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「チグハグをねじ伏せられず」~2025.7.16 天皇杯 3回戦 川崎フロンターレ×SC相模原 レビュー

プレビュー記事

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レビュー

初手のハイプレス対策の手応え

 プレビューでも書いた通り、相模原の出方を推測するには前線の並びに着目すればOK。武藤とフルタードを外したこの日の相模原のスタンスは明らかにハイプレス仕様だったといっていいだろう。

 その仕様通り、立ち上がりはハイプレスに出ていく相模原。まずは川崎はこのハイプレスを捌くところから求められることとなる。このハイプレス捌きに川崎は苦戦。前線への長いボールは小林に届かず、相模原にインターセプトを許すこととなる。

 それならばボールをきっちり繋ぎたいところだが、それもなかなかできなかったのがこの日の川崎。左サイドでは山本や三浦が低い位置を取り、相模原の5-3-2の2トップ脇からボールを動かそうとする。

 しかしながら、特に低い位置でボールを触る三浦はあまり効果的な動きを見せることができず。三浦は誰かに預けて、高い位置を取りたいところではあるが、大外の高い位置にはマルシーニョが蓋をする形になっており高い位置を取ることができない。相模原の同サイド圧縮に屈し、強引に縦にボールをつけては失敗というサイクルが続いてしまった。

 5-3-2という相模原の陣形を考えれば、この三浦を囮に相手をこちらサイドに誘き寄せて逆サイドに展開できれば面白かったかもしれない。そういう意味では「三浦を低い位置で固定する」ということにこだわるのであれば、左のCBは対角のフィードを飛ばしやすい右利きの方がいいのかなとも思った。今の川崎の陣容で丸山を外すことは考えにくいので、三浦はあまりビルドアップに関与しない方が組みやすいかもしれないが。

 ショートパスでの繋ぎがうまくいかなくても左サイドは丸山→マルシーニョの裏へのパスという武器もある。しかしながら、この日はこのパスを狙う頻度も少なかったし、狙ったとしても流れてしまう場面もあるなど、マルシーニョの足の速さを起点として活用することがイマイチできていなかった。

 背後のパスを狙いにくかったのはライン間に立つ川崎の選手が脅威になっていなかったのも一因だろう。脇坂がボールを触れるのはブロックの外が多く、ブロックの中で受けるときには相模原の選手のアプローチが間に合っていた。インサイドで捕まえるのに困る選手がいなかったのも、相模原が背後をケアできた要因の1つなのかもしれない。

 右サイドはこうした誘引から先のアクションが逆サイドよりは見えていた。ファン・ウェルメスケルケンで手前を作ると、背後を狙うフリーランを生かすような裏へのパスからチャンスメイク。相手の矢印の逆を取る意識は左サイドよりは見えたし、押し下げはうまくいっていた。

 20分過ぎからは川崎は相模原のハイプレスを撤退させることに成功。押し下げることができていた。手数をかけた攻撃も右サイドの方が有望。ポケットを取るランで相手のラインを揺さぶるところまでは辿り着いていた。仕上げが甘かったのは否めないが、それでも背後を取るアクション自体が欠けていた左よりは可能性を感じた。

主導権を握れなかった要因

 長いボールを積極的に入れていく意識は相模原も同じ。そして、きっちり収まりきらないのも同じである。それでも相模原が前進できていたのはセカンドボールの回収で相模原が有利だったから。セカンド回収に特段仕掛けがあったようには思えない(気づかなかっただけかもしれない)が、フィフティーと思えるデュエルでも後手を踏むなどで相模原に二次攻撃を許すなど、ロングボールからの流れを止められなかった。

 橘田はこの点で存在感を見せたかったところだが、なかなかアドバンテージを生み出すことができなかった感がある。長いパスのインターセプトからのチャンスメイクする場面もあったが、正直この試合ではその良さを発揮する頻度がもう少し高くあって欲しかった。入れ替わられて思わずファウルを犯してしまうなど、主導権を握れていたとは言い難かった。

 ショートパスからのビルドアップも相模原の方が機能的だったと言えるだろう。19分と28分はそれぞれ川崎のSHのマルシーニョと家長の背後から進撃することで一気に敵陣まで。川崎のポゼッション崩しの王道をきっちり踏襲してみせた。

 20分を過ぎたあたりからは相模原がミドルブロックを構え、川崎のポゼッションの機会は増加したため、相模原が攻め続けるというシーンはなかったが、限られた機会での効果的に進撃をしたのは確かだろう。川崎は相模原がハイプレスに来ているフェーズで縦に速い攻撃を繰り出してシュートまで持っていくことができなかった。

 前線への長いボールと中盤でのセカンド回収というカテゴリー差が一番出そうなところで優位を取れなかったことが川崎が前半にペースをつかめなかった要因だろう。仕上がりも万全とは言えなかったし、主力が抜けた直後の試合ということで、多少アバウトでも主導権を握れるという判断だったかもしれないが、相模原は許してくれなかった印象。特に背後へのケアは非常に集中していた。川崎は家長や山本の瞬間的な閃きくらいしか相手を裏切るプレーを見せられなかった。

体を張る守備に屈した後半

 後半、川崎は前半よりもやや押し込む意識を高く持っていたように思う。三浦は前半よりも高い位置をとっていたように思うし、押し込んでからのサイド攻撃も背後を狙うフリーランを使いながらボックス内に効果的な侵入を見せていた。

 「引いて受ける相手を崩せなかった」という感想は選手からもファンからも聞かれてはいたけども、この試合に関しては押し込み切ったところで相手がボックス内で処理したこぼれ球を二次攻撃に繋げるプランの方が川崎には手応えがあったように思う。どちらかというともう少し前半のようにスペースがある時の攻撃の単調さの方が気になったりはした。

 一方の相模原も前半に優位を取っていた中盤のデュエルからチャンスメイク。こぼれ球を拾った島川から左サイドへの展開→前田のシュートという流れは紛れもない決定機だったと言えるだろう。

 それでも押し込む川崎が前半以上の火力で勝負する前半。相模原はフルタードを投入して1トップとして前に残すが、長い距離を爆発的な加速力で運ぶタイプではないので、もう少し高いラインで奪える時間帯に投入することができればもう少しテイストは違ったのかなと思う。佐々木を振り切ったりなど、高い位置で勝負をかけることができれば十分にフルタードは川崎を脅かすことができることを証明したといっていいだろう。

 ということで残りの時間は川崎がブロック攻略ができるかにフォーカスされたように思う。裏へのパスやクロスに体を張ってカットしにいく相模原に対して、川崎はこぼれ球を拾ってのチャンスメイクを中心に攻め込んでいく。マルシーニョ、神田などが迎えた決定機で川崎は仕留めることができずに試合は延長戦に。

 その延長戦でも川崎は膠着を打開できず。むしろ、延長の立ち上がり5-4-1でのミドルブロックで相模原がやや押し返した感もあったくらいで、川崎は押し込んでのブロック攻略に後半ほど腰を据えることができなかった感がある。

 それでもなんとか展開を整えて押し込むところまでは持ち込んだ川崎だが、延長の最後は丸山の負傷で10人となりさらに苦しむことに。迎えたPK戦でも初め3人の失敗が響いてしまい、川崎の天皇杯はここで終わりを告げることとなった。

あとがき

 流れるような攻撃が見れないとか、危なっかしい場面を迎えることにはなるだろうなというのはある程度例年の天皇杯を見ていれば十分想像ができる話だったけども、そういうチグハグをカテゴリー差を感じるところでねじ伏せてきたのがJ3以下と戦う時のこれまでの川崎である。

 なので、ロングボールやセカンドボールでの優位が取れなかったことと相模原側のプランの強度が時間の経過とともに極端に落ちなかったことは川崎の勝ち筋に大きな影響を与えたように思う。無論、リーグではそもそもこのクオリティだとあっさり咎められるので、ピッチ内外で後半戦にいい戦いができるような準備を進めていってほしい。山田、いってらっしゃい。

試合結果

2025.7.16
天皇杯
3回戦
川崎フロンターレ 0-0(PK:1-3) SC相模原
U-vanceとどろきスタジアム by Fujitsu
主審:飯田淳平

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