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レビュー
キーマンはカラフィオーリ
この試合に先立って「フォレストは4バックで来られることと5バックで来られることのどちらの方が嫌ですか?」という質問を質問箱にもらった。個人的な答えとしては「5バックで来られた方がアーセナルの攻撃陣が手詰まりになるだろう!」という考えを元に5バックと言ったのだけども、ヌーノの考えとは異なったらしい。この試合のフォレストは4バックでスタート。理由は単純明快で「アーセナルにはCFがいないから5バックにする必要はないとのことだった。」
試合の序盤はフォレストがボールを持つというこちらも意外なスタート。4-4-2で組むアーセナルに対して、ボールサイドのCHが2トップ脇に下がる形でやや3バック化することでボールの保持を落ち着かせる。
アーセナルを食いつかせることができればなお良い。SHをバックスの移動で引きつけたり、あるいはバックスにメリーノやウーデゴールを食いつかせることで縦に間伸びさせることができれば、ジョルジーニョがいるアーセナルの中盤とのセカンドボール争いには勝機を見出すことができる。メリーノの機動力を考えれば、バックラインでハイプレスに捕まることもないので、リスクも低いと考えたのだろう。
ボールを動かす側に回るチームにとってボトムネックになりやすい「どこで勝負をかけるのか?」というポイントに関してもこの日のフォレストにとっては問題なし。右SHのハドソン=オドイが脱出口として完璧な機能を果たした。2分にはカラフィオーリを警告に追い込むなど、開始早々に「このサイドから攻めることができます!」という自己紹介をしてみせた。アーセナルとしては開始早々にDFが警告を受ける苦しい展開。もっとも、直後にミレンコビッチがセットプレーをどうでもいい妨害をすることで安い警告を受けるのだけども。
一方のアーセナルの保持はいつも通りの後方が3枚、中盤が1枚の形。ジョルジーニョの相棒となる選手は自由度が高く、入れ替わり立ち替わりで3-2の2の一角を務めるという形になっていく。
フォレストの守備は4-2-3-1。前のプレス隊にギブス=ホワイトが入り込むことはなく、あくまで中盤で数を揃えることを優先した守備の組み方を優先する。
アーセナルの攻め筋になったのは左サイド。守備ではいきなり警告を受けてしまったカラフィオーリだったが、攻撃では左サイドのアクセントに。ジョルジーニョの相棒役は他の人に任せる機会が多く、この日は攻め上がりながら攻撃を仕掛ける機会が多かった。特にこの日の左サイドはトロサール、カラフィオーリ+メリーノorライスの3枚でのローテが多め、パス交換からゴールに向かう。
フォレストは自陣に下がるとSHがベタ引きし、CHはボックス内に下がってクロスに対応するための枚数を揃える。そのため、ボックス内への圧力だけでなくミドルシュートで手前を見せることはアーセナルにとっては重要だった。23分のミドルシュートなどはその典型例だろう。そういう点でカラフィオーリの存在感は攻撃の貴重なアクセントになっていたと言える。
逆に右サイドはヌワネリを囲む形でフォレストの包囲網は徹底。アーセナルはチャンスを作るのに苦労。おとなしく左に展開するケースが多かった。
種類の違う苦戦
4バックを採用したとはいえアーセナルの保持に対して、まずはラインを下げて対応することを優先としたフォレスト。当然少しずつラインは下がってしまい、受けに回る機会が増える。
となると、次にポイントになるのはフォレストのロングカウンターが刺さるかどうか。フォレスト目線でいえばもう少し物足りなさが残るものではなかったのではないかなと思う。
ゆったりとしたポゼッション時の違いはウッドへのロングボールの効能だ。ウッドは競りかけてボールを落とすことはできる一方で、ボールを収めて味方の攻め上がりを促せるタイプではない。特にガブリエウとサリバを向こうに回した時には難しい。
先にも述べた通り、フォレストは非保持の時はサイドも含めて重心を下げるので、ウッドが時間を作れるかどうかは重要。ここが効かないのであればウッドは直接反転から出し抜くしかない。アジリティの点ではガブリエウとサリバに明確に優位があるので、フォレストのロングカウンターへの対応は十分だった。
逆にハドソン=オドイにさえボールが入ってしまえば、フォレストは手応えがある状態。大外での優位に加えて、味方のフリーランを絡める形で反撃に打って出る。フォレストの攻撃がうまくいくかどうかはこのハドソン=オドイからの形を展開できるかどうかにかかっている感があった。
アーセナルはアタッキングサードでの攻めの形づくりに苦戦。フォレストは攻めの形に持っていくところまでに苦戦。互いに違うポイントでの苦戦を打開できないまま、試合はスコアレスでハーフタイムを迎える。
失敗の種類の話
後半、アーセナルは頭からティアニーを投入。この判断は試合展開における解釈は難しいところ。交代させた理由はアルテタが試合後に述べていたようにシンプルに「2枚目のイエローカードをもらわないため」だろう。ただ、この日のアーセナルの左サイドの攻め筋の一角を担うという点ではカラフィオーリは相対的には脅威を与えられる選手。そして、ハドソン=オドイにボールが入る機会自体はそれなりに阻害できていたという意味でもなかなか難しい部分がある。
アーセナルは前半よりも丁寧にボールを動かしながら押し込むフェーズを使っていく。前半よりも後方の陣形を動かしながら、フォレストの2列目を動かす作業をゆったりと行っていった印象だ。
押し込むフェーズを作ったアーセナルはセットプレーからチャンス。セットプレーであればメリーノがヘディングから非常に惜しい決定機を作り出せるのは、オープンプレーの時と異なり彼が第一ターゲットではないから。アーセナルとしてはなんとかここでこじ開けておきたかったところだろう。
フォレストは少しミドルブロックがルーズな感じがしており、後半の中盤は少し陣形構築が甘い時間があった。おかけでアーセナルに苦しむことになったが、セルスの安定したハイボール処理などからこの時間帯を凌ぐと、ロングボールからのチャンスメイクを狙っていく。ウッドが狙っていたのは右サイドからの抜け出しでこの形からフォレストもチャンスメイク。特に71分のビッグチャンスはサリバのファインプレーがなければ、ウッドは1on1を迎えることができたはずだ。
アーセナルは選手交代でリフレッシュ。ウーデゴールを下げるなど少しいつも異なる展開でチャンスメイクを狙う。オフサイドとはいえIH起用のジンチェンコの動き出しはとても面白かった。
同じ交代選手でもスターリングには申し訳ないが苦言を呈したい。あのシチュエーションでファウルをもらいにいって失敗するのは論外だろう。右サイドであれば迷いなく縦に進むくらいのことはしてほしい。そうすれば少なくともCKはとってくることはできたかもしれない。正直いって、交代したばかりのフレッシュなアタッカーにああいうプレーとされてしまうと応援するものとしてはとてもネガティブな気持ちを抱いてしまう。
今のスターリングに求めるのはいい感じにまとめることよりも、自分が困窮しているチームを救うという気概のところ。それをしてくれれば、少なくとも自分は多少の失敗は目をつぶれる。幸か不幸か今後も出番はありそうなので、まずは失敗するにしても自分に求められるものを理解していることを感じさせるプレーにしてほしい。
あとがき
想定通りやはり薄いチャンスの中で得点を生み出せるかの戦いになった。というわけであと4試合このような粘り合いが少なくとも続くことになる。そんな中でもフォレストの勝ち点3を食い止めたのはやはり両CBの活躍。ハドソン=オドイには多少手は焼いたが、作られたチャンスの総量で言えばフォレスト相手としては少ない方な気がする。前線が貧窮している状態において、彼らはアーセナルの最後の砦だ。
試合結果
2025.2.26
プレミアリーグ
第27節
ノッティンガム・フォレスト 0-0 アーセナル
ザ・シティ・グラウンド
主審:アンディ・マドレー