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「CLを見据えた天王山」~2020.2.9 ブンデスリーガ 第21節 バイエルン×ライプツィヒ レビュー

スタメンはこちら。

図2

目次

【前半】
ライプツィヒの5-4-1の意図を考える

 ブンデスリーガのレビューに初挑戦。なんで挑戦したことがないかといえば、視聴期限がないままHDDに溜めておけるブンデスは後回しになりやすいから。プレミアのウィンターブレイクとCL展望もかねて、今週はバイエルン×ライプツィヒにチャレンジ。皆さんどうかあたたかい目でお楽しみください。

 ライプツィヒには漠然としたイメージはあるが、バイエルンには監督が代わった以外のイメージはない。予備知識はほぼないのである。そんな予備知識がないなりにこの試合の序盤を見て分かったことはいくつかあった。

 まずはバイエルンのボール保持。特徴的だったのはCBに入ったアラバである。LBとしての印象が多くの人のアラバのイメージだろうが、ズーレ、ハビ・マルティネス、リュカ(この試合の後半で復帰する)などのCBの相次ぐ負傷離脱の影響でCBを務めているのだろう。バイエルンはビルドアップにおいて、このアラバの役割が非常に大きかった。

 もう一つはライプツィヒに関して思ったこと。予想スタメンと異なる5-4-1という並びということで「何かバイエルン用に対策を打った?」ということ。というわけで序盤はこういった点を見ながら試合を見ていくこととした。

 バイエルンのボール保持はCBが大きく開く形で行う。大きく開いたCB間ではGKのノイアーが受けたり、CHのどちらかが降りてきたりなどで手助けをする。

図3

 バイエルンの低い位置からのパス交換の目的は、何よりもアラバにボールを持たせることである。アラバは深い位置で自由自在にパスを操っていた。前線やサイドへの長いパスはもちろんだし、アラバへの信頼度からか、前線のメンバーはあまり降りてくることもなし。というわけでバイエルンのCHは縦横無尽に動き回りながらパスを受けるために模索することができる。したがって、近い位置のチアゴやキミッヒに出して彼らが受けた後のターンやトラップで目の前を剥がすことで前進するパターンもあった。

図4

 長短のパスを繰り出すアラバ。おそらく、CBに配置されてからの彼の役割はこうなのだろう。ならば、ライプツィヒの5-4-1はこのアラバを封じるためのものか?と思ったのだが、あまりそういう風には見えなかった。開くアラバに対しては、SHのエンクンクが目の前で捕まえやすいかと思うのだが、アラバにマンマークとしてついていくことはなく、比較的自由を与えていた。

図5

 となると、ライプツィヒの5-4-1はほかに優先すべきことがあると考えるべきか。バイエルンのボール保持のメカニズムをもう少し掘ってみると、開いたCBに呼応してSBは大外の高いレーンに位置。ごくまれにレーンをSHと入れ替えることはあるが、ポジションチェンジを繰り返しながら相手の基準点を乱すというよりは、役割をはっきりさせながら攻める傾向が強いように見えた。それによってPA幅ではレバンドフスキ、ゴレツカ、ミュラー、ニャブリーが密集。外はSBからの差し込むクロス、内側はレバンドフスキへの楔をスイッチに距離感近めのパス交換での打開がメインのやり方であった。

図6

 先述のエンクンクがアラバに専念できなかった理由は、高い位置を取るSBのデイビスも気にしていたからである。おそらくここをWBに任せてしまうと、大外の裏を3CBがカバーに出ていかなくてはいけなくなる。そうなるとバイエルンの中央のコンビネーションに対して、ライプツィヒのバックスは数的にピンチになってしまう。

図7

 したがって、ライプツィヒの5-4-1はおそらく「最終局面でのバイエルンの中央のコンビネーションに対して数を合わせるため」というのが個人的に出した結論である。

【前半】-(2)
ゴレツカから考えるバイエルンの狙い

 前半の多くの時間はバイエルンのボール保持で占有された。少なかったライプツィヒのボール保持は、ウパメカノとハルステンベルクがGKを挟んで立つ。中盤からはCHのライマーが降りてきて、菱形を形成する。バイエルンの守備の組み方で面白かったのはトップ下のゴレツカのふるまい。4-2-3-1で組む場合は、トップ下は1トップと並んでプレス隊を形成することが多いのだが、この試合では3センターの一角のような位置を担当。アンカー番をレバンドフスキ、両SHが外からパスコースを切るようにプレスをかけるリバプール風味での守備であった。

図8

 アンカー番をレバンドフスキ、両SHが外からパスコースを切るようにプレスをかけるリバプール風味での守備であった。ボール保持時のライプツィヒはアンヘリーニョとクロスターマンがSBタスクの4バックへの変形が行う。したがって右のWBのアダムスはSHのような位置を取る。ここに対して、バイエルンは3センターをスライドして対応していた。

図9

 ライプツィヒの前線は快速揃いということで、バイエルンはアダムスにSBを当ててしまった時に裏をあけてしまうのを警戒したのだろう。ゴレツカを守備時に1枚落とした位置で起用したのは、ライプツィヒのSBロールの選手に中盤スライドで対応する意図があるのかなと。普段はどうか知らないけど。

図10

 バイエルンがうまくライプツィヒを封じたのとは対照的に、自在にボールを持てるアラバに対して苦しんだライプツィヒ。左は前線の中では降りてくる機会が多かったニャブリーが仕掛けチャンスメイク。快足デイビスが裏に抜ける動きも非常に効果的。時折絡んでくるチアゴも含めて、機能的にライプツィヒの右を崩していたと思う。

 バイエルンの右サイドの崩しはあまり多くはなかったけど、ライプツィヒは新加入のアンヘリーニョがWBを務めていることも多いからか、ミュラーとパヴァールのポジションチェンジで簡単に受け渡しをミスするシーンが多かった。両サイドからくるクロス攻撃、中央のコンビネーションに対してライプツィヒのCB陣は粘り強く対応した。クロス対応と対人における彼らの我慢のおかげでライプツィヒは無失点で前半をしのぐことができたのだと思う。

 前線の並びを変えたり、前半から試行錯誤を続けるナーゲルスマン。終盤はDF陣の頑張りにこれならいける!と考えたのか、40分周辺に徐々にプレスを強めると、ライプツィヒの方にペースが徐々に流れ出す。

 そのタイミングで前半が終了。試合はハーフタイムを迎える。

【後半】
テンポアップで流れが変わる

 後半になるとより一層プレスを強化したライプツィヒ。前3枚はバイエルンのDFラインを嵌めていく。降りていくCHにも、ライプツィヒはチェイスをかけて近場を封鎖する戦い方を選択。

図11

 近場を封鎖されたとなれば、遠くを狙うというのがボール保持側のセオリー。というわけで徐々にレンジの長いパスでのつなぎが増えてくるバイエルン。特に序盤から動きに変化があったのがミュラー。前半は低い位置に降りてくる動きは逆サイドのニャブリーにお任せ!という感じだったのだが、後半は自陣からのつなぎの役割にも手を貸すことになった。

 ボールの行きかう展開になると徐々に持ち味が出てくるライプツィヒ。普段ブンデスを見ない自分にとっては、やっとイメージ通りのライプツィヒが見れるようになってきたという後半である。

 一進一退の展開になった中で先にチャンスを得たのはバイエルン。おりてきたミュラーにボールが入ったのが起点。対面のザビッツアーを外して、左サイドに展開されたボールはミュラー、ゴレツカとのパス交換で抜け出したレヴァンドフスキが倒されて一度はPKの判定に。オフサイドとなって取り消されてしまったが、前半からの打開ポイントである中央の密集+降りてくるミュラーの動きでチャンスクリエイトまではたどり着いた。

 しかし、ここから徐々にペースはライプツィヒに。きっかけになったのはパヴァールの裏のスペース管理。ミュラーが下がる頻度が増える分、高い位置を取る頻度が徐々に増えるパヴァール。プレスの掛け合いの流れから対面のアンヘリーニョを追いかけまわすこともしばしば。抜けられしまって裏のスピード勝負に持ち込まれると分が悪い。前半の終盤から左サイドに回ったエンクンクはスピード十分。パヴァールの裏をカバーするボアテングにとっては悪夢のような相手である。

 結局、懸念のサイドから何回か裏抜けによってライプツィヒがチャンスメイクに成功。バイエルンはボアテング→リュカの交代をすることになる。しかし、この交代でもそこまで流れはひきもどせなかったバイエルン。リュカの投入に伴い、慣れない右のCBを務めることになったアラバは前半ほどの支配力は発揮できず。CBの交代はスピードという懸念と引き換えに最終ラインのゲームメイク力を失った形である。

 前線の交代も活性化につながったとはいいがたい。ニャブリー→コウチーニョの交代は、ボールを運んで中盤からフィニッシュまでのパイプ役になるという面ではどうだったか。個人的にはニャブリーの方が、ライプツィヒの脅威になっているように思えた。ミュラーが低い位置に下がる頻度が増えた分、最後の局面に顔を出す力を考えると、コウチーニョにはやや物足りなさを感じた。

 仕掛けられるコマンの投入でメンバー的にはバランスが取れてきたバイエルン。しかし、アラバがパスを出す場所を探すシーンなど動き出しの息を合わせるのに苦労をしていたように思う。メンバー交代しつつ、撤退+カウンターを織り交ぜるようになったライプツィヒ相手に最後までこじ開けることはできなかった。

 試合はここで終了。天王山はスコアレスドローに終わった。

あとがき

■目を見張るのは打ち手の早さ

 あまりらしい時間帯がみられなかったライプツィヒ。正直もっと「がーっと」とか「わーっと」っていうのを想像していた自分からすると、若干拍子抜けの節はある。1試合しか見ていないので、何とも言えないが、この試合はもしかすると対バイエルン仕様が強いのだろうか?前半に失点がなかったのは幸運で、前線の守備の役割を最適化するのには時間がかかったように思う。

 それでも時折見せるカウンターの精度、GKを含めた最終ラインの粘り、そしてナーゲルスマンの素早い打ち手には目を見張るものがあった。王者相手にこれを決めれば!というところまで行ったのは確かだし、カップ戦で相手に回すには明らかにめんどくさい相手なのは間違いない。青年監督のモウリーニョへの挑戦が今から楽しみだ。

■新・アラバロールでビルドアップの新境地

 CB大量離脱の副産物として新・アラバロールを開発していたバイエルン。実際にCBが帰ってきたらどうなるかはわからないが、これはこれで1つある程度形になっていた。前線に残る人数が多く、前後分断しかねない陣形だが、アラバを中心にうまく機能していたように思う。チェルシー相手にもこのビルドアップは十分効果があるだろう。特に前半は非常に強かった。

 懸念は交代でやや機能性が落ちたことか。レギュラーメンバーは縦と横へのランを同時に組み合わせることで相手の守備陣に混乱をもたらす動きなどがあったように思うが、交代後はフリーランの質はやや落ちたように思う。意外と属人的なコンビネーションの賜物である可能性は否定できない。

試合結果
ブンデスリーガ
第21節
バイエルン 0-0 ライプツィヒ
アリアンツ・アレナ
主審: マルコ・フリッツ

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