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「6-4-0を壊すためのポイントは?」~2025.1.1 プレミアリーグ 第19節 ブレントフォード×アーセナル レビュー

プレビュー記事

目次

レビュー

引いて受けるだけではダメなブレントフォード

 新年初のプレミアリーグはアーセナルが担当。アウェイでのブレントフォードとの一戦に挑む。

 ボールを持つのはアーセナル。ブレントフォードの守備は4-4-2がベース。機を見てハイプレスに出ていくこともあるが、ライン間をコンパクトに保つミドルブロックが基本線という感じだろうか。

 ある程度アーセナルが押し込みながらサイドにボールがある時はほとんど機械的にCHがハーフスペースを埋めるイメージ。それに伴いCFが生まれたスペースを埋める形に。

 実際にPA付近まで下がっていくとCHはどちらもボックス内に入り、CFは両方ともバイタルを埋める位置まで下がる。6-4-0みたいな格好である。

 アーセナルはボールを持つチームなのでブレントフォードの守備がこのような形になることは少なくないのだが、いかんせんこの形だと反撃が非常に難しい。ボールを奪った後のターゲットとなるCFがバイタルエリアにいるとなると、ボールを預けても相手のカウンタープレスに遭うケースが多い。

 だからこそ、このような状態を回避するためにブレントフォードは他の前進の手段を敢行する必要がある。例えば、ハイプレスに出ていく機会を作ったり、あるいは自陣からの前進を頑張ったり。

 ボールを持つ際にはGKをCBが挟み、CHが降りてくる5枚を基本線としてビルドアップを敢行。アーセナルの前からのプレスを外しながらサイドでボールを運ぶ形を狙う。ロングボールでのターゲットはウィサ。サリバにつっかける形での空中戦を収めて左サイドの抜け出しを狙うことができた。

 まとめると持たれた時に自陣を埋めるのは仕方がないけども、あまりにも6-4-0での守備ばかりになると反撃のルートがなくなる。そのため、他の局面で6-4-0を避けるための手段を探りましょうというのがブレントフォードのプランだった。

 とりわけ、攻撃に関しては敵陣にスピードが乗った状態で向かうことができればなんとでもなる。まさしく、その形の破壊力を証明したのは先制点の場面。スピーディな攻撃を引き取ったムベウモは見事なミドルでブラインドとなったラヤのニアを抜くシュートを決めた。アーセナルからすれば股を抜かれたカラフィオーリの対応に甘さが。この部分はテセが解説したように股を閉じてニアを抜かれないコースの切り方をしたかった。

 いずれにしても一発回答を見せたムベウモは見事。コースを作る動かし方をしつつ、股を抜いてシュートまで撃ち抜くという芸当は並大抵のことではない。

条件が揃った同点ゴール

 先制してもブレントフォードの守りのスタンスは変わらない。むしろ、ハイプレスに出ていく頻度が少し増えたように見えた分、アグレッシブといってもいいくらいだ。

 どちらかといえば変化があったのはアーセナル。序盤は3-2でのポゼッションをベースにショートパスを繋いでいくスタートだったが、時間の経過とともにアバウトな長いレンジのパスが増えていった。

 ブロックを組む前にファストブレイクで解決すれば確かにスペースは存在にはなるが、アーセナルのこの選択は雑さが先行。長いレンジのパスを引っ掛ける場面が目立ってしまう。高い位置からのチェイシングの色を強めたブレントフォードとの食い合わせも悪かった。

 サイドフローを組み合わせた移動で相手を動かしにいくケースもあったが、この時間帯はリズムが悪くこちらも不発。浮いたカラフィオーリがパスミスでブレントフォードにボールをプレゼント。先制して以降のアーセナルはミスが多くリズムが悪かった。

 そうした中で安定していたのは右WGに抜擢されたヌワネリ。敵陣までのドリブルでのキャリーで高い陣地回復の成功率を保証。敵陣にきっちり入り込み、ブレントフォードに6-4-0のプランを発動させていく。

 今季のブレントフォードを見る限り、押し込んで勝負を仕掛ける形はアーセナルにとって十分に勝機があるものだと考えていた。まずはCFの位置を下げることでカウンターに出るケースを抑制できることが1つ、もう1つは単純に壊せるブロックだと思ったからだ。

 この日のブレントフォードの守備ブロックの狙い目はズバリCHが埋めるべきバイタル周辺。理由は「CHの守備の動きが決まっているから」と「CHが出て行った時に他の選手が埋める間の時間的なギャップが存在するためスペースが空きやすいから」の2つ。ボールサイドではハーフスペースを埋めて5バックになるということを利用できればアーセナルは中央をこじ開けることができる。

 もっともわかりやすいのは得点シーンだろう。ジェズスのゴールのきっかけとなったのはガブリエウの縦パス。このパスは外に流れてハーフスペースを埋めにいくノアゴールの背中を通すアクションになっていた。

 まずパスによって相手の背中をつくアクション。さらにはジェズスの詰めを作り出したトーマスのミドルはバイタルでのボール奪回から。ブレントフォードはムベウモ、ウィサがこの位置でロストに関与。まさしく、6-4-0の副作用として預けどころが極端に自陣側になってしまう難点が出た格好となった。

 よって、このジェズスのゴールは「CHのハーフスペースを埋める動きの逆をつくこと」と「6-4-0の預けどころのなさ」の2つのポイントをアーセナルが抑えた同点ゴールだったと言えるだろう。

 このゴール以降もアーセナルは保持で押し込みながら相手を動かしていく。CHがハーフスペースを埋める分、DFラインの手前は空きやすい。この部分をウーデゴールがとり、同サイドの裏もしくはファーサイドへのクロスを出口としてブレントフォードを攻撃する。ヌワネリも縦への突破を見せるなど大外から引き出しを見せた。

 ブレントフォードの反撃はなかなか苦しいものだった。ヌワネリの戻りが遅れる際に左サイドのルイス-ポッターからの仕掛けは脅威になっていたが、クロスの対応に優るアーセナルはなんとか跳ね返しに成功。事なきを得る。

 戻りが遅れるといってもそもそも押し込むことで危うい機会自体を抑えることはいつものアーセナル。ワンチャンスを決めたブレントフォードも先制点以降はなかなかクリティカルな反撃に打って出ることができなかった。

逆転以降は無風の完勝

 後半の頭、特にメンバー変更はなし。アーセナルは引き続き押し込むことでブレントフォードが放つカウンターの危険性を抑えにいく。

 アーセナルは早々に追加点をゲット。得意のセットプレーから勝ち越しに成功。ごちゃっとした環境の中で最後に押し込んだのはメリーノ。混戦からしたたかにゴールを決める。

 ブレントフォード視点でいえばやはりフレッケンのところでキャッチをしておきたかったところ。多少サリバに行動制限を受けていたとはいえ、一度は手中に収めかけたボールを落としてしまうのは勿体無い。

 勢いに乗るアーセナルは右サイドから追加点をゲット。ヌワネリがファーサイドにつけるボールをブレントフォードは跳ね返すことができず、溢れたところに詰めたマルティネッリがゴールを決める。

 追いかけるブレントフォードはボールを保持から機会を伺う。2CB+2CHを軸にSHが1枚中央に下りる形が枚数調整。後方のビルドアップ隊は2-2~3-2を行ったり来たりという陣形だった。

 この中央のビルドアップ隊にアーセナルのワイドアタッカーを引き付けてSBで背後を取るところまではできていたブレントフォード。しかしながら、プレスよりもリトリートを優先し、プレスバックをサボらないアーセナルに対してブレントフォードは苦戦。サイドにおいてはおそらく最も期待できるルイス-ポッターもティンバーに封じられてしまい活路を見出すことができず。

 むしろ、アーセナルはロングカウンターからマルティネッリがゴールを狙うなど、徐々に縦に速い展開からチャンスを作っていく。

 押し込んでも手応えをなかなか作ることができないブレントフォード。実質、74分の4枚替えは白旗宣言だろう。サイドのアタッカーをリフレッシュするのであればシャーデを外に置いても良かったはずだが、サイド攻撃のテコ入れはなし。ここからもう一度試合のテンションが上がることはなかった。

 対するアーセナルもプレータイムを管理しながら残りの時間をきっちりとシャットアウトして勝利。逆転してからはほぼ無風の状態で勝利を手にした。

あとがき

 早速一つ目を決めてくるというまさしくプレビューに書いてあった内容で先制点を許してしまったのでヒヤヒヤしたが、終わってみればアーセナルの完勝だったと言えるだろう。今までのブレントフォードとはキャラが違うので、きっちり押し込むこと自体はバリューになること。そして、そこから解決策を見出せることは立派だった。次は日程差がある相手なだけに終盤戦を強度が低い展開に持ち込むことができたのは良かった。

 スターターに起用されたヌワネリはボールを持った際は悪くないプレーが多かった。ただ、この日の対面はルイス-ポッターというWG色の強い選手がSBを務めていたことは押さえておきたいところ。よりDFのカラーの選手相手にも同じことができるかが次のステップになるはずだ。

試合結果

2025.1.1
プレミアリーグ 第19節
ブレントフォード 1-3 アーセナル
G-techコミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:13′ ムベウモ
ARS:29′ ジェズス, 50′ メリーノ, 53′ マルティネッリ
主審:ピーター・バンクス

 

 

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