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「ライバルは千両役者」~2020.1.23 プレミアリーグ 第24節 ウォルバーハンプトン×リバプール レビュー

スタメンはこちら。

図2

目次

【前半】
我慢比べは早々に

 ウォルバーハンプトンのフォーメーションは3-4-1-2。日頃見慣れている3-4-2-1のような形からはマイナーチェンジされた表記である。ただ、実際のウルブスの守り方を見るとトップ下の位置に表記されていたネトはCHと同位置まで下がることが多く、実質リバプールのボール保持に対しては5-3ブロックのような形で対応していたことになる。

 リバプール相手に5-3で守るとなると気になるのは、リバプールのリーサルウェポンである両SBにどう対応するか?ということ。CHが気合でスライドするのか、それともWBがリスクを冒して出ていくのか、はたまたFWがプレスバックしてくるかなどいくつかのやり方が考えられる。ウルブスが選択したのはCHを最も近い位置に置きつつも基本的にはマンマークを付けないというやり方だった。

図3

 3CH化している中盤が出ていかなかった理由はいくつか考えられる。例えば、リバプールの3CHに対して噛み合わせを進んでずらしたくなかったとか。しかし、この日の序盤のウルブスは特段リバプールの3CHに対しても強くプレスにいっていたわけではない。したがってほかに理由があるはずである。おそらく、彼らが優先したのは後方のスペース管理。ロバートソンやアレクサンダー=アーノルドから出るボールの先をケアしていたのだと思う。5-3-2という後ろに人を余らせる重たいフォーメーションでよく見かけるのは、後方の数的優位を生かしたチャレンジ&カバー。

図4

 しかし、ウルブスのやり方は数的優位を生かしたチャレンジ&カバーというよりは、中間ポジションを取りながらパスコースやパスを受けるスペースを制限することを重視していた。ウルブスはこれを遂行するために、選手同士の距離感を維持することに注力。レーン移動するリバプールの選手を気にしつつ、ブロックの中で受けさせないように意識していた。特にSBから斜め方向に入るフィルミーノへの楔には常にウルブスの選手が立っていた。

図5

 というわけで外を迂回させられるリバプール。さすがにウルブスも3センターがスライドした逆側の管理はやや甘くなっているので、リバプールのSB→SBの高速大陸横断が決まった時は内側に抉られる場面はあったけど、それを除けば内側を締め出して、リバプールに外から回すことを強要していた。いわばボール保持は危険なエリアへの侵入を消しながら、リバプールがロストして自滅するのを待つ!というやり方であった。

 ひとたび奪えばカウンターを発動するウルブス。発動出来なかったときも後方からのビルドアップでボールをつなぐ。リバプールの非保持はマネを下げ気味、サラーを前線に残し気味の4-4-2チックに変形していた。ボール運びはヒメネス、トラオレなどシンプルなロングボールを使う場面もあったが、効果的だったのはリバプールの右サイドの狙いうち。リバプールはこの並びならば、右サイドの高い位置はオックスレイド=チェンバレンの管轄になるはずだが、ポジションを守る意識がやや希薄で、対人でも後手を踏む。大外を使うWBのジョニーに加えてこちらのサイドに流れてくるトラオレ、ネト、ヒメネスを中心にコンビネーションで突破する。エリア内にクロスを打ち込んでも、全知全能のファン・ダイクにあっさり鎮圧されたりもしたものの、こちらのサイドからの崩しは比較的上手くいっていた。試合展開にはあまり関係ないシーンだったけど、トラオレがヘンダーソン、フィルミーノ、ワイナルドゥムあたりを蹴散らしながらドリブルするのやばかった。

 守備は我慢比べを挑み、得意のスピードとパワーを生かした速攻で反撃に出る!というウルブスのプラン。完成度も含めてなかなかいいプランだと個人的には思うのだが、CKからのリバプールの先制点は8分のこと。我慢比べというウルブスの前提条件が崩れてしまった感のある時間帯の失点だ。その後、10分のウルブスによる必殺サインプレーFKが決まらなかったのも対照的で切ない。我慢比べを強いたい相手にまず先手を許してしまったのは痛恨の極みである。

 失点後から徐々に試合はオープンになっていき、中盤のデュエルが頻発していく。先ほどまでは非保持ではボールを落ち着けることを優先していたウルブスも徐々に後方からのチャレンジ&カバーによるディフェンスを開始。ガンガン行こうぜ!モードに切り替える。すなわち、本来リバプールの得意な局面が増えていくわけだが、ウルブスも中盤の対人では大きくひけをとらなかったのはさすがである。特にロスト後のボール奪回は頑張っていた。ただし、前残りのサラーにボールが渡るとかなりの確率で決定機になっていた。このあたりはリバプールが4-4-2で迎え撃ったのと引き換えにしている部分なのかなとか。

 そんなことを考えているうちにマネの負傷で南野がついにプレミアデビューを飾る。ポジションは左のサイドハーフ。この日の役割でいえば、守備時にはサイドハーフのように低い位置まで戻り、攻撃に転じた時に爆発的な加速力でボールを持ち運ぶ、あるいは駆け上がっていく必要があるポジションである。

 投入直後からボール回しは比較的すんなり入った印象。アリソンのフィードやロバートソンの楔の受け手になり、ボールの前進を手助けしていた。もちろんまだぎこちなさはあるけども。サラーと2人で迎えた決定機はパスを受けられず。サラーのランに合わせたせいでゴールから遠ざかる向きに動いてしまったこと、サラーとの距離が近かったことなどパスを受けられなかった理由はいくつかありそうだ。もちろん、やってもサラーはパスくれなかったかもしれないけどね!!

 試合は0-1。リバプールのリードでハーフタイムを迎える。

【後半】
南野の守備の懸念点

 先に動いたのはリバプール。南野とオックスレイド=チェンバレンのサイドを入れ替えた。正直意図はくみ取れなかったぜ。しかし、前半右でゆるふわの守備を見せていたオックスレイド=チェンバレンは左にうつってもややふわふわ。時にはワイナルドゥムが追い越してサイドの守備に来ることもあり、省エネを命じられているのかと疑いたくなるくらいエネルギーをセーブしていた。

 彼のふわふわは失点にはつながらなかったが、他の人のふわふわがウルブスの同点弾を許すことにつながってしまう。失点のキッカケになってしまったのはロバートソン。彼がアダマ・トラオレにちぎられたことでファン・ダイクがサイドに釣りだされることに。ファン・ダイクをつり出しつつ、エリア内に無事にクロスを上げることはリバプール戦でのSSRシチュエーション。得点の確率がかなり高いシチュエーションといえる。SSRだからあんまり出現しないけど。このSSRシチュエーションを決めきったのがヒメネス。これでウルブスが追いついた。

 ここからペースを握ったウルブス。左右のサイドを制圧してリバプール相手に優位に立つ。右サイドは先ほどの得点シーンのようにアダマ・トラオレ祭り。この日イマイチだったロバートソンだけでなく、ワイナルドゥム相手でもごり押せるのだから強い。彼の外からの1対1はこの試合1番のウルブスの武器だった。

 気になるのはウルブスの左サイドの方。つまりリバプールで言えば南野がいるサイドである。ウルブスの左サイドへの展開は、右サイドからの長いサイドチェンジが起点となる機会が多かった。南野の過度に絞ったポジションを長いパスが超えるシーンが何回かあった。これによりアダマ・トラオレがいない左サイドからもえぐられてしまうリバプール。

図6

 ザルツブルク時代にそれが成り立っていたように南野が絞るのが必ずしも悪いわけではない。しかし、ウルブスの右サイドの選手に対してリバプールの選手はそこまで強くプレスに行っていない。したがって、同サイドに追い込んでボールを取り切る意識はあまり強くなかったように思う。南野のポジショニングはサイドに追い込む意識が強いもの。前半から躍動していたジョニーをどう捕まえるか?そしてチームとしてボールでどこで奪い取りたいか?と南野の意識との間のギャップをウルブスがうまく使った形である。

 しかし、点を取るところまではいかないウルブス。決定的なチャンスの一歩手前でリバプールに防がれてしまう。そして修正を施すリバプール。オックスレイド=チェンバレン→ファビーニョで守備時に4-5-1となる変更を敢行。中盤で5人を並べてハーフスペースの立ち位置塞いだ形の配置に変化。逆サイドの南野が絞る幅も強制的に小さくなり、ウルブスのボール保持での攻め手をうまく消していた。

図7

 いけそうな時間帯で取れなかったウルブス、そして修正を施したリバプール。今季のリバプールの試合で何回も見たシチュエーションは、何回も見た結末で幕を閉じる。最後はフィルミーノの超ビューティフルゴールで勝ち越しゴール。これはなんかもう我には説明する語彙はない。サラーの引き付け、ヘンダーソンのダイレクト、フィルミーノの動き出し、そして一連のプレーがスローインからスタートしたことまで含めると、非常に高いレベルでコーディネートされていたゴールだった。

 金星まであと一歩まで迫ったウルブスだが、リバプールに屈するといういつもの結末に。無敗記録を伸ばしたリバプールが難所モリニューを攻略して勝利を飾った。

あとがき

足りなかったけど…

 あと一歩まで首位を追い詰めたウルブス。ただ、あと一歩まで追い詰めるというところまではいっているチームは結構いる気がする。限られた得点機会をシュートに結び付けられなかったのが勝てなかった要因だろうか。特に後半の流れが来た時間帯の得点機会はもう少し欲しかったところである。そして、セットプレーで失点せずにリバプールに我慢をさせ続けたらどうなっていたかの未来は気になった。

 ただし、こういった懸念点はあくまでリバプールに勝つという観点から。どこの局面からでも比較的リバプールとやりあえたことはウルブスの完成度の高さを示している。撤退もプレスもよし、展開に応じて出ていくところ、我慢するところを使い分けてチーム内で共有することもできていた。局面を打開できる強力な個もいるし、ゴールマウスに立ちはだかる最後の砦もいる。混迷を続ける常連の調子が上がらなければ、トップ4争いに風穴を開けても不思議ではない。

■決勝ゴールで見せつけたクオリティの高さ

 リバプールファンから見れば薄氷の勝利、それ以外のサポーターから見たらいつもの展開。今季プレミアで何回も見た追い詰められながらも最後は返り討ちにする強きリバプールはこの日も健在だった。特にサラーは印象的。8枚で守る形が出て守備のリスクを負ってでも、前に残しておけばそれだけでチャンスを作れる彼の存在は貴重という言葉では足りないくらいである。

    この試合で感じた懸念はサイドの守備の精度はやや落ちたことか。オックスレイド=チェンバレンと南野は絞って守備することが多く、インサイドのワイナルドゥムがたびたび追い越して外に捕まえにいく!みたいなのが結構あったけど、あれは狙ってやってるんだろうか。対面がトラオレというのは考慮しなければいけないがロバートソンの対人やライン合わせも気になった。でもまぁ疲れてもおかしくないけどもね。。

    さて、南野である。ボールを受ける動きは左サイドにいた前半の方が円滑に出来ていたように思う。右に移ってからはサラーの動きにどう合わせていくか?のところにやや苦しんでいたか。リバプールのボール回しは規則性が読みにくく、ポジションの移動は多い。特に自由度の高いサラーとの連携は、側から見ても構築するのに時間がかかってもおかしくはない。ザルクブルク時代にはハーランド、ファン・ヒチャンと強力なユニットを結成したし、日本代表でも大迫、堂安、中島とのコンビの完成度は高かった。南野は個はもちろん、ユニットととしての活躍も目立つ選手。リバプールでの今後にも期待がかかるところだ。

   FA杯のエバートン戦ではCF、この日は左右のSH。試合後のクロップのコメントを見ても、彼の多様なポジションでの働きは強みの一つだ。

「並外れて良かった」…クロップ、リーグ戦デビューの南野拓実を称賛 | サッカーキング リヴァプールのユルゲン・クロップ監督が、23日に行われたプレミアリーグ第24節ウルヴァーハンプトン・ワンダラーズ戦を振りwww.soccer-king.jp

   この日交代するマネは涼しい顔で守備をこなしたあと、攻撃にスペシャルなものを載せられるタレント。そして、サラーとフィルミーノは得点シーンで極上の技術と連携を見せた。リバプールが勝ち点3を掴むことになった決勝ゴールは、南野が越えるべき壁の高さを見せられた形でもある。世界一のクラブでどこまで高みにたどり着けるだろうか。南野の挑戦は始まったばかりである。

試合結果
2020/1/23
プレミアリーグ 第24節
ウォルバーハンプトン 1-2 リバプール
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL: 51′ ヒメネス
LIV: 8′ ヘンダーソン, 84′ フィルミーノ
主審: マイケル・オリバー

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