかった」ことについて口にしている。
この「ボールが握れないわけではないが、ボールを持ったままフリーズし展開を動かせない」という試合展開で今季真っ先に自分が思い出すのは実はユアテックスタジアム仙台での試合である。途中から入った小林悠が嵐のように暴れまわって逆転勝ちを収めた試合だが、この試合の前半でも同じような現象は見られた。ボールは持てる、だけど重たい。あれよあれよという間にカウンターから失点をするという流れである。でも試合は動かず、ボールを持ったまま構えてしまう。そんな前半だった。
連敗はしたくないし、後半にペースが落ちる仙台相手ということも踏まえれば序盤は慎重な入りになるかもしれない。しかし、個人的にこのタイミングで期待したいのは内容を伴う反発である。ボールは握れるが、主導権は握れないという展開で序盤は様子見という形ではクラシコやユアスタの焼き直しである。
交代選手も含めたマネジメントでうまくいっていたのは事実だが、ここまで成長を見せてきた今季にはさらなる上積みを期待したい。次に求めたいのは立ち上がりの相手を動かす意識。テンポを上げて相手を置き去りにする展開である。確かに仙台の倒し方としては理に適っていないかもしれないし、大雨の中でこういう試合運びはリスクが大きすぎて現実的には難しいかもしれない。ましてや中2日。選手たちの疲労はピークだろう。大幅なメンバーの入れ替えもあるかもしれない。
それでも自分が仙台戦で期待したいのはスタメン11人で主導権を引き込む戦い方である。FC東京とのルヴァンカップはもう戻ってこないが、目の前の相手はユアスタで「凪」の時間を作ったせいで苦戦した仙台だ。モチベーションは十分だろう。日程の不利、危ぶまれる天候、そして直近の敗戦をすべて跳ね除けて序盤からこちらがペースを握る姿勢を期待したい。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)