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「強みと弱みの逆転現象」~2020.5.23 ブンデスリーガ 第27節 ボルシアMG×レバークーゼン レビュー

目次

まえがき

 レビューに入る前に中断前の両チームの試合を見た簡単な印象を述べておきたい。

 今季からグラードバッハの新指揮官に就任したマルコ・ローゼ。泣く子も黙るレッドブル方面からのリクルートである。というわけでハイテンポでいわゆる「ストーミング」よりなスタイルな今季のグラードバッハ。ワイドなポジションを含めて前線にはストライカー寄りの選手を多く起用する傾向があり、ボール奪取後はシンプルに彼らにボールを送り込むことを原則としている。

 ただ、前節のレビューで同じくストーミングよりと形容したシャルケに比べれば、いくぶんか原理主義な感じが薄くバランスはとれている印象。ボール保持も非保持も落ち着かせるような場面もないわけではない。

 対するレバークーゼンは非常にドイツらしいチームだ。スピード自慢の両ワイドと9.5番として君臨するハフェルツを軸に繰り出されるカウンターは迫力十分。CHは攻撃参加でもアクセントをつけられる存在で、サイドはSBが駆け上がって厚みをもたらす。

 ただ、最終ラインのコントロールはやや緻密さに欠け、カウンターでは振り切られる場面もしばしば。一部の選手を除けば、バックスは足元の拙さもやや目につく。

 最もこれはグラードバッハも同じ弱点を抱えているといっていい。バックスは相手のアタッカーとスピード勝負をすれば分が悪いことが多いし、ボール保持では強烈なプレスに窮する。スタイルは異なるがアキレス腱となるのは案外同じような部分であったりしそうな両チームである。

【前半】
先手を取った詰めのプレス

 スタメンはこちら。

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 エネルギッシュなチームだとしてもコンディションに不安があれば、ハイプレスに行くのもためらいが出るのは当然である。特にグラードバッハのような消耗が激しいスタイルのチームは、そういった出力調整とお付き合いしながら日程を消化する必要がある。

 しかし、この日のグラードバッハはキックオフから高いテンションで相手に圧力をかけていくスタイルを選んだ。3-4-3のレバークーゼンに対して、前からプレスをかける。

 意外だったのはそのグラードバッハ以上に、レバークーゼンがより積極的なプレスに出てきたことだ。開始3分で攻めあがっていたわけでもないCBの一角であるドラゴビッチが、相手のPA付近まで降りていったホフマンにプレスをかけていることがレバークーゼンのプレスの前がかり具合をよく示している。

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 ともに人を捕まえに行く立ち上がりだったが、グラードバッハはレバークーゼンほどリスクを負っていたとはいいがたいだろう。レバークーゼンの中で比較的時間を得ることができたのは両WB。グラードバッハのSBが前に出るのにやや時間がかかったため、WBはフリーでボールを持てる。ちゃんと横幅使ってグラードバッハの前線3枚を引きつけるのが大事。サイドで時間を得て、ここから裏でスピード勝負というのがお決まりのパターン。特に左サイドのシンクラーフェンとディアビの縦関係でよく見られた連携だった。

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 ボール保持で落ち着かせどころを見つけつつ、前線のスピード勝負に持ち込む。立ち上がりのレバークーゼンは強みを見せるやり方を実践できていた。グラードバッハとしては最終ラインの脆さという弱点がさらされてしまった格好である。

 そして、グラードバッハのもう1つの弱みであるプレス耐性の低さがレバークーゼンの先制点のトリガーに。グラードバッハのパスミスを高い位置でかっさらったデミルバイ。ためらいなく縦に突き進むとベララビ⇒ハフェルツで最終ラインの裏取りに成功。これを冷静にハフェルツが沈める。ハフェルツは自分が見るときは大体よくない時ばかりなのだが、やっと輝いているところを見れた。今どきのオフェンシブハーフはストライカータスクも必修になっている感があるので、大変そうだ。

 先制点のシーンに限らず、序盤はレバークーゼンのペース。すでに述べた通り裏へのスピード勝負ではグラードバッハは分が悪い上に、サイドに裏に神出鬼没でボールを受けるハフェルツを捕まえることができない。WBという安全地帯に加えて、レバークーゼンはハフェルツにいったんボールを預けることでボール保持を落ち着いて進めることができた。

 一方のグラードバッハは先制点を奪われた上に、エンボロが負傷交代。攻撃においてはアタッカー陣のダイナミズムが武器だっただけに、エンボロの交代は痛い。思い切り入った両チームだったが、序盤は明暗が分かれる形になってしまった。

【前半】-(2)
強みが弱みに

 先制点までは踏んだり蹴ったりだった感のあったグラードバッハだったが、徐々に反撃の糸口を見せる。きっかけになったのは、先ほどまでは敵の強みだったレバークーゼンの食いつきの良さ。特にサイドにおいて相手が出てくるスペースをグラードバッハは徐々に使っていくようになった。

 グラードバッハはビルドアップの時にCHが低い位置まで落ちる動きを見せる。CBが外に開く分、高い位置を取るのがSB。ここにレバークーゼンのWBを食いつかせるのとセットで、グラードバッハの前線が裏を狙う動きを見せるようになる。先ほどまでレバークーゼンの強みになっていた高い位置までのプレスをグラードバッハが利用した形だ。

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 あるいは降りてくる前線の選手が穴をあけるパターンもある。エンボロに代わって入ったシュティンドルが落ちてくるパターンもあったが、より効果的だったのはホフマン。はじめはマッチアップ相手のドラゴビッチを連れてきていたが、途中でターゲットを変更。徐々にサイドの低い位置で受ける動きを見せることでレバークーゼンのWBを引き付ける。ここにグラードバッハのSBやFWが流れることで前進が可能になってくる。

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 グラードバッハがプレスに慣れたことに加えて、レバークーゼンが先制点後にプレスを弱めたことで、徐々にグラードバッハは反撃の機会を得る。

 ただ、グラードバッハはレバークーゼンに比べるとアタッカーの質的優位がそこまで大きくなかったことと、非保持時の問題点が解決したわけではない。したがって、グラードバッハが主導権を握ったというよりは、ボールを持った方に主導権が入れ替わる一進一退のゲームになったと表現したほうが正しいような気がする。むしろ、決定機が多かったのはレバークーゼンの方かもしれない。44分にデミルバイが無人のゴールに押し込めなかったシーンが両チーム合わせて最も大きなチャンス逸だろう。

 試合は0-1。レバークーゼンがリードのままハーフタイムを迎える。

【後半】
大味な中で目立ったのは・・・

 後半もプレスの強さ、押し込む時間の長さで主導権の所在が明らかになる試合になった。前半のレバークーゼン優勢の時間帯はハフェルツ、ディアビあたりが目立っていたが、後半立ち上がりに優勢になったグラードバッハで目立っていたのはテュラム。ストライカーらしい動き出しの良さを武器にレバークーゼンの最終ラインの脅威となっていた。

 テュラム自身が同点ゴールを決めたシーンでは、GKのゾマーからのフィードを落とす役割も兼務。グラードバッハとしては前半からCBの間でボールを持ちながら探っていたゾマーの配球がようやく実った形である。レバークーゼンはこの失点シーンも含めて、タプソバが最終ラインに残るシーンがちらほらあったのが気になる。64分のグラードバッハの決定機とかもテュラムに出し抜かれてしまっていたし。

 追いつかれたのも束の間、即時反撃に出るレバークーゼン。今度はハフェルツは出し手。間で受けたハフェルツからパスで抜け出したベララビがレイトタックルを受けてPKをゲット。これをハフェルツが決めて、わずか数分でレバークーゼンが再度リードを得る。

 60分から70分過ぎはビハインドを再度背負ったグラードバッハがボールを握る時間がやや増えたものの、その後は両チームとも間延びやパスミスが目立つ少し淡白な終盤になった。このあたりは立ち上がりに運動量を伴った入りをしたのが効いたのかもしれない。グラードバッハは75分にストロブルが故障。この日2人目の負傷での交代になってしまう。

 レバークーゼンの仕上げはセットプレーから。途中出場のベイリーが得たFKをベンダーがヘッドで叩きこんで勝負あり。3-1でレバークーゼンが勝利。グラードバッハとは順位も入れ替わり、CL圏内に浮上した。

あとがき

 両チームの良さが出た試合だろう。試合としては大味だった感は否めないが、ともにシュートシーンが多く、見る側としては楽しめたのではないだろうか。

 同日の別試合でヴォルフスブルクと対戦したドルトムントも、ボールを持たれる時間帯は窮したように、ブンデスリーガはボールを持たれると弱いチームが多いように思う。この両チームも非保持では脆いチームだが、この試合ではレバークーゼンが強気なプレスで先手をとったのが奏功。先にグラードバッハの弱さを引きずりだした。

 一方でグラードバッハはパスミスや同点直後のPKなど試合運びの拙さが目についた。そもそも試合をコントロールする能力はグラードバッハの方が上かな?と思っていたのだが、見せた隙をレバークーゼンが見逃さなかった形だ。

 レバークーゼンは3バックの方が4バックよりビルドアップはスムーズに見えた。4バック時よりも横幅上手く使えていたように思う。TLではフィルミーノの影を重ねる人が多かったハフェルツは、ここからどう進化していくんだろうか。

試合結果
2020/5/23
ブンデスリーガ
第27節
ボルシア・メンヘングラートバッハ 1-3 レバークーゼン
シュタディオン・イム・ボルシア・パルク
【得点者】
BMG: 52′ テュラム
B04: 7′, 58′(PK) ハフェルツ, 81′ S・ベンダー
主審: セレン・ストークス

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