このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。
Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第17節
2020.9.20
浦和レッズ(6位/8勝3分5敗/勝ち点27/得点24 失点28)
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川崎フロンターレ(1位/14勝2分1敗/勝ち点44/得点52 失点16)
@埼玉スタジアム2002
戦績
近年の対戦成績
直近5年の対戦で浦和の4勝、川崎の6勝、引き分けが4つ。
浦和ホームでの対戦成績(ゼロックスは中立地扱い)
直近10試合で浦和の4勝、川崎の4勝、引き分けが2つ。
Head-to-Head
<Head-to-Head①>
・直近3回の対戦で浦和は川崎相手に勝利なし。
・直近6回の対戦のうち、勝敗がついた5回は勝った方がクリーンシートを達成している。
トータルで見れば浦和が勝ち越している対戦成績だが、近年は川崎優勢。両チームのリーグ戦での勢いを反映した成績になっている。特に気になるのが浦和の得点力の部分。ここ3試合の川崎戦ではわずかに1得点のみ。もっとも、川崎も直近5回の対戦で4得点のみ。苦戦しながら勝ち星を積んでいる印象だ。
スコアがバシバシ入らない分、クリーンシートが多い。昨年の等々力での1-1以外はすべてどちらかがどちらかを0点に抑えて勝利している。ロースコアでの決着も多く、チーム状況に寄らず競った試合になりがちだ。
<Head-to-Head②>
・直近2回の埼玉スタジアムでの対戦では川崎が浦和をいずれも完封で下している。
・ここ5年間の埼玉スタジアムでのリーグ戦において浦和は川崎に一度しか勝っていない。
カップ戦決勝に弱い川崎にとって、カップ戦決勝が行われることが多い埼スタは悲しい思い出が多い地である。しかし、埼スタとの相性も近年は改善傾向にある。昨年はゼロックスとリーグアウェイで連勝。いずれも完封での勝利である。加えてルヴァンカップの決勝でもこの地で札幌をPK戦の末に下した。
むしろ、最近の埼スタでの川崎戦が苦手なのは浦和の方。リーグ戦に限ればダブルを達成した2018年以外はここ5年で勝利がない。ACLでの大逆転勝利以降はあまりいい思い出を重ねられてはいない。
<Head-to-Head③>
・日曜日の当カードの対戦において川崎は直近3試合勝ちなし。
・2010年以降、埼スタでのリーグ戦が等々力より先に来た年は4回。その年の埼スタの試合では川崎は未勝利。
最後の項は川崎に縁起の悪い話。日曜日の浦和戦ではここ3試合勝利がないというのが1つ。もう1つはリーグ戦で埼スタでの試合が先に開催された年のジンクス。近年は等々力開催が先に行われているこのカード。埼スタが先に開催されるのは実に6年ぶり。ただ、埼スタ先行開催だった直近4年(2010,2011,2012,2014)の対戦では川崎は勝利をあげていない。最後の勝利は2009年。鄭大世が逆転弾を77分に叩き込んだ年以来だ。
スカッド情報
【浦和レッズ】
・主だった欠場選手はなし。
【川崎フロンターレ】
・長谷川竜也はフルトレーニング合流済み。
スタメン予想
Match Facts
【浦和レッズ】
<浦和のMatch Facts①>
・勝てば今季3回目の2連勝。
・直近3試合で失点が9。
やたらと「なぜ上位にいる?」といわれているような気がする浦和。ファクトベースで考えると下位に沈まない理由は単純に連敗がないからだろう。今季は2連敗が1回だけ。負けの後のリカバリーが効いている。ただし、大きな連勝もなし。それが上位進出を阻んでいる。勝ちも負けも連続しない、それが今の浦和だ。
ただ、ここ数試合は失点がかさんでいる。ここ3試合は大量失点が目立つうえに、直近6試合でクリーンシートはなし。失点の連鎖は止めたいところだが。
<浦和のMatch Facts②>
・クロスからの失点は10。横浜FMに次いで多い。
・リードを得たリーグ戦では9戦無敗(W8D1)
失点の局面としてはクロスが非常に多い。前節の札幌戦もクロスからジェイの高さを活かして2得点を決められている。
ただし、ひとたびリードを得た試合は強い。9戦8勝という成績は優秀。あまりイメージはないかもしれないが今季の浦和は逃げ切り上手である。
<浦和のMatch Facts③>
・レオナルドは今季9得点。浦和のゴールの38%を決めている。
・チーム内の最多アシストは山中亮輔と関根貴大(5ずつ)
チーム内得点王は今季新加入のレオナルド。得点の占有率は38%とリーグ2位。トップのオルンガが50%なのでもっとおかしいやつが上にいるのだが、レオナルドも点取り屋としての才覚をJ1で存分に発揮しているといっていいだろう。枠内シュート率は50%。囲まれているはずなのに、なぜか枠に飛ぶシュートスキルは特筆すべきものがある。
ゴールがレオナルドならアシストは山中と関根である。サイドプレイヤーの彼らから決定機を生み、エリア内でレオナルドが仕留める。それが浦和のパターンなのかもしれない。
【川崎フロンターレ】
<川崎のMatch Facts①>
・勝てば今季2回目のリーグ戦5連勝。
・直近5試合の公式戦はいずれも3得点以上。
後方にC大阪がついてきているとはいえ、川崎も好調。名古屋戦からのリバウンドメンタリティは十分に示しているといえるだろう。勝てば今季2回目の5連勝だ。
得点も止まらない。特に後半の得点が直近では多い。特に多いのが後半開始から60分までと75分以降。横浜FM戦や広島戦のような後半頭のギアチェンジや、神戸戦のような最後の仕上げ。川崎を退けるにはこの2つの山に耐えなければいけないことになる。
<川崎のMatch Facts②>
・先制した公式戦は57試合負けなし(W47D10)
・15人が得点を決めていて、リーグ最多。
とりわけ強さを発揮するのは先制した試合。先制した試合で最後に負けたのは2018年4月のC大阪戦。川崎相手に逆転勝ちをするチームは2年半あらわれていない。
得点者のバリエーションも川崎らしさである。先日の広島戦で得点を決めた山村でリーグ戦のスコアラーは15人。リーグ最多である。
<川崎のMatch Facts③>
・小林悠は今季途中交代8試合から7得点1アシスト。
・登里享平が出場した公式戦は直近21試合負けなし(W18D3)
後半の猛チャージに貢献しているのは小林悠。途中出場の227分で7得点1アシスト。およそ30分弱に1点の割合で得点に関与していることになる。
ゴールへの関与でもう1人見ておくべきは登里享平。今季のアシストは公式戦すべてで6。これは大島僚太に次いで多く、旗手怜央と同じ数字である。そんな彼が出場した試合はここ21試合負けなし。勝率は86%と驚異的。最後に敗れたのは2019年9月28日の神戸戦が最後。およそ1年間公式戦で負けなしということになる。
展望
■ストロングポイントはくっきりも整わない道筋
連敗は少ないが連勝も少ない。あっさり負ける試合もあるが、終盤には強く、逆転勝ちは多いし逃げ切りもうまい。スタッツをベースに今季の浦和の成績の特徴を見るとこんな感じである。
では浦和がどういうサッカーをするチームなのか?と聞かれると非常に難しい。少し角度を変えて「ストロングポイントはどこか?」という質問なら答えは簡単だ。ほとんどの人が前線のクオリティの高さと答えるのではないだろうか。
PA内で相手のDFに囲まれてもなぜか枠に飛ぶシュートを打てる体の使い方のうまさ、そして何よりも高精度なフィニッシュワークをもたらしたレオナルドは開幕戦で大当たりを確信できる大ヒット補強。長年チームを引っ張ってきたリーグ屈指の万能型FWの興梠慎三とのコンビはJ1でも最凶といっていいだろう。PA内だけでなくカウンターの際の連携も良好。彼らにオープンな状態でボールが渡るのはエリア内外問わずに危ない状況といっていいはずだ。
ストロングポイントがはっきりしているのに、どういうチームか評しづらい状況というのは彼らにボールを届けるというゴールに向けた道筋の部分が不明瞭だからである。
チャンスメイクは外側で行われることが多い。具体的にはハーフスペースから外側。中盤が低い位置を取り、時にはサリーを行い最終ラインを3枚にする。そしてハーフスペースと大外でSHとSBがそれぞれ異なるレーンで位置してボールを受けるというのは決まりごとのように見える。
ただ、ハーフスペースでフリーの選手にボールが渡ったとして、そこからどのようにPAに迫るか?という部分は選手個々のスキルに任せられているように見える。例えばカットインしてフィニッシュができる関根や汰木に切り込んでもらったり、絞った山中に左足で魔法を使ってもらったり。興梠が左サイドに流れながらアシスト役に回るのもよく見かける。
ただ、今季の浦和の出口は先に示したように2トップにどうボールを届けるかである。クロスがうまい山中はともかく、カットインするドリブラーをSHにおいてフィニッシュまで!というのは効率がいいかどうかはわからない。彼らがアシスト役に専念するチャンスメイカーという感じもあまりしないし。ましてや興梠をサイドに流してレオナルドにフィニッシュワークを託すのもいいのかどうか。興梠はそういう役割もできてしまう分、悩ましいところがありそうだ。
チャンスメイカーとしてのSHという意味合いが最も濃かったのは鳥栖戦でRSHに起用された柏木だろう。確かに彼は興梠やレオナルドへのフィニッシュへの道筋をかけることが出来る選手である。ただし、こうなると守備時の4-4-2における強度が怪しくなる。
要するに今の浦和はSHのキャラクターによって色は変わるが、後方のSBとの組み合わせも含めてFWにボールを届ける下地は整っているとはいいがたい。
サイドにおいてフリーで前を向く選手もどうやって作るか。例えば、川崎の4-3-3相手ならば高い位置を取るSBを起点として彼らに長いボールを届けることで進撃はできそうだ。しかしながら、最近増えている4-4-2での非保持で川崎にサイドの枚数を合わせられた場合はどうするかとか。ハーフスペースからのCFのポストを使った攻撃が増えてくると面白そうな気がするけど。
FWにボールを届ければ怖いチームであることは明らか。川崎としてはその局面をいかに減らせるか、浦和としてはそこに至るまでの道筋を整えられるかがキーになる。
■サイドと中盤をおびき寄せる
浦和の守備においてよく指摘されるのはサイドからのクロスへの対応の拙さである。札幌戦でもジェイへのクロスから失点を重ねてしまったように非保持で怪しい部分であることは間違いない。浦和は極端に横スライドを行い、逆サイドが絞る動きを見せるにも関わらず、意外とボールホルダー周辺にプレッシャーがかかっていないことが多く、大きなサイドチェンジを許してしまうのが問題なのだろう。
また、レオナルドも興梠も守備において走り回り続けるようなタイプではないので、スピードは落ちるが大きな展開は後方を介しても可能。出すところに詰まるような形に追い込むことは多くない。サイド圧縮で奪い取りカウンターに向かう機会より、スライドして手薄になった逆サイドの脆さの方が強調されている印象を持つ。川崎も大きな展開からウィークサイドを突く攻撃の意識は持っておきたいところである。
もう1つ気になったのはプレッシングの部分。特に鳥栖戦で見られたのだが、相手が後方でボールを回していると浦和は中盤がなんとなく前に押し上げる現象が起きやすい。鳥栖戦では青木がフラッと押し上げる機会が多かった。中盤のほかの選手はこれに呼応して押し上げる素振りを見せるのだが、後方の選手は押し上げる意識は希薄。したがって中盤が間延びしたような形になる。
いわゆる擬似カウンターのような形で中盤の後方は狙っていきたいところ。前がかりで来た相手をいなすようにここに起点を作りたいところだ。裸のDFラインと向き合うことができれば、前で捕まえる意識が強い橋岡やカバーリング範囲が広いデンは引っ張りやすい。彼らが引っ張り出してしまえば、空いた穴をカバーできる中盤はこの局面では不在になる。対人に強い彼らを外におびき出してからPAでの勝負をするとより楽になる。イメージとしては相手が腰を浮かしたタイミングを狙って一気に仕留める方向に持って行きたい。サイドにせよ、中盤の裏にせよ相手を引き出すことをまず念頭においてボールを動かしたいところだ。
川崎目線でいえば守備では相手のボールを動かす道筋を与えずにぼかしたままにする。そして攻撃では相手の食いつきの良さを利用しておびき寄せるのが肝要だ。
下馬評は川崎が有利。間違いなくこれは動かない。しかし、劣勢の時の浦和の怖さは川崎の選手、サポーター共によくわかっているだろう。1周目の対戦のフィナーレとなる試合をプラン通りに彩ることが出来るだろうか。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)