MENU
カテゴリー

「サウジで挑む原点回帰」~2025.4.27 AFC Champions League Elite Quarter-final 川崎フロンターレ×アル・サッド プレビュー

目次

Fixture

2025.4.27
AFC Champions League Elite
Quarter-final
川崎フロンターレ
×
アル・サッド
@プリンス・アブドゥッラー・アル・ファイサル・スタジアム

Match facts

Match facts
  • アル・サッドの日本勢との対戦は過去に1回。2011年のクラブW杯の3位決定戦で柏と対戦。
    • PK戦の末、アル・サッドが3位となっている。
  • アル・サッドはリーグ戦9連勝を決めて最終節で優勝決定。その9試合のうち、7試合ではクリーンシート。
  • 川崎は勝てばクラブ史上初のACLベスト4。過去3回のQFはいずれも敗戦。
  • アクラム・アフィーフは今季の公式戦31試合で41得点に関与(23G,18A)
    • ACLでは9試合で5得点、3アシスト。

予習

カタールスターズリーグ

予想スタメン

展望

王様主導のブロック攻略が光る

 ついにやってきたサウジアラビアの大舞台。川崎は悲願となるアジアタイトルを獲得するために勝負の1週間に挑むこととなる。

 負けたら終わりの初戦の相手となるのはアル・サッド。カタールリーグの王者であり、今大会唯一の西地区の非サウジアラビア勢との準々決勝だ。

 採用しているシステムは一貫して5-3-2。国内における首位攻防戦であった2/22のアル・ドゥハイル戦を境に5バックをしている様子。対戦が決まって以降の試合は少なくとも全て5-3-2に分類して問題ない形となっている。

 Jリーグと異なり、国内リーグのスケジュールが週末に集約されていることもあり、メンバーは固定傾向が強い。スターターに関しても順当に来るのであれば、予想スタメンの11人で固まっている。あるとすれば右のIHのところがマシャアルかアル=ハイドゥースかくらいだろう。

 大まかなチームのイメージとしては2022年ワールドカップにおけるカタール代表に近い。大雑把に言えばボールを持っている時は元気で、押し込まれると元気がなくなるタイプのチームということができる。

 自陣からのビルドアップはDFが広がり、ショートパスを中心に。右サイドを片上げしWBのアタルを押し上げるイメージで4バック気味に変形する。

 ロングボールを使う頻度はかなり少なく、特にCFのムジカは組み立てにはほとんど関与せず、ボックス内での仕事に専念する。保持型のチームのCFとしては現代においてこれだけ組み立てが免除されているのは珍しいレベルだと思う。

 もっとも、ムジカがそういう動きになっているのには理由がある。相方であるもう1人のCFのアフィーフが全権委任型のゲームメーカーであるから。彼がピッチのあらゆるところに顔を出して組み立てに関与するので、ムジカが特に組み立てに参加する必要性がない。

 このアフィーフはアル・サッド封じの最大の壁になるのは間違いない。とにかくプレーエリアが広く、ピッチのどこにも顔を出す。サイドに流れることは多く、どちらかといえば左サイド側でボールを受けるケースが多い。おそらく、右サイドには1人で突破が可能なWBのアタルがいることが大きな要因になるのだろう。

 こういう王様タイプのゲームメーカーは足元でボールを受けたがることで流れを悪くしがちだが、アフィーフはサイドからの裏抜けも得意であり、オフザボールの動きにも長けている。サイドからエンドラインと平行にドリブルをするように抉り、PKを獲得したりあるいはラストパスを送る形は彼の得意なパターンである。

 パスに関してはとにかく精度が高く、レンジも長いのが特徴。自らを追い越すように攻撃に参加するIHを使うのも上手く、ゴールだけでなくアシスト数もベラボーに多い。引いた相手に対してはミドルだけでなく、ブロックの外からのクロスをピンポイントで届けることで攻撃を成立させることもできる。

 このアフィーフを主導としたブロック攻略は非常に精度が高い。左右のサイドはいずれも突破力があり、IHにはボックスに突撃してシュートを決める得点力もある。アフィーフ以外の選手においてもミドルシュートの意識も高く、ブロックの外から試合を動かす力があるチーム。ミドルシュートの弾く方向は非常に重要で、最近ではクラウジーニョのミドルのこぼれ球から得点を取っている。

 相手を左右に振るアクションに関してはあまり多くなく、中盤を経由してサイドチェンジするというよりはバックラインを経由して時間をかけたり、あるいはロングパス一発でサイドを変えるケースが多い。ライナー性の中盤を通す形からは被カウンターにつながるケースも少なくはなく、あまり得意ではないのだろう。

 どちらかと言えばサイドに届けるアクションでズレを作るというよりは純粋なサイドの突破性能で勝負をかけるイメージ。WG型ではないが、アフィーフはサイドを起点としても十分にゲームメーカーとして振る舞えるし、逆サイドではアタルが1人で縦にスルスル進んでいくことができる。1枚を剥がせる選手が両サイドにいる分、サイドチェンジでリスクを犯す必要は少ない。

 終盤にリードをすればきっちりとスペースを決してカウンターベースで攻撃に打って出る。カウンターはサイドに流れるアフィーフで相手を引っ張りながら、インサイドに入り込む味方に素直にクロスを入れる形。シンプルではあるが、精度が高いので非常に刺さりやすい。

 守備に関しては3月ごろは特に立ち上がりに相当鈍重なケースが多かったが、4月に入ってくると前に出てプレスする頻度も高くなっており、スロースターターの色は消えている。優勝がかかったリーグ戦最終節はハイプレスから先制点に繋がるPK判定を得ているなど、プレスから作るチャンスも少なくはない。

 逆に低い位置でロストして受けに回ると脆い側面も。負けにまでは直結していないが、ネガトラに関しては強度が十分と言えず、展開次第では即時奪回が刺さらずに陣形が間延びするケースもある。

 スタジアムの空気感を含めれば、おそらく西地区の中ではそれなりに与しやすい相手を引いたと言えるだろう。それでもやはり激戦のグループフェーズを勝ち抜いてきたことを踏まえると実力は十分。川崎にとっては高い1つ目の壁となるだろう。

2つの要素の精度を取り戻す

 3月くらいまでの試合を見ると、アル・サッドは非常にスロースターターという特徴があった。主に2トップが守備をしない形になっており、それを後方がカバーしててんやわんやというのがよくあるパターンだ。

 ただ、4月以降は入りからハイプレスを仕掛けていきながら、試合を立ち上がりから制圧しようとしてくる。まず、立ち上がりの第一関門としては自陣からのビルドアップでこのプレスを交わし切ること。アル・サッドは日本のチームのハイプレスに比べればそこまで威力は高くなく、陣形は間延びしやすい。まずはきっちりと早い時間での先制攻撃の可能性を断ち切り、試合を落ち着かせることを優先したい。

 川崎がこの試合で最も狙いたいのはボールを奪ってからのカウンター。アル・サッドの一番の弱点はネガトラのもろさ。割とだらっとしており、瞬間的に奪い返すアクションを起こせないままフリーズするケースも少なくない。

 このカウンターのポイントとなるのは脇坂と前線で走れるマルシーニョとエリソンの3人。ボールを奪った後に脇坂に素早くボールをつなぎ、カウンターからスピードに乗って相手を陥れる形をどれだけ作るか?東京V戦の9分の脇坂のチャンスのような場面ができれば理想的。きっちりと3バックに対して相手を惹きつけながら最善手を見つけていきたい。

 この「理想」を実現させるためには前をひた走ることができる2人の外国籍選手以外にも、右のSHである家長も重要なポイント。相手が3バックということを踏まえると、家長が高い位置を取ってマークを引きつけられるかどうかがカウンターの成否を分ける可能性が非常に高い。

 今季の川崎に関しては、間違いなく押し込む時間帯の長さというよりは1回の攻撃の質を上げること勝負にチームになっているし、ACLに関してはよりそこが勝負を分けるポイントを担う風情が強くなってくるはず。このカウンターをはじめとする1回の攻撃の精度は明らかにリーグの連戦で蔑ろになっている部分。この大一番で精度が回復するかどうかは非常に重要になってくるだろう。

 仮に押し込む展開になっても悪くはない。アル・サッドの5バックはボックス内を埋めたとてそこまで迎撃の精度は高くなく、特にボールサイドと逆側に関するクロスの飛び込みには得意ではない。押し込む状況を作ることができればSH、SBのボックス内の侵入から折り返しやシュートでの得点関与を狙っていきたいところだろう。

 押し込むフェーズになったらどう崩すか?というよりも押し込むフェーズをそもそも作れるのか?の方が問題になる可能性は高いように思う。やはり自在に動くフリーマンのアフィーフを抑えながら攻撃を仕掛けられるかは難しいところ。

 4-4-2できっちりと組みながら、受け渡しをきっちりと行い、簡単に足を振らせる状況を作らせないようにしたい。おそらくはこの試合はこれまでのリーグ戦よりもきっちりブロックを組むことを意識せざるを得ない試合だと思う。

 どちらかと言えばハイプレス志向が強まっている直近の川崎だが、どちらかと言えばこちらも原点回帰のミドルブロックでどれだけ粘れるかが重要。もちろん、引いた相手を崩す術を持っているチームなので、撤退する時間は少ないに越したことはない。保持で負荷を軽減できるのであればそれを探ることは前提となる。

 警戒したいのはミドルシュートやアーリークロスなど、ブロックに入り込む前に外から砲撃する手段。基本射程が長い選手が多く、ミドルを枠に捉える頻度は高い。セットプレーも含めて、相手のミドルをどう防ぐかは常に意識する必要があるし、山口がミドルを弾く方向には細心の注意を払う必要がある。ボックスにボールを残してしまえば、ムジカやボックス内に残ったIHに押し込まれてしまう。

 「1回の攻撃の精度アップ」「ミドルブロックの連携強化」。長谷部フロンターレがサウジアラビアで目指すべきは原点回帰。格上に挑む構図になる今大会においては長谷部式の方が鬼木式としてもマッチする可能性は高いと個人的には考えている。序盤に色濃く見られた今年のコンセプトをきっちり打ち出すことが、ベスト8の壁を打ち破るための重要なポイントになるだろう。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次