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「揺らがない」~2025.8.31 プレミアリーグ 第3節 リバプール×アーセナル レビュー

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レビュー

中も外も想定外の封殺

 第3節にして早くも実現した昨季の首位チームと2位チームの大一番。前日にトッテナムが敗れたため、この試合のキックオフ前の段階で全勝チームはアンフィールドにこの日集まったリバプールとアーセナルだけということになる。

 序盤から高い位置からプレスに出ていくのはアーセナル。ウーデゴール、ハヴァーツ、ジェズスといった旗頭がいない状況においても、高い位置からのプレッシングを敢行。さすがに同じようにとはいなかったが、前線がプレスのスイッチを入れるタイミングで中盤が呼応するなど、連動という面ではあまり問題はなかったように思う。

 リバプールはこのハイプレスに対して、左右に動かしながらポゼッション。丁寧に相手の誘導を外しながら前にボールを進めていく。

 サイドと中央の両面で進めていくのが今季のリバプールのポゼッション。どちらかといえば中央の比率が高いのが立ち上がりの局面の特徴だ。だが、その中央の封鎖に立ち上がりのアーセナルは成功。背負うプレーで脅威となっているエキティケのところは緊急登板のモスケラが封殺。この日の背中からのコンタクトに関しては寛容というプレー基準も相まって、力強いコンタクトでボールを収めることを許さない。

 当然、インサイドはヴィルツに厳しくマークをつけているし、彼と入れ替わって高い位置を取ろうとするマック=アリスターも潰しに成功。行かれてしまいそうなシーンではマルティネッリのプレスバックで潰すなどメリハリのある対応で進撃を許さなかった。

 そのため、インサイドに差し込むプレーを選ぶこと自体が控えめ。序盤から右サイドのサラーへの対角パスを使う頻度が今季にしては多かった。

 アーセナルファンとしてはこのサラーのマッチアップとして対峙したカラフィオーリの出来がこの試合一番の発見と言えるかもしれない。本調子ではなかったことはあるかもしれないが、対面でぶち抜かれずに済むというのはなかなか。多少、後手を踏んでても攻撃に打って出た時のメリットとしてこのサイドを活用したかったアーセナルとしては、このマッチアップで劣勢にならなかったことは大きな意味がある。

降りて受けるアクションの正当化

 一方のアーセナルも低い位置からのポゼッションから前進。中央に下がって受けるライス、スビメンディを起点に左右にボールを振り分けながら前進する。モスケラはこの場面でも冷静に対応。対面がハイプレスにやってくる部分もものともせず、微妙に方向を変えながらキャリー。序盤こそややバタバタ感があったものの、問題なく適応した。

 リバプールにとって面倒くさかったのは降りてくるライスだろう。ヴィルツはスビメンディをマークしたいのだけども、彼が降りてくるのが邪魔。ならば、CHが出ていけばとなるかもしれないが、グラフェンベルフはサラーの背後のカラフィオーリが進撃してくるスペースをケアしていたし、相棒がややサイドに流れ気味な中でマック=アリスターが降りていくのも微妙なところがある。

 例外的にアーセナルのビルドアップを阻害できたのは38分のファン・ダイクのボール奪取。降りる相手を制圧するのであれば、腹を決めて前から捕まえにいくと心に決めるやり方が一番有効。それを体現したプレーだった。

 だが、そうした腹を決めるのはなかなか簡単ではない。ファン・ダイクが潰しに成功した以外のシーンでは左右に安定してボールを振り分けられたアーセナル。左サイドはローテをしつつ、カラフィオーリをサラーの背後から運ぶことができる形を模索する。グラフェンベルフにはこの形から警告を引き出した。

 右サイドで存在感を放っていたのはマドゥエケ。広いスペースでの勝負でケルケズとのマッチアップで優位を取る。そのため、ポゼッションのいく先というだけでなく、トランジッションの届け先という意味でもこのマッチアップは機能。先に述べたマルティネッリのプレスバックの潰しからボールを渡したのもマドゥエケだし、GKまでプレスを引き付けての長いボールの預け先もここだった。

 ライスの降りるアクションなど、やや後方に重い陣形が多かったアーセナルのビルドアップ。だが、引き付けた先に広いスペースで勝負できるマッチアップがあるのであればお釣りは来る。マドゥエケのマッチアップでの優位はこの日のアーセナルが取っているプランの正当化とも言えるだろう。

 残念だったのは押し下げる機会におけるアーセナルの武器であるセットプレーがこの日は刺さらなかったことである。気になったのはGKをブロックする役がいなかったこと。初めから跳ね返されてセカンドを回収することにフォーカスしたようにも見えたが、ユナイテッド戦でやっていたサリバの不在が効いているのであれば難しいところ。いずれにしても惜しいと思えるシーンすらない状態なのはもったいないところである。

 もったいなさが際立ったのはセットプレー以外でチャンスが少なかったから。両チームとも隙を狙って積極的なトランジッションを行っていたが、両GKをはじめ事故的に背後に出てくるボールに対しても冷静に対応。ミスから簡単に試合を動かさせない気概を感じるパフォーマンスだった。試合は0-0のスコアレスでハーフタイムを迎える。

スーパーな解決策が試合を決める

 迎えた後半、まずはリバプールのポゼッションによるプレス回避からスタート。少しずつカバーできるところを探しながらパスルートを切り拓いていく。アーセナルはライスのカバー範囲の広さが光る展開で簡単にはスペースを開け渡さない。

 アーセナルの前進のルートはロングボールが追加。ギョケレシュにもう1人の味方を重ねる形でやや事故的に背後を狙うボールから前進できるかを模索するスタートとなった。

 狙いが身になったのはリバプールの方だろう。51分のグラフェンベルフがライン間で受けたシーンはこの日ようやく見せたインサイドを切り拓くパスワーク。瞬間的にフリーとなったヴィルツが落としに成功したところからグラフェンベルフがライン間への侵入まで進むことができた。

 このシーンを皮切りにリバプールは少しずつライン間に入り込むプレーが出てくるように。スビメンディの行動範囲の限界とメリーノ、ギョケレシュのプレスバックが少ないことにより、中盤は枚数が間に合わない場面が目立つようになっていく。時間経過とともにこの傾向は進んでいったのでボールプレーが不安定でも中盤をカバーする守備ができるマルティネッリは均衡を保つという観点ではどんどん外しにくくなったのは確かだろう。

 リバプールはショボスライがライン間に登場したりなど攻め上がる選手を入れ替えることで工夫。相手にプレスの狙いを絞らせないようにしたのもアーセナルにとっては難しくなったはずだ。

 本来であればライン間に侵入したことで前を向くことができた時点でリバプールの敵陣攻略の準備は整ったと言える。しかし、この日はライン間で前を向いた選手のプレーが軒並み不出来。ヴィルツやグラフェンベルフが普段のクオリティを出せればより早く試合は決着した可能性がある。

 前からのプレスを取り戻したいアーセナルはウーデゴールを投入。ボールプレーの改善のためにマルティネッリ→エゼを交代する同じタイミングで敢行したことを踏まえれば、中盤の守備に貢献できるウーデゴールの投入は頷けるものであった。

 75分のプレーはエゼの豆乳の意義を感じるもの。左サイドでのゆったりとしたリズムから放たれたウーデゴールへの横パスは絶妙。ギョケレシュがウーデゴールからの浮き玉に先んじて動き出せていれば、リバプールの誰にも捕まらない瞬間が確かにあった場面だった。

 リバプールもジョーンズを入れることでライン間で仕事をできる人を増やすなど、この時間は互いにアタッキングサードの改善が狙う交代が目立つ展開だった。どちらの交代も一定の効果を見せる中で決め手になったのはスーパーな一撃。ショボスライのスーパーなフリーキックがこの試合のマッチウィナーに。ラヤが先読みして踏み切ってなお届かなかったコースに蹴られた一撃は紛れもなくスーパーゴールであった。

 ダウマンを投入し、右サイドからの打開を図るアーセナル。だが、直後にティンバーが負傷したことにより、右サイドでの仕掛けを控えなければいけなくなってしまったのは彼にとっては不運。2,3回あったドリブルのチャンスも後半はリズムを取り戻したケルケズに封じられてしまった。

 追いかけるアーセナルを振り切ったリバプールが全勝対決を制して3連勝。昨季の王者が堂々とテーブルのトップに君臨する形でプレミアリーグは今季最初のインターナショナルブレイクを迎えることとなった。

あとがき

 この日の戦力でできることはやったかなというのが正直なところ。ハヴァーツがいればプレスのリレーはより切れ目はなく、後半にライン間に通される場面は少なかったかもしれないし、サカがいればマドゥエケと連携しながら90分間ケルケズを苦しめることができたかもしれない。オープンプレーでは存在感を見せたモスケラだが、セットプレーではサリバの存在はさらなる上積みになったかもしれない。自分が思いつくこの試合のたらればはすべて欠場者がらみだ。

 アンフィールドを今年も攻略できなかったのは残念極まりない。この日のリバプールは90分間のゲームコントロールに優れた素晴らしいチームだった。それは認めなければいけない。だが、リーグ戦はマラソンである。今季のアーセナルが他のチームに負けるべきでない部分は1シーズンを通した安定感。多少のイレギュラーがあっても揺らがず、ブレが少ないクオリティを示し続けることである。

 週2試合ハードな相手と戦っても、怪我人が溢れるようになっても各ポジションに複数人を準備したスカッドなのだから、揺らぎの具合を減らして1年間を戦い抜く必要がある。その部分はイサクを獲得した今のリバプールのスカッドでも明らかにアーセナル側に分があると思っている。

 アンフィールドの負けを悔しがりつつ、揺らがず次の試合の勝利のために準備する。そうした姿勢を代表ウィーク明けに見られることを今から楽しみにしている。

試合結果

2025.8.31
プレミアリーグ
第3節
リバプール 1-0 アーセナル
アンフィールド
【得点者】
LIV:82′ ショボスライ
主審:クリス・カヴァナー

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