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「花道を彩るのは両指揮官の打ち手」~2019.5.19 セリエA 第37節 ユベントス×アタランタ レビュー

スタメンはこちら。

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目次

【前半】
SBをどこで食い止めるか

 噛み合わなさそうなフォーメーションだが、実はばっちり噛み合うフォーメーション同士の対戦になった。

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 人が人を捕まえに行く形になりそうな噛み合わせ。ボール非保持側の悩みどころは相手のSB(WB)をどこまで捕まえに行くかと、降りてボールを受けに行く相手の前線をどこまで追いかけるか。実際にユベントスのSBを捕まえに行って逃がしてしまったアタランタは開始早々にピンチに陥る。珍しくロナウドが外してくれて事なきを得たけど。背後にスペースを空けたまま前に突撃は怖いけど。逆にユベントスは2分くらいにサンドロもボヌッチも突撃して「なんとか前で食い止めてやる」という止め方も見せた。

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 というわけでユベントスのボール保持はSBが落ち着けどころ。2分にさっそくカンセロを捕まえ損ねて大チャンスを迎えたことが関係あるのかはわからないが、比較的アタランタのWBは引いてブロック形成をすることが多かった。単にロナウド、クアドラード、ディバラに1対1で対応するのが嫌だっただけかもしれないけど。ユベントスのもう1つの前進手段はこちらも自由に動き回るディバラ。ゾーンで受け渡しながら守るアタランタだが、前を向かせるとなかなか止めるのに苦労。

【前半】-(2)
位置交換をどこで食い止めるか 

 アタランタのビルドアップの仕組みの詳細はとんとんさんのブログを参考にしてほしい。

【ハーフスペース起点のひし形】ガスペリーニ・アタランタの5-2-1-2攻撃戦術の分析2回にわたり紹介したガスペリーニ・アタランタの5-2-1-2守備戦術。今回は23節終了時点まででセリエA最多得点数を稼いでbirdseyefc.com
【魁か絶滅か】アタランタに学ぶ、DFに求められる攻撃参加とは?-戦術分析この記事は、同時投稿【ハーフスペース起点のひし形】ガスペリーニ・アタランタの5-2-1-2攻撃戦術の分析の後編として、アタbirdseyefc.com

 両サイドで菱形の形成と破壊を繰り返して前進する。菱形の形成はイリチッチにハーフスペースでボールを持たせることを重視しているよう。縦横無尽に動く要注意人物にユベントスはサンドロとマテュイディでマークを受け渡しながら対応。

 イリチッチがハーフスペースで前を向くからこそチャンスが生まれるシーンもあるし、彼が相手選手をピン止めしていることを利用した攻めの形も見られた。サンドロをイリチッチでピン止めしてるからこそ、ワイドのCBの前線への飛び出しが効いたシーンが10分。サンドロだけでなくボヌッチが前に出てきていることを受けてハテブールは飛び出しを仕掛けたが、そこを使わせないように遅らせられるユベントスはさすがだった。

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 アタランタはサパタを前線中央に残すことは決まり。イリチッチとアレハンドロ・ゴメスは動き回りながらボールを触りに行く。

 縦横無尽に動き回るディバラはゾーンごとに受け渡しながらうまく対応できるようになってきたアタランタ。個に自信があるのか、非保持ではもともと相手についていく志向が強かったユベントス。前半の中盤はお互い出足が鋭く、あらゆるゾーンでデュエル。局地的な個のバチバチしたやりあいが目立つようになってきた。

 そんな中で試合を動かしたのはセットプレー。ファーに抜けたボールをイリチッチが押し込む。CL出場権という明確な目標があるアタランタが、ホームでアッレグリの花道を飾りたいユベントス相手に先手を取る。

 ユベントスは徐々に横に大きな展開からのアレックス・サンドロの突撃でアタランタのワイドのCBを釣りだしたスペースを狙う。WGで相手のWBをピン止めしているのがポイントで、狙いはDFラインのハーフスペースの裏である。逆サイドもピン止めしてスライドも防止しているのがニクい。数回実施すると相手も手を打ってくるし、上がる役をボヌッチに入れ替えるっていう変化形を持ち出したりするのはとてもセリエAっぽいなと感じた。

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 ユベントスの定点攻撃に対して、アタランタも2トップ+トップ下のカウンターで応戦。得点を機にやや流れは変わったが、一進一退のつばぜり合いという様相は変わらず。試合はアタランタリードでハーフタイムに。

【後半】
リスクチャレンジに成功したアッレグリ

 ユベントスはいつ退場するかわからなかったアレックス・サンドロに代えてベルナルデスキ。クアドラードが右サイドバックに入り、カンセロが左サイドバックに移動。アタランタの5-2-1-2を前にユベントスのサイドバックは空きやすいところというのは前半から同じ。内にカットインしがちのクアドラードと普段右が主戦場のカンセロが左に入ったことで、絞りながら攻め込むSBに対してアタランタに対応する必要があった。

 逆にリードしているアタランタは安全運転志向。サパタへのロングボールが前半に比べると増えてきた。

 60分にはバルザーリが下がる。これでユベントスのラストゲーム?セレモニー感あふれるシーンなのだが、代わりに入ったマンジュキッチ対策に速攻でWBの高さを増す交代を施すガスペリーニ。ほんわかムードのアリアンツ・スタジアムの中で「俺たちにとってこれはセレモニーじゃないからね!!」って感じさせる交代だった。

 とはいえサパタへのロングボールが増えているタイミングで、ユベントスもバルザーリ→マンジュキッチの交代を行い、ジャンを最終ラインに下げるのは結構リスキーな手を打ってきたなと。サイドバックも攻撃色強いし。とはいえリトリートによって引いて構える選択の頻度が増えたアタランタをこじ開けるため!ということだろう。相手が撤退守備の時に浮くサイドバックに、クアドラードとカンセロというボールを持ってアクセントをつけられる選手を置くのも理にかなっている感じ。

 70分にはアレハンドロ・ゴメス→パシャリッチ。たまにイタリアを見ると、ミランを通り過ぎた選手に遭遇する機会が多い気がする。カウンターでも仕事をしていたゴメスが下がって、いよいよサンドバックになってしまうアタランタ。決壊したのは80分。マンジュキッチを投入して放り込み勝負に挑んだアッレグリの賭けは、一定の実を結んだ。クロスに合わせる技ありのシュートで同点に追いつく。

 コンペティション的な側面で言うと勝ち点が欲しいのはアタランタの方。しかし、攻撃の要であるアレハンドロ・ゴメスとイリチッチはもう下がってしまっている。アッレグリとバルザーリを送り出すための勝利が欲しいユベントスもやる気は十分。83分のアタランタのCKを跳ね返したカウンターでジャンが駆け上がっていることからも、得点を取りたい姿勢は読み取れるだろう。攻撃に出るリソースがピッチの上にたくさんあるのもユベントスの方だ。最後の交代であるマテュイディ→モイゼ・ケーンもより攻撃に全振りした交代。やっと見れたぜ、モイゼ・ケーン。数分だけど。

 とはいえ、ここから後の時間帯で生まれたチャンスは限られたもの。一度のカウンターで下手を打つと、結構尾を引く感じ。ユベントスの攻撃の灯もベルナルデスキの退場で終了。試合は1-1のドローで終了した。

まとめ

 久しぶりにしっかりとセリエAの試合を見たが、率直に面白かった。指揮官の手を打つ早さもそうだし、ピッチ上の選手も相手の打ってくる手に対して「対応→修正」のサイクルで調整しているように見えた。もう少し来季はたくさん見てみたいなぁと。

 アタランタは本文中でも拝借したとんとんさんをはじめ、多くの人が注目している理由がよく分かった。ボール保持におけるスペースを突いた走り込みのメカニズムもそうだし、マークを受け渡しながら相手のタレントを封じ込めた守備は好感度が高かった。来季もガスペリーニなのだろうか。どれくらい主力の入れ替えがあるのか、そもそもCL出場権はとれるのかなど不確定要素はあるものの、今後も楽しみなチームの1つであることは間違いない。

 アッレグリの退任が決まっているユベントスから、この先のどこまでを読み取ればいいのかはわからないが、おそらく新監督の初めての仕事は個性的なアタッカー陣のタスク整理からだろうか。CL請負人として獲得したロナウドとディバラの役割の調整。特殊技能者であるベルナルデスキ。エゴ抜群風の見た目からの献身的満点のマンジュキッチ。ちょークロアチアっぽい。2人分働けるマテュイディが中盤にいれば何とかなるとは思うけど、ここにラムジーはどう組み合わせるんだろう。とりあえず、ユベントスが監督を決めないといろんな噂が収拾つかなくて困る人は多そう。さてどうなるんだろう。

 セリエA、初めて書いてみました。普段見ないチームはやっぱり難しいね。来季はもう少しいろいろなチームにチャレンジ出来たらいいですね。

 結びになりますが、ジャンルカ・ロッキ様、ELファイナルではなにとぞよろしくお願い申し上げます。

試合結果
セリエA 第37節
ユベントス 1-1 アタランタ
【得点者】
JUV : 80′ マンジュキッチ
ATA : 33′ イリチッチ
主審: ジャンルカ・ロッキ

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