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「解けた18年間の呪い」~2026.1.20 UEFAチャンピオンズリーグ リーグフェーズ 第7節 インテル×アーセナル レビュー

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レビュー

アンカーの自由化は一旦棚上げ

 直近5回の対戦で勝利がないイタリアの地でのアウェイゲーム。アーセナルが勝利をするにはエマニュエル・アデバヨールが2008年に同じくミラノの地で決めた試合以来の得点をまずは手にする必要がある。

 序盤はインテルのハイプレスを回避するところからスタートするアーセナル。インテルがきっちり網をはっていたのはインサイド。ここで降りてくる選手に対しては厳しいチェックすることでボールハントしていく。

 非常に特徴的だなと感じたのは降りて受ける選手に対するインテルのプレスがうまいなということ。反転しようとするとかなり厳しく咎めており、ティンバーやエゼ、メリーノといった選手たちはターンできずに高い位置から咎められていた。

 アーセナルの解決策としてまず挙げられるのはサイドのトロサールを縦パスの預けどころにすること。挟まれにくく、反転において優位に立つことができるマッチアップを作ることで前を向く選手を作る。

 ただ、メインとなる解決策はもう1つの方だろう。スビメンディのサリーでバックラインを3枚にする形である。インテルのような2トップに対してまずつっかけていきたいのは2トップ脇のスペースなのだが、このスペースをアーセナルが絞るSBや降りるIHで突こうとするとインテルのIHが3枚目のプレス隊として迷わずついてくる。

 アーセナルは試行錯誤した結果、スビメンディが最終ラインに入り、3バックのように変形することでCBが2トップの脇をつく形に辿り着く。この形であればインテルの守備陣がついてくることはないということがわかったのだろう。開くサリバからボールを運ぶシーンがアーセナルは出てくるように。

 降りる選手が厳しいチェックで浮くことができないため、スビメンディの列調整で相手のプレスを外してバックラインに数的優位を作るというのがこの日のアーセナルのビルドアップのメカニズム。最近のアーセナルはアンカーを変えていくことでプレスを外したり、スビメンディが攻め上がったりするという攻撃のアクセントをつけていたのだが、このトレンドはこの日は明確に変化。降りてきても問題なく捌くことができるであろうウーデゴールの不在と反転を許さないインテルのプレスの巧みさにより、アーセナルはここ数試合とは異なるビルドアップの問題解決を行なった。

 バックライン周辺でフリーマンを作ったアーセナルは右サイドにボールを展開。ボールを預けたサカを軸に陣形を押し下げていきサイドアタックを敢行する。

 押し込んだところからアーセナルは先制点をゲット。ティンバーのダフリ気味のシュートに動き出したジェズスが合わせて先制ゴール。ついにアデバヨールの呪いが破られることとなる。

 やや狭いスペースの崩しではあったが、ルイス=スケリー→ティンバーの横パスが通ったことが得点のきっかけとするのであれば、その手前のエゼとメリーノの細かい縦パスが作り出した奥行きを活用したこととなる。特に縦パスを入れたエゼのプレーは彼らしい駆け引きから生まれたもの。この試合ではなかなか受ける頻度は上がらなかったが、彼らしいプレーの兆しが得点に繋がったことは朗報だと言えるだろう。

加速するための攻撃作りをするインテル

 インテルのボール保持に対してアーセナルはハイプレスでのスタート。特に中盤は人に対する意識が強く、メリーノ、エゼ、スビメンディがマンツーをベースにインテルの3センターを捕まえにいく。

 序盤はいかにゾマーに長いボールを蹴らせるか?というところがアーセナルのハイプレスの成功の鍵になったと言えるだろう。対空時間の高いボールを蹴らされる格好であれば、アーセナルのCHがスライドしてCBと挟み込みながらインテルの2トップを挟み込むことができる。こうなると、インテルは簡単に前線にボールを収めることができない。

 インテルとしてはまずはアーセナルの前線からのプレスを回避し、ゾマーが蹴ることを消極的に選択するケースをなるべく避けたいところ。そのためにはIHが大きく動きながらボールを引き出し、アーセナルのマンツーを解放する形の駆け引きを行っていく。

 バックラインは数的優位を確保できているので、ゾマーを活用しながらアーセナルに対して+1を作り、ホルダーをオープンにすることができればそれでも問題はない。バストーニの列上げなど後方でもバグを作る作業は行っていた。インテルの2トップはアーセナルのDFを背負いながら逆サイドへ展開するための落としはできていたので、アーセナルのプレスを誘因することができていれば、前線にボールを当てる形からチャンスを作ることができる。

 CFのポストが成功すれば、まずは選択肢は背後。抜け出せるFWがいれば素早くそこを使ってゴールへの最短ルートを狙う。難しければ次点はWBからのポジトラ。ディマルコやエンリケの素早い攻め上がりからサイドを抉り、一気にゴールに向かう。

 スローダウンをしてしまうと、インテルが攻め切るのはなかなか難しい。静的な状態からサイドでの1on1で打開できるウインガーはいないし、インサイドも高さがあるわけではない。早めのクロスを上げても陣形が整っていればアーセナルのCBにはカットされてしまう。41分のサリバのクリアは絶品。ティンバーが1on1において抜かれない確信がないと寄っていってしまいそうなところを我慢。彼がニアで触ることができなければインテルの決定機になっていたはずのシーンだ。

 インテルも2トップの動き出しに工夫を入れることでチャンスを広げていく。ラウタロの左サイド流れやテュラムの背後へのランなどドンと構えてのポストとはテイストの違うアクションをすることでアーセナルを揺さぶる。

 同点ゴールのきっかけとなったのもテュラムの動き出しがきっかけ。ルイス=スケリーの背後にモスケラの死角から侵入する形でアーセナルのDFラインのギャップをつく。抜け出してシュートの跳ね返りまで引き起こしてしまえば、アーセナルの守備の体型はスクランブル。マイナス方向への押し上げが間に合わなかったところをスチッチが仕留めて同点に追いつく。

 再び均衡した試合だが、アーセナルは伝家の宝刀で勝ち越し。ファーからGK周辺にワラワラと集まる動きから1人だけファーで余ったトロサールからの折り返しをジェズスが押し込んでリードを奪う。

 再びインテルは追いかける展開に。早めに攻め切る形をどのように作るか?というのがこの試合の彼らのテーマ。CFへのポストからオープンなサイドへのポジトラからの攻撃完結を狙っていくが、前がかりなWBが開けたスペースを逆にアーセナルがカウンターでつくという場面もあった。

 アーセナルは保持で一息を入れるなど試合のテンポをコントロール。スコアでも1点優位でハーフタイムを迎えることとなる。

縦に速い攻撃勝負は上等

 後半、追いかけるインテルはハイプレスからスタート。メリーノを捕まえたところから高い位置を押し込んでいく。ハイプレスに出てくるインテルに対して、別格だったのはスビメンディとラヤだろう。降りて受けるアクションはこういう相手には怖いのだけども、スビメンディはボールを受ける前の段階で逃しどころを認知してから受けているのが素晴らしい。ラヤもどこに彼がコントロールしたいかをわかっているようにパスを置くので、この2人であれば奪われて失点につながりかねない地雷パスもプレス回避に変わってしまう。先に挙げたアンカーの入れ替えというメソッドがインテル相手には効かなかったことも踏まえて、この試合ではスビメンディへの依存度は結構高かった。

 サイドへの逃げ道を見つけることができたアーセナルはゆったりとしたポゼッションから前進。サイドからきっちりと押し込みつつ、勝負のパスを時折入れながらゴールに迫っていく。

 インテルは引き続き2トップのポストを軸とした前進。IHのバレッラが高い位置に残りながら前に絡むシーンが増えていく。彼自身が縦パスの受け手となるパターンもあり、前に起点を作るための意識はより高まったと言える。その分、アーセナルも中盤でボールの受け手を作ることは容易となり、トランジッションでの加速はイージーに。インテルは攻撃を加速するケースもあるが、その分アーセナルに加速されるケースもある形となった。

 インテルは67分に選手交代を敢行。ラウタロ→エスポージトで強引な反転ができる選手を増やし、バレッラ→フラッテージで前線に突撃する運動量を増やす。特にエスポージトのポストにはアーセナルの面々は手を焼いて押し込まれる場面が増えていく。

 アーセナルも同じ選手交代で対抗。バックスにガブリエウを入れて耐久性を強化し、前線にはギョケレシュやマルティネッリを投入。オープンな展開上等!という状況を作り出す。

 前線に起点を作ることができたアーセナルはここから反撃。ギョケレシュのキープとマルティネッリのフリーランからシュートチャンスを作ると、84分には速攻からのセカンドリアクションでギョケレシュがミドル。試合を決定づける3点目を手にする。

 得点が欲しかったストライカーに3得点。イタリアの呪いを理想的な破り方で突破し、文句なしのリーグフェーズ突破を決めた。

ひとこと

 上手く試合を運んだなという印象。インテルは先手を取らせるととてもめんどくさいチームなので、常にリードをとりながら強引に仕掛ける必要性を生み出したことでアーセナルがコンスタントに攻める形を作れていた。コンペティション的な意味で3ポイントが欲しいのは向こうなので、そういう面でも仕掛けのところは向こうが無理をする必要があったというのもアーセナルにとっては助けになったと言えるだろう。

 スビメンディは少しプレータイムがかさんだが、それ以外は出場機会のシェアも上々。モスケラもすぐにフィットし、CBのローテに難なく加わりそう。欲しい人に得点が生まれ、ライスは義務と言える警告を受ける。理想的な運用でリーグフェーズ最後の山を乗り切ったと言えるだろう。

試合結果

2026.1.20
UEFAチャンピオンズリーグ
リーグフェーズ 第7節
インテル 1-3 アーセナル
スタディオ・ジュゼッペ・メアッツァ
【得点者】
INT:18’ スチッチ
ARS:10‘ 31‘ ジェズス, 84’ ギョケレシュ
主審:ジョアン・ピニェイロ

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