MENU
カテゴリー

「全てを変える権利」~2025.5.7 UEFAチャンピオンズリーグ Semi-final 2nd leg パリ・サンジェルマン×アーセナル プレビュー

目次

Fixture

UEFAチャンピオンズリーグ
Semi-final 2nd leg
2025.5.7
パリ・サンジェルマン
×
アーセナル
@パルク・デ・フランス

戦績

過去の対戦成績

 過去6戦でパリ・サンジェルマンの1勝、アーセナルの2勝、引き分けが3つ。

Match facts from BBC sport

Match facts
  • 1st legでのパリの勝利は6試合目での初めてのアーセナル戦の勝利(D3,L2)。1994年と2016年に行われたパリホームの試合はいずれも1-1のドローに終わっている。
  • 欧州カップ戦におけるフランス遠征では13試合無敗(W8,D5)を記録していたアーセナルだが、2019年のレンヌと2023年のRCランス戦の直近2試合ではいずれも敗戦を喫している。
  • ホームでの1st legを敗北してファイナルに進んだのはCLのフォーマットにおいては過去2つしか例がない。1995-96にパナシナイコスを下したアヤックスと、2018-19にアヤックスを下したトッテナム。
  • パリもアーセナルも勝てば2回目のCLファイナル進出。パリは19-20、アーセナルは04-05以来のこと。パリはアウェイで1st legを勝利した欧州カップ戦において敗退したのは18-19のマンチェスター・ユナイテッド戦の1回だけ。アーセナルがホームで敗れた1st legから逆転突破をした例は過去にない。
  • パリは直近4試合のCLのホームゲームで3勝。この3勝で14得点を生み出している。しかしながら、リバプールとアトレティコにはパルク・デ・フランスで敗れており、同一シーズンでホームで3杯となれば20-21以来のこととなる。
  • アーセナルは直近4試合のアウェイでのCLで勝利。欧州カップ戦で過去にアウェイで5連勝したことはない。
  • パリは今季のCLにおいてDFラインを破る150本のline-breaking passを記録。バイエルン(156)についで2番目に多く、25本を記録しているウスマン・デンベレは個人で最多をマーク。
  • デンベレの1st legでのゴールは今季のCL8得点目。13-14に10得点を記録したズラタン・イブラヒモビッチ以来、最も同一シーズンで多くのゴールを決めているプレイヤー。
  • 1st legにおけるデクラン・ライスは両チーム合わせて最多のパス数(50)を記録しただけでなく、最終ラインでのline-breaking passも最多(6)を記録した。
  • ジョアン・ネベスは今季のCLで51回のタックルを記録しており、単一シーズンにおけるスタッツとしては14-15のアルトゥーロ・ヴィダル(52)以来の数字。ネベスは756回のハイプレスを敵陣で仕掛けており、個人のスタッツとして他の選手に100以上の差をつけて最多。

予習

SF 1st leg アーセナル戦

予想スタメン

展望

ハイプレスに出た時の整理事項

 泣いても笑っても90分で全てが決まる2nd leg。アーセナルは1点ビハインドの状態でパリを追いかける必要がある。

 1st legで見た通り、パリは非常に完成度が高いチームだ。わかりやすい弱点がなく、その上で高いプレス回避性能と押し込んだところからのブロック攻略のスキルを持っている。破壊力のある万能型という厄介なチームだ。

 アーセナルは追いかける立場となる。高い位置からプレスをかけなければ、延々とボールを回すことができるのがパリなので、まずはハイプレスに出ていく形を考える必要がある。

 プレスに関しては有効打を打つのが非常に難しい相手ではあるが全くいい形を作れなかったわけではない。アーセナルにとって手応えがあったのは、片側のサイドに相手を制限しつつ縦に強引に進めようとするパスをカットするような形だ。

 特にアーセナルの右サイドではこの形でメンデスやパチョにプレッシャーをかけることでショートカウンターを狙うためのボール奪取に明るい見通しを立てることができる。選択肢を制限したところに狙いを定めることができれば、苦し紛れのロングボールのターゲットが存在しないパリは一気につなぐのがハードになる。

 しかしながら、忘れてはいけないのはパリにアドバンテージを与える先制点もこの右サイドに追い込むハイプレスをひっくり返す形から生まれたということ。問題になるのは降りるデンベレへのパスに制限をかけられなかったことになる。

 サイドに追い込んだと思ったら、ロジカルな脱出口を作られてしまうというのはアーセナルにとっては最悪。中央で起点となるCFにもプレッシャーをかけていけるかどうか?というのはハイプレスに打って出る時の大きなポイントとなるだろう。

 この点でカギを握るのはキヴィオルになる。レアル・マドリー戦では素晴らしい活躍を見せたが、パリ戦や直近のボーンマス戦ではサイドを変える起点となるCFを潰すアクションをやりきれていない。堅実ではあるが、影響を与える範囲はさすがにガブリエウより狭く、その点がハイプレスに出ていかなければいけないチーム状況と少しミスマッチをしているように思える。キヴィオルがデンベレに対して躊躇なく前に出ていくことができるかはポイントになるだろう。

 もっとも、レビューでも述べたように先制点の場面でキヴィオルは前に出ていけない理由があった。ちょろちょろしているIHの存在である。

 特にIHとCFが縦関係を変える状況においてはどのような対応をすべきかというのは確実に整理しておきたいところ。また、1st legでの後半も見られたようにデンベレだけではなくファビアンはサイドに追い込んだ際のパスのレシーバーとして働くことができる選手。パスを受けるルートとしてここをどう潰すかは考える必要がある。トーマスの中盤起用で列を上げるライスが広範囲に影響を与えることができるようになることで、どこまで改善するかがカギを握ることになるだろう。

 押し込まれたところに関してはクワラツヘリアをどう抑え込むか?対面のティンバーの復帰はもちろんのこと、絶えずサカがダブルチームを形成できるかは重要な要素。ややコンディションが怪しい右サイドがクワラツヘリアに対してどこまで食らいついていけるかでブロック構築の精度は大きく変わってくる。

持続可能かどうかを優先するなら・・・

 チームのスタイルを考えてもパリは頭から極端なブロック守備を組んでくることはないはず。1st legで「普通にやれた」手応えを持っているチームならば、本拠地でも普通に振る舞うことでアーセナルとの鍔迫り合いで上回ろうとしてくるだろう。

 前からプレスをかけてくるという前提であれば多少はスペースができてくるはず。1st legで高い位置から出てくるパリに対して最も効果の高い攻撃の手段になっていたのはライスのキャリーとルイス=スケリーの剥がすアクションである。

 ここに関してもトーマスの復帰は大きな後押しになる可能性がある。後方のゲームメイクを託すことができるトーマスによって、ライスとルイス=スケリーをより高い位置に送り出せれば、特に左サイドの攻撃の景色は良くなるはず。そうなれば、あとはマルティネッリがドンナルンマという強大な壁を超えて、攻撃を仕留めることができるか?という話になる。

 トーマス自身も含めてパリのやや軽量級気味な中盤に対してはフィジカルさを生かしたミスマッチを取れる可能性がある。セカンドボール回収も含めて中盤を制圧できれば前に勢いを持った攻撃を繰り出す大きな助けになるはずだ。

 左サイドにおいてはハキミの背後は引き続き狙い目となるだろう。1st legではアーセナルはトロサールとマルティネッリのレーンを入れ替えることでハキミの背後をカバーするマルキーニョスを混乱させる形を作っていた。

 おそらく、ハキミの背後をつくのであればサイドに流れてフリーになった時にドリブルでキャリーができるトロサールがCFで先発するのがベターとなる。しかしながら、ゲームのコーディネートを考えるとこの形がベターかは難しいところ。この試合では「90分間持続可能なハイプレスを敢行できるプランを組めるか」がポイントになると考える。CFとしてしか計算できないメリーノをベンチに置いておくよりは、どのポジションでも換えが効くトロサールを後ろからにする方があらゆる事態に想定しやすい。ここを踏まえると、ハキミ背後から攻め切ることに特化するよりは左サイドに流れてのコンビネーションを問題なくできる上でボックス内での高さの脅威を与えることができるメリーノが頭からいく形の方が良さそうだ。

 起用可能であることを前日会見でアルテタが明言したカラフィオーリは終盤にボックス内に入って左足を振るエクストラストライカーの役割が期待される。遅れてボックス内に入ってくる、またはボックス少し外からゴールを狙える射程の広さはルイス=スケリーとは違った持ち味。押し込むフェーズまで持ち込み、彼の良さを生かしていく形をなんとか作りたい。

 押し込む状況を作れれば、彼らの苦手なセットプレーでの守備を強いることができる。左サイドで押し込むことができればそれだけで目標の1つは達成されることになるだろう。

 カラフィオーリの復帰やライスのIH化など、左サイドにはいくつかブーストをかけられそうな要素が転がっている一方、右サイドに関しては今出ているユニットがなんとかしなくてはいけないという感じだろう。今先発している面々もあまりコンディションは良くなさそうではあるが、ヌワネリ、ホワイトの両名が彼らにとって変わることができるほど、説得力のあるパフォーマンスをボーンマス戦で見せることができなかった。

 結局はサカとウーデゴールに頼ることになるのが右サイドだろう。ハイプレスの誘導も含めてこのユニットが目覚めるかどうかにかけるしかない。サカとメンデスの1on1の形は1st legでもいい方向に進めることができそうではあった。その形まで持っていけるかどうかだろう。

 アーセナルはこの試合までたどり着く流れはあまり良くはない。1st legのスコア自体もビハインドだし、リーグ戦でのパフォーマンスも主力を使った上での逆転負けとかなりダメージがあるものなのは確かである。しかし、重要なことはまだ負けてはいけないということ。負けてしまいそうな予感の試合で結果を出すことも、勝ち確であろうという試合であっけなく散ることもこの16年でたくさん見てきた。

 パリが突破に向けて優位なのは動かし難い事実だ。しかし、まだ90分が残されている。選手たちも前を向いている。ファンは声をあげて応援することができる。この1勝でここまでの悪い流れなんてどうにでも変わる。90分で全てを変えることができる権利を手にパリの地で大暴れをしてほしい。うまくいかないながらももがいてきた今季の彼らならばできるはずだ。

【参考】
https://www.bbc.com/sport/football/premier-league

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次