Fixture
明治安田 J1リーグ 第23節
2025.7.5
川崎フロンターレ(6位/9勝8分5敗/勝ち点35/得点35/失点23)
×
鹿島アントラーズ(1位/13勝2分7敗/勝ち点41/得点32/失点20)
@Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu
戦績
近年の対戦成績

直近5年間の対戦で川崎の9勝、鹿島の3勝、引き分けが1つ。
川崎ホームでの戦績

過去10戦で川崎の7勝、鹿島の2勝、引き分けが1つ。
Head-to-head
- 14試合の川崎戦の公式戦未勝利の後、鹿島は3連勝を記録している。
- 2020-23年のリーグ戦では複数得点はなかったが、直近3試合で鹿島は川崎相手に複数得点中。
- しかし、川崎は2019年以降の鹿島との全てのリーグ戦で得点を記録している。
- 等々力における鹿島の川崎戦の勝利は直近4試合中、3試合が1-3のスコア。
スカッド情報
- イ・クンヒョンは長期離脱中。
- エリソンは部分合流。
- マルシーニョは前節途中交代。
- 関川郁万、師岡柊生、安西幸輝は長期離脱中。
予想スタメン

Match facts
- リーグ戦では5試合引き分けがなく今季最長のラン。
- 負ければ今季初の連敗。
- 7月のリーグ戦は直近6試合で負けがない(W3,D3)
- 首位との対戦で直近4試合勝利なし(D1,L3)。最後の勝利は2022年の横浜FM戦。
- 佐々木旭は鹿島戦で2得点。キャリアにおいて唯一複数得点決めている相手。
- 大関友翔はここまで川崎の公式戦で3試合に先発。そのうち、唯一負けたのが5月の鹿島戦。
- 直近5試合のリーグ戦で1勝。ここ3試合は勝ちがない。
- 直近6試合で複数得点がない。
- ここまで2引き分けはリーグ最少。川崎は8引き分けでリーグ最多。
- ここまでPKでの得点が5で、清水と並んで最多タイ。
- レオ・セアラはここまで5試合で決勝ゴールを決めておりリーグで最も多い。
- 鬼木監督は長谷部監督に対して11試合で9勝。1試合平均勝ち点2.55であり、5試合以上対戦した指揮官としてはピーター・クラモフスキー(W5)に次いで多い。
予習
第20節 広島戦

第21節 町田戦
準備中
第22節 岡山戦
準備中
展望
鹿島の優勝争いの命運を握るセクション
ACL起因の消化試合の不均衡も徐々に解消されて、頂点までの距離が各チームわかってきた中盤戦。川崎としては前節鹿島を勝ち点差3で迎えるチャンスがあった試合を落としての週末ということになる。
一方の鹿島はここに来て3試合未勝利。5節前の話にはなるが、横浜FMにも勝利を献上するなど直近の試合は芳しくはない。鬼木前監督の就任もあり、川崎からすれば意識するのはまずは鹿島かもしれないが、鹿島からすれば川崎よりも先に忍び寄ってくる柏と神戸の足元から逃げるために一刻も早い立て直しが求められる。
スタイルとしては大枠の方向性は変わっていない鹿島。前回対戦時からの大きな変化はLSBの安西の不在が大きなトピックスとなるだろう。小川を穴埋めとして獲得し、長期離脱に向けて枚数はそろえた格好だ。
ただし、小川は安西とは異なり、より大外の高い位置でクロッサーとして勝負するタイプ。競争相手の溝口も含めてビルドアップに貢献するキャラクターではないので、大外のレーンで高い位置を取ることが多い。町田戦では望月の高さ対策で溝口→小川の交代を早い段階で行ったので、鹿島が家長の高さを警戒するならば小川が先発かもしれない。
逆サイドのSBが小池であれば低い位置を彼に任せて、右の大外は松村のような幅を取れる選手をSHにおいてレーンのバランスを取るといったようなこともある。濃野の場合は、追い越して攻撃参加をしてもらってなんぼ。その場合は後方のタスクはある程度CHなどほかの選手に任せることになるだろう。この辺りは起用している選手のキャラクターによって異なる印象だ。
選手のキャラクターがそれ以上に尊重されているというセクションはもちろん鈴木優磨のところになるだろう。中央で先発することもワイドで先発することもあるが、縦横無尽に自由に動き回るポジションであらゆるところで起点を作る。なりふり構わず突っかかる小競り合いとは裏腹にどこで勝負をかけるかや配球の側面は非常に冷静。ヒートアップしてプレーのクオリティにマイナス方向のバフがかかることが少ない稀有な選手だなと思う。
鈴木が動き回ることで積年直面してきた問題点はストライカーの位置がポッカリと空いてしまうこと。それを解決したのがレオ・セアラの獲得。ゴール前でスコアリングに集中できるストライカーの登場は鈴木のフリーダムな動きを正当化することにつながる。降りるアクションは少ないが、動く範囲を横に広がりながら背後をとるアクションも可能で、鈴木と別個の起点づくりを行うことができる。
長いボールの出し手となる早川の奥を狙うフィードはDFにとっては後方に走りながらの対応になるので難しい。こういう走り合いは鹿島のFW陣は得意だし、何よりもカットされた時に守備側が素早く攻撃に移りにくい。多少間延びした形で長いボールを蹴って失敗したとしても、多くの場合はリカバリーの時間はできる。川崎のGKからのロングキックもこれくらいのリスクヘッジができていると気軽にできるのだろうなと思う。
このように攻撃の起点作りは多様。特に背負って落とす動きが上手い選手が多いのが鹿島の特徴でチャヴリッチ、鈴木あたりはポストプレーから相手の逆を取るのが上手い。こういう選手が作り出したスペースに中盤の選手は躊躇なく進撃し、ボックス内に近づいて圧力を高めるという形が鹿島の攻撃の理想と言えるだろう。
守備においては4-4-2をベースにしつつ、高い位置での迎撃を優先。特にサイドでのスライドは躊躇がなく、バックラインに自由にボールを持たせず強度が問われる展開の連続を伴っている印象だ。前線の選手たちはこのような前から追うスタンスを90分行うことができる。
その代わり三竿、柴崎、舩橋が主力でやや序列が下がって樋口が出てくるCH陣は守備範囲で勝負するタイプではない。この辺りは知念がいればもう少しフィルター機能が高まるのかもしれないが、少なくとも最近の鬼木監督は知念をFWとして扱っているように感じる。
CBも関川→テヒョンになったことで迎撃に影響を与えられる範囲は狭くなっている。攻守に連続してプレーをつなげる強度の高い展開にCH、CB陣が問題なくついていけるか?という命題は個人的には今季の鹿島の優勝争いを左右するのではないかと思っている。
失点パターンを引き起こすプレーブック
直近で鹿島に勝利した町田と岡山の共通点はいずれもクロスの跳ね返しに関して非常に高い精度があったこと。きっちりと相手に競りかける、ニアやファーのターゲットの手前で跳ね返すということが忠実にできていた。
川崎が今季大一番で勝利した試合は軒並みクロス対応は安定していた感があるし、この試合で勝つのであればまずはそこの安定感は必須だろう。その上で4バックということもあり、この2チームよりは迎撃性能が低いのはある程度織り込んでいきたいところ。ならば、この2チームよりはボールを奪ったところからのシャープさが欲しい。川崎がローラインの時間をうまく凌ぐには、引いて受ける強度もさることながら、きっちりと陣地回復を行い自陣でのプレータイム自体を減らす意識が必要だろう。
鹿島の失点のパターンの傾向は大きく2つ。1つはCHのところのギャップ。大番狂せを演じた横浜FMが得点を取れた要因は相手のCHのギャップを大きくし、消せていると思っているコースにパスを通し、CHが2人揃って置き去りに。その状況をCBがカバーができないというケースを徹底的にやり続けたから。横浜FMは三竿と舩橋をこの要点を遂行し続けて完全に翻弄して見せた。
敵陣に押し込んだところからのナローなスペース攻略の場合にも、あるいはカウンターでも狙えるところ。鹿島の攻撃にCHが出ていってボックス内に飛び込んで行った時は大チャンス。今の鹿島のCHは1人で広範囲をカバーできるダイナモではないので、相手がリスクをかけて攻めてきたところはきっちりとしっぺ返しをしたい。ここで正確に繋ぎ、敵陣まで運び、シュートまで行き、あわよくば得点をする。このステップをカウンターの機会のたびにいかに奥まで掴んでいくかが重要だ。
もう1つ、失点のパターンはサイドに引っ張り出されるCB。植田、テヒョンがボックスの外に出ていったにも関わらず、相手を潰しきれないまま攻撃の流れが進んでしまうという形だ。ボックス内にCBがいない状態でクロスを受ける形が失点パターンとして非常に多い。
もっともここに関しては川崎も他人事ではない。車屋がよくこの形になってしまうし、丸山も最近はこのサイクルに入り込んでしまっている。予想スタメンがジェジエウになっているのはこの点において川崎で最も信頼することができるCBだからだ。
川崎が保持の時はこうした混乱を進んで引き起こしたい。CHのカバー範囲を広げるにはまずは徹底して鹿島のSHの背後をとること。鹿島のSH、特にチャヴリッチのプレスは横と後方の連動が甘く、チェーンが切れていることも少なくない。CBで引き付けてSBが背後をとるか、あるいはSBで引き付けてCHがフローするか。SBの特性次第ではCHをどかすという意味合い的には後者の方がいいのかもしれない。

アタッキングサードにおいてはとにかくハーフスペース裏をとり続けること。CBを引き付けられればそれだけで意味があるが、さらにCHも引きつけられた上でリリースできれば最高。鹿島は人を追う意識が強い分、ファジーなポジションを取る選手を2人がなんとなく追いかけていってしまうことがある。2人を引きつけた上でボールを逃せば、必ずボックスに近い位置でシュートコースは見えるはずだ。

鹿島のボックス守備はラインの上げ直しとこの動き出した選手へのマーク被りが弱点のように思う。ボックスへの走り込み→マイナスの折り返しからのミドルはこの鹿島の弱点を浮き彫りにする得点パターン。積極的に狙っていきたい。逆に相手のラインを動かすことなく単にクロスを上げるだけでは鹿島の土俵。仮に2人ストライカーを前に置いたとしても川崎のFWのカラーでは効果が薄いように思う。
守備においては相手の武器をぶつ切りにすることが重要。前線の起点能力、広くワイドから裏をとるフリーラン、CHの積極的な攻め上がり。これらが掛け合わさることが鹿島の攻撃の怖さである。逆にこれらが単発で襲ってくるのであれば、脅威は限定的。サイドで詰まらされてとりあえず奥に蹴ってはロストという単調な攻撃に終始することもある。
そのためにはやはり動き回る鈴木をどれだけ抑えるかがポイント。国立での試合では前半20分ほどまでは川崎が明らかに主導権を握っていたが、それはこの鈴木を中盤とバックラインで受け渡しながら潰せていたことが多い。
収めて反転を許し、加速されることが最悪なので、その手前で咎めたい。反転されるくらいならファウルをするという覚悟も必要で、この点は躊躇することはない。スピードに乗る前であれば警告を受ける可能性も低い。川崎の守備陣はそこの線引きにトライしてほしい。
高井がこのゲームでラストマッチとなることを川崎の戦力運用的に無理にポジティブに捉えるのであれば、本来は累積警告による出場停止となる4枚目のイエローカードをもらおうと全くダメージがないこと。躊躇なくデュエルに行って欲しい。
高さの求められるクロス対応、ハイテンポでハイラインになるであろう展開、そして鈴木優磨の管理による連携の寸断。高井に課せられる任務はとてもハードだ。彼がいなくなったらこうした状況への川崎の対応力は間違いなく下がるだろう。
それでも、土曜日にはまだ彼は等々力にいる。E-1に選ばれなくとも鈴木優磨がJリーグで一番のアタッカーであることは誰もが知っているし、鹿島はテーブルの一番上にいる。川崎でのキャリアに残された90分で課された任務はこの上なくハードなもの。このハードなミッションをロンドンに旅立つ前にクリアして欲しいというのが自分から高井への川崎の選手としての最後のお願いだ。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)