ボーンマス、25-26シーズンの歩み。
第1節 リバプール戦(A)

陸続きの遠藤と手応えある攻撃陣のリレー
2025年のプレミアリーグがついに始まる。オープニングマッチを飾るのはアンフィールド。王者の本拠地で多くの痛みを伴う哀悼を試合前に捧げるところから今季のプレミアリーグは幕を開けることとなった。
序盤からボールを持つのはリバプール。大まかな攻め筋はコミュニティシールドの流れと同じだろう。主に左サイドのポジションに変化をつけながらインサイドとアウトサイドのバランスをとって勝負を仕掛けていく。ケルケズのCB色はやや減らしていたかもしれない。サラーへの対角は少なめで、インサイドを覗くアクションの方に注力していく。
相対するボーンマスの守備で特徴的だったのはセンターラインの前へのプッシュアップ。スコットは1列前に出ていき、さらにはCBまでプレッシャーをかけにいくなど、タヴァニアとフラットかそれ以上に高いポジションを取ることが多かった。
スコットが前に出ていく分、広いスペースをカバーしなければいけないアダムスにとっては難しい舵取り。だが、CB陣との連携もありうまくカバーリングはできていた印象。クックの離脱+CB陣の刷新の中で前から強い守備という昨季までの持ち味を引き継げる姿勢を見せたことは新しいチャプターの船出としては上々というところか。
カウンターにおいてもボーンマスは左右のSH、もしくはCFのエヴァニウソンのサイドへの流れからチャンスメイク。リバプールの両サイドのSBに対してはアドバンテージを取ることができていた。
ただし、押し込み切られたところからでも怖さを見せることができるのがリバプール。馬力のあるロングカウンターはあわや決定機阻止の場面も作り出すなどCSに引き続き見応えは抜群。押し込まれているところからでも得点を狙えることは開幕戦でも示すことができたと言っていいだろう。
それぞれの攻め筋があった中で変化をつけて主導権を引き寄せたのはリバプール。ボーンマスのセンターラインの守備に対して、ヴィルツの降りるアクションをトリガーとしてエキティケの列落ち、マック=アリスターの列上げを組み合わせることでアダムスの負荷を増大していく。
先制点はこのセンターラインの駆け引きから。降りるエキティケがセネシを交わして抜け出すと、そのまま1on1を制してゴール。セネシが入れ替わられたところは本来であればディアキテがいて欲しかったが、前向きにプレスをかけるところを体現するのであれば後方が余らないのは仕方がないところだろう。
ハイプレスの回避も安定したリバプールは以降は安定して時計の針を進めていく。前半の終盤には恐ろしいカウンターから相手を脅かすなど追加点の気配も見せた。
後半の入りもリバプールは快調。ハイプレスを回避しつつアリソン→エキティケ→ヴィルツの流れでひっくり返しての決定機を迎えるなど、敵陣に迫る機会を作り続ける。
なんとかこの時間帯を凌ぎたいボーンマスだったが、リバプールは容赦なく追加点。左サイドでエキティケとスイッチしたガクポがカットインから見事なシュート。ポジションの入れ替わりでボールサイドに寄せつつ、スライドしてきたタヴァニアを交わす冷静さを見せて巧みにシュートコースを作ってみせた。
CSで早い時間帯でガス欠したことを踏まえ、ポゼッション色の増加+SBの早めの交代で手当てを図るリバプール。フリンポン→遠藤の交代やカードをもらっているケルケズを下げる手立ては明確な意図があったように思えたが、それがうまく反映されていたかは微妙なところ。特に右サイドはそのカラーが強く、遠藤に代わってもガンガンオーバーラップをかますなど、キャラクターの変化に伴うポジションバランスの修正がなされなかった印象。
ボーンマスの反撃はその遠藤が高い位置をとるリバプールの右サイドから。バックドアで背後をとったブルックスがセメンヨに繋ぎ切ってゴール。1点差に迫るゴールを手にする。高い位置をとった遠藤とともに気になったのは単一ルートをカットできないファン・ダイク。背走で難しい対応だったのは理解できるが、この辺りの雲行きの見えなさはCSのPK献上から不調を引きずっているように思える。
失点を受けてスロットは守備のユニットを再構築。ゴメスをサイドにおき、エンドウを中央にスライドさせる。だが、インサイドでも遠藤の登場はポジションバランスに反映されなかった印象。トップ下に移動したショボスライの降りるアクションに呼応して高い位置をとる遠藤はクローザーというよりも前半のリバプールの中盤と陸続きの仕事をしていたように見えた。
ボーンマスはまたしても遠藤のいないところから同点に。中盤でスピードに乗ったところからセメンヨがカウンターを完結。一気に試合を振り出しに戻す。
リバプールにとって救いだったのは終盤にもう一度ギアアップに成功したことだろう。サラーを軸とした攻撃が終盤は非常に輝いた。セットプレーからのリスタートでショボスライとのコンビネーションから88分のキエーザのゴールを演出すると、後半ATには自らが左サイドに流れて技ありのゴール。嫌なムードを一気に吹き飛ばした。
紆余曲折がありながらも最終的には本拠地で白星発進。ジョタへの祈りに勝利という最高の報告を添えることに成功した。
ひとこと
攻撃の出力維持はエキティケ+ヴィルツ→サラーのリレーである程度回答は見えた感。その一方で嫌な時間帯をどう安定させるかに関してはまだ模索中。後ろに枚数をかけて重くなりすぎたCSの反省を踏襲しているのだとしたら、普通の中盤仕事をしている遠藤も咎めにくいので難しいところでもある。
ボーンマスは新章の幕開けとしては上々。アグレッシブな前向きの守備と90分間出力を維持できるトランジッションを開幕戦で見せられた。あとは早めの成功体験でパフォーマンスが悪い方に引きずられないことだろう。
試合結果
2025.8.15
プレミアリーグ 第1節
リバプール 4-2 ボーンマス
アンフィールド
【得点者】
LIV:37′ エキティケ, 49′ ガクポ, 88′ キエーザ, 90+4′ サラー
BOU:64′ 76′ セメンヨ
主審:アンソニー・テイラー
第2節 ウォルバーハンプトン戦(H)

最終的には数的優位を生かしたエネルギー差
ともに初戦はメガクラブ相手に敗戦。大量失点での負けとなったが、心機一転切り替えての第2節に臨むこととなる。
その意気込みを感じるようなアグレッシブさが全面的に出た立ち上がり。ペースを握ったのはボーンマス。リバプール戦と同じく高い位置からプレスに出ていくスタイルはこの試合でも健在。ボールロスト直後からすぐさま相手のバックラインやパスを出した先にプレッシャーをかけにいく。
この即時奪回に対してウルブスは困惑。奪った後の一つ目のプレーの質が低く、相手に簡単にボールを奪い返されてしまい、波状攻撃を食い止めることができない。雑に縦につけてしまったり、強引に奪いに行って交わされたりなど不用意なプレーが目についた。
先制点もまさしくこの形から。セメンヨのプレスバックから発生したボール奪取の応酬を制すると、タヴァニアが最後は仕留めてゴール。以降もこの即時奪回起点のトランジッションからボーンマスはチャンスメイク。ウルブスのバックラインを背走させながらシュートを打ち込んでいく。
ウルブスは試合が少し過ぎるとようやく落ち着いて前を向けるように。中央にいきなり刺して強引にカウンターに行くのではなく、サイドに迂回させながらボーンマスの4-4-2を撃退しに行く。
しかし、非保持においてはなかなかこのボーンマスの勢いを止める手立てが見つからなかった印象。前から捕まえに行くためのポイントを掴めず、こちらもサイドから押し下げていくポゼッションでやり返されるとずるずると自陣に下がってしまうように。ウルブスはボーンマスの圧力に屈するような場面が目立つような形で前半の多くの時間を過ごしてしまうこととなった。
ウルブスは2人の選手交代で反撃を狙う後半の立ち上がり。早々に左サイドから交代で入ったウーゴ・ブエノがクロスからチャンスを作るなど、悪くはない入りだった。
しかし、トティ・ゴメスが裏に抜け出した相手を引っ張り倒してしまい一発退場。11人でのプランは5分も立たないうちに崩壊することとなってしまう。
数的優位のボーンマスはじっくりと数の論理を使うというよりはプレスに出ていく強度勝負に出ていくことを選択。高い位置からのプレスで勝負を仕掛けていく。ウルブスはこの状況を利用する形で前進。オープンな展開から反撃の機会を伺うことで試合は比較的フラットな展開に突入していく。
抵抗を続けてきたウルブスだが、75分が過ぎると徐々にボーンマスが保持の時間を増やしていくように。ウルブスはガス欠感が否めず、反撃の気概を削がれてしまう。
攻撃を続けながら時計の針を進めるボーンマスはそのまま試合をクローズ。最終的には数的優位を感じさせるエネルギーさでウルブスを封じ込めて最小得点差で逃げ切った。
ひとこと
反撃のタイミングでの退場はあまりにも痛過ぎる。
試合結果
2025.8.23
プレミアリーグ 第2節
ボーンマス 1-0 ウォルバーハンプトン
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:5′ タヴァニア
主審:トーマス・ブラモール
第3節 トッテナム戦(A)

一方的な時間帯を重ねたボーンマスが連勝をストップ
シティをハイプレスで潰し、開幕2連勝を飾ったトッテナム。トーマス・フランクの元、新しい船出は順調と言えるだろう。今節の相手はボーンマス。開幕からアウェイはアンフィールド、トッテナム・ホットスパー・スタジアムと難所が続く序盤戦となっている。
ともにトランジッションで勝負を仕掛けていくことに特色がある両チーム。トッテナムは立ち上がりにジョンソンからのコンビネーションでボックスに迫ることで先に主導権を握る。だが、押し込む形から早々にゴールに辿り着いたボーンマスが先制点。左サイドからセネシが斜めのパスを入れると、エヴァニウソンが見事なコントロールでゴールを奪う。
このゴールで流れは一気にボーンマスに。左サイドにフォーカスした攻撃から突破を図りつつ、トランジッションでは右サイドに展開し、ブルックスからボックスにゴールに迫る。サイドでも中央でも低い位置でもゴール前でも暴れることができるセメンヨは起点も終点もなんでもこなす大暴れぶりである。
一方のトッテナムは徐々にハイプレスに屈するように。特にタッチ側に追い込まれる形となったファン・デ・フェンが無理に縦パスを入れさせられて、ボールを回収するというメカニズムでボーンマスは再現性のあるボール奪取に成功。ここまで2試合では順調にボールをキープしていたリシャルリソンが完全に潰される展開となった。
トッテナムはゴールはおろかシュートも奪うことができず。トランジッションからゴールに迫りながらシュート数を重ねるボーンマスが明らかに優位に前半を進めたと言っていいだろう。
後半の頭のワンプレーは引き続きボーンマス優勢を印象付けるもの。セネシのフィードからタヴァニアのポストで抜け出したセメンヨも決定機。得点の可能性が高い形を作ったこともさることながら、ロメロがエヴァニウソン潰しに引き出されたところの背後を使われたという崩され方であることも大きい。トッテナムにとってハイプレスを牽制された格好となった。
この攻撃を皮切りに一方的な攻撃を続けるボーンマス。トランジッションからサイドを侵食し、一気にゴールに迫っていく。トッテナムはファン・デ・フェンのドリブルから強引に突破していく形を作っていくが、なかなか単発で攻撃が続かない。ヴィカーリオがなんとか希望を繋ぐ展開が続く。
80分を過ぎたところからはようやく押し込む機会を作ったトッテナムだが、15分余りでは試行回数が足りず。サイドからの攻撃を防ぎ切ったボーンマスが連勝中のトッテナムに土をつけることとなった。
ひとこと
ペースを取り戻すのがあまりにも遅かったトッテナムだった。
試合結果
2025.8.30
プレミアリーグ 第3節
トッテナム 0-1 ボーンマス
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
BOU:5’ エヴァニウソン
主審:サイモン・フーパー
第4節 ブライトン戦(H)

速攻の連打で後半の主導権を引き寄せる
いきなりヒンシェルウッドの負傷からスタートしたこの試合。ブライトンにとってはかなり幸先の悪いスタート。早々にアヤリがピッチに投入されることとなる。
ボーンマスは今日も元気にハイプレスでスタート。敵陣からGKにまでプレッシャーをかけていく。ブライトンはCHとCBが連携しながらポゼッション。ミルナーが左右に動かしながらボーンマスのプレッシャーを回避していく。
高い位置でブライトンのパスを食い止めるとボーンマスはサイドから枚数をかけた攻撃を行うように。ドリブラーが中央につっかけながら横断する形でサイドにボールをつけるとCBも高い位置を取りながらクロスを上げていく。
押し込みながらプレーをするボーンマスはそのまま先制点をゲット。右サイドからのパスを受けたスコットが反転しながら左足でミドルシュート。見事に試合を動かす。ブライトンはCHがややサイドに流されすぎてしまったか。中央でスコットのマークが間に合わないこととなった。
一方のブライトンはデ・クーパーが負傷。前半のうちにすでに2枚をアクシデントで消化してしまうことに。それでも右サイドではミンテが奮闘。馬力のある陣地回復から少しずつリカバリーを図る。
ボールを持つ時間は少しずつ長くなっていくブライトンだが、なかなかインサイドに差し込むポイントを見つけられず。ボーンマスのCHの潰しによってボールを止められてしまう。アダムス、スコットの2人のフィルターを超えることができなかった。
迎えた後半、ブライトンは早々に同点ゴールをゲット。右サイドからのクロスを見事に沈めたのは三笘。ファーサイドで打点の高いヘディングでフィニッシャーとしての役割を果たす。
このゴールで攻める時間を長くしていくブライトン。前半は右サイドが目立っていたが、後半は左サイドからチャンスメイク。カディオグルが入って旋回要素も入ったことで神出鬼没のポジショニングでボーンマスを押し込んでいく。左右のWGを軸とした攻撃で流れを作っていく。
しかし、そうしたところでミスが出てしまうブライトン。ダンクのパスミスからカウンターを喰らうと、そこからの速攻でエヴァニウソンがファン・ヘッケに倒されてしまいPKを獲得。このPKをセメンヨが決めてリードを奪う。
このカウンターからボーンマスは速攻祭りを開催。中盤でブライトンのミスを咎めたところからエヴァニウソンとセメンヨを軸としたファストブレイクからブライトンの守備陣を背走させていく。
1点のリードではあるが、危なげなく逃げ切ったボーンマス。中盤できっちりとブライトンのチャンスを摘みながら時計の針を進めて試合をクローズ。見事に連勝を飾った。
ひとこと
ミロサヴリェヴィッチ、いい意味で目立たず普通にプレーしていた。末恐ろしい子。
試合結果
2025.9.13
プレミアリーグ 第4節
ボーンマス 2-1 ブライトン
ヴァイテリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:18′ スコット, 61′(PK) セメンヨ
BHA:48′ 三笘薫
主審:ピーター・バンクス
第5節 ニューカッスル戦(H)

アタッカーのシャープさが相手を上回れず
ここまでは上位との対戦でも臆せずに立ち向かうことができているボーンマス。バックラインを中心に主力の入れ替えが発生する難しいシーズンではあるが、新しいスカッドで前向きにチャレンジすることができている。特にアウェイで元気のないニューカッスル相手に今節も勝利を狙う。
ニューカッスルは5-4-1という背後重心のフォーメーション。バックラインにプレスをかけない選択を敢行する。ボーンマスはまずはエヴァニウソンのロングボールから前に進んでいく。背後重心のニューカッスルだが、2CHの場合はなかなか段差をうまく守れない印象。この試合でも例外ではなく、ギャップに入り込むタヴァニアを捕まえきれず。ゴールに迫られる危ういシーンも迎えることとなった。
保持に回るとヴォルテマーデのロングボールからチャンスを作りにいくニューカッスル。収まる率に関してはそこそこといったところだろうか。どちらかといえばショートパスからCH脇のトナーリから右サイドに侵入する形の方が有望だったと言えるだろうか。
ただ、アタッキングサードにおける攻略に関してはニューカッスルは苦戦。ドリブラーがいない分、縦に揺さぶる成分が明らかに普段よりも少なかった。
時間の経過とともにヴォルテマーデのマークは厳しくなっていく。SBのトリュフォーも含めて、後ろ向きの相手に厳しくアプローチをかけることで前線に起点作りを許さない。
ただし、ボーンマスの方もアタッカーのシャープさはここまでの試合に比べるとやや割引感があった。前半は互いにチャンスらしいチャンスを作れないままスコアレスでハーフタイムを迎えることとなる。
後半、ボーンマスはハイインテンシティの入り。敵陣深くまでニューカッスルにハイプレスをかけることでロングボールを蹴らせて回収。高い位置から人数をかけてのポゼッションから波状攻撃を図っていく。
中央のヴォルテマーデを封鎖されたニューカッスルは幅を広げながらサイドの裏をとることで陣地回復。しかし、ファストブレイクのシャープさはウィロックではなかなか出てこないのが難しいところ。ということでニューカッスルはアタッカーの入れ替えを敢行。ただし、バランスを大きく変えず、5バックはキープしたまま残り時間を過ごす選択を行う。
しかしながら、後半もアタッキングサードのもう一味が足りなかったボーンマス。ニューカッスルも含めて交代選手が試合を活性化させる動きはできずスコアレスドローのまま決着。互いに勝ち点1を分け合う結果となった。
ひとこと
アタッカーの精度が相手の守備ブロックを上回れなかった一戦だった。
試合結果
2025.9.20
プレミアリーグ 第5節
ボーンマス 0-0 ニューカッスル
ヴァイタリティ・スタジアム
主審:ロベルト・ジョーンズ