MENU
カテゴリー

「得意で苦手な大舞台」~2019.10.26 ルヴァンカップ 決勝 川崎フロンターレ×北海道コンサドーレ札幌 プレビュー

カップ戦だからサクッと版!

目次

Fixture

JリーグYBCルヴァンカップ 決勝
川崎フロンターレ
×
北海道コンサドーレ札幌
@埼玉スタジアム2002

戦績

図1

直近10回の対戦で川崎が8勝、引き分けが2つ

Pick up Head-to-Head

・公式戦における両チームの対戦は過去25戦で川崎が19勝、札幌が1勝。ドローは5つ。
・しかし、札幌が勝利した唯一の公式戦はリーグカップ。08年3月のグループステージでの対戦。
・昨季の対戦では川崎がシーズンダブルを達成。
・今季の1回目の対戦では鈴木武蔵と小林悠のゴールで1-1の引き分け。

 川崎にとって、札幌はお得意様中のお得意様である。J1在籍チームの中で76%と最も勝率の高い相手である。20試合以上対戦しているチームの中では横浜FCに次いで相性のいい相手である。

 札幌のこのカードでの勝率はわずかに4%。公式戦ではたった1回しか勝利したことがない。しかし、その1回がリーグカップ、つまり現行のルヴァンカップであることは何とも言えない巡りあわせである。

 昨季の対戦では川崎がダブルを達成。このカードでは通算6回目となる。中でも、等々力での7-0での勝利は強烈。札幌の昨年の失点の19%は川崎との2試合で喫したものになる。

 ただし、今年の等々力でのリーグ戦は引き分け。小林悠、鈴木武蔵という両日本人エースのゴールで1対1のドロー。鈴木武蔵はJ1において、等々力陸上競技場でゴールを決めた初めての札幌所属の日本人選手となった。

【川崎フロンターレ】

選手情報

・阿部浩之、小林悠、登里享平、山村和也は練習合流。
・馬渡和彰は膝の負傷で今季絶望。

Pick up Match Facts

・リーグカップファイナルは5回目の挑戦。
・過去4回はすべて敗退、いずれも無得点で敗れている。
・ペドロビッチが率いるチームには直近10試合で1敗のみ。
・埼玉スタジアムでの成績は直近7試合で3勝4敗。
・ただし、過去の9回の埼スタでのカップ戦において勝利したのは一度だけ。ほかは全敗。

 大の得意でもあり、大の苦手でもある。川崎にとっての今年のルヴァンカップ決勝の舞台を一言で形容するのならばそうなるだろう。
 
 得意な部分でいえばすでにHead-to-Headで取り上げた札幌との対戦成績、それに加えてペドロビッチとの対戦成績である。彼が率いるチームとの対戦は直近10試合で1敗のみ。浦和時代の唯一の敗戦も埼スタではなく、等々力のもの。過去30回の対戦で敗北は5回、1試合平均勝ち点0.77であり、ペドロビッチにとって川崎は最も相性が悪いである。

 こんなスタッツがあっても川崎ファンが「楽勝!」と思わないのは、初の決勝進出を果たした札幌の強さだけが理由ではない。まずはルヴァンカップ決勝という舞台。リーグカップの決勝はこれで5回目の挑戦だが、ご存知の通り、過去4回の挑戦ではいずれもタイトルに手が届いていない。それどころか過去の4回はいずれも無得点。決勝の舞台で得点を挙げたことすらないのである。

 加えて苦手なのが埼玉スタジアム2002という場所。リーグ戦も含めるとそこまで悪い戦績ではないのだが、問題はカップ戦の成績。カップ戦の舞台でこの地を踏んだのは過去に9回。そのうち勝利を挙げたのは、今年の頭のゼロックススーパーカップの一度きり。それ以外の8回では勝利はおろか、引き分けすら一つもない。「埼玉スタジアムからとぼとぼ帰った思い出しかないぜ!」というそこの川崎サポのあなた。その感覚は間違っていないですよ。

 得意なチーム、監督を迎えて大の苦手な舞台に上がる。歴史を塗り替えるための一戦は、究極の「ほこ×たて」試合になりそうだ。


【北海道コンサドーレ札幌】

選手情報

・ジェイ、チャナティップ、荒野拓馬は練習復帰。
・前節負傷した宮澤裕樹の出場は不透明。

Pick up Match Facts

・初のルヴァンカップ決勝。
・過去の最高成績はベスト8。JFL時代の96年のことで、以降は一度もノックアウトラウンドに進出していない。
・今季のルヴァンカップ12試合のうち、無得点は2試合のみ。無失点も2試合のみ。
・鈴木武蔵(7得点)とアンデルソン・ロペス(6得点)が得点ランキングトップ2。
・埼玉スタジアムでの直近4戦で2勝。直近2試合はいずれもクリーンシート。

 多くのタイトル獲得を経験しているガンバ大阪を下して、クラブ史上初のカップ戦ファイナルの舞台にコマを進めた北海道コンサドーレ札幌。勝利をホームのファンに報告する鈴木武蔵やペドロビッチのインタビューは、札幌のファンでなくでも心を動かされるものだった。

 それもそのはず。彼らにとってこの舞台は千載一遇のトップカテゴリーでのタイトルのチャンスである。過去のノックアウトラウンドの進出経験はわずかに一度だけ。ベスト8で敗退したのはもう23年も前のJFA時代のことである。悲願の初のタイトルはもう目の前、どんなに相性が悪い対戦相手だろうと、埼玉スタジアムに押し寄せた多くのファンの声援を背に受けた彼らが怯むことはないだろう。

 彼らのここまでのルヴァンカップの歩みは撃ち合いに彩られている。無得点試合も無失点試合も2回だけというパワフルな戦いで勝ち上がってきた。決勝の勝敗に関わらず、得点王はおそらく札幌から誕生するはずだ。鈴木武蔵とアンデルソン・ロペスがこの大会の得点王になる確率はかなり高い。

 そして直近の埼玉スタジアムの戦績も悪くない。4試合中、半分は勝利していて直近2試合はクリーンシート。川崎と違って、ファンも選手もいいイメージをもってこの地を踏めるはずだ。

予想スタメン

画像2

展望

■チャナティップゾーンを圧縮できるか?

 札幌のボール保持は直近で対戦したG大阪と同じく、最終ラインでひし形を作る構造。G大阪と異なるのは2枚のCHのうちの1枚が最終ラインに入ってビルドアップに加わること。ワイドのCBは共に張り出してSBのような振る舞いをするのが特徴。目的としてはWBを前に押し出すことであり、いわゆるミシャ式のトレードマークである4-1-5の並びがこれで完成する。

 最終ラインでひし形を形成する相手のビルドアップには川崎は今季散々苦しめられていた。川崎のプレスのパターンとしては、立ち上がりは構造上難しくても、まず強引につっかけて相手の様子を見る。相手が慌てて低い位置でつなぎのエラーを起こしてくれれば儲けもの。これがうまくいったのが、昨年の等々力での札幌戦になる。

 しかし、今季はこのように川崎のプレスがハマったパターンはほとんどない。大体は前節のG大阪戦のようにあっさり交わされて終わってしまうパターンばかり。15分過ぎくらいにはプレスを諦めて中盤圧縮の4-4-2にシフトチェンジした。

 クラブ史上初の大舞台を踏むことになる札幌相手に「いつも通りできますか?」と問いかける意味も含めて、序盤にプレスを積極的にかけること自体は無意味なことではないと思う。しかし、ハマらないプレスを延々とやるのは自殺行為なので、G大阪戦同様にどこかで中盤圧縮にシフトする必要は出てくるはずだ。

 そうなった際にまず気にかけたいのはチャナティップのプレースペースを制限できるかどうか。下がって受けて前を向いてプレスを独力で剥がせるチャナティップは札幌の最重要人物。彼の復帰は札幌にとって間違いなく追い風になる。自由に受けさせるならば、なるべく相手陣内で。DF-MF間を圧縮しつつ、高い位置でフリーで受けさせることは制限したい。

 そのチャナティップと同じタイミングで戦線に復帰したのがジェイ。ただ、ここは序列が微妙なところ。最近は鈴木武蔵をトップに置く配置のプライオリティがやや高まっている印象だ。より機動力に優れた鈴木は裏を狙いながら川崎のDFラインを押し下げようと試みるだろう。彼の裏取りによって、最終ラインがズルズル下がってしまい、チャナティップがDF-MF間のプレーしやすくなってしまえば厄介この上ない。鈴木武蔵と川崎の最終ラインの駆け引きはこの試合の大きな分かれ目になりそうだ。

図3

 仮に川崎が陣形をコンパクトに保てた場合、札幌は飛び道具に頼ることになるのではないか。高さは1つの手段であり、ジェイは当然有用なオプションになる。正確に彼にクロスを送れる福森とセットで、内と外のそれぞれの飛び道具で問題を解決したいところ。菅と白井というWBコンビがマッチアップ相手にどれだけ主導権を握れるかも大きなポイントになる。21歳以下の出場規定により、田中碧の先発が確実視されることも踏まえれば、川崎は対人に強みがある守田のSB先発もあり得る。札幌からすればここで優位を作りたいところだがどうなるだろうか。

連動しないプレスはねらい目

 多彩な武器を持つボール保持とは異なり、やや非保持では気になる点が多かった札幌。C大阪戦を見ると鈴木武蔵、アンデルソン・ロペス、中野嘉大の3トップが相手を追いかけまわしていたのだが、ボールをどこに誘導したいかの意図は見えてこなかった。個々人がバラバラのタイミングでプレスに行くのも懸念で、目の前の相手にボールが渡ってからプレッシングに動くため、相手に時間もスペースも与えてしまうようなプレスの判断が行われることもしばしば。そのフォローのために、中盤からも人は飛び出すことがあるが、それに対してDFラインの押し上げが見られないケースもあるため、DF-MF間のスペースは大きく空くことも珍しくない。

 もちろん、川崎としてはここを積極的に狙うべき。人に強く当たってくる相手なので、最終ラインのピン止めをダミアンに任せながら、阿部や家長等曖昧なポジションを取れる選手で相手の守備の基準点を乱していきたいところ。サイドを中心に人数をかけながら、相手の穴を作り出すという今季後半戦で目指したサッカーをぶつけるには相性は悪くないはずである。

図2

 小林悠、阿部浩之、齋藤学など攻撃陣はここに来て故障者が復帰。大枠としてはショートパス主体で穴をあけるサッカーを志向するだろうが、そのために鬼木監督はどのような手段を取るか。交代策を含めて注視したいところだ。

 間違いなく今季最大の大一番。リーグ戦では難しい戦いが続いたが、カップ戦のタイトルを掲げることができれば、間違いなくクラブとしては大きな一歩。リーグ戦のつまずきの多さが帳消しになるわけではないが、一発勝負に弱いクラブカラーとおさらばできるならば、クラブにとって大きな財産であることは間違いない。得意な相手を苦手な舞台で迎え撃つという複雑なシチュエーション。前回と同じく、共に初優勝をかけた同士のファイナル。面白い巡り合わせだが、結果まで2年前と同じでは川崎ファンとしてはさすがに笑えない。3年連続のタイトル獲得はクラブの至上命題といっていいだろう。

参考
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
SANSPO.COM(https://www.sanspo.com/)

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次