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「うまくいく沼」~2025.10.1 UEFAチャンピオンズリーグ リーグフェーズ 第2節 アーセナル×オリンピアコス レビュー

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レビュー

初歩が守られていないプレス

 来季の出場権が4枠か5枠かというのは今年の欧州の成績次第というわけで、やたらとプレミアファンの中で互いを応援する風潮が出ているCL。前日にリバプールとトッテナムがアウェイで勝てず、プレミア勢の開幕2連勝は水曜開催の2チームに託されることとなる。アーセナルはホームにオリンピアコスを迎えての一戦。アウェイ側が6連勝中というカードにホーム側として連敗を止める立場として臨むこととなる。

 立ち上がり、前がかりにやってくるオリンピアコス。アーセナルはいつも通り落ち着いてこのプレスを回避し、早々に左サイドからのクロスでマルティネッリが決定機を迎える。

 オリンピアコスのプレスはクオリティが高かったとは言えなかった。4-4-2でプレスをかけにいくということで2人の前線は基本的にはアーセナルのCBを捕まえにいくということ。しかしながら、その背後であるスビメンディを誰がケアするのかが決まっていなかった。

 ハイプレスを設計する際にアンカー役をどのように捕まえるのか?というところは本来であれば初歩も初歩。ここをケアせずにプレスにくる相手というのはアーセナルからすればボーナスステージのようなもの。アンカーのスビメンディだけでなく、絞って受けるルイス=スケリー、降りていくウーデゴールなどセンターラインが浮くことが多かった。そのため、アーセナルのパスコースは中央を簡単に切り拓くことができていた。

 出し手が中央で前を向くことができるようになったことで前線への供給ルートは安定。特にCFのギョケレシュへの縦パスは多く入ることとなった。プレビューでも触れたが、オリンピアコスのDFラインであればギョケレシュのゴリ押しはかなり効きやすいマッチアップになるはず。ニューカッスル相手にもそれなりに収めたギョケレシュにとってはここは負けられないところ。

 その期待に応えるように、ギョケレシュのゴリッとしたプレーからDFラインを攻略することでアーセナルは先制。惜しくもポストに当たって跳ね返ったギョケレシュのチャンスを信じられないくらい冷静に押し込んで見せた。アーセナルとしては非常に順調な立ち上がりだったと言えるだろう。

いけてしまうがために

 オリンピアコスはなかなかMF-FW間のスペースを管理できないまま試合が進んでしまうことに。ウーデゴール、スビメンディ、ルイス=スケリーといった面々は縦に進むフリーパスを手にしたかのように中央で前を向くことができていた。

 しかしながら、やたらと前を向けるせいで少しアーセナルの面々はバランスを崩していたように思う。先に挙げたメンバーの中では特にウーデゴールが顕著なのだが、難しいチャレンジパスにトライする頻度がやたら多くなってしまった。

 もちろん、この日のウーデゴールにはそれを正当化するだけのクオリティがあったのも確か。通れば一気にチャンスになるパスをガンガン通していた。それでも、率で言えば引っ掛けたりアバウトな放り込みになったことできっちり味方に繋がるということが疎かになることも少なくなかった。

 そうなってくるとチームとしてはなかなか落ち着かない。中盤で引っ掛ける頻度が多かったのはウーデゴールとメリーノ。逆にルイス=スケリーとスビメンディはチャレンジと精度のバランスが非常に良かった。

 やや沼にハマってしまった感があったのはなまじ簡単に前を向けるためだろう。前を向けるからガンガン差し込もう!ということになる。その結果、試合のコントロールよりも縦にガンガン進めていくところを優先したということだろう。

 落ち着かない展開ということで当然徐々にオリンピアコスにもボールを持つ機会が出てくるようになる。オリンピアコスはまずはロングボールからスタート。基本的には11分のようにエル・カービに放り込んだようにCFに長いボールを入れていく。

 アーセナルが4-4-2のローブロック気味に構える形で守備を行う状況に対しては、自由にボールに動くマルティンスがドリブルで対面を揺さぶりながらサイドに展開してクロスを上げていく。基本的には安定しているアーセナルの守備だが、左サイドのローテーションは不安定。こちらのサイドから上がったクロスがポデンスの決定機を生み出すが、ラヤのファインセーブでアーセナルは失点を回避する。

 ギョケレシュが時折左サイドをブレイクすることでリズムを時折引き戻すアーセナルだが、終盤はオリンピアコスを押し込むフェーズを安定して作ることができず。1-0ながらやや消化不良な形でハーフタイムを迎える。

サイドの守備で冷や汗をかく

 後半も流れとしては前半と陸続きと言えるだろう。アーセナルのボール保持はFW-MF間に入り込む選手が前を向く、もしくは半身で受けることで前へのチャレンジングなパスをつけていく。オリンピアコスのプレスはエッセが前にスライドする形となっていたため、前半に比べれば整理できていたという位置付けでいいかもしれない。

 しかしながら、プレスが前がかりになっている分、オリンピアコスのCHの背後は空くケースが出てくる。全体的に間延びしていることでセカンド回収ではアーセナルが優位になるし、ウーデゴールが高い位置にとどまることで反転から一気に加速することもできるように。バランスの変化は必ずしも一方的にオリンピアコスに利益をもたらしたというわけではない。50分過ぎからはポゼッションから陣形を整えるケースも出てくる。

 アタッキングサードに踏み込むことができるアーセナルだが、トロサールが最後のところを仕上げ切ることができず。2,3回あった決定機でゴールを仕留めきれなかった。

 60分が過ぎるとアーセナルは徐々にポゼッション重視にシフト。自陣での横パスを増やしてコントロールしていく意識を高めていく。半身で強引に縦パスをつけるのではなく、前を向く選手を作ることを丁寧にしつつ、64分のウーデゴールのターンから決定機を迎えるなど、この時間帯は後半で最も試合運びが安定していた。

 決定機を逃し続けているとオリンピアコスは反撃。タレミを入れて2トップに移行し、ボックス内のクロスのターゲットを増やす。すると、左サイドのクロスからエル・カービがネットを揺らす。だが、これは僅かにオフサイド。アーセナルのDFラインが乱れたことを考えれば、これはアーセナルが取れたわけではなく相手が引っかかってくれたタイプのオフサイド。オリンピアコスは絶好のチャンスを逃すこととなる。

 オリンピアコスは以降もサイド攻撃にフォーカス。動き直しでマーカーを外すというアタッキングサードの動きのシャープさからサイド攻略を進めていく。

 アーセナルはサカとエゼを投入し、サイドを手当てしつつ追加点を奪いにいくが、左サイドの守備の連携の機能不全は全く変化がなし。エゼは自陣に戻っていないわけではないのだが、ルイス=スケリー、ライスと誰がどこを埋めるのかの共有が全くできておらず、シキーニョやコスティーニャから延々とクロスを上げることを許容することに。素晴らしい対角パスからチャンスを作ったのは確かだが、エゼは少し疲れも感じるパフォーマンスだった。

 最終的にはサカとエゼの左右を入れ替えて守備の手当てを行うアーセナル。だが、守備で踏ん張って試合を決めるのではなく、攻めきって試合を決める。右サイドからスビメンディがキャリーをすると、逆サイドでボールを引き取ったサカがウーデゴールとの連携でラインブレイクに成功。股下を抜いた一撃で追加点を仕留めた。

 ホーム開幕戦で勝利を収めたアーセナル。イングランド勢で唯一のCL開幕2連勝を達成した。

ひとこと

 連勝スタートということでひとまずは安堵。やや不安定な試合運びを咎められなかったのは幸運だし、最後に控えるラヤのありがたさを噛み締める試合でもあった。

 欲を言えばキリがないのが正直なところ。60分からのトロサールのチャンスラッシュ、80分過ぎのウーデゴールの決定機を決めることができていれば、終盤戦の緊張感はもっと下がったはず。中2日で挟まれていることを踏まえれば、もう少し楽をしたかった。

 さらに言えば、前半にハマってしまった感がある分、うまくいく故の沼ももったいないところ。うまくいっている時こそ急ぎすぎずに丁寧に振る舞えればもっと試合をコントロールできるはず。体のキレが悪いわけではないのだけども、もう少し楽に試合を進めるチャンスを逃してしまったという点で反省は多い試合だった。

試合結果

2025.10.1
UEFAチャンピオンズリーグ
リーグフェーズ 第2節
アーセナル 2-0 オリンピアコス
アーセナル・スタジアム
【得点者】
ARS:12′ マルティネッリ, 90+2′ サカ
主審:フランソワ・ルトゥグシェ

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