MENU
カテゴリー

「またどこかで」~2025.5.25 プレミアリーグ 第38節 サウサンプトン×アーセナル レビュー

プレビュー記事

目次

レビュー

安定感は問題なしだが・・・

 3位のシティとの勝ち点差は3。得失点差を考えれば3位転落の可能性はほぼないと考えられるアーセナル。最終節は苦手なセント・メリーズとはいえ、30敗のシーズン新記録がかかっているセインツとの一戦はどこまでプレッシャーがかかっているものではない。

 メンバーも大幅に入れ替え。スターリング、ヌワネリ、ジンチェンコ、ティアニーといったここまであまり出番のない面々を中心にアーセナルはスターターを組む。セインツは最終ラインに負傷者が続出しており、後ろにややスクランブル感のあるメンバー構成となった。

 序盤からボールを持つのはアーセナル。CBには左にティアニー、右にキヴィオルが基本の陣形だろうが、LSBのジンチェンコがインサイドに入るアクションを見せることが多いため、キヴィオルを中心に3-2-5を形成するのがアーセナルの基本線。左の後方支援役がティアニー、右の後方支援役がホワイトという形だった。

 一方のサウサンプトンは5-4-1でミドルゾーンで構える形。中盤の仕事が基本のダウンズはこの日は右のCBに入る形。基本的には後方にきっちりと人を揃えて相手の保持を受け止める格好だった。

 まずはゆったりとボールを持って動かしていくアーセナル。保持での旋回があったのは左サイド。大外に入る選手をローテしながらレーンを入れ替えてボックス内に入っていける。ジンチェンコが外回りをして、インサイドにマルティネッリが入ってシュートを放った序盤の場面はこのケースと言えるだろう。

 序盤の流れは悪くなかったアーセナルだが、パーフェクトかと言われると難しいところ。左サイドは立ち上がりのフィーリングこそ良かったものの、徐々に停滞感が目立つように。特に左の大外を取るマルティネッリが孤立してしまう場面が出てきてしまう。

 本来であればマルティネッリを追い越すアクションはティアニーが最適なキャラクターと考えられるが、この試合の彼はLCB。あまり頻繁に顔を出すわけにはいかない。ジンチェンコはどちらかというと手前のレーンで受けたがるし、ライスはあまりフォローにこなかった。

 そういうわけでマルティネッリは左サイドで孤軍奮闘。それでも、対面の相手を剥がしながらクロスを味方に合わせるのはさすがとも言える。相手のプレスは決め打ちでマルティネッリにダブルチームにきていた感もあったので、ジンチェンコはもう少し使えそうだったかな?という感覚はありつつ、よくそれでも抜き切ることができるなという部分も感じた。

 右サイドにおいてはスターリング、ヌワネリは足元にもらうアクションにどうしても終始してしまい、なかなか連携しつつサイドの奥を取るアクションを見せることができないなという感じ。スターリングに関してはドリブルで突っかけて危険なロストをしてしまうなど、カウンターのキッカケを許してしまっていた。

 総じて、バックスの保持は安定感があるアーセナルだったが、敵陣での攻略はなかなかギャップを作れず。WGの個人能力でなんとかするカラーが強かった印象だ。

限られた前進の機会の活用

 一方のサウサンプトンは限られた前進の機会をどのように活用するかが重要な立ち上がりとなった。まず、真っ先に挙げられるのはスチュワートへのロングボール。苦しそうではあったが、割と競り合うことはできていた。

 今季のサウサンプトンはいくらプレスの強い相手でもショートパスで逃げることができないという呪縛に囚われていた感がある。この日のスチュワートくらい、カジュアルに前の的にできる選手がいればまた少し違ったのかなとは思ってしまう。

 単騎で勝負を仕掛けていこう!という意味ではCKをひっくり返す印象的なカウンターを放っていたのはスレマナ。サウサンプトンの後半シーズンの攻撃を司っていたドリブラーはこの試合でも存在感を発揮。自陣からのドリブル、前線サイドへの裏抜けの2つの馬力を生かしたランニングで陣地回復をしていた。

 そのスレマナのカウンターの一つとなった34分手前の自陣からのキャリーはアーセナルからすると要反省案件。トーマスのバイタル付近での決め打ちでのプレーからの入れ替わりはパリ戦でも失点に繋がったプレー。最終節ということでお疲れなのかもしれないが、大舞台で見せた失敗をここでも再び見せられてしまったのは少し残念だった。

 この日のアーセナルはプレスの強度がそうでもなかったため、サウサンプトンは自陣からゆったりとした保持をするケースもあった。RCBのダウンズは保持においては中盤に繰り上がり、CHとして振る舞う。

 静的な局面ではより頼りになるのはフェルナンデス。ライン間でボールを引き出し、反転から素早く攻撃を仕掛けていくことができていた。

 手段としては多様ではあったが、いかんせんそもそも押し込む機会が少ないサウサンプトン。アーセナルが試行回数の面で優位に立っていたのは間違いなく、悪くはないがハードであることには変わりないという感じの前半となっていた。

 アーセナルは35分あたりからWGの左右を入れ替え。特別サイド攻撃が活性化した感はなかったが、左に比べれば右にいる時の方がマルティネッリはレーンを動き回るので、40分のキヴィオルからのタッチダウンパスの決定機を生み出したのは良かったかもしれない。

 なかなか噛み合わなかったサイド攻撃がようやく機能したのは前半も終わりに差し掛かった頃。CKの流れから右サイドのホワイトのスムーズなオーバーラップを仕留めたのは前残りしていたティアニー。アーセナル名物の最終節のセレモニー感の強いゴールは今年も健在。今夏での退団が決まっているレフティーが最終節の先制点をこじ開けた。

前出た喜びも束の間

 後半、サウサンプトンはスチュワートへのロングボールでスタートしつつ、保持では前半以上に左右を振りながら打開策を模索していく。押し込む機会は前半よりも増えた印象だ。押し込まれるアーセナルは逆に前半のスレマナのようなカウンターをマルティネッリが見せる場面もあった。

 プレスに関しても明確に強度をあげたサウサンプトン。アーセナルはヌワネリの中盤に降りるアクションからボールをキープしていく。中央、サイドのスムーズなボールの絡み方は前半よりも澱みなくできていた印象である。

 それでも右サイドのロビンソンが気を吐いて敵陣でのシュート機会を増やすサウサンプトン。スコアを動かしたのはセットプレー。ファーサイドに構えていたスチュワートのゴールで試合を振り出しに戻す。

 アーセナルはサイドアタッカーを梃入れ。トーマスがCBに移動するという非常にアグレッシブな布陣にシフトする。

 前線をリフレッシュしたことでアーセナルは再び押し込むフェーズに突入。サウサンプトンはスレマナのガス欠、スチュワートの交代により前進の手段がなくなってしまい、これ以降はアーセナルがこじ開けられるかの勝負になっていった印象だ。

 敵陣におけるアーセナルの攻撃はオフザボールが活性化。ボックス内に入っていく形が増えていったアーセナル。サウサンプトンは明確にクリアできる場面が減り、アーセナルは左右に揺さぶりながらさらに奥をとって危険な場面を連続して作るように。WGにギャップ作りを依存していた前半よりは流れの中からゴールを取れそうな雰囲気となった。

 そんな中でサウサンプトンは88分に貴重な右サイドからの押し上げに成功。ルイス=スケリーを咎めたところから久しぶりに前に出る。

 だが、皮肉なことにこれがアーセナルの勝ち越しゴールを呼び込むことに。この攻撃をカットされるとサウサンプトンは戻りがぐだぐだなままブロックを組み上げることができず。CHが簡単に逃してしまったウーデゴールがミドルを放ってアーセナルが勝ち越しに成功する。

 このゴールが決勝点に。アーセナルはデータ的に強さを見せる最終節で今年も勝利。苦手な敵地での勝利で2024-25シーズンを締め括った。

あとがき

 痺れる最終節ではなかったが、結果的には点が欲しい人が点を決めて勝ち点3を確保するという満足がいくものになったのではないか。特に長らくチームに所属したティアニーのラストゲームをこの形で飾れたのは大きい。SBのタスクがなかなかアナーキーなものになったことで出番を失ったが、最終シーズンは本来の持ち味であるクロスの精度も戻ってきたことで後半戦はスポット起用で活躍を見せることができた。これだけ左足に信頼を置けるシーズンは所属序盤以来久しぶりだったように思う。

 出番がなかなか手にできなくても、度重なる負傷に見舞われてもきっとこの男ならば腐らないだろうと信頼をおくことができた。退団は寂しいが、慣れ親しんだ地で再び輝く姿を見るのが今から楽しみでもある。またどこかで。

 というわけで。今年もお疲れ!

試合結果

2025.5.25
プレミアリーグ
第38節
サウサンプトン 1-2 アーセナル
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:56′ スチュワート
ARS:43′ ティアニー, 90′ ウーデゴール
主審:ダレン・ボンド

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次