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「エモい!!」~2019.3.10 プレミアリーグ 第30節 アーセナル×マンチェスター・ユナイテッド レビュー

プレビューはこちら。

前節のレビューのこちら。

スタメンはこちら。

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目次

【前半】
ブロックの外からは聞いてないよ

 エレーラ間に合わなかったぜ!というわけでフレッジが中盤に入ったユナイテッド。4-3-3キープでそのままエレーラとフレッジを入れ替えた形がベターだと思ったのだが、それができなかったのは前線の台所事情だろう。サンチェスが負傷、リンガードも間に合わず、負傷明けのマルシャルをベンチからスタートしなくてはいけない状況では、中盤を厚くした4-4-2の方がよい!と考えたのかもしれない。一応パリ戦の成功例もあるし。
 何はともあれいつものシステムが使えなかったユナイテッド。プレビューで「ユナイテッドが4-4-2で来るならば、アーセナルは優位に試合を進められそう」と述べたが、まさしく前半はその通りの展開になった。
 アーセナルの最終ラインのボール保持に対してユナイテッドは2トップで対抗が基本線。この日のアーセナルは3バックだったので数的優位。ルカクとラッシュフォードは積極的にプレスに行くというよりはパスコースを消しながら構える形の方が多かったが、数的優位のアーセナルのバックスが第2レイヤーに侵入するのはそんなに難しくなかった。横に移動させながらパスコースを作り、ジャカにボールを入れていく。第2レイヤーの受け手へのチェックもユナイテッドはそんなに厳しくはなかった。
    アーセナルに第2レイヤー侵入を許すと、状況はさらに悩ましくなるユナイテッド。ボールホルダーにユナイテッドのCHが1人プレッシャーに行けば、もう1人のCHの周辺はスペースができる。この日のアーセナルのトップ下はこのスペースでボールを受けるのが大の得意のエジルである。第3レイヤーで受けるもよし、エジルが低い位置で受ければ今季初のCHでの起用となったラムジーがつるべのように駆け上がっていくもよし。2トップが引いて受けるもよし。というわけで中央のコンビネーションはスムーズにできていた。
 

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 ならばサイドをふさぐべし!と言わんばかりにボグバが前に出て枚数を合わせる場面が増えてくるユナイテッド。この場合のアーセナルはWBのナイルズが安全地帯となる。単純にSBのショウがスライドすればよさそうだけど、序盤でそれができなかったのはアーセナルの2トップ(このサイドはラカゼット)が比較的サイドに開いたポジションをとることが多いからかなと。アーセナルはベジェリン離脱以降は左偏重で攻めることが多いんだけど、この日は右からの攻撃多かった気がする。左から攻めるとポグバが絞っていつもの3センターっぽくなるから、ユナイテッドやりやすかったのかな。逆の時はダロトやマティッチがそこまで絞る意識がなくて中盤はよりフラットで、アーセナルは攻略しやすく見えた。実際にラカゼットが単騎でユナイテッドの左サイドを切り裂く場面もあったし。

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 ユナイテッドとしては裏に抜けられるのは嫌だし、この日もパリ戦と同じくユナイテッドの最終ラインは安全第一。最後のところを守ることを優先していたし、アーセナルが2トップならなおさらだぜ!っていう感じ。自陣に押し込まれてからはMFも撤退して間も裏もやだからね!という守り方をしていた。そんなユナイテッドの目論見を壊したのが、グラニト・ジャカの左足である。ユナイテッドとしては「ブロックの外からぶっ壊されるとか聞いてないぜ」って感じのゴール。サウサンプトン戦に続いて、またしてもエリアの外から決められてしまったデヘア。超レアである。

 困ったユナイテッドは30分付近に布陣変更を実施。3-5-2にして中盤はミラー。WBにもショウが出て行きやすいような陣形に変更した。

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 ユナイテッドのボール保持は後方での数的優位がないことと、中盤に司令塔がいないことから裏やサイドへのロングボールが多かった。それ以外の手法としては噛み合わせ的に余りやすかったSBからの前進。5バックに変更してからは高い位置を取ったショウに合わせて、左サイドをラッシュフォードが駆け抜ける作戦。中央ではルカクが競り合いからのボールキープ。強い。中央ではルカク、左ではラッシュフォードが奮闘して前進する。相手陣まで押し込んだ後の最後の仕上げはサイドの連携での崩し。アーセナルの並びはサイドでのサポートに生きづらいので、SBがオーバーラップしてきたときは結構フリーでクロスを上げてチャンスメイクはできていた。中には2枚くらいは常にいたし。崩しの質が低かったわけでもないが、最後のところでアーセナルが体を張って防ぐ場面が多かった。44分の崩し、最高にきれいだった。ここでユナイテッドは追いつきたかったところだった。関係ないけど、ヤングは布陣変更後には3バックの右をパリ戦に続いて担当していてすごい未来になりましたねっていう気持ち。確かに今のバイリーより信頼されているのはよくわかるけども。

【後半】
こじ開けたラカゼット

 後半になってダイレクト志向が強まるアーセナル。左サイドに流れるラカゼットへのボールが数本。ユナイテッドがハイプレスで来ることを見越して、肩透かしのロングボールなのだろうか。前半はラカゼットが右にいることが多かったので、左に移動したということはアーセナル側の視点で見るとラカゼットとヤングのマッチアップをロングボールで仕掛けたかったのかもしれない。

 前半と異なりむしろユナイテッドがボールを保持して試合を進めていく。ユナイテッドの狙いが左サイドだったのは前半と同じ。中央のポグバやフレッジとのコンビネーションも織り交ぜながら2人のアーセナルのセンターハーフの脇から侵入していくイメージで。アーセナルは若干撤退守備は怪しく、前半に引き続きユナイテッドの決定機もあった。それでもアーセナルは3人のCBが粘りながらついていく。

  アーセナルはボール奪取からのロングカウンターで間延びしやすかったユナイテッドのDF-MF間にボールを入れて押し返す場面が増える。5バックになった相手だが、普段のCHより高い位置で攻撃的にふるまえるラムジーとブロックをごり押しで攻略していたラカゼットの存在は効いていた。そんなゴリ押しラカゼットの突破が活きたのが68分のこと。前半も連携がイマイチで突破を許していたユナイテッドの左側のサイドからのカットイン。その時と同じく、この場面でも初動の対応が遅れてラカゼットに加速を許してしまったのがまずかった。後追いになったフレッジの腕の印象が悪かったのだろう。PKを蹴ったのはオーバメヤン。ノースロンドンダービーでのPK失敗を払しょくする追加点だった。ちなみにこの試合でラカゼットがゴールを決めれば、リーグ戦ホームでの6連続ゴールでアンリに並ぶクラブ史上2人目の偉業だったのに、前節でPKのトラウマを払拭させるべく、オーバメヤンにPK譲るとか感無量ですよね…!マジエモい…!オバラカはガチ。

 ユナイテッドはダロト→マルシャルの交代で4-2-3-1に移行。さらに若手のグリーンウッドをマティッチに代えて投入し、ポグバを中盤に移動させて攻撃的な布陣に変更する。しかしながら、イウォビとデニス・スアレスの投入で5-4-1で重心を下げるアーセナルのブロック攻略には至らず。

 流れの中では触れられなかったが、ここ数試合でワンランク凄味が増したように感じるのはレノ。飛び出しやファインセーブもそうだが、ボールを持っているときの落ち着きからも自信が格段についたように見受けられる。粕谷さんというプレミア屈指の逆神様に「ビック6最弱守護神」というレッテルを張られてから絶好調のレノ。このまま好調を維持して終盤戦に突入してほしい。

まとめ

 個々のプレーはそこまで悪くなかったユナイテッド。ルカク(フィニッシュ以外)とラッシュフォードは攻撃をけん引していたし、フレッジも徐々にコンディションを上げていたように見えた。怪我人がいる中で個々の出来を見ると悪くはないはず。しかし、チームとしての守備の決まりごとがわかりにくく、特に前半はアーセナルに中央やサイドで入られたくないエリアに侵入されたのが痛恨。ポグバとマティッチはなんか窮屈そうだった。エリアの外からジャカに決められたのはともかく、ラカゼットやエジルなどに中央でパスをつながせたのは結構危険だった。4-3-3で慣れたメンバーが揃っている中での4-4-2なので選手間の距離感がややフィットしてないのは仕方ない。インターナショナルウィークで帰ってくる負傷者と共にスールシャールの次の一手に期待したい。

 6ポインターを制したアーセナル。ラムジーのCH起用は撤退守備時にはやや不安があったものの、前でも仕事ができる選手を置いたことで中央の流動性は高まった印象だった。収支はプラスといっていい。両サイドのWBも対人に奮闘し、CBはクロスを跳ね返し続けた。そして本文中でも触れたようにレノの存在感も高まってきている。何よりも勝利が必要なこの試合で結果を出したエメリは称賛されるべきだ。トップ6との対戦は3勝3分4敗で昨年の倍の勝ち点を稼いだことに。ホームのレンヌ戦も難しいミッションになるが、欧州の旅を続けるためになんとか突破を決めてほしいところだ。

 今でこそこんな落ち着き払ったようにレビューを書いているが、この試合に勝てたのは本当にうれしい。もしあなたがアーセナルというチームが少しでも好きならば、このレビューを読むよりも試合を見るほうがはるかに有益だし。心を動かされるはずだ。この試合を見れば、今よりももっとアーセナルが好きになるだろう。マッチレビューの結びにはふさわしくないかもしれないが、この試合は最高にエモかったぜ!!!

試合結果
プレミアリーグ 第30節
アーセナル 2-0 マンチェスター・ユナイテッド
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS: 12′ ジャカ, 69′(PK) オーバメヤン
審判: ジョナサン・モス

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