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「邪魔者ではなくジコチューに」~2019.11.30 J1 第33節 川崎フロンターレ×横浜F・マリノス プレビュー

全文無料で読めます。

目次

Fixture

明治安田生命 J1リーグ 第33節
川崎フロンターレ(4位/勝ち点57/15勝12分5敗/得点54 失点29)
×
横浜Fマリノス(2位/勝ち点6/20勝4分8敗/得点61 失点37)
@等々力陸上競技場

戦績

近年の対戦

画像9

直近5年間の13戦で川崎Fの6勝、横浜FMの4勝、引き分けが3回。

川崎ホームでの直近10試合の対戦成績

画像10

川崎Fの5勝、横浜FMの3勝、引き分けが2回。

Head-to-Head

Head-to-Head①
・公式戦における両チームの対戦は過去47戦で川崎が21勝、横浜FMが18勝、引き分けが8つ。
・直近8試合の対戦において横浜FMが川崎に勝利したのは一度だけ(D3L4)

    神奈川ダービーの過去の戦績は互角。ただし、直近8試合では川崎に分がある。ここ数試合は横浜FMサイドにやや苦手意識があったとしてもおかしくない。

Head-to-Head②
・直近6試合の対戦ではいずれもアウェイチームが勝てていない(D2L4)
・過去に首位でこの対戦を迎えたチームの成績は3勝1分1敗。

    プチ内弁慶さがあるこのカード。直近6試合は全てホームチームが勝ち点を得ている形になっている。

   また過去に首位でこのカードを迎えたチームは5戦で3勝を挙げている。ちなみに仮に2位で迎えていた場合は過去の戦績は1勝3敗。マリノスははじめはこっち想定で記事書いてたんだけどなぁ。。

Head-to-Head③
・川崎ホームでの対戦成績は過去22戦で川崎の13勝、横浜FMの7勝、ドローが5つ。
・直近の10試合の川崎ホームの試合で横浜FMは6回無得点に終わっている。

・直近3試合の等々力での横浜FMの勝利は、いずれの試合もKOが17時よりも前の試合。

    プチ内弁慶と称した通り、ホームに限ると川崎の強さが際立つ。今年は最多得点を重ねている横浜FMだが、過去10戦では6回も無得点に終わっている。横浜FMは直近2回の勝利はいずれもクリーンシート。等々力での勝利には必要不可欠になっている。

    ちなみに直近3回の横浜FMの勝利はいずれも今節と同じ早い時間帯のキックオフ。早い時間のキックオフはジンクス的には横浜FMの手助けになる。

Head-to-Head④
・33節での対戦は過去に一度だけ。2011年11月の等々力での試合で、ジュニーニョの2ゴールを含む3-0で川崎が勝利している。
・2011年9月のナビスコカップでの対戦以降、先制したチームが負けたことはない。

    33節の対戦は過去に一度だけ。ジュニーニョのゴールで川崎が勝利を挙げている。もう一つ、過去を振り返ってみるとこの試合は逆転がないカード。ナビスコカップで川崎Fの山瀬功治が決勝点(この試合単独。トータルスコアでは横浜FMが勝ち上がり)となる逆転ゴールを決めて以降、逆転勝ちは一度もない。もう少しで今年の日産の川崎がジンクス破れそうだったんだけどね…。先制したチームが有利なのは当たり前だが、ダービーマッチで起こりやすいイメージの逆転劇はこの試合では起こりにくいようだ。


【川崎フロンターレ】

選手情報

・中村憲剛は前十字靭帯損傷で全治7ヶ月の離脱。

Match Facts

川崎のMatch Facts①
【尻上がり】
・公式戦直近8試合負けなし。
・リーグ戦は3連勝中。2試合連続のクリーンシート。

    今季二度目の3連勝中。遅ばせながら徐々に結果が出てきた川崎。優勝の可能性は無くなったがACLの出場権獲得に向けて猛チャージしているところだ。クリーンシートも2試合連続継続中。仮に3試合連続になれば2017年の32ー34節以来となる。この時と同じく終盤戦での3試合連続無失点は達成できるだろうか。

川崎のMatch Facts②
【首位キラー】
・対戦時に3位より順位が高い相手との試合は今季5試合無敗(W2D3)
・首位との対戦は直近8戦無敗(W6D2)。最後に敗れたのは2013年のこと。

    FC東京、鹿島と首位にいるチームを倒してきた川崎。今季の上位キラーとなっている。3位以内相手には負けなしである。

    さらに首位になれば力は出てくる。首位相手のリーグ戦は6年間無敗。8試合中6勝を挙げている。しかし、川崎相手に最後に勝利をあげた首位チームが今回対戦する横浜FM。2013年の4月の日産である。しかし、その時の後半の対戦では川崎に敗れてV逸。あれから6年。横浜FMはここ等々力の地であの日のトラウマを払拭できるだろうか。

川崎のMatch Facts③
【有終の美は得意】
・関東勢との対戦は直近17試合負けなし。
・ホームゲーム最終戦は直近10年で一度しか敗れていない。

   埼スタでも勝利を挙げて対関東勢との無敗記録は継続。これで対関東勢には17戦無敗である。ちなみに川崎はホーム最終戦も得意。直近10年でわずか1敗であり、勝利した7勝のうち2回は横浜FM相手にあげたものである。

川崎のMatch Facts④
【無敗!】
・今季、大島僚太が出場したリーグ戦は17戦無敗(W10D7)
・小林悠は直近7試合の横浜FM戦で7ゴールに関与(4G3A)

    なんだかんだ救世主だった大島。今季出ている試合はシンプルに負けていないという強さ。横浜FMは一昨年のホームゲームで圧倒的なボール奪取とミドルシュートで大車輪の活躍を見せた相手。いいイメージを持って臨めるはずだ。

   もう1人いいイメージを持って臨めそうなのが小林。直近の試合では限られた出場時間でゴールを決めて存在感を増している。横浜FM戦の個人成績も良好。チームの好調と合わせるようにコンディションを上げてきたエースはダービーでも活躍できるだろうか。

【横浜F・マリノス】

選手情報

・エジガル・ジュニオにスタメン復帰の可能性。

Match Facts

 横浜FMのMatch Facts①
【絶賛ラストスパート中】
・リーグ戦直近5試合連勝中。
・無得点に終わったのは8月の清水戦が最後。以降の公式戦13試合で連続得点中。

    川崎が3連勝ならば、横浜FMは5連勝。17年7月以来の好調なランである。仮に6連勝を飾れば13年の開幕以来のこと。13試合連続得点中の高い攻撃力を生かしてラストスパートに邁進している。

横浜FMのMatch Facts②
【懸念を並べる嫌がらせ】
・今のテーブルでトップ5より上にいるチームとの対戦は6戦で1勝のみ(D1L4)
・直近4年間は33節の試合に勝てていない(D2L2)

   さて、川崎より上位チームとの対決の時恒例の相手の都合の悪いデータを引っ張り出すコーナーです。上位キラーの川崎とは対照的に、上位チームとの対戦成績がやや芳しくない横浜FM。その代わりボトムハーフには強い。清水にはダブルくらってたけど。

   そしてもう一つさらにデータを載っけるのならば、33節は直近4年間で未勝利というところ。こちらもここ数年終盤戦が好調な川崎とは対照的だ。

横浜FMのMatch Facts③
【電光石火で決める?】
・アウェイゲームでのリーグ戦は直近5試合無敗。
・前半での得点数がリーグトップ。

    しかしながら、直近のアウェイゲームの成績は抜群。5試合でわずか3失点と攻撃だけでなく守備も好調だ。

   ちなみにその攻撃で言うと特徴的なのは前半の得点が多いこと。まぁ、そもそも総得点も多いからリーグ1位なのはそんなに特異的では無いかもしれないけど。ここ2試合は電光石火で得点を挙げているのも特徴。開始5分で計3点を挙げている。優勝争いのチームが陥りがちな終盤までジリジリ点が入らないパターンにはハマっていない。

横浜FMのMatch Facts④
【数字に残る活躍】
・仲川輝人は今季唯一J1で2桁ゴールと2桁アシストを共に記録している選手。
・出場時のチーム平均得点、平均失点、先発時の平均勝ち点の3項目がチームで最も高いのは扇原貴宏。

   好調で爆発力のある横浜FMの攻撃を牽引するのが仲川輝人。2桁ゴール+アシスト(transfer market調べ)は直近の3年で4人目(クリスティアーノ、鈴木優磨、川又堅碁)の快挙。ちなみに古橋も後1アシストで記録達成である。

   個人成績ではなく、出場しているときのチームの成績が高いのが扇原貴宏。エジガル・ジュニオ後のチームの形は彼が喜田をサポートする4-2-3-1の形にシフトチェンジしてから固まった感。前半戦でも川崎相手に土壇場の同点ゴールを決めた扇原はこの試合でも決定的な仕事ができるだろうか。

予想スタメン

図1

展望

出し手をフリーにするための菱形

 前回対戦した3節の段階では川崎は未だ未勝利、横浜FMのゴールマウスに立っていたのは飯倉で、横浜FMのサポーターは三好がレンタル条項により出場ができないことを嘆いていたことを考えると、かなり昔のことのように感じる。今年も一年いろいろありました。前回の対戦時には両チームのサポーターが「今年はどうなるだろう?」という期待を胸に膨らませていたが、今回の対戦は「今年をどういう一年になるか」を決定づける意味で非常に大きな意味合いになることは間違いない。

    さて、スケゴーさんが横浜FMに関してこんなツイートをしていた。

   というわけで今回は横浜FMが3バックに強く、4バックにいい成績をあげられていない理由を自分なりに考えてながら話を進めていきたい。

   その前にまずは基本的な仕組みから。横浜FMのボール保持は菱形の形成と破壊がメインである。川崎のように相手が2トップの場合は、2トップの脇に菱形の起点となる選手がボールを持って立つ。それに対してボールを受ける選手は内側と外側のレーンに立って、ボールホルダーに複数のパスコースを設ける立ち位置を取る。それに合わせて前線の選手がひし形になるような立ち位置を取る。サイド攻撃の完結はこの前線の選手が裏に抜けて、相手の最終ラインを一気に破壊するケースが多い。

図2

 というわけでこのひし形の形成は、裏に抜ける選手に一刺しできる縦パスのタイミングを探ったパス交換といえる。相手のラインを一気に攻略するにはボールホルダーが良質なボールを蹴ることができることが重要。そのためにはパス交換でフリーの選手を作る必要がある。そのためのパス交換。

 横浜FMは今季途中から4-3-3→4-2-3-1にフォーメーションを変更している。これにより後方のメンバーはひし形が形成しやすくなった。このフォーメーション変更は4-3-3の気になる点であるアンカー脇のスペースや、アンカーが流れた時に中盤がぽっかり空いてしまう現象もあるだろうが、後方のボール保持の安定感アップも兼ねている可能性が高い。両サイドでひし形作りやすいし。

 そのため、誰がどこの頂点に入るかは流動的。SBが内側に絞って起点になるパターンもあるし、CHが落ちてもいい。もちろんCBが開いてもいい。鳥栖戦を見た限り、最も多いパターンは長いパスを送れる畠中が2トップ脇の起点としてふるまう動きだった。

図3

 流動的な後方に対して、前線は役割が固定化されているのが後半戦の横浜FMの特徴。仲川とマテウスは大外からワイドで仕掛ける役割を担い、マルコス・ジュニオールはボールサイドに顔を出して、裏に抜けることでひし形での相手守備の攻略を完成させる役割である。ここも4-3-3→4-2-3-1への変更の影響の1つだろう。インサイドハーフのハーフスペース突撃で高い位置での攻撃に厚みをもたらしていた4-3-3をやめて、より後ろ重心になった4-2-3-1では選手の個の能力にアジャストした最終局面の崩しを意識しているようにも見える。この変更にはチームのハブ役として攻撃の起点になれるエジガル・ジュニオの長期離脱も大いに関係しているだろうし、これならば当初は個人的に「何で?」と思ったマテウスの獲得も合点がいく。

図5

SHがいるかどうか?

   ここで冒頭に戻って横浜FMが3バック相手と4バック相手で成績が違うのはなぜか?という仮説を述べていく。

1. 攻撃の最終局面が裏抜けによる面破壊だから

 まずは、対3バックに強い理由として考えられることである。先ほども示したように、マリノスの最終局面の攻略はサイドをどう破るかである。マテウスや仲川が単騎でぶち抜くこともあるが、チームとしての形としてはマルコス・ジュニオールの裏抜けを意識する傾向が強い。そのため、最終ラインに揃えた数を無効化されてしまうケースが多いのではないだろうか。サイドにはマテウスと仲川という強力な個がいることを考えれば、WBが前に出ていくことも難しい。

図6

2.相手SHの存在

 ここまで見る限り、ボールホルダーにプレッシャーをかからない仕組みづくりが横浜FMの崩しの下ごしらえといってもいいだろう。そんな横浜FMからすればサイドで高い位置を取るSHの存在は邪魔である。パスコースの遮断も時には相手の起点の遮断も可能な立ち位置にいる川崎のSHの働きはこの試合のカギである。負けてはしまったものの、等々力での神戸戦の家長のようなパフォーマンスが見られれば、勝利は近づくのではないだろうか。

 カウンターの時もSHの存在は重要なものになる。横浜FMは攻撃の組み立ての中でSBが高い位置に上がったり内側に絞ることで、持ち場を離れることが多い。SBの裏のスペースはカウンターを受ける際の横浜FMの泣き所になる。ここの裏を取ることで横浜FMは被カウンター時に陣形を下げざるを得ないケースが多かった。この位置から相手を押し下げる動きを担えるSHは攻撃でも重要な存在になる。

図7

■ジコチューでいこう!

 では川崎はどう戦うか。ざっくり分けると起点を抑えるか、引いて迎え撃つかの二択。しかし、個の能力が高い横浜FMのアタッカー陣とはなるべく対峙する回数は減らしたいところ。特に仲川は好調を継続しており、1人で何枚も剥がせる選手である。なるべくデュエルになる局面は避けたい。

   高さのない横浜FMに対して、裏のスペースをなくすほどラインを下げてしまうという手もなくはないが、川崎の今のメンバーにはそぐわない気もする。そう考えると完全にベタ引きするよりは、ある程度前から行く形で臨むほうがよさそう。つまり起点を塞いでいくイメージだろうか。

 後方の起点となる選手にはプレス隊(FWとトップ下)が開いて抑えに行く。おそらく数的不利で完全に追いかけ倒すのは難しいが、少なくとも畠中にはフリーで長いボールを蹴らせる局面は減らしたい。後方の4-4ブロックの間に横浜FMの選手は立ち位置を取るはずだ。後方の川崎の選手たちは特定の選手につくよりは、ブロックを圧縮し、複数の選手に対してマーク行けるように備えるべきだ。

図9

 横浜FMの選手たちのひし形は選手の距離が比較的長めである。パスの到達には少しは時間がかかるので、ボールが出てからでもプレッシャーをかけるのは不可能でないはず。ブロックをうまく圧縮できたり、ホルダーにチェックをかけることができてパスがズレれば、よりボール奪取は容易になる。ひし形の起点をふさげるかどうかが対横浜FM戦のキーになりそうだ。

 攻撃においてはまともに畠中、チアゴのコンビと対峙しないやり方を探していきたい。先ほどのSBの裏を狙ったカウンターはCBをサイドに引きずりだす方法として有用そう。もう1つ、横浜FMの守備で気になるのは横方向のスライドがおろそかになること。特にSB-CB間のスペースが広くあくことが多い。ここへの走り込みが多い脇坂には期待したいところ、危機察知能力の高い喜田はかなり早くここを埋めようとカバーに入るが、彼をつり出せれば今度はバイタルが空くはず。鳥栖戦で原川が決めたゴールはまさにこのムーブをうまく利用したものといえる。CHのミドルには期待したいところだ。

図10

 泣いても笑っても後2試合。横浜FMの優勝の可否に注目が集まる一戦になるとは思うが、彼らの邪魔者になれるか以前に川崎にはACL出場権獲得という大目標がある。仮に出場権を逃せばA登録枠の減少に伴い、冬の大幅な人員整理は避けられない。長期離脱選手を抱えることが確定である中での枠減少は非常にシビアだ。

 FC東京、鹿島を後半戦に倒した川崎はおそらく横浜FMにとって大いなる邪魔者。直近の対戦成績や2013年の優勝を逃した経験がそれを助長している部分もあるはず。しかし、川崎にとってもACL出場権獲得において横浜FMが邪魔者なのは同様である。

 横浜FMの優勝を阻むための一戦ではなく、川崎がACL出場権を逆転で奪い取るための一戦。少なくとも川崎ファンくらいはそう思っていてもいいと思う。「ジコチューだっていいじゃないか」って僕の好きなアイドルも歌っていることですし。

参考
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
SANSPO.COM(https://www.sanspo.com/)

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