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「11人の方が大事」~2024.10.1 UEFAチャンピオンズリーグ リーグフェーズ 第2節 アーセナル×パリ・サンジェルマン プレビュー

目次

Fixture

UEFAチャンピオンズリーグ
リーグフェーズ 第2節
2024.10.1
アーセナル(16位/0勝1分0敗/勝ち点1/得点0 失点0)
×
パリ・サンジェルマン(15位/1勝0分0敗/勝ち点3/得点1 失点0)
@アーセナル・スタジアム

戦績

過去の対戦成績

 過去の対戦でアーセナルの1勝、引き分けが3つ。

Match facts from BBC sport

Match facts
  • アーセナルは欧州での過去4回のパリとの対戦で無敗(W1,D3)。パリにとってアーセナルは欧州コンペにおいて未勝利のまま最も多く対戦している相手。
  • パリはCLにおいて直近3試合のイングランドでの試合で敗北。2021年のシティ戦、昨季のニューカッスル戦。セント・ジェームズ・パークでの敗戦はパリにとってイングランド勢に対しての最大点差での敗北。
  • アーセナルの直近のフランス勢との対戦は昨季のGSでの6-0のレンヌ戦。アーセナルは27分までに4-0とした試合。この試合はイングランドのチームがフランスのチームに対して欧州カップ戦における最大得点差での勝利。
  • ミケル・アルテタはルイス・エンリケがCLで対戦する6人目のスペイン人監督。エンリケは直近6試合のスペイン人指揮官との試合で5勝を挙げており、ここまで対戦した5人の指揮官(グアルディオラ、エメリ、イマノル、ミチェル、チャビ)には少なくとも1回は勝利している。
  • アーセナルは直近2試合のCLでいずれも無得点(バイエルン戦、アタランタ戦)。EL/CLにおいて過去に3試合連続で無得点を記録したことはない。
  • アーセナルはアタランタ戦で敵陣ボックス内でのボールタッチは9回のみ。2014年3月のバイエルン戦と並び、クラブ最小記録。
  • アーセナルとパリの両軍でプレーした選手は過去に3人存在しており、そのうちの1人はアルテタ。残りの2人はニコラ・アネルカとラサナ・ディアラ。
  • 最後にCLで得点を決めたパリの選手は4月16日のバルセロナ戦におけるキリアン・エムバペ。以降、71回のシュートがいずれもゴールにつながっていない。そのうちの14本が枠内シュートで、ゴールポストには4回当たっている。
  • ブカヨ・サカはエミレーツでのCLで7つの得点に関与(4G,3A)しており、CLのはじめ5試合のホームゲームにおける得点関与数がクラブ史上最多。

スカッド情報

Arsenal

【欠場濃厚】
マルティン・ウーデゴール、冨安健洋、キーラン・ティアニー、オレクサンドル・ジンチェンコ、ミケル・メリーノ
【出場可否不明】
ベン・ホワイト、リカルド・カラフィオーリ

Paris Saint-Germain

公式のスカッド情報。ドンナルンマ、ハキミ、マルキーニョス、ファビアン、アセンシオ、ドゥエ、ヴィニーニャ、ガンイン、コロ・ムアニ、メンデス、バルコラ、ザイール・エメリ、ベラルド、シュクリニアル、サフォノフ、ザーグ、エル・ハナシュ、エムバイェ、パチョ、テナス、ネベスがスカッド入り。

予習

CL 第1節 ジローナ戦

リーグアン 第5節 スタッド・ランス戦

リーグアン 第6節 レンヌ戦

予想スタメン

展望

脱・エンバペは進んでいるのか

 トッテナムとシティのアウェイゲームに挟まれるという過酷なベルガモ遠征から2週間。アーセナルのホーム開幕戦はPot1のパリとのホームゲーム。Pot2とのアウェイゲームの後に近年のCL実績で言えば格上の相手が登場。アーセナルのCLは序盤からタフな組み合わせとなっている。

 パリの今季の大きなテーマは脱・エンバペだろう。チームの大きな核を失い、新しいコンセプトのチームに舵を切るとするかどうか?と言ったところだろうか。試合を見る限りは極端に方向性は変えていないように見える。ボール保持を大事にする4-3-3をベースにファストブレイクと大外を起点とした定点攻撃で攻め切る緩急をつけた攻撃が特徴だ。

 保持においては選手の移動からズレを作る。EUROでよく見られたファビアン・ルイスの大外への移動は一例だろう。IHの選手はコンパクトな守備ブロックの相手に対しては前線への裏抜けを担当することもある。アンカーにヴィチーニャが入れば、移動したIHに合わせるように列を上げるなど、1人の選手の動きに連動したポジショニングをするのも特徴だ。

 SBのハキミは大外の高い位置への進出を基本線としつつも中盤に絞るタスクを行うこともある。逆サイドのメンデスに比べるとビルドアップのタスクは少ない。

 WGは速攻も遅攻でも対応することができる。昨季独り立ちしたバルコラとデンベレは強力で大外からの仕掛けで停滞した局面での打開や少ない手数で相手を陥れるカウンターを成立させる。

 CFは有力候補だったゴンサロ・ラモスの離脱により、やや混沌とした状態にある。ポジションの適正で言えばコロ・ムアニが有力なのだろうがいまいち信頼感を得ることができていないのか、アセンシオなどがテストされている。

 エムバペがいるいないという観点でいうと、特にカウンター局面での得点力の低下とポゼッションをベースにしたチームの基盤の強固さを天秤にかけてチームとしての完成度が上がっているかどうかが論点になるだろう。そういう意味では直近のリーグ戦で見せたガンインのCF起用は面白かった。時にはSBの位置まで下がったりなど、フリーマンとしてサイドのサポート役に入り、ポゼッションの不定形成分を追加。ヴィチーニャ不在によって硬直化しやすい構造に動きを与えた。

 いわゆる偽の9番としてだけでなく、CFとしてシンプルに求められる前線で体を張るプレーをできたのもガンインの良かったポイント。相手のDFを背負いながらポストで味方をフリーにするという普通の9番のタスクもきっちりやり切ったのは印象がいい。

 プレッシングに関しては、正直エムバペがいなくなったことをプラスに転じられるほどの強度は感じられなかったのだけども、レンヌ戦の高い位置からのプレスはここまでの中で一番質が高かったように思う。ガンインのCFというシステムがどこまで今後基本線になるかはわからないが、エムバペ以後のパリの物語を作り上げるための試行錯誤をすでにルイス・エンリケが始めていることだけは確かだ。

シティ戦のリベンジという位置付け

 しかしながら、ガンインのCF起用をアーセナル戦で継続するかは微妙なところかなと予想する。懸念の1つはデンベレの不在だ。CFを空けるタスクがそれなりに発生する分、前線には他の選手が飛び出すことが多いのがこのシステムの特徴。SBのハキミも飛び出す役の1人である。

 だが、移動コストが伴う仕組みにおいてタメを作ることができるデンベレの不在は機能を限定的なものにする可能性がある。ボールを安心して預けられるデンベレの不在は他の選手の移動を安全に行うことの足枷になる。トランジッションでカウンターを食らった際にはピンチに陥る可能性が高くなるからだ。

 レンヌ戦では問題なく行うことができていたCFとしてのタスクをガブリエウやサリバに対して行うことができるかも疑問だ。アセンシオが招集メンバーに含まれたことを踏まえると、彼かコロ・ムアニを真ん中において、サイドから仕掛けるデンベレの代役をガンインに託す方がスタンダートなように思える。

 アーセナルが行うべきなのはどちらにしてもパリのポゼッションスタイルを阻害することである。局面を選ばず、大きな弱点らしい弱点がないというのがパリというチーム。CLでの実績もあり、エムバペがいなくとも強いチームであるが、崩せるきっかけが全くないわけではない。

 ハイプレスを交わすということに関しては確実に行いたいところ。パリは高い位置からのプレスに関しては昨季より積極的になっており、頻度が高まっている。ただし、前線と中盤が縦に引っ張られる際にDFの押し上げが連動しないケースがある。間延びした中盤のスペースをGKを絡めたポゼッションで攻略したい。

 特に狙い目になりそうなのは4-3-3のWGとSBの間のスペースである。ウルブス戦(相手は5-4-1だったけど)で見せた、前線とDFのサイドの切れ目をつくようなライスやハヴァーツの流れるアクションからボールを運ぶことができれば、パリのDFラインを背走させることができるだろう。上で述べたファビアンがズレのきっかけ作りでよくやることをアーセナルもやりましょうという話だ。

 逆にハイプレスにどこまで出ていくかは微妙なところ。レンヌ戦では相手のハイプレスを延々と回避していたし、ヴィチーニャの復帰が見込まれることを踏まえると、プレスの回避能力はさらに高まるように見られる。ただ、前線にデンベレがいないことを踏まえると、後方を同数で受けるリスクは平時よりは取りやすいので、高い位置からプレスに行くチャレンジはある程度は許容することができるだろう。強引に蹴らせて、回収するメカニズムにはめることができれば自分たちのリズムに持ち込むことができる。

 特に相手が移動を行った場合にはポジトラの意識を高めたい。移動を頻繁に行うハキミの背後を狙うアクションは常に行いたい。ノース・ロンドン・ダービーのような一発の抜け出しから盤面をひっくり返すことがマルティネッリには求められるだろう。

 大枠としてはシティ戦でできなかったことに再トライするという感じだろう。プレミアの首位攻防戦は「10人での戦い方における武士道精神」で延々と盛り上がっていたが、そんなどうでもいい話よりもこの試合で真にアーセナルが反省すべき点は11人の段階でハイプレスに出ていきながら高いDFラインを破られて失点を喫し、シティのハイプレスに屈してボールをつなげずに苦戦した時間が発生したことである。

 サッカーは10人よりも11人の時間が長いのだから、今後の試合を見据えると明らかに大事なのは10人での戦い方よりもこっち。もっとも、大事なことがそれなりに置き去りにされるのが世の常ではあるけども。シティ戦で11人の時の話をしている人はそんなにいないし、Jリーグの首位攻防戦はタオルの話で溢れかえっている。

 話は少しずれたが、個人的にはこの試合はシティ戦のリベンジという位置付け。11人で機能しなかったポゼッション阻害とハイプレス回避を高いレベルの相手に機能させることが一番大事。アーセナルのスタイルの本分を欧州での実績が十分にあるパリ相手に発揮できるかどうか。序盤戦の重要な資金石になる試合だ。

【参考】
https://www.bbc.com/sport/football/premier-league

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