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Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第18節
川崎フロンターレ(2位/勝ち点31/8勝7分1敗/得点25 失点11)
×
サガン鳥栖(16位/勝ち点16/5勝1分11敗/得点12 失点25)
@等々力陸上競技場
戦績
■近年の対戦成績
直近5年間の12回の対戦で川崎が7勝、鳥栖が1勝、引き分けが4つ。
■川崎ホームでの戦績
直近10試合の対戦で川崎が6勝、鳥栖が2勝、引き分けが2つ。
Head-to-Head
Head-to-Head①
【公式戦での対戦成績】
・公式戦における両チームの対戦は過去39戦で川崎が25勝、鳥栖が9勝。ドローは5つ。
・直近12回の公式戦での対戦で鳥栖は1勝のみ。ここ3回はいずれも無得点。
通算成績では川崎が大きくリード。直近の対戦に絞っても鳥栖はここ数試合無得点が続いている。川崎は鳥栖戦5試合連続負けなしを継続中。短期的に見ても、長期的に見ても過去の成績は川崎が優位に立っている。
Head-to-Head②
【対戦における傾向】
・直近18回の対戦のうち、1点差で決着がついた試合が11試合。
・川崎にとって鳥栖(64.1%)は松本、札幌(76.0%)に次いで勝率が高い相手。
3戦全勝の松本戦(100%)、大のお得意様である札幌戦(76.0%)に次いで勝率が高い鳥栖戦(64.1%)だが、一方的な対戦成績の割にスコアは競ることが多い。ドローも含めれば終盤まで勝敗が決まらない展開がほとんど。ここ18試合の対戦で複数得点差のスコアで終わったのは2回だけ。いずれも川崎が鳥栖を2-0で下している。3点差がついたのはそれ以前にさかのぼらなければならない。
Head-to-Head③
【川崎ホームでの対戦成績】
・川崎ホームでは18戦して、川崎の13勝。
・しかし、直近7試合の川崎ホームでは川崎は3勝しか挙げていない。
ここまで川崎優位のデータが多かったが、彼らの不安はホームゲームでの成績。通算で見れば比較的好調ではあるものの、直近の試合に絞れば相性がいいとは言い切れないところ。中でも悩ましいのは、ほかの試合でも最近湿りがちな得点力。直近3試合の等々力での鳥栖戦でわずか2得点というのは不安になる数字だ。
Head-to-Head④
【看板ストライカー】
・現所属選手でこのカードでの最多得点を記録しているのは小林悠と豊田陽平(5得点)
このカードの歴代最多得点者はジュニーニョ(9得点)だが、ついで多いのがこの2人。豊田は近年出場時間を減らしている印象だが、鹿島戦で最終盤に殊勲の決勝弾を挙げるなど、クラッチシューターぶりは相変わらず。川崎戦は直近5試合で得点から遠ざかっているものの、我慢の展開から一発を狙うのは得意なスタイル。等々力の観客を黙らせようと目論んでいるだろう。
対する小林にはかかっている記録がある。史上14人目のJ1通算100ゴールにリーチがかかっている。残り1得点で3桁の大台に乗ることになる。自身が得意な夏に向けて量産体制に入るべく99得点で足踏みは避けたいところ。
両ストライカーとも先発するかは不透明だが、注目しておきたい。
ちなみに前回対戦時のレビューはこちら。
【川崎フロンターレ】
選手情報
・奈良竜樹は長期離脱中。
Match Facts
川崎のMatch Facts①
【直近の成績】
・公式戦14試合連続無敗。リーグ戦も12試合連続無敗継続中。
・リーグ戦で複数失点を喫したのは直近18試合で1試合だけ。
ここ数回のプレビューで川崎側のMatch Factsのトップを飾るこの記録はまだ継続中。引き分けが多いし、クリーンシートも少ないやんけ!と言われてしまうと特に言い返せることはないぜ!
川崎のMatch Facts②
【ホームゲーム】
・リーグでのホームゲームは3試合連続引き分け中。
・ホームに限った勝ち点はリーグで9位
ファンのもやもやの大きな要因がホームゲームでの不振だろう。9試合で2勝6分1敗。ホームゲームで得た勝ち点は16位の鳥栖と全く同じだ。昨季ホームでの勝ち点をトップでフィニッシュしたことを考えると不満がたまるのは理解できる。トップハーフとのホームゲームは5戦未勝利というのも寂しさに追い打ちをかけているだろう。少し川崎ファンの気持ちを和らげるデータを出すならば、昨年も前半戦終了時はホームでの勝ち点は8位どまりだった。「今から本気だす!」になるだろうか?
川崎のMatch Facts③
【落とし穴、アリ】
・16位以下の相手とのホームのリーグ戦は6連勝中。
・日曜開催の試合は今季8戦で6勝1分1敗。
一見好印象な2つのデータ。上のデータはボトム3にいるチームに対しては強さを発揮している証拠。昨季のアウェイG大阪戦(今までのプレビューでのデータではカウントし損ねてた!ごめんなさい!)を除けば川崎は降格圏相手に軒並み勝利を記録している。しかし、直近の降格圏チームのうち等々力で勝ち点を奪ったのは、今回の相手の鳥栖である。
下のデータにも落とし穴がある。一見好調な日曜開催だが、ホームゲームはわずかに一度。今季唯一の負けになっているG大阪戦である。
川崎のMatch Facts④
【弱点を補う若武者2人】
・脇坂泰斗は今季先発出場した5試合で全勝。
→シドニー戦とかもあるけど。
→交代出場も含めた10試合出場で無敗。
・田中碧が先発出場したリーグ戦は直近6試合で5勝。
ファンからスタメンを待望されていた脇坂。磐田戦でも得点を決めて存在感を発揮。5試合と先発はまだ少ないことや、対戦相手のGL敗退が決まっていたシドニー戦などなんとも言えない部分はあるが、先発で全勝しているのだからもっと見たいという声が高まるのは自然なこと。2トップとのシステム的な取捨選択だけでなく、中村憲剛が帰還したトップ下争いは熾烈になるが、定位置を確保できるだろうか。
勝利への貢献でいえば田中も負けていない。先発した試合での平均勝ち点は3分の1以上出場した選手の中では最高の数字(2.09)である。
共に今季苦しんでいる中盤の得点力の底上げに期待が高まる選手。今季MF登録選手の中で唯一の複数得点を記録している脇坂は、前回の鳥栖戦ではまだリーグデビュー前だった。たくましくなった若武者が躍動する後半戦になるだろうか。
【サガン鳥栖】
選手情報
・腰を負傷した松岡大起は欠場の見込み。
・石川啓人は長期離脱中。
Match Facts
鳥栖のMatch Facts①
【出入りが多い】
・公式戦5試合連続失点中。
・しかし、直近9試合で無得点は2回だけ。
前半戦の川崎との対戦時は大貧打にあえいでいた鳥栖。13試合で4得点しか挙げられなかったカレーラス時代と比べて、キム・ミョンヒ監督就任後の11試合では13得点。カレーラス時代より得点は約3倍に増えたといっていいだろう。ただ、失点は得点ほどには改善傾向にはない。目下5試合連続失点中だ。
鳥栖のMatch Facts②
【文字通り、アウェイは苦手】
・今季13回の公式戦のアウェイゲームで1勝のみ。
・今季2万人越えの試合は5回経験し、すべて勝てていない。
アウェイゲームの成績は1勝2分10敗と今季の足を引っ張る要因に。特に苦手なのは大観衆が押し寄せる文字通りの「アウェイ」。2万人越えのゲームはすべて敵地での対戦だが1分4敗。得点は5試合でわずかに1点だけ。川崎のファンは等々力で文字通りの「アウェイ」を作り出すことができるだろうか。
ちなみに川崎ホームの鳥栖戦で観客が2万人を超えたのは過去2回だけ。いずれもドローで終わっている。
鳥栖のMatch Facts③
【得失点の傾向】
・今季の失点のうち、69%が後半に喫したもの。
・得点の半分はクロスから
前半戦対戦時にも紹介したが、後半の失点が非常に多いチーム。32失点中22失点は後半のもの。特に多いのは75分以降の失点で全体の38%である12失点がこの15分間に集約されている。川崎がこのデータを笑えないのは、75分以降の失点率が42%と鳥栖を上回っているからだ。
それ以上に特徴的だったのは得点パターン。クロスが全体に占める割合が50%とリーグで最多。クロスでの得点が多いイメージのある川崎(50%)を上回っている。
鳥栖のMatch Facts④
【中盤コンビ】
・福田晃斗が欠場したリーグ戦は6試合すべて敗れている。
・原川力が今季ゴールを決めたリーグ戦は3戦全勝。
前回対戦にいなかった存在として川崎の部分では脇坂を紹介したが、鳥栖も前回対戦ではこの男がいなかったのを忘れてはいけない。福田晃斗はスタメン出場時の平均勝ち点はチーム1位。1.82という平均勝ち点が、先発を外れると0.18まで下がるのはさすがに無視できないだろう。負傷に泣いた前回のリベンジを等々力で果たすか。
もう1人、得点を挙げると勝ちに結びつくラッキーボーイ的な存在なのは元川崎の原川。特に前節もゴールを決めたセットプレーでの精度の高いプレースキックは要警戒。PA付近でのファウルは川崎としては避けていきたいところだろう。
予想スタメン
展望
■優先度が明確な鳥栖
並び自体はカレーラス時代と変わらない4-4-2を用いている鳥栖。ボールを持っているときの最終ラインの動き方はシンプル。CBが大きく開き、SBが高い位置を取る。RSBの小林はボールが逆サイドにある時は絞る動きを見せるが、右にボールがある時はシンプルに開くタスクを行うことが多い。そこからCHが段差をつけるようにボールを引き出すという形。特徴を見出しにくい形だが、強いて言えばピッチを広く使ってプレスを回避するやり方から、ショートカウンターを避けたい意志を感じるところだろうか。ロストの危険を感じたら躊躇なく前線に蹴る姿勢は見せており、リスクの高いつなぎは極力避けてくる。
そこから先のキーマンになるのはクエンカと金崎。この2人が縦横無尽に動きながらボールを受けてそこからチャンスクリエイトを狙う。特にクエンカは行動範囲が広い。逆サイドまで出張していくこともしばしばみられた。ポジションを大きく変えてもキープ力が高く、ロストの危険は少ないという判断だろうか。彼には特に大きな自由を与えられているように見えた。
彼らアタッカーが自由に動けるのはそれを支える味方がいてこそ。Match Factsでも取り上げた福田は彼らを補佐する潤滑油として、ピッチのあらゆる局面に顔を出す。トーレスの公式戦初ゴールとリーグ戦初ゴールをともにアシストしたMFはアタッカーが動いて空けたスペースを活用する。FWが降りてくればPA内にも飛び出す。まさしく鳥栖の攻撃陣の威力を最大化する選手である。
気になるのはサンスポに書いてあった以下のデータ。
・鳥栖はクロス数(344本)と、オープンプレーからのクロス数(251本)が今季リーグ最多。しかし、川崎はクロスからの失点が今季リーグ最少タイ(1点:C大阪と並び)。
クロスからの得点が多いのは偶然ではなく、試行回数が多いのも関係していそう。そのためにクエンカと福田を中心にポジションチェンジを繰り返し、相手の基準点を乱してくる。ジェジエウ、谷口を中心にクロス守備には強い川崎だが、前節のレビューにも書いたようにポジションチェンジによる配置の変化には弱い。
トーレスと豊田、先発がどちらかはわからないが、ゴールへの最短ルートとなる彼らへのクロスの供給源を川崎が断てるかどうかが、鳥栖の攻撃を防ぐポイントになりそう。
そのためにも川崎はロングボールを封殺したい。セカンドボールを拾うための中盤でのデュエルも大事だ。田中碧にこの局面は期待がかかる。
■川崎は「潤滑油」を用いるのか?
鳥栖の非保持はカレーラス時代に続いてかなりコンパクト。直前の相手だった清水は川崎と似た陣形の変化で最終ラインの枚数を調整していたが、FWはCBを無理追いすることなく、中盤にパスが通ることを妨害することが優先。FWの背後にいるCHのパスコースを消す意識が高かった。
後方は守備の優先順位がハッキリしているように見えた。特に気にしていたのはライン間を潰すこと。DF-MF間のスペースを狭くして前を向かせないことの優先度が高かった。危機察知能力の高いアンカーが本職である高橋秀人がCBで起用されているのも、先手を読んで危険の芽を摘む能力が高いからだろうか。
その分狙い目になりそうなのは、こちらもクロス対応。PA内での駆け引きの部分やパワープレーへの脆さは清水戦を見て垣間見えた弱点。パワーでPA内を制圧する作戦は川崎からすると有効そう。
ただし、その分サイドの守備は強力。片側封じ込めを画策してくる。特に右サイドはその傾向が強く選手が素早く囲い込んでくる。逆に右サイドの密集を脱出すれば、川崎にはチャンスが広がりそう。福田を中央から釣りだしてプレス回避に成功すれば、逆サイドのクエンカの絞りが甘い中央は原川一人で守ることになる。左サイドの守備は右に比べると甘さは目立つ。原と三丸のどちらが起用されるかはわからないが、SBの対人守備が大事な要素になりそうだ。
サイドからボールを脱出させるためには川崎に有効そうなのはトップ下に脇坂を起用することだろう。福田とはタイプは違うが、彼もまた川崎のサッカーのパス回しを支える「潤滑油」である。
いずれにせよ、この試合の川崎で重要なのは優先順位をはっきりさせることだろう。最終局面でCBをパワーで制圧することを優先するならば2トップ起用だし、サイドからのプレス回避をきっかけに攻撃を加速させて最終局面を陥れるためなら脇坂の起用が優先されるべき。従来の川崎のイメージは後者だが、今季の川崎のイメージに近いのは前者。「潤滑油」起用の有無は川崎のプレーの優先度を決定する大きな決断になることは間違いない。
少ない点差決着が多いカードであり、両チームとも最終盤の失点数が極端に多いとなると終盤で勝敗が大きく動くこともあり得そう。川崎の最近の課題でもある試合の締め方を問われる展開になる可能性も大いにありそうだ。
参考
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
SANSPO.COM(https://www.sanspo.com/)