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「一歩目の形が決まる」~2020.8.1 FA杯 決勝 アーセナル×チェルシー プレビュー

目次

Fixture

FA杯 決勝
2020.8.1
アーセナル(8位/14勝14分10敗/勝ち点 56/得点 56 失点 48)
×
チェルシー(4位/20勝6分12敗/勝ち点 66/得点 69 失点 54)
@ウェンブリー・スタジアム

過去の対戦成績

アーセナル×チェルシーテーブル

Head-to-Head

・アーセナルは直近2回のチェルシー相手のFA杯決勝に勝利している。2002年は2-0,2017年は2-1。
・しかしながらFA杯以外のメジャータイトルの決勝ではチェルシーもアーセナルに二度勝利。2-1で勝利した2007年のリーグカップと、4-1で勝利した昨年のEL。
・チェルシーが直近9回のFA杯のアーセナル戦で勝利したのは一度だけ。2-1で勝利した2009年の準決勝。

スカッド情報

【Arsenal】

・ワトフォード戦に欠場したベジェリンは全体練習に合流。
・セドリックはカップタイドで出場不可。
・チェンバース、マリ、ムスタフィ、マルティネッリは欠場。

【Chelsea】

・ウルブス戦を欠場したウィリアンは当日判断。
・カンテは復帰の可能性があり。

Match Facts

【Arsenal】

・FA杯において21回の決勝進出と13回の優勝は最多。全体の15%のFA杯の決勝に進出している。
・ウェンブリーでのFA杯の決勝は1-0で敗れた1980年のウェストハム戦以来敗れていない。
・直近25年で初めてリーグトップ6入りを逃した。
・直近31回のFA杯の試合で無得点に終わったのは一度だけ。

【Chelsea】

・14回のFA杯決勝進出。これより多いのはアーセナル(21)とユナイテッド(20)だけ。
・直近15試合のFA杯で1回しか負けていない。
・ジルーは2013年の初出場以来FA杯で16ゴール。アグエロに次いで2番目に多い。
・得点を決めれば、ジルーは決勝において特定のチーム(アーセナル)に所属してゴールを決めて、かつ対戦してゴールを決めた2人目の選手になる。

予想スタメン

画像2

展望

■ザ・ミラー対決

 1年ぶりのカップ戦ファイナルでの再戦はどうやら同じ3-4-3を使ったミラーゲームになりそうだ。チェルシーは7月19日のFA杯準決勝から3試合連続で3-4-3を起用。来季を見据えたシフトチェンジなのか、それとも上位対決が多かった最終盤をこれで乗り切ると決めたのかはわからないが、CL出場権を獲得したいい流れを崩したくないはずで、4バックには回帰しないと見る。

 より3-4-3予想の確信が強いのはアーセナルの方。再開後はほぼ一貫して3-4-3を起用していたし、ワトフォード戦でほんのり見せた4バックか5バックかわからないジャカを最終ラインに組み込んだ形は守備面で破綻していた。最終節の終盤のようにジャカではなくSBをDFラインに組み込んだ3-4-3が濃厚である。

 3バックからボール保持時に4バックに変形するのも両チームとも同じ。3バックのうちの2枚のCBが左右対称に開き、残りの1枚、SB適性が高い選手がタッチラインに開いて逆サイドのWBとSBのお仕事をする。チェルシーで言えばこの最終ライン兼SBロールを担当するのがアスピリクエタ。アーセナルで言えばティアニーかコラシナツである。同じフォーメーション同士というのはマンマーク志向が強くなりがちだが、互いにそれをずらすようなやり方をすでに持っているということだ。

■WGの人選で決まるジルーとの関係性

 まずはチェルシーについてみていく。イメージとしては右で作って左で刺す形。PAにボールを送り込む形で多かったのは右のWBのジェームズの速いタイミングでのクロス。右サイドで深さを作った後、マイナスのスペースで受けたボールをそのままエリア内にあげる形である。

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 右サイドでスペースの作り方は前線の選手起用によって変わる。ここ数試合スタメンで前線をつとめるのはジルー。マウントが右で使われる場合は彼のそばを衛星的にぐるぐると回ってポストプレーの受け手となることが多い。ワンツーパスなどのジルーとの連携で敵陣に侵入していく。

 ウィリアンが起用される場合はより行動の自由度が高い印象で、大外からカットインするように内側に運ぶ動きでダイレクトに縦に進む。外からのカットインになるので、元々居た場所にはジェームズが上がるスペースができるという算段だ。

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 ジルーが前線を務めると、ポストを活かした前進が多く、中盤の選手が前を向くことで攻撃を前進させる意識が強い。エイブラハムがCFの場合はより直線的で攻撃を縦方向に完結させる傾向が強くなる。中盤で起用されているジョルジーニョはタイミングを外したワンタッチで縦につけることができるので、ジルーが前線の場合でも急加速してリズムに変化をつけることができる。

 チェルシーの前線に関して最後に1つ付け加えるとプリシッチの好調は際立つ。ドリブルからのフィニッシュはもちろん、オフザボールにも優れており、展開に寄らすに持ち味を出しやすい選手のように思う。左から独力で攻撃を完結させることができる存在だ。

■中盤の行動範囲を操れるか

 ジェームズからのクロスが多い分、左WBのマルコス・アロンソは遅れてエリア内に飛び込むタスク。彼はどちらかといえばフィニッシャーより。したがって、チェルシーがロングカウンターを受けるときは後方では同数の状況も受け入れざるを得ないことも。スピード豊かなアーセナルのアタッカー陣がこの状況をどこまで使えるか?はポイントになりそうだ。

 プレッシングに関しても前からの積極性はあるが、最前線がジルーとなると機動力は微妙なところ。後方のジョルジーニョも同様に広い範囲をカバーできる存在ではなく、リバプール戦では持ち上がるゴメスをジルーとジョルジーニョがともにとがめられずに前に進めさせてしまうシーンもあった。

 アーセナルとしてはチェルシーのCHの行動範囲を広げるようにボールを回したいところ。より具体的には3トップの後方でパスを受けられる起点を作りたい。まともにやれば噛み合ってしまうが、ここはアーセナルのビルドアップ隊の工夫を見たい。最終ラインのボール回しとドリブルで中盤に時間を与えつつ、シュートパスで突っつきながら相手CHを走らせたい。

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 ただし、カンテが間に合った場合は事情が変わるだろう。彼がジョルジーニョの代わりに出てくるのならば、先述のプレスにおける行動範囲の課題が一気に解決する可能性もある。その場合は組み立てにおいてダビド・ルイスの長いレンジのパスへの依存度は高くなりそうだ。

■アーセナルのスタメン選びのポイントは

 アーセナルのスタメンで気になるのは3か所。1つ目は右のWB。マンマークに強さがあり、ビルドアップではMFロールで変化をつけてズレを作れるメイトランド=ナイルズはこの試合にマッチする人材のように思える。ただし、ベジェリンもロングカウンターの際に+1となれる存在であり、悪いチョイスではないのは間違いない。軽傷で前節を欠場しており、コンディションは気になるところである。

 2つ目は左サイド後方。WBとLCBのコンビネーション。コラシナツはウルブス戦では高パフォーマンスを見せたものの、チェルシーにはアダマ・トラオレほど直線的に肉弾戦を挑んでくる相手はいない。ティアニーを後方にサカをWBに置くのが1stチョイスになるか。ただし、サカやティアニーは後からゲームにも入れる選手なので、90分で考えた場合はコラシナツを頭からということも十分に考えられる。

 最後は前線3人だ。オーバメヤンは確定で、ラカゼットもほぼ当確といっていいだろう。問題は最後1枚。ペペやネルソンをWGとして幅取りの役割を持たせて左右非対称にするやり方にするか、エンケティアを起用してラカゼットのポストをチャンスメイクの主体としてオーバメヤンと共にフィニッシュの役割を与えるか。あるいはペペやネルソンを起用しても内側に絞ってラカゼットの落としの受け手を確保するやり方もある。ちょっとチェルシーに似ているやり方。

 攻め手のバランスで言えば、WGは1枚外に張ったほうが個人的には好み。マルコス・アロンソとの1対1のマッチアップと、ズマやリュディガーとのラカゼットのポストプレーの精度のどちらに自信を持つかだが、個人的には前者にチャレンジしたいところ。ラカゼットにはできるだけ負荷を避けながら、長い時間プレーしてもらいたい。

 さて、泣いても笑っても今季ラスト1試合。昨年とは大会も両チームの状況も監督も変わっているが、アーセナルにとっては昨年掴むことができなかったトロフィーを掲げるチャンスである。内容で言えば悪くはなかったアルテタの1年目が「結果は出なかったけど悪くない」になるのか、「改善がみられてタイトル獲得に至った」となるのかはこの試合で決まってしまう。FA杯の獲得ですべてがうまく回りだすわけではないが、アルテタ・アーセナルでの一歩目の形を決定づける試合にはなりそうだ。

【参考】
https://www.bbc.com/sport/football/53546100

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