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「逃げちゃダメだ」~2025.2.22 プレミアリーグ 第26節 アーセナル×ウェストハム レビュー

プレビュー記事

目次

レビュー

奮闘するトロサール

 レスター戦ではなんとか勝利することができたアーセナル。だが、依然として前線の負傷者は帰って来ず。おそらくは次の代表ウィークまではこの陣容での手探りが続くことになるだろう。

 今節はレスター戦で救世主となったメリーノをCFに起用する形での勝負に出る。ウェストハムは5-3-2のコンパクトな守備から勝負を仕掛けていく。正直な感想を言えば今のアーセナルにとって最も怖いプランと言える。

 ウェストハムの守備はリトリートありき。アーセナルのバックラインには特にプレスをかけることはなく、CBは自由にボールを持つことを許される。

 アーセナルは3-1ベースの立ち位置。ティンバーと2人のCBを軸とした3バックとは対照的に、カラフィオーリは自在に位置を移動するというスタートであった。

 押し込んだ状態で奮闘が目立ったのは左サイドのトロサールであった。高い位置で勝負することに強みがあるカラフィオーリのサポートもありつつ、今年に入って磨くことができている縦への突破を駆使することで、相手のバックラインを揺さぶりながらクロスを入れることができていた。

 負けたということで忘れがちであるけども、サイドから細かく動かしていきながら5-3-2ブロックに穴を開けようという奮闘は個人的にはそこまで悪くなかったように思う。特にトロサールがいる左サイドは踏ん張りながら勝負することができていた。その一方で、右サイドはもう少し奥を取る動きがあっても良かったように思う。

 ウェストハムは押し込まれる展開が前提なので、失点を避けるという意味ではまずはアーセナルの即時奪回を回避しなければいけないというのが重要となってくる。この点でよく踏ん張ったなというのがまずは感想の1つ。直接前線に当てるのは収めるという点ではハードだが、少なくとも前線にボールを逃がすことはできていた。

 時間の経過とともにウェストハムは細かいパスの交換から相手のプレスを避けることができるように。とりわけ、アクセントになっていたのは右サイドのワン=ビサカ。オーバーラップで右サイドを一気に駆け上がる形から陣地回復に貢献していた。

この試合で得点に関与したから後出しっぽくはなるが、ワン=ビサカは最近は攻めの嗅覚が本当にいい。高い位置に出ていくタイミングとそこから得点に関与する動きが増えたことにより、対人強度が圧倒的だが、それ以外はイマイチのSBというところから脱却しつつあると言えるだろう。

失点シーンでフォーカスしたいプレー

 それ以外にも保持の局面に回るとボールを落ち着かせることができたのがこの試合のウェストハム。GKを時には絡める4バックに移行して、アーセナルの高い位置からのプレスを回避することができていた。

 逆に押し込むことができていたアーセナルではあるが、ファストブレイクという観点ではこの日のアーセナルは機会創出が十分ではなかった。左サイドを中心に不安定なハイプレスではウェストハムのプレス隊を捕まえることができず、少なくともいい形で攻撃に移行できるきっかけを掴むのが難しかった。

 その上でロングボールや裏抜け一発での前進も難しい。そういう意味では押し込んでからのブロック崩しの奮闘はできていたとは思うが、それ以外のところであるチャンス創出のところは不十分であったと言えるだろう。

 このまま均衡したスコアで踏ん張ることができればそれでいいのだけども、この試合のアーセナルはそこに失敗。ウーデゴールの中央に差し込んだパスのミスからウェストハムはカウンターを発動。アクセントになっているワン=ビサカのオーバーラップからインサイドに飛び込んだボーウェンが先制点を呼び込む。

 失点の要因としてどこをフィーチャーするかは人それぞれになりそうな場面ではあるが、個人的にはカラフィオーリの対応は少し気になった。決め手になったのは右サイドから1on1でワン=ビサカのクロスを上げさせたところ(インサイドの戻りも少し甘かったようには思うが)だった。

 ここもワン=ビサカ相手であればインサイドにクリティカルなクロスを上げさせる前に止めてくれよ!と思うのだけども、個人的に気になるのはその前。ワン=ビサカ相手に遅らせる方を選んだ判断の方である。

ここはまずはボールを捕まえて前に進む動きを止めるべきだったように思う。なんだかんだ事故が1つでも起きてしまえば失点につながるのがゴール前の怖さ。であれば、もう少し手前でワン=ビサカの足を止めて、前進には更なるパスが伴うような状況に追い込みたかったところだろう。

 いずれにしても失点してしまったアーセナル。前半のうちにこのビハインドを取り返すことはできず、前半をビハインドで折り返すこととなった。

初めからそこにいることの難しさ

 迎えた後半、アーセナルのやることは同じ。狭いスペースをこじ開けるトライをしながらボールを動かしていく。だが、即時奪回のフェーズでアーセナルはファウルを重ねてしまうなど焦りが可視化される状況。ウェストハムは前半以上にボールを落ち着かせることが容易な展開となった。

 アタッキングサードにおいてこじ開けるアクションは後半も難航。ただ、この行い自体は意味があるものだったように思う。なぜならば、それがなければクロスが有効打にならないからだ。

 この試合で分かったのは膠着した局面においてメリーノにボックス内で制空権を握るのを期待するのは非常に酷だということ。メリーノがヘディングで印象的な働きを見せているのはマークをはずせていたり、あるいは後方からボックス内に飛び込んだりなど、相手からフリーになれている時。

 逆に初めからボックスにいる状況においてはあまりそうした状況を作ることができない。レスター戦でできていたのは相手のDFの資質が助けになっていたからだろう。ジンチェンコのIHを見ていても思うが、活躍できる位置に初めからいると持ち味が薄れてしまう選手もいるんだなと思う。

 マークが付いている状況においてはメリーノは空中戦で差を作るのはなかなか難しい。ファー側のCBの背後をとるか、もしくはSBに競りかけるかの状況を作れればいいのかもしれないが、3バックではそういう状況を作ることはできない。ライスが早めに下がってしまったこともあり、ウェストハム目線ではボックス内のターゲットもメリーノに絞ることができる。

 メリーノはヘディングでのシュートは上手いが、フェライニなどと異なってマーカーの上からヘディングを叩けるタイプではないように思う。少なくともプレミアのCBにマークされている状態では。ということはアウトサイドも含めてスペースを作る作業から逃げることはできないということの裏返しであると思う。

 よって、反省すべきはウーデゴールと繋がって相手を動かすプレーを質量ともに十分にできなかったこと。ガブリエウが上がってからはまぁもう少し早い段階であげても良かったと思うが、そうでない時間帯においては安易なクロスには逃げてはいけないというか、逃げたらうまくいかないようになっているのが今のアーセナルだと思う。

 そうこうしているうちにアーセナルはルイス=スケリーが退場。今度は文句なしのDOGSOでのレッドカードであり、なぜ初めはイエローカードで許されたのかが不思議なくらいだった。

 この退場の影響はあるようなないようなという感じ。ジリ貧で負けるアーセナルのよくあるパターンで最後はエネルギーを失ってしまい、アーセナルは手痛いホームでの今季初黒星を喫してしまった。

あとがき

 なかなか難しい結果になったが、内容面に関してはレスター戦とそこまで遜色ないと思う。良くも悪くも。結果で誤魔化せたかどうか、通用する部分の水準が相手で異なったとかはあるけども、基本的には手札に沿った内容になっているというのがこの2試合の感想だ。

 で、この状況は代表ウィーク明けまでは変わらないと思う。状況を変えるウルトラCもないし、十分に工夫はすでにしている。そういう中でこじ開けられるかどうかの試合になっていくだろう。それはもうハヴァーツの離脱の時点で飲み込まなくてはいけないことなのだ。

試合結果

2025.2.22
プレミアリーグ
第26節
アーセナル 0-1 ウェストハム
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
WHU:44′ ボーウェン
主審:クレイグ・ポーソン

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