■異なったミラーフォーメーションへのアプローチ
混戦模様のグループDは第3節に突入。トッテナムはEL王者のフランクフルトとの180分を突破の足掛かりにしたいと考えているはずである。
両チームともフォーメーションは3-4-3。ぴったりと重なる形になったミラーフォーメーションである。かみ合わせが比較的いいフォーメーションの割には敵陣深い位置まで強引にプレスをかけないという点でも一致。両チームは非保持に回ったとしてもゲームのテンポを無理に上げるようにけしかけることをしなかった。
よりプレスに消極的だったのはフランクフルトの方だ。トップに入ったソウは中央に陣取るトッテナムのCHの選手をマークする。トッテナムのCHは片方が中央、片方がサイドに流れつつポジションを下げながらゲームメイクをするのが特徴。
トッテナムの2人のCHのうちフランクフルトがケアするのは中央のCHの方だけ。もう片方のサイドの自陣側に落ちていく選手にはついていかずに陣形の維持を優先する。これにより、フランクフルトはコンパクトさをキープすることが出来ていた。
中央を閉じられたトッテナムはサイドアタックとセットプレーからしかチャンスを作ることができない。そうなればなかなか量的な側面で充分とは言い難い。
なので、中央に強引にボールを付けるトライも織り交ぜながら解決を図るトッテナム。長谷部も良く奮闘してはいたが、引きちぎったりソンへの落として限られたスペースメイクで決定機を作るケインはさすがである。
一方のフランクフルトはトッテナムに比べて配置に忠実な構造でのビルドアップになっている。最も大きく動くのはバックラインからの縦パスを引き取るためにライン間に降りてくる前線の選手。鎌田とリンドストロムである。
トッテナムは3バックのまま構造を変えないフランクフルトに対して、3トップがプレスの色気を見せるときがある。そこで広がったライン間のスペースに前線の選手が顔を出すという流れである。
その分、奥行き側の駆け引きをするのはWBの仕事。特に左のクナウフはエメルソンとの駆け引きから抜け出す場面も見られており、このポジションではトッテナムを出し抜くチャンスはあったといえるだろう。能力差を生かしたトッテナムが狭いスペースを狭いまま打開しようとしたのに対し、フランクフルトの方がスペースの駆け引きを好み、広がったところでの勝負を望んだ印象である。
後半は前半に比べればゴール前のシーンが増える立ち上がりに。特に左サイドからのチャンスメイクを増やしたフランクフルトが攻勢に出る。これに対して、トッテナムはプレスを強めながらペースを引き戻そうとするのだが、効果は限定的なものに。逆に、ローデのハイプレスからリンドストロムが決定機を迎える場面もあった。
しかしながら、先発のメンバーの疲労と共にフランクフルトのパフォーマンスは徐々に低下することに。フランクフルトよりはおそらく選手層が充実しているであろうトッテナムは交代選手で差を付けたかったはず。ここまで出番がほぼなかったブライアン・ヒルにとっては絶好のアピールの機会だが、これは不発に終わる。
終盤の長谷部へのチャージなどケインは時間の経過とともにイライラが募るばかり。狭い部分を狭いままこじ開ける機会を増やせず、両チームの試合はスコアレスドローで幕を閉じた。
試合結果
2022.10.4
UEFAチャンピオンズリーグ
Group D 第3節
フランクフルト 0-0 トッテナム
フランクフルト・スタディオン
主審:ダニエレ・オルサト