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「きっかけ先行でもいいじゃない」~2024.12.21 プレミアリーグ 第17節 クリスタル・パレス×アーセナル レビュー

プレビュー記事

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レビュー

ルイス=スケリーの特性を生かすプレー選択

 リーグ戦では2試合連続の引き分けとなっているアーセナル。ミッドウィークに続いてパレスを倒し、何とか勝利がない現状を打開したいところだろう。

 パレスのメンバーはミッドウィークから3人が入れ替え。ムニョスの出場停止が続くRWBはクポルハからクラインに。足を負傷したエゼのところに入ったのは鎌田。そしてバックスはチャロバーをリチャーズに組み替える形で臨む。アーセナルはいわゆるリーグ戦仕様のメンバーに回帰。負傷からの復帰を目指すライスとカラフィオーリはベンチスタートとなった。

 パレスは強気なハイプレスでのスタート。アーセナルはまずはウーデゴールの右SBの位置に落ちるアクションやハヴァーツの左右への動きなどからパレスに対してズレを作りに行く。

 個人的に面白かったアクションはルイス=スケリー。インサイドに旋回してのドリブルというプレー選択はIHのサイドフローとの喰い合わせがとてもいい。

 プレーだけを見れば、単純にインサイドにドリブルで突っ込んでいるのでとても失った時にダメージが大きい選択肢。しかしながら、ルイス=スケリーは突っ込んでいっても最低でもファウルをもぎ取ってくる馬力がある。前が空いた時の縦パスの精度はすでに特筆すべきものがあるので、インサイドにボールを付けるための状況を作れる武器があればいい感じにまとまってくるのかな?と思っていたが、すでにその武器の片鱗は見せつける格好となった。

 押し込む手段を見つけたアーセナルはセットプレーの流れから先制。前線に残っていたガブリエウの外に構えていたジェズスがゴールをゲット。カップ戦に続く冷静なフィニッシュで今季のリーグ戦初めてのゴールを決める。

成功体験が後押しするハイプレス

 このゴールで試合は落ち着くかと思われたが、この日はそうでもなかった。パレスは思い切りのいいハイプレスを継続。これに対して、アーセナルはショートパスで外しに行く。

 月並みなのだけどもハイプレスに必要なのは気持ちだと思っている。もう少し、解像度を上げるのであれば、これをやればボールが取れるだろう!という自信。逆に言えば、これではボールが取れない!と感じさせることでできれば、相手のハイプレスの足は鈍ることになる。

 この日のパレスはハイプレスにおいて早い時間帯から成功体験を積み上げることが出来ていた。きっかけになったのは鎌田だった。この日は降りるウーデゴールの引き取りをしつつ、前プレの役割を担うケースを両立。8分のシーンではトーマスに寄ったウーデゴールからボールを奪取したカウンターを発動させる。鎌田は「ボールを取れる!」の先陣を切ったことになる。

 すると、直後にはパレスはGKへのプレスに成功。ラヤがガブリエウにボールを叩こうとしたが、これをキャンセル。マークのついているトーマスに地雷パスをつけて一気にピンチを迎える。ラヤとガブリエウのコミュニケーションミスなのか、単なるラヤの判断のところなのかはわからない。確かなのはこの2つのプレーで攻撃のきっかけをつかんだことがパレスにプレスの勇気を与えたことであった。

 勢いに乗るパレスは自陣からの前進でゴールをゲット。ハヴァーツ、ウーデゴールのIH組を引き付けつつ、アンカー脇から前進に成功。逆サイドまで出張して顔を出すことで、マークにつかまらずに浮くことが出来たサールがサリバのタイミングを外し、見事なシュートでゴールをこじ開けてみせた。

 以降もパレスのハイプレスは継続。特にサイドにボールがある時の圧縮でパレスはアーセナルからボールを奪ってのショートカウンター移行を繰り返す。特にサリバのエラーはクリティカル。あわやというシーンをラヤが何とか救い、事なきを得る。

 自陣からでの前進でもパレスはきっちりとした割切りで勝負。アーセナルのプレス隊をひきつけつつ、マテタへのロングボールとCHのセカンド回収能力で前進を狙っていく。

 自分たちのプレスがかからず、相手のプレスに苦しめられたアーセナルにとって救いだったのはジェズスへのロングボールから右のサカに預けるというパターンが機能したこと。ハイプレスへの対策を提示すると、再びスコアを動かしたのはセットプレー。ガブリエウの競り合いからジェズスが距離のあるゴールを沈めて勝ち越し。リードを再び手にする。

 しかしながら、再びアーセナルにアクシデント。ロングボールの出口となっていたサカが負傷。これによって右サイドにはマルティネッリが回ることとなる。

 昨シーズンも試したマルティネッリの右だったが、昨季同様に一定のクオリティを見せた試合だったといっていいだろう。右サイドで縦へのプレーが増えて単調さが顔をのぞかせる一方で、右サイドであればボールと相手選手の間に自分の体を置きやすい分、当たり負けしない相手であれば押し切ることはできるという側面もあった。マルティネッリにとってミッチェルは当たり負けはしない相手だったので、後者のメリットを享受することが出来ていた。

 マルティネッリを軸とした右はサイドで味方と連携しながらあらゆるレーンでの崩しをする意味付けは薄かった。外に回って抉るボールを受けたタイミングでの景色はよかったが、そこから先は比較的ソロで何とかしないと!という感じになっていた。

 そういう状況でマルティネッリのクロスを生かす形からアーセナルは追加点。右サイドからのクロスを難しい状態で合わせたジェズスがシュートを枠に持っていくと、最後は抜け出したハヴァーツが押し込んでゴールを積み重ねる。

 オープンな展開から少ないチャンスを仕留めたアーセナル。2点のリードでハーフタイムを迎える。

ライス投入でパレスの懸念が顕在化

 相手のゴールに近づくことはできるが、展開的にはそこまで困っていないパレス。だが、後半に突入するにあたり彼らには懸念がある。それはミッドウィークからの中2日の日程だ。かつ、前半のパレスはとにかく走ることで真っ向からアーセナルとの斬り合いのような文脈となった。

 そう考えるとコンディションは不安がある状態は割と早めにやってくるはず。その時に備えてなるべく早く同点に追いつきたい。

 というわけでパレスは再びアーセナルに対して前プレスを発動。ボールを奪ったところからカウンターに移行し、サイドのクロスでゴールに迫っていく。

 後半の頭に見せたのはラヤ。52分のセーブはラヤの長所であるセーブ後の起き上がりの速さが活きた場面。見事なプレーで後半初めのクリスタル・パレスの反撃のきっかけを摘み取る。

 アーセナルからすれば前プレを外すことが出来れば次のフェーズに移行できる。だが、そのフェーズでなかなか苦しむという流れだった。

 しかし、この日は文脈よりも得点のきっかけが先行するのがアーセナル。パレスの保持のエアポケットとなったリトリートで生じたパレスのDFラインのギャップをガブリエウ→トロサールで突くことでパレスの混乱を引き起こすことに成功。最後はパレスキラーのマルティネッリがゴールを決める。

 このゴール直前に投入されたライスがゲームチェンジャーだった。「中盤の壁を越えればひっくり返すことが出来る」というこの試合のアーセナルの命題を見事に達成。MFラインの背後で受けてのドリブルで一気にパレスの守備の収支をマイナスに追いやる。

 ライスという解決策の提示と3点差によってアーセナルはようやくパレスのプレスを撃退することに成功。自身も非保持ではきっちりとリトリートを優先することでブロック守備の構築を行っていく。

 そして、ライスは仕上げの5点目もゲット。長いレンジからの素晴らしいミドルで快勝に華を添えることに成功する。

 久しぶりのリーグ戦の勝利は大量5得点。カップ戦に続き、リーグ戦でもパレスに勝利を収めたアーセナルであった。

あとがき

 丁寧に5バックとか3センターをどうやってどかしましょうか?という試合が続いていたアーセナルにとって、成功体験を縦に前プレでガンガン勝負を仕掛けていくパレスという相手はこれまでの数試合とはだいぶ違った毛色だった。

 正直、この日のアーセナルはハイプレスの解決策を構造で探るというよりは得点というきっかけ先行で展開を楽にしていったのでその点も少しテイストは違ったかなと思う。特にハイプレスに苦しんだことは今後の試合を見据えれば課題にはなるが、プロセスはよくても結果がダメな試合が続いていた中でたまにはきっかけ先行の試合があってもいいじゃない!という日だったのかなと思う。

試合結果

2024.12.21
プレミアリーグ 第17節
クリスタル・パレス 1-5 アーセナル
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:11‘ サール
ARS:6’ 15‘ ジェズス, 38’ ハヴァーツ, 60‘ マルティネッリ, 84’ ライス
主審:サイモン・フーパー

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