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「ここが現在地」~2019.4.5 J1 第6節 川崎フロンターレ×セレッソ大阪 レビュー

スタメンはこちら。

目次

【前半】
出口はどこだ

 特にボールを持ちたいチームにとって、自分たちがどういう状況を作りたいのかを共有することって大事だなと。それをどう実現してチャンスにつなげるか。そういう意味でゲームがどちらの手元にあるのか説明するのは難しい立ち上がりだった。

 川崎のボール保持は基本的には松本戦と似た形。CB2枚にCH1枚は降りて最終ラインに加わる。相手の3トップに対して同数を確保する形である。C大阪はハーフラインより前は3トップがプレス。ハーフラインより後ろはシャドーが降りて5-4-1の形。

 あんまり図はうまくないんで許して下さい。
イメージとしてはC大阪の守備は
ハイプレス:内外分断
ローライン:面を2つ
っていう使い分けだった。

 前からのプレスをするときのC大阪での問題点はプレビューで指摘した通り、3トップ-CH間が空くこと。3トップとCH間に位置する川崎の選手にボールが入ると、デサバトやソウザはプレッシャーに行くものの距離が遠く、フリーでボールが持てたり、ターンする余裕を持っていた。ハイプレス時はC大阪のCHは前向きのベクトルで守っていることが多かった。仮に捕まえきれなくてもベクトルは前!みたいな。したがって今度はMF-DF間の距離が空くことになる。
冒頭の「ビルドアップの出口をどこに設定するか」という話に戻る。川崎のこの試合でのビルドアップの出口は、「ソウザとデサバトの脇で前を向くこと」ではないかと思った。このスペースを中村や阿部がメインで使っていくことで前を向いて進むことができるシーンが多かった川崎。

 ビルドアップの出口の位置でボールをもらうのは両サイドで可能。左は阿部と中村がメイン。右も中村になることが多かった。

 川崎としてC大阪のプレス時に避けたいのは内外の分断。プレスが緩い中央から被カウンターされる場面は少なかったが、川崎の右サイドは比較的その罠にはまってしまった感がある。1つは右サイドにパスコースを作る動きがやや乏しかったこと、もう1つは鈴木がビルドアップの出口にパスを出すタイミングを逸してたこと。3分や18分のシーンはタッチ数を減らして、内側にパスをつけるチャンスがあったはず。13分に知念に通ったパスの頻度が上がれば、右サイドもスムーズにボールを運べるはず。知念には結構パス通るんだけどね。逆にパスコースを作る動きがうまい選手が多い左サイドはスムーズにボールを動かせていた。

 それでも川崎の攻撃の質が上向かなかったのは、ボールを持ちあがった後の最終局面の精度がイマイチだったから。理由はいくつかあって、1つはサイドでの数的同数が攻略できないこと。特に相互理解がまだぎこちない右サイドはそれが顕著だった。もう1つはビルドアップの出口で前を向いた選手のプレーの質がイマイチだったから。そうした時期にチームを救ってきた中村憲剛のライン間でのプレーの質は試合を通して低く、違いを見せることができなかった。

【前半】-(2)
正反対の課題

 C大阪のボール保持時の課題は川崎とは逆。彼らは後ろからのボールをつなぐ局面で試行錯誤が続いている印象を受けた。川崎は知念、中村、阿部により、C大阪の3CBに積極的なプレスを敢行。C大阪のWBにも川崎の選手は捕まえに行き「C大阪のターン」を作らせないように意識していた。仙台戦を見る限り、3CBが大きく幅を取って、ビルドアップするのがC大阪の特徴なのだが、15分くらいまでは広がった配置を取るのもままならなかった。C大阪のWBには川崎の選手が捕まえに言っていたので、C大阪が落ち着いてボールを持つのはCHにボールが入ったとき。スペースが空いた状態でソウザがボールを持ち上れる時だ。

 しかしボールを持ち運ぶ頻度は川崎より多くなかった。相手を縦に横に揺さぶるためのミドルパスの精度がイマイチで、川崎の選手のプレスを受けながらプレーする選手が多く、アバウトな都倉へのボールでフィフティーなチャレンジになる結末になることが多かった。

 それでも持ち運んでからの敵陣ブロック攻略の質は川崎より高かった。特にワイドのCBの攻撃参加が効果的で、上がってくるCBに対して川崎はどうしたらいいのか対応に迷う場面は見られた。特にC大阪の右サイド。アタッカー経験もあるサイドプレイヤーの片山をCBで起用するのは攻め上がりのタイミングが重要だからだろう。彼が上がるタイミングではC大阪は絶対にミスをしてはいけない。川崎でいえば田坂が右のCBに入っていた時代と似たような役割ではないかなと。

【前半】-(3)
判断の四重構造で先制

 頻度が多いが精度が伴わない川崎と、頻度は少ないが質が高いC大阪。それまでの試合の流れを大きく変える先制点を得たのはC大阪だ。
プレビューでこんな図を使ってC大阪の狙いを予想した。

パターン① 鈴木が出る→丸橋が裏抜けできるスペースができる
パターン② 守田がスライド→ソウザが上がるスペースができる
パターン③ 奈良が出る→都倉が裏抜けできるスペースができる

 得点シーンもまさにこんな感じだった。

判断① 【田中と家長】上がってくるソウザどうする?
判断② 【鈴木】丸橋相手にどこを切る?
判断③ 【奈良】都倉の裏抜けor柿谷へのチェックどうする?
判断④ 【守田】清武を見るor柿谷へのチェックどうする?

 四重に判断を強いてきてる感じ。一番難しい判断を迫られたのは鈴木だろう。ホルダーとの距離もあったし。結果的には守田が空けたスペースを埋める形で柿谷へのパスを阻害するべきかもしれないが、大外から走りこんでくる木本が視野に入る中でその決断は難しい。③と④の判断の結果、いずれも柿谷へのチェックは厳しくできず。試合後の奈良のコメントを見ると、あそこは守田に行ってほしかったんだろうなっていう感じが出てる。直後のデサバトの持ち上がりを自分でつぶしに行っていたのが印象的だった。
ただ、①以外の判断はいずれもホルダーとの距離が空いている状況。誰が悪いというよりはC大阪の配置に対して川崎が少しずつ後手に回った結果というのが妥当。ゴールシーンに関して言えば、知念が治療で一時的にピッチの外に出ていたことで、ソウザが川崎が1列目のプレスをかわして川崎のCHと対峙できたという部分はあるけど、そこから先で後手を踏んでいるのは否めなかった。

 メンタル!で片づけていいのかわからないけど、この先制点後にC大阪のバックスのパスの精度が上がったことで、試合はC大阪ペースに傾く。川崎の前線はプレッシャーをかけるものの、プレスは空転。得点シーンもそうだが、川崎のCHに負荷がかかるのは前線のプレスの代償なので、ラインを突破されるとCHが判断を強いられることになる。C大阪は得点後はより割り切ったラインの低さでブロックを組んでいたし、川崎がサイドでのんびりボールを持っているとソウザがすっ飛んできて攻撃終了なんて場面もあった。
ちなみにC大阪はCK時にソンリョン付近に人をまとわりつかせて行動範囲を制限して、ゴールマウスらへんにキックを打ち込むスタイル。これ、去年もやってたけどうち相手にだけやってるのかな?ほかの相手でもやってるの?

【後半】
松田→山下の交代の意図

 引いてブロックを敷く戦法と前に出て自分たちのターンの時間を増やす戦法を使い分けることで前半終盤の主導権を握ったC大阪。ロティーナの嗜好するサッカーを考えると、本当は後者で試合をコントロールしたい。しかしながら、ボール保持に特徴がある川崎相手だと前者の時間が出てくるのは仕方ないというのが本音だろう。

 連携でブロック攻略するのが難しいという現状の川崎にとっては相手が前からプレスに来るというのは、相手から攻略のチャンスをもらっているようなもの。プレスさえ回避できれば、後方のスペースを攻略できるからだ。同点弾につながったのは、そのプレス回避から。パス交換から守田のサイドチェンジでチーム全体で仕掛けたプレスを攻略。見事だったのは、家長のクロスを中で待ち構えることができた田中碧だ。知念の孤立を防ぎつつ、何とかボールをキープすることで同点ゴールをお膳立て。これで知念はC大阪戦3試合連続で得点に絡んだことになる。

 ロティーナは「カードをもらっていたから」という理由で松田→山下への交代を敢行。純粋なCBである山下の投入は、川崎の左サイドの攻撃ケアという意味合いも強いだろう。とにかく勝ち越し点を狙う川崎に対して、C大阪は同点弾でやや目標設定が難しくなった印象を受けた。特にブロックを組んでいるときの2列目の4人の対応に差が出てきた。同点後に柿谷は前に残る場面が見られるようになった。その結果ソウザがスライドしても、前半は取り切られていたシーンにおいて、川崎はプレスを回避。スライドした分逆サイドを使えて、片山が出ていくというシーンも見られるように。

 片山が出ていけば、最終ラインの枚数は5枚から4枚になり攻略はやや容易になる。柿谷が前に残ったり片山が最終ラインから出ていくことが、C大阪にとって絶対ダメかといわれると難しいところ。柿谷が前に残るのは監督の指示だったかもしれないし、片山や丸橋が前に出ていって最終ラインが4枚になっても、強度を維持するための山下投入かもしれないので。ただ、柿谷の前残りが川崎のボール保持の手助けになったのは事実。CHの2人も前方に単発でプレスをかける頻度が増えたため、C大阪の2列目がフラットさを保つシーンは徐々に減っていく。そのため面が2つ並んでいた前半のブロック強度は落ちてしまっていた。川崎のバックスの縦パスの精度の高さもCHが人に食いつかざるを得ない一因だった。特にこの試合の奈良の縦パス精度は相手の脅威になっていた。

 保持時に幅を使いながら相手を揺さぶる余裕ができたからか、非保持の局面でも試合を徐々にコントロールする川崎。CBに積極的にプレスをかけた前半とは違い、CHやWBの位置までプレスを下げて迎え撃つ場面も出てきた。そうなるとC大阪も人をかけないと前進できない場面も出てくる。そうなると、ボールロストで川崎のカウンターという前半とは逆のシーンも見られるようになった。中盤のプレスのリスク管理は奥埜を使って調整しようとしていたのかな。

 交代選手で驚いたのは山下。上で触れたように後半のC大阪はWBが前に出ていってシャドーの守備の負担を減らす場面が目についた。そのために最終ラインが4枚になっても強度を維持するための山下。だと思ったけど、普通にボール持っても球出しうまかったので、ここらへんはロティーナ効果が出ているなと感じた。

 小林の投入をきっかけにゲームは若干オープンな展開に。パワプロだったら多分尻上がりの特殊能力がつきそうな家長を中心に右サイドから攻め込むシーンが増えるけど得点は叶わず。あれだけ右から作れるなら、左に小林入れても良かったかもしれない。フリーで右からのクロスを受けられるけど小兵!って場面は結構あったので。最後は数分だけダミアン!そんな電柱みたいな使い方でいいのか!試合はそのまま1-1で終了。痛み分けになった。

まとめ

 ロティーナが就任してだいぶ風情が変わったように感じたC大阪。ロティーナの印象としてはとても探求者なのだなと。勝ち点を取るっていう部分と自分たちの形を作って勝つという部分が両方あって、この試合ではリードを得ても後者の部分が垣間見えたのは面白かった。そこはユンジョンファンにはない部分なのかなと。勝ってなお「こう勝ちたい!」が見えるっていうのは。ユンジョンファンだったらこの試合はC大阪が勝ってたかもしれないなぁと思う部分もあるけども、より遠くを見てC大阪がどうなるかを考えた時に、ロティーナだったらおもしろいと感じる部分は確かにある。山下を入れて強度担保、でも攻め上がりを自重させるわけではない!柿谷もピッチに残す!とかはパッと見て「ん?」って思ったけど、読み解いてみると「こうなのかな?」ってなるしね。会見ではあんまりしゃべってくれないので、真実は闇の中だけど!理想と勝ち点の2つの真理を追い求めながら、幸せってどこにあるんだ!っていう旅をC大阪はロティーナと始めるんだなと。そんなことを感じた試合だった。

 C大阪に感じたのが旅の始まりなら、この試合の川崎に感じたのはこのチームの現在地。このチームって今これができて、これができないんだなっていうのがとてもよく整理された試合だと思う。例えばCHだと、これくらいプレスは回避できて、攻撃参加はこれくらいでとか。右サイドならビルドアップでの危険なミスは減ったけど、高い位置で崩そうってなったときに家長の依存度は高いよね。でも鈴木はカウンター受けた時の対人はよかったよね。とか。時間帯とかボールの位置によって陣形が変わる相手だったけど、それに呼応するように攻略するエリアを調整しながらペースを引き寄せたっていうのは良かったと思う。
ただ鬼木さんが会見でいうように決定機というほどの決定機が少ないのは課題。それとは別に、もう1つ自分が気にしているのは、チームや個人としてできない部分をどうすり合わせるかっていう部分だと思う。今のチームは大島とかエウシーニョとか昨季いた部分を人の入れ替えで解決しようとしていて、それによってハマらない部分も垣間見えるので、そこはこれからどうしていくのだろうなとか。人の入れ替わり以外の部分でも、例えば奈良の素晴らしい縦パスもこの試合ではさえていたけど、個人的にはこの先気になる部分でもある。抽象的でちょっとわかりにくくてすみません。笑
過密日程が続くので、試合こなしながら解決するのはハード。それでも目標は「4冠」と開幕前に言っていたので、そろそろエンジンがあったまってきてほしいところだ。

試合結果
2019/4/5
J1 第6節
川崎フロンターレ 1-1 セレッソ大阪
【得点者】
川崎: 49’ 知念
C大阪: 22′ 柿谷
等々力陸上競技場
主審:西村雄一

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