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「プレス空転から始まる悪循環」~2024.10.1 AFC Champions League Elite リーグステージ 第2節 川崎フロンターレ×光州FC マッチレビュー

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レビュー

ミドルプレス機能不全の理由は?

 蔚山に勝利し、開幕戦を白星で飾った川崎。ホーム初戦の相手は光州。川崎は韓国勢に連勝を狙い、光州は日本勢に連勝を狙うという構図である。

 前半優勢だったのは光州だった。光州のボール保持は2人のCBとRSBのジンホの3人が後方でビルドアップ隊を形成。LSBのミンギはフリーマンとして中盤に顔を出したり、前線に抜け出したりする役割だ。リーグ戦でもこの変形は見られるので光州としては比較的オーソドックスなプランといえるだろう。

 川崎は4-4-2のミドルゾーンを組みつつ小林を先発起用ということで狙うは蔚山戦の再現だったはず。しかしながら、その青写真はうまく描けなかった感がある。

 理由としては前線と中盤の連携に不備があったことが挙げられるだろう。光州のような噛み合わないフォーメーションを組んでくる相手に対して守備を仕掛ける場合はホルダーにプレスをかけるタイミングで選択肢を制限しておく必要がある。

 蔚山で成功した通り、このタイミングを調整するのが小林。小林がバックスにプレスをかけたタイミングの陣形がどうなっているかが重要である。このタイミングがほかの選手とズレていたため、川崎のプレスは機能しなかった。

 まず気になったのは家長である。小林が出て行くタイミングでプレスに行ききれない。2トップはプレスのスイッチを入れていない時はアンカーのテジュンを管理するが、プレスに出て行く際には後方からは橘田が飛び出してきて、テジュンのマークを引き取る。だが、家長はCBにプレスに行くタイミングが遅く、テジュンへのマークがかぶってしまうことが多かった。そのため、小林のプレスが無駄になってしまうことが多々あった。

 もう1人気になったのは遠野。こちらは出て行くタイミングが早い。遠野が3人目としてバックスに出て行くタイミングは外を切りながら寄せていくケースが多い。ただ、外切りは頭を超すパスを出せるスキルを持っているチームに対してだと、逆効果になる場合がある。具体的に言えば、自分の背中を取られるということになる。

 遠野の背中をカバーできるのは対面にアサニを抱えている三浦か、可動範囲が広いとは言えない山本。どちらにしても不安要素がある。それだけに遠野は背中を空けるアクションによりシビアになる必要があった。

 遠野は家長と同じように出て行くタイミングでチェイスできていないケースもある。リトリートも逆サイドの瀬川と比べて遅く、自陣に穴を空けるケースも少なくない。

 遠野と家長の2人は4-4-2でのミドルプレスが成功した蔚山戦ではスターターではない。もちろん、蔚山のピッチは等々力に比べてボールが転がりにくいなどの状況もあるが、小林を軸とした4-4-2プレスが噛み合わなかったことにはそれなりに理由がある。直感的な話で恐縮だが、小林や瀬川には違和感を覚える場面が少なかった。

 家長のプレスの遅れや遠野の背中を空ける守備によって、光州はビルドアップからズレを作れるように。左サイドではティグロンに預けてインナーラップするミンギ、右サイドでは遠野の背中に登場するチャンミの姿が見られている。

 中盤と前線のつなぎ目でパスを受けるアンカーのテジュンも前を向いて受けるチャンスがあった。どこにもスペースがなければ、背後に蹴っ飛ばして間延びを狙うなど、どのアプローチも保持型チームのそれに沿ったものであった。

ルート探索の失敗がPKとして跳ね返る

 一方の川崎は保持に苦しんだ。GKのソンリョンを除けば基本的にはマンツーで構える光州の守備。リーグ戦や横浜FM戦を見る限り、光州の守備はきっちりとサイドに追いやるところから始まっていたので、マンツー気味にくることには多少の驚きはあった可能性がある。

 マンツー気味にくる相手に対して、最も効果的なのは前線で起点を作ること。どの場所も1on1であるならば、自陣からの繋ぎで勝利するよりも、敵陣近くで勝利した方がスコアにつながる。ボールをつなぐことに関しては世界一といってもいいマンチェスター・シティですら、ロングボールでハーランドを狙う方策を取っている。

 しかしながら、この日の川崎の前線はボールを収めるキャラクターが不在。小林などはグラウンダーでのパスを少ないタッチで落とすような工夫を見せたが、やはりロングボールを収めるのは厳しかった。

 逆に言えば、この日の前線の並びの狙いは異なる部分にあったといえる。家長はともかく、遠野、小林、瀬川はある程度以上の相手であれば苦しいというのは明らか。そういう意味ではきっちりと4-4-2での非保持のプレスから前進の手段を構築する必要があったということでもある。非保持で目途が立たず、保持でも自陣からつなげない袋小路が前線へのロングボール。川崎は完全に袋小路に入り込んでしまった感があった。

 唯一フリーのソンリョンは蹴ってしまうので、ファン・ウェルメスケルケンや山本など目の前の相手を剥がすことができそうな選手は積極的にトライをするもプレスに刈り取られてしまう。CBの高井もチャレンジのモチベーションを持った一人、だが、彼のビルドアップがインサイドに簡単にひっかかり、ショートカウンターを食らったところをアイダルが倒してPKを献上。自陣からのパスルート開拓に精を出した結果、川崎はしっぺ返しを食らうこととなった。

 先制点を許してもペースは変わらず。川崎の前進のルート探しは光州のプレス隊を前に引っかかり続けることになる。25分になるとしびれを切らした家長が自陣側に下がってくる。前に効果的にボールが入らない時のお馴染みの光景である。

 少し変化が出たのは30分過ぎだろうか。アイダルが少しずつイエローのショックから回復し、高い位置で潰しに出られるようになったのが変化の1つ。CFががっつりボールを収められるキャラクターではなかったので、ここで潰せるようになると川崎のラインが上がる。

 加えて、保持における瀬川のフリーロール化も悪くなかった。あらゆるところに顔を出してのパス交換で前向きの機会を作るなど、ピッチの中央を中心に自在に動き回る。マンツーを振り切るために重要な一手だ。現に瀬川はオフザボールから前半終了間際に決定機を演出している。マンツーにどうにもならなかったチームを何とかしようとしていたといえるだろう。

有効打のパターンを連打しきれず

 川崎はアイダルに代えて佐々木を投入。警告を貰っていることと、バックスからのキャリーの一手として白羽の矢を立てたという形だろう。

 川崎は後半に入ると少しずつリズムを取り戻していく。もっとも明確に改善されたのはプレッシングのフェーズだろう。小林のスイッチに前線(特に家長)が呼応するケースが増えて、中盤での連動も機能性を発揮するように。低い位置からつなごうとする光州が蹴らざるを得ないケースが増えていく。幻にはなったが、小林がネットを揺らしたシーンは見事に中盤とプレスが連動したと言える場面だ。

 山本、橘田、ソンリョンなど序盤はミスが目立った川崎だったが、徐々に自陣でボールを左右に動かしてCBが運べる状況を作る。佐々木を投入した意義は十分に発揮されており、光州を押し下げられる時間が出てくるように。

 光州はSHを自陣に下げることでバックスの枚数を確保。川崎は横幅の管理が増えた光州に対して徐々に縦パスを通したり、山本の列上げなどからギャップに入り込むアクションを増やしたりしていく。

 そして、仕上げとなるのはクロス。瀬川や橘田が一度大外で深さを取ってから、家長のペナ角からファーに巻くようなクロスに光州はかなり手を焼いていた。エリソン、マルシーニョが入ってからこの流れはさらに加速。ゴールを脅かされるシーンが増えていく。あとは決めるだけ!というシーンも終盤に向けて増えていく。

 しかしながら、光州の粘りも光った。自陣深い位置でロストしても、中盤でフリーの選手にボールを渡すまでショートパスを連打し、川崎のDFを背走させるような抜け方を模索する。川崎は中盤へのプレス役が曖昧だったことから、即時奪回を成功させることが出来ず、結局自陣までボールを運ばれてしまい、攻撃がぶつ切りになってしまう。

 逆に言えば、中盤までにボールを奪い返せて、ペナ角から家長のクロスまで持っていければそれなりにチャンスは作れそうだった。しかしながら、光州のポゼッションによる阻害と、時間の経過と共に川崎は押し下げるフェーズを怠って直線的な攻め手に終始するようになったため、押し込んで殴るというフェーズには至らなかった。決定機自体はそれでも少なくはなかったけども。

 結局、最後までネットを揺らすことが出来ず。連勝を目指す対決だったこの試合は光州に軍配。見事ACLでの初めての遠征を勝利で飾った。

ひとこと

 決定機を決めていれば勝った!という気持ちを持つ人もいるかもしれないが、反省点がかなり先に来る試合だったように思う。特にプレッシングは蔚山戦の再現ができなかった分、保持にもしわ寄せがくるという最悪の展開。それでも前半0-0でキープできれば悪くなかったが、その最低限も達成できなかった。

 蔚山戦の4-4-2は異なるメンバーの組み込みが悪いのか、はたまた等々力のような転がるピッチでは効かないのか、単に光州が優秀だったのかはわからないが成功しなかった。それがこの試合における悪循環を後押ししていたのは確かだ。

試合結果

2024.10.1
AFC Champions League Elite
リーグステージ 第2節
川崎フロンターレ 0-1 光州FC
等々力陸上競技場
【得点者】
光州:21′(PK) アサニ
主審:モハマド・サレー

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