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Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第27節
川崎フロンターレ(4位/勝ち点44/11勝11分4敗/得点40 失点24)
×
ヴィッセル神戸(9位/勝ち点32/9勝5分12敗/得点46 失点44)
@等々力陸上競技場
戦績
近年の対戦成績
直近5年間の13回の対戦で川崎が6勝、神戸が3勝、引き分けが4つ。
川崎ホームでの戦績
直近10試合の対戦で川崎が5勝、神戸が2勝、引きわけが3つ。
Head-to-Head
Head-to-Head①
【公式戦での対戦成績】
・公式戦における両チームの対戦は過去33戦で川崎が17勝、神戸が9勝、ドローは7つ。
・直近12試合のリーグでの対戦において川崎が神戸に敗れたのは2度だけ(W6D4)。
たいていてこずるノエスタに加えて、直近の天皇杯も相まって、個人的にはあまり相性がよくないと思っていた神戸。しかし、リーグ戦の成績だけ見れば川崎が優位に立っている。鬼木監督就任後はリーグ戦での5回の対戦は一度も負けなしである。
Head-to-Head②
【3チーム目達成なるか?】
・直近4試合の公式戦での対戦は両チームとも得点を決めている。
・川崎が勝利すれば、神戸相手に2年連続シーズンダブル達成。
近年の川崎×神戸といえば乱打戦がおなじみ。直近の天皇杯もそうだし、リージョが等々力に見参した昨年の対戦も5-3とド派手にやりあった。その試合はシーソーゲームでリードするチームは入れ替わってはいるが、直近4試合での勝利チームはすべて先制点を挙げたチームという共通点がある。
川崎は神戸に勝利すれば前節の磐田に続いて3チーム目のダブル達成。今季ダブルを達成できる可能性を残している対戦相手は神戸、湘南のみ。なんとか連勝を決めて上位に食らいつきたいところだ。
Head-to-Head③
【ホームでも直近の優勢は変わらず】
・川崎ホームでの試合に限れば過去14戦で川崎が9勝、神戸が2勝、ドローが3つ。
・敗れた2戦以外のホームゲームでは川崎はすべて複数得点を挙げている。
ホームでの対戦成績でも川崎の優位は動かない。特に目を見張るのは得点の多さ。完封負けした2つ以外はすべて複数得点。0点で負けるか、点をたくさん取るかの2択である。特に直近3年は13得点。ここ2年は共に5得点を挙げているというド派手ぶり。5得点とか、そもそも今季そんなに点を取ったことはない。ちなみに3回の引き分けは地味にすべて2-2である。
Head-to-Head④
【オカルト強め!】
・神戸所属の外国籍の選手がこの対戦で得点を決めたのは2016年10月が最後
・共にトップハーフで迎えるリーグ戦は6回目。以前の5回は川崎の4勝、神戸の1勝
外国人選手のイメージが強い神戸だが、2016年のレアンドロを最後に川崎戦ではゴールを決めていない。一応参考までに今年の神戸の公式戦の得点の63点のうちの30点は外国籍選手によるもの。特に外国人が増加したイメージのあるここ2年の対戦でも、川崎相手に8ゴールを決めているにもかかわらず外国人の得点はなし。得点は全て日本人(オウンゴールの奈良を含む)によるものだ。
共にトップハーフで迎える対戦は過去に5回ある。その場合、複数得点差がほとんど。ただし、1回目からのスコアを並べてみると1-6,4-0,3-0,3-1,1-2と徐々に点差が縮んでいる。あれこれ引き分け・・・?
【川崎フロンターレ】
選手情報
・天皇杯で頭を打って負傷交代した長谷川竜也はトレーニングに復帰。
・大島僚太、奈良竜樹、ジェジエウ、藤嶋英介、安藤駿介、齋藤学は欠場予定。
Match Facts
川崎のMatch Facts①
【脱出したトンネル】
・前節でリーグ戦の未勝利を6でストップ
・ホームゲームは15試合連続無敗継続中(W6D9)
ついにリーグ戦では6試合の連続未勝利がストップ。正直手放しで喜べる内容ではなかったものの、まずはトンネルを抜け出せて一安心といったところだろう。トンネル脱出きっかけとなったのは今季ドロー沼と化している等々力。しかし、この沼では意外と負けていない。G大阪戦以降15戦無敗継続中となっている。
川崎のMatch Facts②
【月に一度のお楽しみ】
・ホームゲームでの公式戦は初の連勝中
・今季、同じ月のリーグのホームゲームで2回勝利を挙げたことはない。
なんと9月にして今季初めての公式戦ホームゲーム連勝中である。おせぇ。というわけで初めての3連勝チャレンジになる。「ホーム3連勝なんて去年はむっちゃあったやろ」と思って調べてみると、意外と少なく3連勝は一度だけだった。そんな昨シーズンたった一度の3連勝の3勝目を飾った相手は今節当たるヴィッセル神戸である。
しかし、今季はリーグ戦では同じ月に2回リーグでのホームゲームを勝ったことはない。湘南(4月),仙台(5月),大分(7月),磐田(9月)と月に一度のお楽しみ状態となっている。せっかくシーチケ争奪戦になったのだから、そろそろホームのお客さんを焦らすのはやめにしてほしいところだが・・・。
川崎のMatch Facts③
【4-4-2は悪なのか?】
・今季の公式戦のうち、4-4-2でスタートした10試合は無敗(W6D4)
・FW(ダミアン、知念、小林)の得点数は計31点。昨季のFW(小林、知念、大久保、赤﨑)総得点をすでに超えている。
4-4-2がやたら非難の的になっているので、とりあえず数字だけ調べてみた。Transfermarketによると、今季スタートから4-4-2を採用した試合は10試合でいずれも無敗。つまり、今季敗れた試合はすべて4-2-3-1でスタートしたものである。
もちろんこれだけで、4-4-2の方が優れているというつもりは毛頭ない。ただ、今季の川崎の得点の傾向を考えるとFWの貢献度の高さは無視できない。昨季の29点を超える31点を現時点で挙げており、全得点におけるFWの占有率は昨季の40%から53%に上がっている。今季やや不足気味な得点を奪うためにも、2トップのオプションは頭に入れておくべきだ。
川崎のMatch Facts④
【困った時に頼るもの】
・セットプレーからの得点は3得点。昨シーズン全体の1/3。
・新井章太は直近6試合の先発出場した公式戦で4つのクリーンシート。
「今季の川崎は得点に困っている」と述べたが、そういう時に頼れるのがセットプレーからの得点である。正直、セットプレーのことはちんぷんかんぷんなのだが、ここまでのセットプレー(直接を除く)からの得点は昨季の3分の1になっている。これより少ないのはG大阪、横浜FM、そして未だセットプレーからの得点がない大分。なんか逆にすげーな大分。
得点が伸び悩むときにもう1つ頼れるものがあるとしたら、それは苦しい時にチームを支える守護神である。磐田戦からリーグ戦のゴールマウスを任されている新井はカテゴリーの異なるカップ戦中心とはいえ、6試合でクリーンシートを4つ。ドロー沼等々力ですでに3勝を挙げており、これはソンリョンと1つしか変わらない。今までゴールマウスに君臨してきたソンリョンはここ数カ月でスランプ気味。こういう突然のピンチでチームを救う新井の姿を川崎サポーターは何度も見てきた。どんな時でも回ってきた出番で確実に仕事をする「準備の人」である新井が等々力でまたしてもチームに勝利をもたらすことはできるだろうか。
【ヴィッセル神戸】
選手情報
・イニエスタはトレーニングに復帰済み。
Match Facts
神戸のMatch Facts①
【3連勝への挑戦権】
・直近4試合のリーグ戦で3勝。今季初。
・勝利すれば今季3度目のリーグ戦連勝。
ようやく神戸が波に乗ってきた。潮目が変わったのはトーレスの引退の舞台で大暴れした鳥栖戦からだろう。チームも安定感を増し、直近4試合でリーグ戦3勝。4試合単位で見れば、今季の神戸で最も多く勝ち点を稼いでいるタイミングになる。等々力で勝利すれば今季3度目の2連勝。3連勝は一度もないだけに、終盤勢いをつけて来季に臨みたいところだろう。
神戸のMatch Facts②
【上位食いを狙え】
・リーグ戦で挙げた9勝のうち、8勝は現在のリーグテーブルで12位以下のチーム相手に挙げたもの。
・アウェイで21得点はリーグ最多。しかし、アウェイでの勝ち点はボトムハーフ。
今季のリーグ戦の足を引っ張っているのは上位勢との対戦だ。リーグ戦で現在の10位以上に勝利したのはFC東京戦の一度だけ。13戦で1勝3分10敗と非常に苦しんでいる。
もう1つの特徴はアウェイゲーム。21得点は最多だがアウェイの勝ち点でいえばボトムハーフ。アウェイで21得点を挙げているチームは神戸を含めて5チームあるのだが、アウェイでの勝ち点がボトムハーフなチームは神戸以外にもう1つ。風間八宏率いる名古屋である。
神戸のMatch Facts③
【終盤での失点が嵩む】
・リーグにおいてリードした試合での逆転負けはG大阪に並んで最多。
・公式戦における60分以降の失点がリーグ最多。
得点が多いにも関わらず、勝ち点が伸びない!ということはもちろん失点も多いということ。特に終盤に難ありで、リードしたリーグ戦の逆転負けは4回でG大阪と並び最多。公式戦での60分以降の失点が32点でリーグ最多である。天皇杯でも最終盤に2失点を喫したようにゲームクローズには課題があるようだ。
神戸のMatch Facts④
【バルサ流?の助っ人の効果】
・トマス・ヴェルマーレンが出場した直近5試合のリーグ戦で複数失点は一度だけ
・山口蛍はキャプテンマークを巻いた直近4試合の川崎戦で全勝
最終ラインで即効性の高い働きをしているのがヴェルマーレン。彼が出場した5試合で複数失点は1つだけ。それ以前の6試合でいずれも複数失点していることを考えれば、即フィットしていることに異論はないだろう。ちなみに、アーセナルファンの自分としては、バルサが!バルサが!といわれると「いやほぼ出てへんやんけ!」といいたくなるが、アヤックスも経由しているので仕方ないので許します。
川崎戦という意味で印象的な働きをしているのが山口蛍。正直めちゃめちゃうまくなった感があるので迷惑である。キャプテンマークを巻いた川崎戦は直近の天皇杯を含めて4連勝中。この試合に勝てば18年開幕以降の川崎戦で5勝目。おそらくここ2年で最も川崎に勝った選手になるだろう。
予想スタメン
展望
■天皇杯での問題点とは
展望を書くにあたって参考にした試合はもちろん直近の天皇杯。わざわざ他の試合を見に行く手間が完全に省けてうれしい。問題なのは「うれしい」のは手間が省けることだけであって、天皇杯の試合内容は喜んで書きたくなるような代物じゃなかったことである。
3-2というスコアを見ると「惜しかった」とか「よく2点取り返した」という声が出そうである。確かに選手たちは非常によくやっていたと思う。しかしながら、前半から構造で殴られていたのもまた確か。さらに言えば、捨て身のスクランブルアタック構成だって、2点を決めたのは相手にとどめの3点目を決められた後である。となるとやはり手放しで健闘を称えるというわけにも行かないのである。
上に示したのは天皇杯のスタメンである。この試合で多くの人が挙げるターニングポイントは長谷川竜也の負傷交代である。これによって小林悠を投入。この交代を「2トップへ舵を切ったのが大間違い!サンペールにマンマークがおらんやん!」とする声が川崎サポーターの中では多かったように思う。もちろん、4-2-3-1→4-4-2の移行でアンカーのサンペールが自由になりやすかったことは確かだろう。小林悠とレアンドロ・ダミアンは、交代しながらサンペールを監視していたが、実際サンペールは前半で生まれた2得点いずれにも絡んでいる。特に2点目は彼に自由を与えることが危険であることをこの上ない形で示していると思う。
しかしながら、そんなサンペールへのマークより気になる部分がある。サイドの守備である。この試合で一番初めに気になったのは川崎のSHのタスクである。プレス時にはワイドのCB、リトリート時にはWBにつくことが基本だったけど、ボール保持時にWBのフォローにやってきたワイドCBにもプレスについていったり、ハイプレスをかけているときに降りてくるWBに惑わされたりなど、とにかく判断の連続と多くの運動量が求められることになりそうなタスクであることを感じた。
そんなさなかでそのタスクを頑張っていた長谷川の負傷交代である。長谷川が務めていた左SHに代わりに入ってきた阿部浩之は監督から入念な指示を受けていた。おそらく、相手の守備に対する指示だろう。
しかしながら、この左の守備は全く機能しなかった。特に阿部が手を焼いていたのは西の動きである。降りてくる動きで車屋を誘導しつつ、阿部もひきつけた後に前方にボールを送る。後方では大崎が援軍として控える。車屋が空けた谷口との間のスペースに走りこむのはFWだけではなく、インサイドハーフ。特に山口蛍のフリーランは見事。おそらく西が車屋をひきつけた段階で空いたスペースをどのように運用するのかの共通認識があるのだろう。あそこでインサイドハーフがフリーランをすれば、PA内には2枚FWがいる形でボールを送り込むことができる。
■見せかけの手当てでは意味がない。
何が言いたいかというと、神戸の後方でできた川崎の守備の歪みを前方に持ち越されてしまうことこそ、サンペールへのマンマークの話よりも大きい問題なのではないかということ。1失点目は確かにサンペールは得点に絡んでいるものの、この場面で神戸が川崎を押し下げたメカニズムに彼はいない。最終局面で顔を出してボールに絡んだ、くらいだろう。
確かにサンペールは川崎の守備の歪みを見逃さずに殺傷能力の高いボールを送り込むことができる。しかし、天皇杯の神戸の1点目を振り返ればわかるように、彼を経由しなくても今の神戸はそのスペースを攻略する力があること。リーグ戦ではイニエスタの復帰の可能性も示唆されている。そうなれば、サンペールに対して、マークマンを付けるだけで何とかなる話ではないことは明白である。むしろサンペールを締め出して10対10にすれば、神戸としてはより1人1人の使えるスペースが広くなると考えることもできる。
サンペールへのマンマークを川崎が敢行した場合、神戸には対抗策がたくさんある。たとえば降りてくるイニエスタ。そうなれば、川崎のCHは危険なエリアを空けてまでイニエスタにマークに行くかを迫られることになる。
イニエスタが不在ならばCBが持ち上がってもいいし、WBが絞ってもいいだろう。要はサンペールと並列関係になる選手を置いてしまえば、川崎にさらなる判断を迫ることができる。そうなれば、川崎の選手にギャップが生まれる。神戸としては空いたところを使えばいいのだから簡単なことだ。
では川崎はどういう手を打てばいいのか。起点を抑え切れないのならば、最終的に狙いたいスペースを塞ぐことを優先で考えるべきだと思う。具体的にはCB-SBの間のスペースに走りこむ選手への対策を打つべきであるということだ。天皇杯でもこのスペースに抜け出す2トップやインサイドハーフにはかなり手を焼いた。
配置での勝負では明らかに分が悪い。となると現状で思い付くのは、多少非効率でも運動量勝負。調子がよくカバーリングの嗅覚に長けるCHに命運を委ねる策を提案したい。というわけで前に挙げた今節の川崎の予想スタメンは、自分の願望スタメンである。田中、下田、守田の3枚で相手の中盤と数を合わせる。SHも含めて中盤はスライド。例えば、川崎のSBが神戸のWBを捕まえに出ていったら、ハーフスペースを埋められる位置に1人が流れる。少なくともイニエスタが復帰するならば、サンペールにマンマークを付けない方がいいと思う。もちろん放置してしまうのはNGである。受け渡しながら監視した方がいいのではないか。ハイプレスで神戸からボールを取り上げるのは現状では難しいと思う。後方でスペースを埋めながらスライドしつつ、相手のミスを待つ形がベターだろう。2トップの一角にスペース感覚に秀でたダビド・ビジャが起用されるようならば尚更である。そのため、先制点を与えると非常に厳しい。
前線では天皇杯でも中央の起点として機能したダミアンを軸に少ない人数で攻め落としたい。正直、齋藤学がこのタイミングでいないのは頭が非常に痛い。長谷川竜也に出場可能ならばいいのだが。
理屈の中で戦うならば神戸が有利だが、スクランブルになれば川崎にもチャンスがあることは天皇杯で示した通り。ただし、90分間真っ向からは殴り合えない。ハーフスペースを埋めつつ、我慢を継続。速攻が無理と判断したら、攻め急がないのも一つの策だ。神戸の攻撃機会を減らすのも悪くないし、ブロック守備の組織としての完成度はまだ高くない。そのため、家長昭博をスタメンで使うのもアリだろう。今季は不調だが、前線の起点としての能力は高い。課題となるスローテンポを招いてしまう点も、この試合の序盤に関しては問題なし。非保持の局面には不安が残るけども。得点を見込める脇坂を終盤に起用できるのも◎。
最終盤にカオスで殴り合いに持ち込める展開こそが理想。前線のアタッカー陣の決定力は、今季の川崎が胸を張って神戸と渡り合える部分だと思う。川崎のFWの得点力や神戸の終盤の失点の多さを考えると、最後の最後にFW陣に望みをつなげる展開を期待したい。
天皇杯の敗退で否が応でも自分たちの立ち位置と向き合わなくてはいけなくなったことは間違いない。力不足もすぐには解消することはない。しかし、それはいずれも歩みを止める言い訳にはならない。屈辱だらけだった2019年シーズンだが、今の自分たちにできることを考えながら、一つでも多くの勝ち点を積むことを諦めていい理由は一つもないのだ。
参考
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
SANSPO.COM(https://www.sanspo.com/)