このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。
Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第12節
2020.8.23
名古屋グランパス(3位/勝ち点20/6勝2分2敗/得点18 失点8)
×
川崎フロンターレ(1位/勝ち点31/10勝1分0敗/得点34 失点9)
@豊田スタジアム
戦績
近年の対戦成績
直近5年の12戦で名古屋の2勝、川崎の7勝、引き分けが3回。
名古屋ホームでの対戦成績
直近10戦で名古屋の2勝、川崎の5勝、引き分けが3回。
Head-to-Head
<Head-to-Head①>
・直近16試合の公式戦における川崎戦において名古屋は1勝のみ(D4L11)
・しかし、名古屋のホームゲームにおいては直近3試合勝ちなし。
昨年のリーグ戦の3失点での敗北が強烈に残っているファンが多いだろうが、近年の対戦成績を振り返ると川崎は名古屋にはめっぽう強い。直近16試合で負けたのはその1試合だけ。ただし、直近3試合の名古屋ホームでは川崎は勝ちなし。
とはいっても勝てなかった3試合のうち2試合はカップ戦で、しかも川崎目線でいえば勝って迎えた2ndレグ(2019年ルヴァンベスト8)と引き分けで突破が決まる試合(2020年ルヴァンGS)だったのでそこまで悲観しなくてもいいのかもしれない。
<Head-to-Head②>
・直近3試合の豊田スタジアムでの対戦はどちらかが完封勝利を収めている。
・直近5試合の名古屋ホームの公式戦において退場者が3人出ている。
パロマ瑞穂スタジアムで行われることも多い当カード。実際カップ戦はこちらのスタジアムで行われがちである。リーグ戦において豊田スタジアムで行われた直近3試合は2019年、2018年、2015年。それぞれ名古屋、川崎、川崎の順で完封勝利を収めている。
退場者が多いのもこのカードの特徴。直近5回の名古屋ホームで3人の退場者が出ている。イ・スンヒ、谷口彰悟、大島僚太がそれぞれ後半に退場を宣告されている。
<Head-to-Head③>
・直近5試合の対戦においてドローが3回。
・日曜開催のリーグ戦における対戦は川崎が3連勝中。
先日のルヴァンカップのGS第3節のように『事情がある』場合もあるが、最近はこのカードは引き分けが多い。というか、それ以前が非常に引き分けが少なかったカード。この5試合以前は21試合でわずか引き分けが1つと決着がつきやすいカードだった。
ちなみに日曜開催のリーグ戦に限定すれば川崎の3連勝中。2018年、2015年、2012年といずれも名古屋ホームで勝利をしている。
スカッド情報
【名古屋グランパス】
・阿部浩之に復帰の可能性。
・ルヴァンカップは出場不可だった金崎夢生は出場可能。
【川崎フロンターレ】
・長谷川竜也は左膝内側側副靱帯損傷で離脱中。
予想スタメン
【名古屋グランパス】
<名古屋のMatch Facts①>
・10試合終えて6勝2分2敗は昨年同時期と全く同じ成績。
・勝てば今季初のホームゲームでのリーグ戦連勝。
好調が続く名古屋。昨年の途中に風間八宏⇒フィッカデンティという180°異なるカラーの監督交代があった。しかしながら、フィッカデンティの今季の10試合は風間政権だった去年と全く同じ星取り。しかも昨年の10試合終了時の得点は18,失点は7。今年の得失点(得点18,失点8)とほぼ同じなのである。
ちなみにホームゲームではなかなか苦戦が続いているフィッカデンティ。勝てば就任以降初のリーグ戦のホーム連勝となる。前回のホーム連勝は2019年5月。およそ1年3か月ぶりにホームゲームの連勝を飾れるだろうか。
<名古屋のMatch Facts②>
・選手交代34人はリーグ最少。
・直近のリーグ戦での敗戦は3試合連続で1-0。
今季ここまでの選手交代が最も少ないのが名古屋。それも34回はかなりダントツ。平均が3.4人なのでほぼ3人交代でやっている感。次点の鳥栖、仙台、柏が42回なのでぶっちぎりである。ちなみに最多は川崎の53回。全試合においてフルで交代枠を使っている。
ここ3試合で敗れたリーグ戦はいずれも0-1。完封負けの1点差である。実は川崎は直近10試合の公式戦でクリーンシートは2つと失点の割には少ない。名古屋相手にクリーンシートは達成できるだろうか。
<名古屋のMatch Facts③>
・阿部浩之が先発した試合は今季7戦負けなし(W5D2)
・マテウスは出場した直近2試合のリーグでの川崎戦でいずれも得点を記録している。
欠場が続いている阿部浩之は復帰すれば古巣対決になる。元々川崎相手に点を取れる選手だったうえに今季は彼が先発の試合は無敗。先発に名を連ねれば川崎にとっては非常に厄介な『昨日の友』となる。
川崎相手に点を取っているのがマテウス。直近2試合の出場(うち1試合はレンタル先のマリノスで)で川崎相手にいずれも得点。新・川崎キラーを名乗らせないためにもこのあたりでシャットアウトしておきたい。
【川崎フロンターレ】
<川崎のMatch Facts①>
・同一シーズン最多の10連勝を達成。
・リーグ戦のアウェイゲームは8連勝中。
ついに新記録を達成した川崎。いぇーい。というわけでここからは1試合ずつ勝ちを積み重ねていくフェーズである。これまでもそうだったけど。特に得意なのはアウェイゲーム。8試合連勝中で名古屋、神戸と勝ちを積むことができればアウェイだけで10連勝達成である。
<川崎のMatch Facts②>
・枠内シュート80本はリーグ最多。
・27本の被枠内シュートは最少タイ
得点を取っているだけあり、枠内シュートはリーグ最多。リーグ2位の柏が62本なのでダントツである。ちなみに枠内シュートの39%が得点になっておりリーグ最高。こちらの項目も2位は柏で、この2チームは相手を崩したシュート機会を得ており、優れたストライカーを擁しているのだなと。
<川崎のMatch Facts③>
・田中碧は今季のタックル成功数が19回。リーグトップ。
・鬼木監督は対フィッカデンティのチームに対して5戦無敗(W2D3)
C大阪戦では中盤の手綱を握った田中碧。90分出場したため名古屋戦に出撃するかはわからないが著しい成長を遂げている。守備でも危険を察知してあらかじめスペースを埋める動きも出てきており、アンカーとしては大覚醒前夜といっていいだろう。
監督の相性で見ても、鬼木監督は対フィッカデンティに5戦無敗。先日の名古屋戦でも追いつく試合運びだったが、鳥栖時代も2点差を逆転するなど、先行されても粘り強く勝ち点を拾っている印象である。
展望
■サイドのズレ、中央のズレ
名古屋がどう出てくるか?を考えるのがこの試合の展開を読む一歩目のポイントといえるだろう。
試合前のフィッカデンティのコメントを額面通りに受け止めるのならば「ボールを持つ時間を増やす」という指針が見て取れる。さらに具体的な例としてルヴァンカップの「前半15分までのような展開」を理想として挙げている。
全くもって嘘ということはないと思う。川崎にボールを持たせてローラインで待ち構えるという展開はあり得ない話ではないが、ルヴァンカップでは押し込まれた時間帯に危うさを感じる場面はあり「引いてしまえばひとまずOK」という風情ではなかった。
得点シーンに代表される名古屋の「前半15分までの展開」は機能していなかった川崎の右サイドを狙い撃ちにした敵陣でのハイプレスを軸にしたもの。川崎の試合運びを考えても縦パスがズレやすいのは立ち上がり。そこを強襲した名古屋の前回対戦のやり方は確かに理想的な入りではある。
一方でハイプレスはあくまで機を見た方策だろう。名古屋は主力の勤続疲労が目立つチームの1つであることを考えると90分続けられる話ではない。サイドにボールを閉じ込め、マイナスのパスを引き出せたときなどシチュエーション限定型のやり方であるはず。
となると重要なのはミドルゾーンでの攻防になる。なるべく高い位置で止めたい名古屋とショートカウンターを避けたい川崎の綱引きになるだろう。ここからは川崎目線でこのミドルゾーンの攻防の勝機を見出すかを考える。
名古屋の4-4-2のブロックは縦横共にコンパクトな陣形を維持する。間のスペースを取ろうと思っても簡単には取れない緻密な構造になっている。特長として挙げられるのはゾーン基調の中でも時折人についていく意識の強さが見られる点である。
例えばFC東京戦、RWGに入ったディエゴ・オリベイラが降りる動きとCFの永井が右に流れる動きを組み合わせることで名古屋のLSBの吉田をオリベイラで引き付けつつ、永井で裏をとる動きでFC東京は名古屋の左サイド側に起点を作っていた。
特に縦方向への食いつきは強めで、降りてくるWGの動きでSBを釣る形はルヴァンカップでも見られた。この形は引き続き有効になるはず。WGの動きに合わせて山根や登里の裏をとる動きや下田や脇坂のハーフスペースから外に流れる形をセットで組み合わせる形は名古屋を押し込むのに有効であろう。
中央でのプレスはおそらく2トップで行ってくるはず。CBとアンカーの田中碧の3枚で前を向く選手を作りたい。特に田中はルヴァンカップでも相手を引き付けて味方をフリーにしたり、ターンから前を向いて自らがフリーになったりなど、ミドルゾーンの攻防の起点となる大黒柱的な存在。一番初めのズレを作る存在として、連戦にはなるがスタメン予想とした。
■重たくならずに運べるか?
名古屋の攻撃における武器はWGの突破力の高さ。前田、相馬、マテウスなどの単騎で相手陣に穴をあけることができる選手がそろっている。先述のブロックの中でも人を捕まえる意識が強いという特長も、なるべく高い位置で奪って前線のアタッカー陣につなぐというカウンターにつなげるためだろう。川崎にとっては広いスペースで彼らと対峙することは避けたい。低い位置でのボールロストを避けることでまずは機会そのものを減らす試みが必要だ。
自陣から落ち着いてビルドアップを行う際はCBとCHの4枚が軸。ルヴァンカップでは4-3-3で構える川崎相手にSBへの長いボールをかませることで川崎の弱点であるWG-SBのギャップで起点を作り、川崎のハイプレスを回避していた。
ただし、ここ最近の川崎は4-3-3と4-4-2の併用で守ることが多い。4-3-3の時間帯でもインサイドハーフが前線の守備に助太刀に行く機会は増えており、4-3-3から4-4-2に移行するタイミングは試合の中でも早くなっている印象だ。4-4-2で守るならば、SHがSBを監視することで川崎の噛み合わせははっきりする。
そうなると名古屋は中央から作ることに。稲垣とシミッチのどちらかが中盤にとどまり、どちらかがDFラインに落ちる動きでズレを作ろうとしてくるだろう。トップ下にシャビエルが入るならば、彼がCHの位置まで降りてくることもある。その分SBが高い位置を取るという流れだ。
ただし、後ろに人数をかけても結局は川崎のブロックの中で起点を作れなくては意味がない。ブロックの外で数的優位でボールを保持したとしても、その先がなければ進撃することはまず不可能。名古屋はできるだけ列を落ちないように前にボールを運びたい。狙い目なのは川崎の右サイド。家長がスタメンで起用されるのならば、このサイドはやや戻りが遅れがちになる。金崎や阿部などのボールの引き出し方に優れているアタッカー陣に直接楔を打ち込みつつ、吉田のオーバーラップと組み合わせれば相手を押し下げることができる。
どちらのチームもハイプレスはレパートリーに入っている。ただし、ハイプレスはそもそも相手を押し下げることができて発動できるもの。まずはミドルゾーンでどちらが相手に圧をかけることができるかが勝負の分かれ目である。過密日程の中で90分フルで走り切るのは双方辛い。綱引きにおいてどのタイミングで勝負をかけるか、監督の手綱裁きもこの試合の見どころになるだろう。
参考
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)