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レビュー
両面でリズムをつかめないアーセナル
ついに25-26のチャンピオンズリーグが開幕。アーセナルの初戦は監督の縁の地であるバスクから。11年ぶりにCLが開催されるサン・マメスでビルバオに挑んでいく。
まずは様子見のロングボールからスタートする両チーム。序盤できっかけを作ったのはビルバオの方だろう。長いボールの対応が怪しいモスケラのところをイニャキで狙い撃ちにする形で敵陣に入っていく。
ボールを収めたところからセカンドボールを回収。サイドに展開する形からクロスを上げていく。狙っていたのは右サイドから。しかしながら、ここからの跳ね返しに関してはアーセナルが安定。簡単にボックス内で自由を与えない。
アーセナルは前進のきっかけがなかなか掴めない立ち上がり。カラフィオーリが左の大外に入るオーソドックスな配置からのU字ポゼッションでボールを動かしていく。
ライス、スビメンディといったCHが下がりながらのアクションをするが、なかなかギャップを作ることができず。オーソドックス+後方重めのポゼッションで動かしていく形で様子を探っていく形が裏目に出た格好。アーセナルがチャンスを作るどころか、インサイドへのパスはビルバオにカットされてカウンターをくらってしまうケースもあった。
それであれば非保持できっかけを作りたいところであるが、なかなかそちらでもアーセナルがリズムを掴むことができず。サンセト、ハウレギサール、ヴェスガの3枚でローテーションしながらポジションを入れ替えていく。特にハウレギサールは反転から前進していくきっかけを作っていくことができる。
ギョケレシュ、メリーノの2トップに入るコンビは前からのボール奪取のきっかけを掴めなかった様子。23分にはライスが列を上げたにも関わらず、ギョケレシュとメリーノがウナイ・シモンにプレスにいかないことに不満のジェスチャーを見せていた。GKがオープンな状態であれば、この日のビルバオはロングボールの収めどころを見つけられるからだろう。
中盤ではフリーマンを作るパスワークを許してしまい、前はプレスに出ていくきっかけを作ることができないという苦しい展開。アーセナルはラインを下げることとなってしまい、フォレスト戦のように非保持から高い位置でボールを奪うアクションを見せることができなかった。
一進一退のジリジリした展開に
どちらもミドルゾーンで構える形でジリジリとした展開となったこの試合。特にここは勝っておきたいアーセナルに関してはなんとか打開するきっかけを作りたいところだろう。
下がる動きでギャップを作れないのであれば、必要なのは当然裏をとっていくアクション。その動きを担ったのは左サイドに流れるギョケレシュ。背後を取るアクションから一気に奥行きを作っていく。
それ以外にも左サイドからボールを動かしながら前進をするきっかけ作りを進めていくアーセナル。エゼ+スビメンディのコンビネーションからの対角パス、そしてカラフィオーリからのドリブルでの前進などがその要素であった。
逆にここに絡めていなかったライスはやや苦戦。非保持でも上述の通り、前からのプレスに連動しての圧力はかけられていなかったので、やや不完全連勝な序盤戦だったと言えるだろう。
左サイドからの工夫を引き取っていたのは右サイド。マドゥエケの突破力は今日もアタッキングサードにおける大きな武器となっていた。
右サイドではティンバーのオーバーラップも積極的。高い位置を取ってマドゥエケをサポートしていく。
しかしながら、このティンバーのオーバーラップはビルバオが狙っていたところ。ファストブレイクからビルバオから見て左サイドから背後を取り一気に陣地回復をしていく。
押し込んだところからはやり直しを行うビルバオ。逆サイドの右では枚数をかけた形でリカバリーをしていく。アーセナルは陣地回復の試行錯誤を実施していたが、ビルバオを一方的に押し込むことはできず。一進一退の攻防のまま試合の時計の針は進んでハーフタイム。スコアレスで前半を終えることとなった。
引き込みVSハイプレスの鍔迫り合い
後半、アーセナルは主導権を握るべくビルドアップにおけるローテーションからビルバオの高い位置からのプレスに対応していく。左サイドのエゼのローテーションからの侵入は46分。フォレスト戦を彷彿をさせるような流麗なポジションチェンジからボックス内への侵入を果たす。
低い位置でのローテーションでもビルドアップでボールを動かしていくアーセナル。メリーノがサイドの低い位置に張り出していく形からフリーになると、右サイドに顔を出したギョケレシュのポストから右サイドの背後に出ていくマドゥエケが裏をとっていく。
深い位置に相手を引き込んでくるビルドアップも引き続きトライ。しかしながら、こちらの成功率はまちまち。
引き込んだ結果、ビルバオがパスカットに成功するパターンもあり、カウンターからのチャンスメイクも。SHが高い位置に出ていくことによって前方スライドの意欲は前半に引き続き十分。アーセナルはCBのモスケラとガブリエウのカバーからこうしたピンチの芽を摘んでいく。
アタッキングサードの侵入においても左サイドではローテーションの頻度が減り、右サイドではマドゥエケの対面のボイロに苦戦。フォレスト戦では効果的だった、縦突破からのクロスもウナイ・シモンが準備万端で待ち受けているインサイドには通用しなかった。
というわけで前線の入れ替えを敢行して主導権を握りにいくアーセナル。トップに入るギョケレシュに代わってトロサールを投入。低い位置に下がりながらの起点作りにトライしていく。
低い位置で起点作りをするアーセナルと、高い位置から圧力をかけていくビルバオの鍔迫り合いに決着をつけたのは交代選手。降りてボールを受けるトロサールから裏へのパスを引き出したのはマルティネッリ。パスを受けたまま進撃をしていくと、ここから一気にゴールまで。交代直後のファーストタッチとなったマルティネッリが同じく途中交代のトロサールのエスコートを受けて貴重な先制ゴールを生み出してみせる。
先制点を決められても集中を切らさなかったビルバオは引き続きハイプレスを狙いつつ、押し下げられた場合はサイドからシャープにカウンターを狙っていく。しかしながら、中央のプレスバックとCBの強度でアーセナルが粘りを見せる。
サイドでのデュエルを制したスビメンディを起点として横断を見せたアーセナルは左サイドからマルティネッリが粘りを見せてアシスト。インサイドで巧みなシュートセンスを見せたトロサールが試合を決定づけるゴールを決める。
難所で苦戦をしたアーセナルだが、目的の勝ち点3は確保。目標の8位以内に向けて好発進を果たした。
ひとこと
交代選手での活性化に成功したアーセナル。リーグ戦ではなかなかきっかけが掴めなかったマルティネッリとトロサールが輝くを果たすなど、前線は日替わりヒーローが現れており、チームとしてはいい循環。一方で後方のブロックは固定メンバーが力を発揮。やや特定のメンバーに負荷がかかっているのは気になるところだが、ここ数年のアーセナルを牽引したメンバーが帰ってくるまでは頼りになる新戦力の力を借りてなんとか勝ち星を重ねていきたい。
試合結果
2025.9.16
UEFAチャンピオンズリーグ
リーグフェーズ 第1節
アスレティック・ビルバオ 0-2 アーセナル
エスタディオ・サン・マメス
【得点者】
ARS:72‘ マルティネッリ, 87’ トロサール
主審:ドナタス・ルムシャス