Fixture
明治安田 J1リーグ 第38節
2025.12.6
浦和レッズ(8位/15勝11分11敗/勝ち点56/得点41/失点39)
×
川崎フロンターレ(7位/15勝12分10敗/勝ち点/57得点67/失点53)
@埼玉スタジアム2002
戦績
近年の対戦成績

直近5年間の対戦で浦和の3勝、川崎の6勝、引き分けが9つ。
浦和ホームでの戦績

直近10戦で浦和の2勝、川崎の3勝、引き分けが5つ。
Head-to-head
- 直近4試合の公式戦の対戦のうち、3試合は引き分け。勝敗がついた直近の対戦は川崎が延長戦を制しており、90分で決着はついていない。
- 直近8試合の公式戦での対戦でクリーンシートがない。
- 直近13試合でアウェイチームの勝利がないカード。
- 川崎は浦和とのアウェイゲームで直近6試合1得点が続いている。
スカッド情報
- 金子拓郎はチームを離脱中。
- 松尾佑介、安部裕葵はベンチ外が続く。
- 丸山祐市は長期離脱中。
- 大島僚太、三浦颯太も欠場が続く。
- 橘田健人は手術を敢行し残りのシーズン全休。
- 伊藤達哉は累積警告による出場停止。
予想スタメン

Match facts
- 直近10試合のリーグ戦で複数得点はなく、7試合では無得点。ただし、ルヴァンカップ準々決勝の川崎戦では複数得点を挙げている。
- しかし、ホームでのリーグ戦では直近10戦で1敗だけ。6試合で勝利を挙げている。
- ホームでのリーグ戦では今季3敗。いずれも無得点による敗北。
- 直近6年間のリーグ最終節で勝ったのは1回だけ。2023年の札幌戦。
- マチェイ・スコルジャ監督は直近5試合の川崎戦で未勝利。
- マリウス・ホイブラーテンは今季ここまで3754分出場。浦和の選手の中でこれより多いのはダニエル・ボザ(3776分)のみ。
- 直近の公式戦で5戦1勝(D1,L3)
- アウェイゲームでは直近3試合勝ちがない。
- 直近3試合のアウェイゲームで2回退場者を出している。
- 直近8試合のシーズン最終節は負けなし。7試合で勝利を挙げている。
- 伊藤達哉に得点がない試合は直近6試合で勝利がない(D1,L5)
- 脇坂泰斗は浦和相手に4得点5アシスト。これ以上に得点に関与しているのは清水(6G,5A)のみ。
予習
第35節 町田戦
第36節 広島戦

第37節 岡山戦

展望
異なる方向性の悩み
組織だった守備をベースに強固なチームを組むという青写真はシーズンの最後まで叶わなかった川崎。スケジュールが緩和した秋以降も同じ課題の繰り返しで複数失点が続くチームを見つめることしかできなかったサポーターにとっては苦い思いが続く下半期となった。
そんな長谷部体制初年度の最終戦の相手は浦和。こちらも守備組織の構築に定評がある指揮官を呼びながら、サポーターから「こんなはずじゃなかったのに」というため息が聞こえてきそうなチームである。
もっとも、大量失点の代わりに大量得点をとっている川崎と比べると、浦和の悩みの方向性は異なる。相手をそれなりにロースコアに抑えることはできているが、それ以上に得点を取ることができないというのが彼らの悩みである。
中身を見ていると定点攻撃のポイントを作れないところに苦しさを感じる。石原の絞りや関根の列落ちなど4-4-2から一手間を加えて中盤を3枚にしてのビルドアップを行うのが今の浦和の組み立て。サンタナ、小森に代わって中央を務めることが増えたテリンはポストワークから距離の近いパスワークを行うというスタイル自体は中央密集な陣形とは相性はいいと思うが、いかんせんインサイドは狭い。
大外から突っつける武器があればいいのだが、あいにくその点で一番貢献できそうな男はチームから離脱中。中央一辺倒となってしまうとどうしても難易度の高いパスの連続で最後までボールをつなぐことができない。
できれば、後方は陣形を広げつつグスタフソンからライン間で輝けるサヴィオというシンプルな縦パスから進撃していきたい。だが、そうした広げたところからパスを入れていくシーンが増えてこないのが今の彼らの悩みだ。
どうせ狭くなってしまうのであれば、CBが軽くパスを回して相手にハイプレスを仕掛けさせて、間延びしたところにロングボールを入れるという形を積極活用している。空中戦で無双のターゲットからの攻撃設計があるわけではないのだが、消去法でここに行き着いていたのかなというのが正直な感想だ。
守備は4-4-2のコンパクトな布陣が基本。ローブロックできっちりと人を置くことができれば強固であり、ボックス内での跳ね返しはJリーグでは安定した部類であると言えるだろう。
その一方で相手にボールを動かされる最中だと微妙にホルダー周辺のプレスに優先順位をつけることができないのが気になるところ。ふとしたところから芋蔓式にプレスが崩れていくという現象はそれなりに見る。
広島戦はそうしたシーンの連続で、初手の構造のギャップを埋めきれないまま文字通りのボコボコにされてしまった。岡山戦では同じ3-4-3相手でもまだ修正できた方ではあるが、ボール周辺の守備の精度は継続した課題だと言えるだろう。
収支に見合ったプランへのトライ
シーズンまとめ記事には少し早いかもしれないが、今季の川崎の苦しみはやはり守備組織の不安定さに帰着すると言えるだろう。特にSH周辺の守備の規律の乱れが大きく、センターラインでそれをなんとか力技でカバーできる脇坂の不在時にはこの欠点が際立った。
夏以降にこうした課題が解決しなかった要因は前線のタレントをあくまで生かすというプランにあるだろう。全否定できなかったのは川崎が前線の個人に前進を頼った前輪駆動のチームに仕上がっていたから。
その中でも後半戦で異彩を放っていたのは伊藤達哉の大活躍だろう。2枚がついてきてもボールを動かし、相手をずらして作り出したコースからGKの間合いを外した正確無比なコントロールシュートを飛ばすことで得点を量産。守備の粗さや自由なポジショニングを結果で黙らせてきたタレントだ。
しかしながら、そんな彼は最終節に累積警告で不在。残されたエリソン、マルシーニョ、ロマニッチ、家長は揃って説得力のあるパフォーマンスを見せておらず、伊藤がいない前線は守備の課題の代償としては物足りなさが残ってしまう。
限られた準備期間ではあるが、すでに伊藤はいないことはわかっているのだから、少なくとも浦和戦には「収支を合わせるプランへのトライ」はして欲しいところ。収支が見合うかどうかわからない上にすでに課題の抽出が済んでいる前線に前進を託すプランはあまり魅力に感じない。
WGは立ち位置を守り、幅をとりながらインサイドのスペースを開ける。WGのポストやCB-SBの関係性から中盤をフリーにしてラストパスやクロス、シュートを狙うという川崎にとって立ち帰れる所を徹底的に使ってほしい。縦に急ぐ場面はギャップができた時や相手のミスからのカウンターに特化する。
非保持は4-4-2ブロックを組みつつ、相手がサリーした時はSHを守備のスイッチ役としてSHとCHの連動から前への圧力を高めていく。やむを得ず最終ラインまで押し下げられた時は重心を下げて枚数をかけてくる浦和のボックス内のクロス対応にフォーカス。マイナスのパスを出させることに成功したら、ラインの高さを回復しもう一度押し下げる手間をかけさせる。
この試合に向けてできることというよりはやってほしいことという方が正しいかもしれない。簡単ではないから修正できないのだろうし、頼りにある前線の代わりになるプランがなかなか見つからないから前輪駆動のチームになっていったのだろう。それでもこの試合ではそこにしがみつく理由は薄いのだから、それならば来年のこのチームが今季のチームからどう脱却するかを楽しみにできる90分にしてほしい。
最終戦は両軍の主力にお別れがある。エモーショナルな日になるだろう。だけども、エモーショナルなものだけではサッカーは大満足ができないというのは広島戦でもうわかった。未来に続く90分を描き、来年のチームに期待感を持つ形で2025年を締めくくりたい。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)
