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「主語で決まる納得度」~2020.8.15 UEFAチャンピオンズリーグ Quarter-Final マンチェスター・シティ×リヨン レビュー

スタメンはこちら。

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目次

【前半】
奇策の狙いをもう少し考える

 マドリーを敗退に追いやったRound16の2ndレグはフォーデンの0トップで挑んだグアルディオラ。思えば1stレグはジェズスを左サイドで起用しだしているし、ノックアウトラウンドは全部なんかしらやっている。そして、リヨン戦もノックアウトラウンドなので当然なんかしらやる。

 この日用意していたのは3バック。フェルナンジーニョを最終ラインの右に組み込んで3-4-3?3-5-2?の形である。デ・ブライネは3トップといっていいのか中盤といっていいのか。プレッシングには3トップの一角として前からチェイスしにいくし、攻撃時はMF的な振る舞いをすることが多かった。

 リヨンは5-3-2で構える形。3センターは後方のスペースを封鎖することを優先。2トップはアンカーのように振舞うようなことが多かったロドリを気にかけつつ、シティのCBを気にかける。ただし、深追いはせずに前線からバックラインまでコンパクトにミドルゾーンに構える。

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 シティはそれに対して左サイドからの攻略を試みる。狙いはWB-CBの間でここをスターリングやギュンドアンが裏をとるような動きで狙って折り返す。開始直後にジェズスにつながればという決定機を生み出したのはこのスペースに抜けたスターリングである。

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 左WBのカンセロはボールスキルに優れている。カンセロへの配球は時間を許されたCBから可能であり、カンセロから最終ラインを破るパスを前に送ることで仕上げの手前の段階まで持っていくという狙いは序盤から見えた部分である。

 これでグアルディオラがボール保持でやりたかったこと!といいたかったことところだけど、今までやってきたことに比べるといささか不確実だし、幅が狭いし、効果も大きくないように見える。

 後から出てくる話ではあるけど、後半に4バックに戻してからのミスと被カウンターによる失点を見れば、カウンターを止める枚数の確保とバックスのボール保持の人数増加で安定感を増したかったという点で5バックをやったという説明もつくことはつく。

 それでもいいんだけどどうしても気になってしまったので、あえて別の仮説も書いてみる。気になったのは開始30秒くらいのシーン。高い位置からプレスに出てきたリヨンの2トップの脇からフェルナンジーニョがボールを運ぶシーン。ここでは中盤はマンマーク気味だったリヨン。デブライネが縦に流れることで自身のマークマンを引き連れる。こうした空いたジェズスのパスコースにボールを運んだフェルナンジーニョが斜めの楔を打ち込む。これが一連である。

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 ほぼ再現性がなかったシーンだし、本当にこれが狙いかはわからないけどこのボール運びのための3バックだとしたら合点は行くし、グアルディオラらしさもある。

 だとしたらグアルディオラにとって誤算だったのはこのシーンを除けばリヨンがほぼ前から来なかったこと。さらっとしか見てなかったけど、ユベントス戦ではもう少し前から来る場面が多かったように思う。この日はシティがバックラインまで戻しても、リヨンの2トップはラインアップをせずにあっさり追うのをやめていたし、中盤がマンマークっぽく監視するのもやめた。高い位置から追うのは即時奪回かスローインなどサイドに追い込める時だけ。シティの狙いとしてこの中央経由のボールの動かし方があるぜ!といいきれないのは、その後の時間帯でこの崩しが見れなかったためである。

 実際はミドルゾーンに撤退して、フェルナンジーニョはアウアーに任せるというやり方がほとんど。アウアーは優秀だけど、そもそも後ろを広く使われてしまうのならばさすがに広いスペースで彼1人が何とかするのは無理だったはず。リヨンのプレス隊が開始直後でこれに気付いて撤退を始めたのならば優秀すぎる。以上、本当のところはどうかわからないけど書いてみた!でした。気になるので僕はどこかでリヨンの試合を探す旅に出ようかと思います。

【前半】-(2)
少ない手数も狙い通り

 リヨンのボール保持は4バックのように変形する。3バックはデナイヤーとマルセロがGKのロペスを挟むように立つ。マルサルがLSBのような位置まで出ていく。シティは中央のジェズスがアンカーを気にしつつ、時には前に出ていく。マドリー戦同様、シティのプレスも可変で3トップで相手の3バック+アンカーの4枚を見る形だった。

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 マドリー戦と同じく数を合わせ切るというよりはスライドしつつ対応してやばそうなところを塞ぐというのがシティのコンセプト。問題はリヨンの指針がマドリーとは異なったこと。彼らは長いボールを蹴ることは厭わない。厭わないというよりもむしろそこで攻めてやろう!というのがリヨンの姿勢である。

 前線のアスレチック能力は非常に高かったリヨン。デパイ、トコエカンビの2トップとLWBのコルネは特にシティが手を焼いていた。リヨンのバックスが3バックをやや左寄りに置いたのはコルネを前に押し出すためかもしれない。リヨンの左サイドは高い位置をコルネが取るせいでウォーカーが前に出ていきにくくなっていた。

 先制点はこの前線の強みと後方のフリーマンからのフィードの組み合わせ。GKからのビルドアップでデ・ブライネのマークを外したマルサルがフリーでトコエカンビにロングボール。一度はガルシアが防いだが、後ろから追いついたコルネがシュートを押し込む。長いボールで手数は少ないが、ボール保持としては明らかに狙った形。リヨンが思い通りの攻め手で先制点を奪うことに成功した。エデルソン、出てくる必要はなさそうに見えたけど。

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 一方のシティは苦戦が続く。攻める場所が限られているため、リヨンは徐々にそこを封じるように。カケレとギマランイスがシティの左サイドに出ていくようになっていく。そうなるとシティは個人技勝負。スターリングやデ・ブライネの突破頼みになっていく。デ・ブライネのスターリングへのスーパーなパスは確かにものすごかったけど、あれを通してなおコースが限られたチャンスしか作れないのか。という気持ちにもなった。

 シティは攻めあぐねたまま前半は終了。試合は0-1でリヨンのリードでハーフタイムを迎える。

【後半】
願った4バックの登場も・・・・

 前半に攻めあぐねたからグアルディオラはなんかやってくるだろう!これまでもやってきたし!というのが見ている側の野次馬根性が乗った希望である。しかし、意外にもグアルディオラは前半の継続を選択。リヨンがやや高い位置から出てきた分、シティは前にボールを進めることができた。ただ決定機の創出まではいっていなかったけど。

 というわけで55分にはフェルナンジーニョに代えてマフレズを投入。シティファンが待ち望んでいたであろう4-2-3-1にシフトする。

 4バックだとさすがにボールはうまく回る。リヨンは後半開始直後からトコエカンビをサイドに置く5-4-1にシフト変更。1トップ脇からボールを運べるようになったシティの最終ライン。マフレズを投入して左右の大外も有効に使えるようになったことも奏功し、間と外そして裏へのボールの出し入れでリヨンを揺さぶる。

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 ボールサイドに顔をだすデ・ブライネも徐々にアンカー脇で呼吸ができるようになっていく。大外に流れることもしばしばで自由に動くデ・ブライネをリヨンは捕まえることができない。同点弾は流れるようなボール回しから。カンセロが間のマフレズに縦パスを入れると裏のスターリングへ。ドリブルで深さを作ったところに入り込んだデ・ブライネが決めるという美しい流れであった。

 効いていたデパイやギマランエスなども下がり、ここからシティが押し切る流れになるかとも思った。アタランタ×パリみたいに。

 しかしながら、勝ち越しゴールを挙げたのはリヨン。一貫して狙っていたスピード勝負は終盤でもさび付くことはなかった。ラポルトの内側へのパスをカケレが引っかけると、アウアーがラストパス。独走したデンベレが流し込む。

 冷静だったのはオフサイドポジションにいたトコエカンビ。周りの状況が分かっていなければ、自分がオフサイドポジションであることも、スルーすればデンベレが独走できることもわからないはず。ましてやスピードが武器の選手だし、触って一気に持っていきたい気持ちになってもおかしくない。だってこの最終盤、シティ相手にヒーローになるチャンスですし!スペースへの抜け出しでシティを苦しめていたトコエカンビの認知能力の高さを感じるゴールシーンであった。

 シティ目線で言えばやっぱり3バックを使いたかったのはこういう要素もあったのかなとも思うシーン。ラポルトのミスはもちろんまずいのだが、4バックの薄さを感じる場面でもあった。

 シティにも同点のチャンスはあった。スターリング・・・。大きなチャンスを逃したシティはとどめを刺されてしまう。交代で入ったアデレードが競り合いのこぼれ球を拾って一枚剥がして一気に前進。珍しくシュートをこぼしてしまったエデルソンを尻目に再びムサ・デンベレが押し込む。

 シティの夢はまたもここでストップ。ユベントスに続き、大物喰いを果たしたリヨンがベスト4進出を決めた。

あとがき

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 同点弾が決まっていれば!!という感想を持つ人は多いかもしれないが、おそらくシティが同点弾を決めていても戦い方は変わらなかったはず。メンタル面への影響はあるだろうが、ここは素直にとどめを刺したリヨンをほめたたえたい。PAにベタ引きする時間はほぼなく、3センターとプレス隊を中心に高い規律を持ち続けて試合の多くの時間でシティにチャンスを作らせなかった。前線は持ち味のスピードで反撃の姿勢を見せ続けた。確かにシティ×バイエルンは見たかったけど、リヨンもまだまだCLでのチャレンジが見たくなるチームだった。

 気になるのはリーグ戦との違い。途中で終わったとは言えリーグ7位のチームが上位進出するのは非常に驚きが大きい。コンディション調整がばっちりだったというだけでは説明がつかないだろう。ユベントスに勝利しているのは中断前だし、何より生半可なチームではグループステージの突破すら不可能なのがCLだ。この試合を見て強さを語ることは簡単だと思う。だって強かったし。リーグ戦が不振でCLで躍進した理由もしくはここにきて改善した部分を読める記事があったら超読みたい。

■作戦の主語で変わる納得感

 個人レベルのミスを除けば、やはり3バックでのスタートを問題視するシティファンが多いだろうか。個人的にはある程度の妥当性はあったと思う。そもそもマドリー戦はいわゆる奇策で勝ってきた人だし、ここで変なことをすること自体は不思議ではない。

 モゴモゴする部分があるとすればこの作戦を設定するときの主語の部分かもしれない。自分たちにあったものか?相手の良さを消すものか?0か100かではないものの、試合に勝つための作戦はこの2つの要素のどちらかに比重を置いていることが多いと思う。

 マドリー戦を見てみると、彼らの作戦は自分たちがプレスをして相手陣でプレーして押し切るというコンセプトのもとに行われているように見えた。翻ってこのリヨン戦はどうだっただろうか。本文で述べたようにボール保持でももっとやりたいことはあったはずだが、試合で起こったことを見れば基本的にはリヨンのカウンターに対応しやすいように3バックで臨んだように見える。マドリー戦と比べるとやや相手への対策に軸足を置いたように見える。

 チームによってはそれでも全然いいと思うけど、シティは全方位型優位のCLの舞台において自分の得意分野をとがらせることで突き進んできたチーム。ここに来て主語が相手に寄った作戦を取って敗れるというのは、ファンとしては納得感が薄い!ということなのかなと思った。

 どう散るか?というのは個人的には意外と大事だと思っている。この試合単体で見れば妥当性のある作戦だったとしても、ずっとシティを見ていたファンからすれば、この日のらしくない作戦で散ったシティは受け入れがたいものだったのではないだろうか。あくまで想像だけど。

試合結果
2020.8.15
UEFA Champions League 
Quarter-Final
マンチェスター・シティ 1-3 オリンピック・リヨン
エスタディオ・ジョゼ・アルヴァラーデ
【得点者】
Man City: 69′ デ・ブライネ
OL: 24′ コルネ, 79′ 87′ デンベレ
主審: ダニー・マッケリー

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