レビュー
週末からのスターター継続はマルティネッリとメリーノ、ティンバーの3人だけ。アーセナルは大幅なターンオーバーでアウェイ4連戦の初戦に臨む。
基本的にはいつも通りのアーセナル。片側のSBがインサイドに入る3-2-5をベースに保持の陣形を組む。いつもと少し違うのは前線の面々が降りてくるアクションを好むことだろうか。ジェズス、スターリング、そしてヌワネリと前線やトップ下ロールの選手が積極的に低い位置に触ることが多かった。
これは予測に過ぎないけども、この試合でそういう役割を前線が命じられたというよりは選手のキャラクターによるものな気もしている。プレストンのプレスは中盤を起点とするミドルブロックの4-4-2だったので、特に過剰におりてボールを受けるアクションを増やす意義は感じなかった。
流れとしては敗戦したボーンマス戦と同じであったが、この試合ではビルドアップ時に後ろに重い問題は特に大きなマイナスをもたらさなかった感がある。理由の1つは前線の選手が前でDFを背負って時間を作ることができること。ジェズス、マルティネッリはもちろん、ボーンマス戦では時間を作れなかったスターリングもプレストンが相手であれば、独力でキープしながら後方の選手が攻め上がる時間を作ることができていた。
もう1つは後方からのティンバーの支援のタイミングが非常に素晴らしかったこと。列を下げる状況を成立させるには同時に列を上げる選手を作ってしまうのが一番であり、その役割を右のSBのティンバーがきっちり担うことができていた。スターリング、ヌワネリとの右サイドの連携も見事。ティンバーは右サイドの定点攻撃をサカなしで成立させた立役者の1人でもある。
ヌワネリ、メリーノのIHも味方の大きい動きに合わせるように特に高い位置ではバランスをとるポジションを意識。いつも以上にアタッキングサードでは神出鬼没感が強いアーセナルであった。
プレストンは動き回るアーセナル相手にボールの捕まえどころを全く見つけられなかった。常にパスコースを作り続けるアーセナル相手に後手に回り、アーセナルは空いている選手に順々にパスをつけるだけでボックス内に迫ることができていた。
ヌワネリが挙げた2点目のゴールは先に起こる事象の予測でアーセナルがプレストンの上を行っていた象徴とも言える場面。危険な位置で浮くヌワネリをケアできなかったプレストンとは対照的に、ヌワネリはボールを受けた後に相手が寄ってくるイメージを持ってコントロールし、ゴールまで持っていくことができていた。
セットプレーからのジェズスのゴールとヌワネリのミドルによって生まれた2得点でアーセナルは盤石。プレストンはロングボールをアーセナルのCB陣に封殺されてしまい、左から右への対角フィードもそれなりに狙っていたが精度を欠く。降りるアーセナルの選手を捕まえてのカウンターが一番推進力を出せていたが、これもクリティカルな攻撃とはならず。突破口がないまま前半を終えてしまった印象だ。
後半、アーセナルはトーマスとハヴァーツを投入。継続スタメン組のティンバーとメリーノとの入れ替えを実施する。メンバーは変わっても試合のテンポは大きくは変わらず。アーセナルはボールを持ちながら押し下げていく。
プレストンは左サイドからホームズのカウンター発動や大外のヒューズの駆け上がりから反撃に打って出る。アーセナルのバックスを左右に動かすことはできていたが、それ以上の脅威になったかは微妙なところ。
押し下げられていただけに反撃をしたかったプレストンだが、左右のWGを起点とした攻め手でアーセナルは追加点をゲット。左サイドからキヴィオルからのクロスをハヴァーツが仕留めて3点目をきめる。
このゴールで試合は完全に決着。アーセナルは予定通り、プレータイムのシェアを前提とした選手の入れ替えを敢行。最後はヘヴンをCBに起用するテストも行うことができた。
終盤は強度も精度も落ちてプレストンに攻められる場面もあったが、こちらもデビュー戦となったセットフォードのクリーンシートというミッションはクリア。アウェイで完勝を収め、ベスト8に駒を進めた。
あとがき
2点目のヌワネリのゴールは側から見ると明らかにスーパーな一撃なのだが、17歳がスーパーゴールを決めたのに本人もチームメイトもベンチも非常に落ち着いていた。もしかすると、このスーパーな一撃は彼にとっては日常なもので、今後ヌワネリのキャリアにおける華々しいプレーにおいては単なる1ページなのかもしれない。今後の期待は高まるばかりだ。
試合結果
2024.10.30
カラバオカップ 4回戦
プレストン・ノース・エンド 0-3 アーセナル
ディープデール・スタジアム
【得点者】
ARS:24′ ジェズス, 33′ ヌワネリ, 57′ ハヴァーツ
主審:ピーター・バンクス
