月ごとにアーセナルの試合を振り返る企画の第二弾。第一弾はこれ。
ではいってみよう。
第13節 サウサンプトン戦(HOME)
スタメン
確かに不調ではあるものの、シェフィールド・ユナイテッド、クリスタル・パレス、ウォルバーハンプトン、レスターという対戦相手は手ごわい相手ばかり。正直今の完成度では負けてもおかしくない相手ばかりだった。ただ、今回の相手はサウサンプトン。降格圏をさまよっているし、粗が目立つ戦い方の相手。セント・メリーズは鬼門でもエミレーツになれば話は別だ!と思っていたことは白状しなければいけない。そして、ご存じの通り、この甘い見立ては外れるのである。
「エメリは無策ではない。毎試合何かしらはやる。ただしそれがうまくいくとは限らない。というかほとんどうまくいっていない。」というのが今季の自分のエメリへの印象である。特に最近は毎試合といっていいほど新しいトライがあるのだが、この試合はダビド・ルイスをボール保持時に1列上げる試みだった。
サウサンプトンは2トップでプレスに来ていたが、ルイスへの警戒度を高めており、迫目にポジションを取ることが多かった。そのため、ワイドに開いたCBはプレス隊から時間を得ることができて、ここから前進することが理屈上可能になる。奥歯に物が挟まったような言い方になってしまうのは、もちろん実際にうまくいかなかったからである。左のソクラティスと、右のチェンバースは時間をもらったものの、特に何かできるわけでもなし。これではサウサンプトンがワイドのCBのマークを捨てたことの正当性が証明されてしまうぜ!と思った。
ちなみにこの直後のフランクフルトとのELでも、ルイスを1列上げるやり方は試している。ELではボール保持時だけでなく、非保持時にも中盤のような振る舞いを見せていた。この日のCBに入っていたムスタフィがこの役割を結構頑張ってこなしていたのが意外だった。チェンバースとの連携で持ち上がったシーンとか「それだ!」って思ったもんな。怪我しちゃったけど。ルイスもムスタフィも。
試合結果
プレミアリーグ
第13節
アーセナル 2-2 サウサンプトン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS: 18′ 90+6′ ラカゼット
WHU: 8′ イングス, 71′ ウォードプラウズ
主審: ポール・ティアニー
第14節 ノリッジ戦(AWAY)
スタメン
エメリがクビになってしまった!鎌田め!レビュー書いたからこっちを読んでね。この試合で気になったのはやりたいことと選手の資質、マッチしていますか?のところです。
試合結果
プレミアリーグ
第14節
ノリッジ 2-2 アーセナル
キャロウ・ロード
【得点者】
NOR: 21′ プッキ, 45+2′ キャントウェル
ARS: 29′(PK), 57′ オーバメヤン
主審: ポール・ティアニー
第15節 ブライトン戦(HOME)
スタメン
ホームに凱旋したリュングベリ。しかし、かつてのチームのレジェンドの帰還を祝うような試合にはならなかった。アーセナルは前節と同様3枚の前線をフラット気味に配置。ウィロックも再びチャンスをもらった。
試合は立ち上がりからブライトンのボール保持に大苦戦。相手のプレスによって枚数調整をかけられるポッター式のビルドアップはブライトンに十分に浸透したように映る。アーセナルはボールの取りどころを定めることができなかった。
もう1つブライトンが巧みだったのはDF陣のラインコントロールである。アーセナルがカウンターにうって出てもオフサイドで引っかかってしまうパターンが頻発。ダビド・ルイスがネットを揺らしたシーンもオフサイドの判定で取り消されてしまった。アーセナルとしては抜け出しのタイミングをずらすことで、ブライトンのDFラインを押し下げたかったが、この試合ではブライトンのラインコントロールの前に屈した印象である。
アーセナルは後半にウィロック→ペペの交代で活性化。1対1で勝負できるポイントを前に作ることで、ボールをゆったり保持した状況においてもチャンスを作れるようになった。
それだけに失点シーンはもったいなさが残る。ブライトンは最後のところでスペシャルさがあるチームではないので、セットプレーやクロスによっての複数失点は切ないところ。特に先制点はブライトンに楽に試合を運ばせた原因になる。クラスに関してはもちろん簡単にあげさせる方も悪いのだが、ルイス-ソクラティスというCBコンビで跳ね返せないのであれば苦しいところである。
試合結果
プレミアリーグ
第15節
アーセナル 1-2 ブライトン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS: 50′ ラカゼット
BRI:36′ ウェブスター, 80′ モペイ
主審: グラハム・スコット
第16節 ウェストハム戦(AWAY)
スタメン
いぇーーーーーい!!!!勝ったぜーーー!!!
ってことで勝った試合は何も言いっこなしだ!と言いたいところなのだが、この記事はアーセナルが何をやったかを自分なりに振り返る目的なので現実から目を背けてはいけません。
勝ったものの前半は今季トップクラスでつらい試合だった。アーセナルの4-2-3-1に対してばっちり噛み合うフォーメーションの相手に対して、特に配置変更などを行うことなく真っ向勝負。そうなると、個人でなんとかしようぜ!がテーマになるのだが、個人でなんとかしてくれるアフロはどっちもベンチ。なんでやねん。ベジェリンを試合前に失うわ、ティアニーも前半で交代してしまうわ、セットプレーからもこじ開けられるわで本当につらかった。
幸運だったのはこの日の対戦相手であるウェストハムもとても規律があったチームとは言えなかったこと。ボールホルダーにチェックがかからず、ボールの取りどころが定まらない。前半はアーセナルのアタッカー陣が個人個人のアイデアがうまく噛み合わずに助かってはいたものの、60分過ぎからのばっちりハマったプレーで逆転を許す。
不用意なロストを繰り返して戦犯になりかけたペペのリカバリーや、リーグデビュー戦で鮮烈なパフォーマンスを果たしたマルティネッリも当然素晴らしいが、3得点とも自陣からの組み立ての中でトレイラがボール運びながら局面を前に進める展開を見せたのは良かった。この動きが継続的にできるならば、アーセナルのアタッカー陣はより自分たちのタスクに集中できるはず。ペペやマルティネッリと共にトレイラのこの動きにも継続性を求めていきたいところ。緊急出場から堅実な働きをした両SBもいい仕事をした。
チーム全体の話をすれば、ボール運びで工夫が見られないのは相変わらず。メンバーを入れ替える可能性はあるが、次節のシティ相手にプレス回避が通用するかは非常に怪しい。というか結構難しいと思う。ただ、プレッシャーがかからない場面でのロストも非常に多く、ジャカ、ペペ、ソクラティスあたりの個人のミスはリュングベリにはどうしようもないかもしれないけども。
試合結果
プレミアリーグ
第16節
ウェストハム 1-3 アーセナル
ロンドンスタジアム
【得点者】
WHU: 38′ オグボンナ
ARS: 60′ マルティネッリ, 66′ ペペ, 69′ オーバメヤン
主審: マイク・ディーン
第17節 マンチェスター・シティ戦(HOME)
スタメン
レビュー書いたぜ!この試合で気になったのは、弱いものなりの準備ができていましたか?という部分。
試合結果
プレミアリーグ
第17節
アーセナル 0-3 マンチェスター・シティ
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
Man City: 2′ 40′ デブライネ, 15′ スターリング
主審: ポール・ティアニー
あとがき
エメリを解任するのに個人的に躊躇いがあった理由が「リュングベリを後任にしそうだから」というものだったんだけど、なんというかその懸念は当たってしまったのでないか。人がいないのでアップはチームドクターが担当という記事が出ていたが、メルテザッカーの引き上げに代表されるように、なんとなく寄せ集めた暫定政権はリュングベリ本人から「人を集めるかなんかしないと無理だから」的な発言が出てきてしまった。なんだそれ。
こういった一連の流れから、エメリの解任はそのあとのプランを十分に準備されたものとは考えにくい。仮にアルテタを招聘してたとしても、それがクラブ戦略に基づいたものなのか、それとも単なるファンを黙らせるためのOB路線の継続(対立候補にヴィエラの名前が出てくるから…)なのかは判断がつかないところである。
アルテタ自身の実力は未知数だが、インタビューを見る限りはボールを保持して支配するスタイルを志向するようなので、リュングベリになっても一向に改善しなかったビルドアップと予防が見られないボール保持時のポジショニングに関しては期待したいところ。
プレスの役割分担の適正化など課題は山積みであることがこの1ヶ月からも再確認できた。実現すれば名前が出ていた候補者の中では最も心中感の強い人事。ここで1年半前に既に名前が出てきていたアルテタを登用することに、フロントがどんな意味を含んでいるのか?ピッチ上の出来事をベースに解き明かしたいところである。