Fixture
UEFAチャンピオンズリーグ
Quarter-final 2nd leg
2025.4.16
レアル・マドリー
×
アーセナル
@エスタディオ・サンチャゴ・ベルナベウ
戦績
過去の対戦成績

過去対戦でアーセナルの2勝、引き分けが1つ。
Match facts from BBC sport
- アーセナルは未だに欧州コンペでレアル・マドリーに敗戦を喫していない(W2,D1)。また、この3試合で失点は0。無失点で終えれば史上初めてレアル・マドリー相手に初戦から4試合連続でクリーンシートを達成したクラブとなる。
- レアル・マドリーのエミレーツでの3-0での敗戦はECとUCLにおいて1st legにおいて3点差以上で負けた5回目の試合となる。過去4回のうち、3回はそのラウンドで敗退している。唯一の例外は1975-76のRound 16におけるダービー・カウンティ戦。1st legでは4-1での敗戦だったが、AGG:6-5で勝ち抜けている。
- レアル・マドリーの過去53回のECとUCLにおけるイングランド勢との対戦において、3得点差以上で勝利したのは2回だけ。1975-76の5-1のダービー戦と2010-11のQFのトッテナム戦。
- 15-16の開幕以降、ホームでマドリーがCLのノックアウトラウンドの2nd legを戦うのは16回目。過去の15回においては敗退したのは18-19のR-16のアヤックス戦1回だけであり、現在は8回連続で勝ち上がりを決めている。
- アーセナルは勝てばクラブのアウェイでのCLの連勝記録(4)に並ぶ。この記録を前回樹立した時の4試合目は2006年のR-16のレアル・マドリー戦。サンチャゴ・ベルナベウにおける1-0の勝利だった。
- アーセナルは今季のCLにおいて1試合平均2.55得点、0.55失点(28得点、6失点)。2.63得点の10-11シーズンと、0.31失点だった05-06シーズンに次いでどちらも過去のクラブにおいて2番にいい成績。
- 平均的な保持率(53.4%)にも関わらず、1st legにおけるアーセナルは敵陣のファイナルサードで115回のプレスをかけた。これはマドリーの3倍以上で彼らの36回という記録は今年のQFの1st legにおいては全チームの中で最低の数字。
- キリアン・エンバペはイングランド勢相手のCLにおいて8試合の出場で8得点に関与(7G,1A)。そのうち5つの得点(4G,1A)はホームで挙げられたもの。
- 現在、CLにおいて28得点、21アシストのヴィニシウス・ジュニオールはゴールに関与すれば50得点に関与したマドリー4人目の選手となる(クリスティアーノ・ロナウド、カリム・ベンゼマ、ラウール)。達成すれば4人目という記録はほかのどのクラブの倍以上ということになる(バイエルンのレヴァンドフスキ、ミュラー)。
- マイルズ・ルイス=スケリーはCLのノックアウトラウンドでアシストを記録した3人目のイングランド人のティーンエージャーとなった。過去の2人もいずれもアーセナル。2008年のテオ・ウォルコットと2012年のアレックス・オックスレイド=チェンバレン。
予習
QF 1st leg アーセナル戦

第31節 アラベス戦
準備中
予想スタメン

展望
結果的に揃った前提条件
エミレーツではライスの素晴らしい右足が道を切り拓き、メリーノがダメ押しをすることで3-0の完勝。アーセナルは想定の最良パターンをさらに上回る形で1st legを終えたといっていいだろう。ちなみにボリスタでレビューを書いたのでよかったら読んでおくれ。有料だけど。
とはいえ、ベルナベウは魔境。アーセナルとしては多くのドラマを生み出してきたこのスタジアムにおいて未知の恐怖と戦うことになるだろう。
一方のマドリーも1st legからの3点差の逆転突破のCLのフォーマットでは前例はない。以前のフォーマットにおける40年前の話。ドルトムント時代のレヴァンドフスキに4得点をかちこまれた試合が今回と同じく1st legで3点差をつけられた例だったが、マドリーは2-0までの巻き返しまでで敗北となった。それ以外の試合は90分の中での起伏があるが、1st legの大きな負債を2nd legでチャラにするタイプの逆転はあまり経験がない。
そういったことはどちらかといえばバルセロナやパリの得意分野なのだろう。ということでマドリーもまた、アーセナルを下して上に行くには未知の領域に踏み込まないといけないこととなる。
マドリーはアーセナルと同じく週末は一部のメンバーを組みかえ。ヴィニシウスやベリンガムなど主力の一部は温存された。結果的にではあるが、エムバペも38分で退場したため、あまり試合に出ずには済んでいる。
マドリーが勝つための必要な条件の一つは前からボールを奪いに行くアクションの確立だろう。そのためには前線の選手のフレッシュさは不可欠。アーセナルよりも休息が1日短い中2日とはいえヴィニシウス、エンバペ、ベリンガムのプレータイムがすべて45分を下回ったことは一応前提を揃えるための努力をしていることにはなる。
マドリーの前線はあまり守備をしないイメージかもしれないが、エンバペはともかくヴィニシウスに関してはきっちり闘志を燃やしている試合においてはサイドに下がっての守備や前からのプレスは必要に応じてやっている印象。
ちなみにコパ・デル・レイのソシエダ戦では彼がスビメンディをプレスバックで潰したところかが得点のきっかけとなっている。どうせ守備をしないという先入観で試合に臨むと痛い目に遭うだろう。
1st legでは難しかった保持面での落ち着いたゲームメイクができるかも重要なポイント。出場停止だったチュアメニはカマヴィンガと入れ替わることが濃厚。モドリッチ、負傷明けのセバージョス、SBに回る可能性があるバルベルデの3人のうちの誰かが相棒を務めることになるだろう。
スペースを素早く攻略する速攻も怖いが、マドリーというチームは押し込んでも怖さを出すことができる。わずかなスペースがあればだれもが足を振ってゴールを脅かすことができるシュート力の高さは世界一。中盤のゲームメイクから押し込んで足を振る状況をどこまで作れるかは重要なポイントになるだろう。
エミレーツで退場したカマヴィンガは続くアラベス戦では決勝戦を奪ってMOMに輝いている。流れが悪くともものにするのがマドリーの底力。アラベス戦で退場したエンバペは流れこそ悪いがそういう時に大仕事を果たす底力を発揮させないようにしたいところだ。
ハードルは自ら取り除かない
2nd legを迎えるにおいてまずアーセナルが避けるべきプランだと個人的に考えるのはベタ引きする守備で90分間守り切るプランのように思う。例えば、残り時間が限られてきたり、あるいはアーセナル側に退場者が出たりするなどほかの事情が絡めばそうした状態もやむ無しだろう。だが、ベルナベウとはいえ11人同士の激突で初めからベタ引きをする必要はないと思う。
一番大きな理由は今のアーセナルであればマドリー相手にハイプレスを回避できると考えるから。立ち上がりの時間帯でアーセナルはマドリーのハイプレスの心を折るところから始めたい。中盤の構成にもよるが、前線の脚力を考えると、今のマドリーのプレスの強度はシティくらいなのかなと思う。それであればアーセナルはラヤを絡めたプレスで脱出したいところ。
プレスに出たところをショートパスでつなぎ切れば、単純にアーセナルには追加点のチャンスが訪れる可能性が高まるというのが1つ。さらには試合のどこかで仮にマドリーがスコアを動かすことができた場合、彼らは得点を重ねようとプレスに来るはず。序盤にこのプレスを回避する成功体験をアーセナルが得ているかどうかはマドリーの畳みかけるような攻撃の流れを切る助けになるはず。
今のマドリーのプレスの精度であれば、アーセナルは十分にかわせる力はあると思う。マドリーの立場からすれば、アーセナルからボールを奪い返すことは奇跡を起こすための一番手前にして一番大きなハードルになるといってもいい。もし、アーセナルが工夫のないロングボールでのカウンターに専念し、スペースを消して守り切ることを考えるならば、マドリーの大きなハードルを自らの手で取り除いてあげることになりかねない。これがベタ引きプランを反対する理由だ。
おそらく、アルテタはいつも通りプレーすることを望むだろう。どんな相手だろうと試合の序盤から自陣をプロテクトするような戦い方はこれまでしてきていない。この試合でも同じように臨むと推察ができる。
気がかりなのはベルナベウという魔境でいつもの力を発揮できるかどうか?おそらくは多くのアーセナルの選手にとってはあまり感じたことのない類の重圧の中で彼らはプレーする必要がある。アーセナルはマドリーのハイプレスをいなすことが出来る力があるが、それをベルナベウという異常な環境の中で行う必要があることは留意する必要がある。
1st legは理不尽な力で試合の流れを引き寄せるというこれまでのアーセナルらしからぬ戦い方で勝利を収めた。2nd legで求められるものは真逆。多くの理不尽を生み出していた異常な環境な中でいつも通りの理屈に沿った戦い方ができるかどうか。「理屈が通れば理不尽は引っ込む」を合言葉にアーセナルは魔境攻略に挑むことになる。