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「バカちん!!!」~2019.4.21 プレミアリーグ 第35節 アーセナル×クリスタルパレス レビュー

前節のレビューはこちら。

前回のクリスタルパレス戦のレビューはこちら。

スタメンはこちら。

目次

【前半】
オーソドックスな流れと異常なセットプレー

 4-4-2対3-4-1-2の試合として、非常にオーソドックスな立ち上がりだったといえる。4-4-2の中央圧縮でこの試合に臨んできたクリスタルパレスに対して、アーセナルは3バックで前進。最終ラインの3枚で2トップに対して数的優位を得ているアーセナル。3バックのワイドのCBが2トップの脇から前進、2列目の選手が食いついたところで空いた方にボールをリリース。この試合ではマッカーサーが出てくることが多かったため、2トップ脇から侵入した選手のボールの出しどころはコラシナツに。ワイドでフリーで受けたコラシナツから流動的な動きを見せる前線の選手にチャンスを供給する形がよく見られた。

 噛み合わないマッチアップの対決となれば、もちろんクリスタルパレスにもボール保持において落ち着けるところがある。盤面上に置いた時に浮くのはクリスタルパレスのサイドバック。そして実際にも浮いていた。ボールの運び方だけ少し違っていて、素直にボールをサイドバックにつけるのではなく、後方からCFにハイボールを当てて、セカンドボールをCHで拾ってサイドで落ち着かせる形が多かった。ワトフォード戦でも結果が出たここ数試合のアーセナルの前線のプレスを警戒して、成功率は下がっても危険を回避する方向でボールを進めたのかもしれない。アーセナルの前線のプレスに関しては、やわやわさんがまとめてくださっているので、以下の素敵な記事を見るとよいと思います。

やわやわゔぇんげーるのサッカーブログ【エメリ🍎アーセナル 3-4-1-2 プレス メモ】アーセナルを中心にサッカーの事を自由気ままに書いていきますアーセナルwengerball20.blogspot.com

 サイドの引いた位置で空いているということで、SBやSHはもちろん、ザハも当然そのスペースは使ったり。システム上のサイドでの優位を使ってボールを落ち着かせていた。

 かみ合わせを考えてもお互いのシステムの有利な部分を突きながら一進一退の攻防を続けていたアーセナルとクリスタルパレス。そんな普通の光景で進んでいった中で異常だったのがアーセナルのセットプレーの守備だ。4分のFKでは大外に流れるケリーに全く対応ができず、12分のCKではダンがフリー。確かに準備はしていた感じのあるパレスだが、そこまで特殊なことをやっている感じではなかったので、あそこまでフリーになるのは驚きである。おそらく前半にアーセナルが危険な位置で相手に与えたセットプレーは3回。最後の3回目でアーセナルは先制点を与えることになる。誰のミスかわかりにくいそれ以前の2つのシーンに比べて、失点シーンは責任の所在が明らか。大外で相手に釣られて動き出すタイミングを誤ってしまったジェンキンソンがエラーの要因。オフサイドにかけられなかった後のムスタフィの淡白なプレーも印象が悪い。しかしながら、大外で選手をある程度視野に入れられる位置にいたジェンキンソンのプレーの方が個人的には重罪。FKのきっかけになるファウルを与えたマヴロパノスも軽率で、サイドに流れたベンテケを引っ張ってカードもらってまで止めるべきシーンでもない。

 拙いDF陣と杜撰なセットプレーのツケを払おうと奮闘したのが攻撃陣。とりわけ時折見せるエジルの鋭い縦パスとラカゼットの体の動かし方はそれだけで可能性感じた。右サイドが死んでいて、やもすればコラシナツ一本鎗になりかねない攻撃に変化をつけることができたのはこの2人のおかげだろう。とはいえ、得点にまでは至らず。ワン=ビサカにハンドっぽいプレーはあったけど、まぁそれはとってもらえなくて残念でござった。前半の最後はカウンター対応でまたもバタバタなアーセナル守備陣にスポットが当たることに。ザハに突破されて止められないぜ!とかなら仕方ないんだけど、クヤテとかベンテケとかを止めるのに四苦八苦しているのはつらい!ってかムスタフィこれはダメだろ!

 前半のうちに追いつけなかったアーセナル。というか突き放されなくてよかったな!

【後半】
それぞれのバカちん

 リーグ戦ここまで実に24回。ハーフタイムでの交代でリーグ最多を誇るエメリが指をくわえてみているわけがない。というわけで前節に続き不安定な出来に終始したマヴロパノスと右サイドを活性化できなかった上に、失点の要因になってしまったジェンキンソンが交代。ジェンキンソンがアーセナルのユニフォームを着てプレーする機会はまだ訪れるだろうか。もう27かよ。アラサーなんだなジェンキンソン。。

 イウォビとナイルズを投入した4-2-3-1っぽくなったアーセナル。

 近頃のアーセナルでいえば、イウォビの投入は左サイドの幅取りの号砲である。そんなイウォビがサイドに引っ張ったおかげで生まれた中央のスペースを活用したのは前半にも紹介した「ゴールデンコンビ」。ラカゼットの急角度なスルーパスを受けたエジルが美しいループを決めて追いつく。エジル、低い位置で受けた後にフィニッシュに絡めるくらい前線に上がれるようになったのはようやくコンディションが戻ってきたのかなとも。一時期メディアで取りざたされた「エメリorエジル」の議論もすっかり聞かれないようになった。

 イウォビとコラシナツコンビが攻め込む左サイドとナイルズ投入で復活の兆しを見せる右サイド。その流れを終わらせてしまったのはムスタフィのプレーだ。バカちん!バカちん以外言いようがない!解説もしません!試合観てない人がいたら動画探してみてください!たくさん転がってます!バカちん!

 後半開始からつかんだ良い流れを数行(当レビュー換算)で手放してしまったアーセナル。早くも3枚目の交代カードを切るエメリ。直前にセルフジャッジで勝手にプレーをやめてしまった(完全に1バカちんに値するプレー)エルネニーに代わって入るのはトレイラである。なんとなくこの日できるフルメンバーっぽくなってきたアーセナル。そんなアーセナルにもたらされたのはこの日3回目のセットプレーからの失点。ダンに競り負けるコシエルニーはともかく、ナイルズがベンテケに吹っ飛ばされるシーンを見なきゃいけないのはなぜなんだぜ。マッチアップ指示したやつ出てこい。この試合のアーセナルのセットプレーの監修をしたやつは3バカちんくらいである。ムスタフィはフラフラカバーに出て行ってマークを開けてしまうし、もうなにがなんだかわからんぜ!!

 オーバメヤンの華麗なゴールで1点差に追いついたアーセナル。出ていくか引くか、本来は難しい判断をしなければいけないはずのクリスタルパレス。それでも「中6日と中2日の差なら最後まで走れんじゃね?相手交代選手使うの速かったし」って感じでガンガン前からプレスをかけてくるクリスタルパレス。パレスにとって非常にありがたいことにアーセナルは簡単にファウルで引っかけて流れを切るので、ビハインドなのに攻めに出られないアーセナル。
 それでも最終盤にはエジル+ナイルズ+FW1枚+CH1枚というオーバーロード気味での右サイドの攻略を中心にシュートシーンまでは持ち込むシーンは作るものの、同点は奪えず万事休す。クリスタルパレスに逃げ切られてしまった。

まとめ

 アーセナル戦を2戦とも負けなしでしのいだのは79-80シーズン以来のクリスタルパレス。最終ラインに怪我人が多く、非保持においてはやや軽い場面も見られたものの、セットプレーの強みを生かし逃げ切った。ホームでの勝ち点はフルハムより2つ少なく順位でいえば19位に沈むのに、アウェイでの勝ち点はアーセナルより2つ多く、リーグ6位という外弁慶属性は謎極まりない。なんでだろう。いずれにせよ、2019年だけの順位でいえばチェルシーやトッテナムより上の6位とチームは終盤に向けて勢いに乗っている。この勝利で残留を決めたイーグルスの次節の対戦相手は同じく飛ぶ鳥を落とす勢いのエバートン。苦手な「ホーム」での一戦でも波に乗れるだろうか。

 イタリアに魂を置いてきてしまったような戦いをしてしまったアーセナル。そもそもイタリアに行ってないので、魂をおいてこれるはずがないジェンキンソンとマヴロパノスの2人をハーフタイムに下げてなお、この日のアーセナルの後方は踏ん張りがきかず。攻撃陣の美しいゴールも、のどから手が出るほど欲しかった勝ち点3がなければ、彩りとして足りるものではないだろう。軽率なファウル、無駄なイエローカード、かからないオフサイドトラップ。不用意の詰め合わせかよといいたくなる出来である。選手たちだけでなく、このイレブンをピッチに送り出したエメリとセットプレーの守備をデザインをした人物(ボールド?)も含めて、チームで反省するべきことだらけの試合になってしまった。
 ベンチ組が物足りないパフォーマンスをする中、ギリギリのコシエルニーには疲労が見える。ゲンドゥージもややコンディションが低下気味。特に毎試合の後半の守備対応は課題。それもそのはずで、彼はアーセナル加入以前ではトップリーグ8試合しか出場経験がないのだ。1シーズン目のプレミアですでに29試合を消化しているのだから、終盤にコンディションが落ちるのは当然だ。

 主力に疲れが見える中でのターンオーバーはそれ自体を否定するのは無理がある。エメリの今季ここまでの成績を考えれば、この選手層ではよくやっているというファンが多いのは間違いない。もちろん私もその一人だ。しかしながら、ターンオーバーしたチームがこの完成度というのはエメリにも責任の一端はある。ジェンキンソン、エルネニー、マヴロパノスの3人はここまでのリーグ戦の起用時間の合計が410分ほど。スタメン抜擢はギャンブルで、彼らをこのタイミングで起用する想定を前半戦でしてなかったのは明らかだ。別にムスタフィとかを庇いたいわけじゃないけどね。この試合の勝敗を決めるようなプレーを彼がしたのは事実だし、この試合のワーストプレイヤーを選べと言われたら、私も問答無用で彼を選ぶ。そしてそれが初めてのことではないということもわかる。バカちん!!でも、彼抜きでも非常に完成度が低かったメンバーだったのはまた事実。彼を売ることで問題が解決するならそうすればいいけど、私はそういう問題ではないと思っているので。彼個人の問題だけに帰結できるほど他の10人も良くなかった。私はそんなに楽観的な人間ではない。

    とにもかくにも続くウルブズ戦も敗れるようだとリーグ戦4位に向けたマネジメントは失敗といわざるを得ない。難所で勝ち点を奪う必要性が高まったアーセナル。次も中2日でモリニューに乗り込む。

試合結果
プレミアリーグ 第35節
アーセナル 2-3 クリスタル・パレス
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS: 47′ エジル, 77′ オーバメヤン
CRY: 17′ ベンテケ, 61′ ザハ, 69′ マッカーサー
審判: ジョナサン・モス

おまけ

 transfermarketをいじっていたらこんなものが出てきてしまった。若いころのジョナサン・モス。若い。昔は学校の先生でミルナーがキャプテンを務めるチームでモスが指導者やっていたのは有名な話。そのミルナーを今年1月のリバプール×クリスタルパレスでモスが退場させたのも有名な話。実はプレミアデビューしてからアーセナルの担当試合は11連勝とかしてた時もあったんだってさ!

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