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J1再開間近!気になる川崎フロンターレの10のこと

 一足お先に再開したJ2、もしくは開幕したJ3に続いて、いよいよ今週はJ1のリスタートである。とはいってもとにかく情報がない。情報がなければ何も書けないので、何も書けないなりに個人的な川崎の今季の気になるポイントを10個挙げてみた。まぁ、むしろ情報ある方が書けないか、こういうことは。というわけで早速行ってみよう!

目次

1. 小林悠の起用法は?

共存?競争?出遅れた夏男

 何もわかっていないといっても多少はわかっていることもある。例えば、小林悠は負傷離脱で序盤戦は欠場が見込まれることとか。昨季の川崎はリーグ戦での勝ちに恵まれないシーズンだった。2シーズン連続で優勝していたチームにとってはやや停滞感がぬぐえない1年。そうなると、選手起用にも一言いいたくなるのがファンの心というものである。特に熾烈だったCFの定位置争いは議論の種になりやすかった。

 小林に関して糾弾されていたのはゴール以外の攻撃関与の薄さ、そして決定力の部分か。昨季は消えがちだったし、簡単なシュートを外す場面は例年よりも目についた。もっとも、ルヴァンカップファイナルではチームの窮地を救うゴールを決めており、カラっきしダメだったシーズンでもない。今季のFW陣は知念がレンタルで出ていった代わりに宮代が加入。サイドでもプレーできる小林は彼らと共存するのか、それとも競争になるのか。新しい枠組みの中でどういう役割を与えられるだろうか。

 加えて言えば小林悠は川崎屈指の夏男。怪我で出遅れてしまったが、本来得意な真夏はもう目の前。序盤を夏に迎える異例のスケジュールの中で、いきなり活躍できるのか。コンディションも要チェックである。

2. WGの定位置争いは?

■色を決めるレギュラー争い

 今季、大きく色が出そうなのはWGの人選だ。2月の試合を見る限り、求められる役割は非常に多そうなこのポジション。幅を取り2,3人と連携しサイドを崩す、ドリブルで突破し正確なクロスを上げる、時には逆サイドからのクロスに飛び込みフィニッシャーの役割もこなすなど。

 WGのレギュラー候補は多士済々。昨季は通年で力強いパフォーマンスを見せた長谷川竜也、長谷川とは異なるタイプのドリブラーである三笘薫、復権を狙う齋藤学は左サイドが主戦場になる可能性が高いだろうか。右サイドは旗手怜央、宮代大聖などCFやセカンドトップタイプのプレイヤーの起用が目立つ。もちろん小林悠もここで起用可能であるし、MFタイプの家長昭博は他とは一線を画す個性の持ち主だ。

 個性豊かなメンバーの中でレギュラーが誰になるかに加えて、求められる役割や交代による属人的な色の変化などに注目すると今季の川崎は一層楽しめるかもしれない。

3. GKに求められる役割は?

■スタイルとのミスマッチの解消が課題

 カップ戦優勝の立役者であり、一時期はリーグ戦でもレギュラーを務めた新井章太が退団。一部のファンが「秘密兵器では!?」と噂していた馬渡洋樹はついにベールを脱がないまま、岡山に旅立ってしまった。代わりにC大阪から丹野研太が加入。安藤駿介、藤嶋栄介、そしてチョン・ソンリョンとの4人体制でスタートである。

 おそらく、現時点ではソンリョンが正GKなのだろう。高額年俸のソンリョンを控えGKにするために契約延長するような体力は川崎にはない。契約延長した時点でフロントや監督が彼にゴールマウスを託すという考えで間違いはないと思う。とはいえ、昨季の終盤のコンディション不良は気がかり。底を脱した感はわずかながらに見えたが、クラシカルなGKであるソンリョンにCB後方の大きなスペースを賄うリベロ的な役割を課すのは無理がある。スタイル的なミスマッチもぬぐえない。

 とはいえ今季も基本的には保持時はラインを押し上げるはず。自分が川崎と対戦するチームの監督ならば、まず狙うであろう。CB-GK間の広大なスペース。ここにどういった解決策を持っているのかには注目が集まる。

4. CHの人選とカラーは?

■アンカーでトーンが変わる予感

 4-3-3をやるにあたり、特に盛んな議論がファンの間で交わされたのが中盤の組み合わせの話。なんとなく、TLを見た感じでは本命守田、対抗山村的なイメージを持っていたのだが、ふたを開けてみれば開幕戦でそのポジションを務めたのは田中碧だった。ただし、アンカーという言葉のイメージとはちょっと異なり、インサイドハーフだった大島僚太や脇坂泰斗とともにフラットなスリーセンターというイメージ。時には攻めあがる田中の代わりに大島がバランスをとることもあった。

 このあたりは田中碧のプレースタイルを考えた調整だろう。攻め上がりにも持ち味がある田中を前に出す場面も演出しつつ、ポジショニングの悪さが弱点の守備面では両脇をプロテクトするように固める。想像するにアンカーという軸が変われば、スタイルもマイナーチェンジするのではないだろうか。山村や守田は明らかに田中とは異なる個性のプレイヤー。彼らがアンカーを務めれば、またインサイドハーフの役割も変わってくると推察される。開幕戦とはトーンが変わった中盤の色はどこで見られるだろうか。

5. 長いキックの精度は?

■序列を分けて、シーズンの成否を決めうる要素

 今季の川崎で新しく求められそうなのは長いキックの精度。後方からは遠方のフリーの選手に速い弾道でフィードを飛ばすことが求められそうだし、サイドのプレイヤーは正確なクロスを送れるかが重要な要素になりそうである。一般的に川崎のプレイヤーはボールスキルが高いとされているが、ことロングキックに関しては意外と秀でている選手は少ない気がする。ネットの高速サイドチェンジは特殊技能だとしても、奈良が最終ラインから狙ったタッチダウンパスは川崎の中では異質な取り組みだったように思う。

 期待がかかるのは最後の最後で川崎にやってきたジオゴ・マテウス。長いキックの精度に特徴のあるとの彼が本格フィットすればバックラインから新しい風が吹くことになる。もっとも、彼以外の従来の戦力にもここは期待したい部分。序列を決めうる大きな要素でもあるし、逆に標準装備できれば好成績を収める可能性もグッと上がってくる予感がある。

6. 筑波コンビの逆襲は?

■新しい武器が欲しい

 川崎にとってのターニングポイントは風間八宏監督就任というのはよく聞く話である。彼がクラブにもたらしたものはいくつもあるが、谷口彰悟と車屋紳太郎という筑波大時代の教え子たちもその一つといってもいいかもしれない。しかしながら昨季は共に苦しんだ。

 車屋は同じポジションの登里に比べるとポジショニングにやや難がある。クロスの精度もなかなか上がってこず、アタッカーをサポートしながら自らも攻撃に絡むという点で少し水をあけられてしまったように思う。

 過去には警告がなかったシーズンを記録した谷口も昨年は2回の退場。ボール出しや対人の対応においてもややミスが目立ち、例年に比べると安定したパフォーマンスだったとはいいがたい。登里やジェジエウなど新たな柱となる選手の登場で、これまで長年主力を務めていた彼らのパフォーマンスは改めて問われることになるシーズンになりそうだ。特に今季は新しいことをやると打ち出すシーズン。もう一段階彼らを上に押し上げる武器を身に着けたいところ。真価が問われそうだ。

7. 新戦力のフィットは?

■中断はどれだけのショートカットになるのか

 鬼木政権のわかりやすい弱点の一つとしてよく挙がるのがスロースターターであること。とりわけ新戦力のフィットの遅さは非常に目につく。特指で早めに合流ができる大卒ルーキーや下部組織で川崎のサッカーを経験していた選手は比較的馴染むのが早いが、顕著なのは他クラブから移籍してきた『外様』たちだろう。優勝メンバーとして大きくタイトル獲得に貢献した家長昭博ですら、初めのシーズンにファンの心をつかむまでにはかなり時間を要した。おそらく8月13日の鹿島戦を彼のターニングポイントとして挙げるファンは多いだろう。開幕してからおよそ半年後のことだ。

 モノになった家長はまだいい方。鳴り物入りで加入したレアンドロ・ダミアンはまだポテンシャルを持て余している感じはぬぐえないし、エウシーニョ退団後の右サイドバックのレギュラー候補として加入した馬渡とマギーニョは共に今季放出されてしまった。昨季のACLにまだ悔いが残るのは、ジェジエウを登録外にするというクラブの判断が腑に落ちないからという理由もある。新しい国でフィットに時間がかかるのはわかるが、デビュー戦となった5月の仙台戦でのジェジエウの出来を見れば、ため息をつきたくなるというもの。近年の例外は阿部浩之くらい。J屈指の気が利く男でなければ、即戦力にはなりえないのだ。

 さて、今季はどうだろうか。時間はあったが、実戦はほぼなかったとなるといきなり完璧なものを見せられるというのは考えにくいだろう。とはいえ、あくまで時間で考えれば今季は非常に短い。家長のようにフィットに半年かかってしまったら、もうシーズンは終わってしまうのである。準備期間の長さでどの程度フィットまでの期間をショートカットできるか。外部から呼んだ戸田コーチと内部昇格の寺田コーチの新任2人の手腕も気になるところだろう。

8. 過密日程への耐性は?

■特例の「ノーリスク」と大卒新人の立ち位置

 過密日程には比較的強いチームといっていいだろう。連覇した17年,18年はもちろん、振るわなかった昨季すら中2日の試合は7戦5勝2分で無敗。ACLでの経験もそれなりに積んでおり、チームとしての過密日程への向かい方としては不安は比較的少ない。新しいスタイルでどれだけ今までのように体力を抑えられるかがカギである。

 加えて今季は降格がない。サンフレッチェ広島で黄金時代を気づいた森保監督ですら残留が確実になる勝ち点を得るまでのプレッシャーはすさまじいものがあったというインタビュー記事を見たことがある(出典どこかわすれましたごめんなさい)。それだけプレッシャーが大きい降格制度が一時的になくなるというのは当然リーグに大きな影響をもたらすと考えるべきである。

 この制度の具体的な懸念として挙げられるのは消化試合の増加。となると勝利が第一目的ではない公式戦が増えてもおかしくはないということである。川崎は大卒新人多め+戦術面での転換期でもある。早々に優勝争いから脱落してしまえば、勝利よりスタイルを固める方向にシフトしても不思議ではない。レビュワーとしては厄介なシーズンになりそうである。

9. 中村憲剛は?

■ナイトで守られる王様に

 負傷している間に通り過ぎていくゲームの少なさを考えれば、不幸の中にわずかな幸運があったといってもいいかもしれない。中村憲剛の離脱期間の多くはオフシーズンとコロナウイルスによる中断で消化されそうである。とはいえ、コロナウイルスが担保してくれるのは休養する時間だけ。実戦での感覚を養う時間まで与えてくれたわけではない。キャリアを変えうる大けがを負ったことによる体の変化もあるはずで、復帰までに長い目線で見守らなくてはいけないというスタンスは大きくは変わらないはずである。

 それだけに復帰後のポジションについては悩ましいところ。従来はトップ下、今の4-3-3でいえばインサイドハーフが素直な置き方かもしれないが、ビルドアップにサイドの崩し、フィニッシャーに加えて素早いプレスバックまでの多くのタスクを求められるであろうインサイドハーフは負傷明けの憲剛とフィットしているかは微妙なところ。むしろ、彼を守るために上記の役割を果たすナイトをインサイドハーフとバックラインに負わせて、アンカーとして周りを使う役に専念してもらうのがいいのかもしれない。

 彼の昨年のパフォーマンスで気になったのは速い局面でのボールのコントロール精度の低さ、フィニッシュワークでの関与の薄さ。アンカーであれば、前のポジションよりも時間はまだ与えられるはずだし、攻めあがってシュートを放つ責務もない。前からのプレスのスイッチ役としての役割がなくなるのは惜しいが、なるべく動かないで済むやり方はこれではないだろうか。アンカー中村憲剛という王様タスクは果たして実現するだろうか。

10. アフターコロナのマーケティングは?

■離れたところにいるファンへのリーチの方法を学ぶ機会に

 リーグ王者として君臨した2年間はまさしくバブル。等々力のチケットはプレミア化し、ファンクラブ会員やシーチケホルダーでなければ自由席で席取りができないなど、実質「一見さんお断り」状態になっていた。リーグ戦での成績がやや低迷した昨季の終盤などはだいぶ落ち着いたものの、キャパの限られたスタジアムを持つ中でどのように新規顧客を開拓していくのか?というのは個人的に気にしていた部分である。どちらかといえば、川崎が励んできたプロモーションは実際にスタジアムに来て参加するスタイルのものが多い気がしたからだ。

 もちろん、ローカルクラブとして地域密着に軸足を置き、過度なグローバル化を避けるアプローチもある。ただ、状況が変わった今ではその地域の人すらスタジアムに足を運べない状態である。2020年は不可抗力とはいえ、サポーターとクラブの関係性を変わりうる年になると思っている。スタジアムで地域密着型のプロモーションに傾倒してきた川崎が離れた場所からクラブを見守るファンにどのようなアクションをするのだろうか。

 浦和の横断幕の一件は多くの議論を呼んだが、角度を少し変えればクラブにおけるサポーターの立ち位置や役割を示すマーケティングとも見て取れる。あのような目立つ形ではなくとも、ここから先のクラブのアクションは否が応でもクラブとサポーターのアフターコロカ下における関係性を規定するものになるだろう。

 明らかに苦しい1年になるとは思うが、自宅で見守るサポーターへのアプローチの仕方は今季のクラブの気になる点であることは否定できない。離れたファンを巻き込めるメソッドを見つけられれば、スタジアムになかなか来れない新しいファンの獲得につながる可能性も高い。この状況を逆手にとって将来の新規顧客の拡大の種を蒔くようなやり方を期待したいところである。

以上!開幕楽しみだね。

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