■タスクをきっちりこなした先制点で逆転突破のミッション達成
アメリカの逆転突破の前に立ちはだかるのは史上初のグループステージ突破を狙うイラン。地理的にも後押しを受けられるチームとの対戦はアメリカにとってはやりにくさを感じる部分もあるだろう。自力突破のためにはイランに勝利を挙げる必要がある。
立ち上がりにボールを持つことができたのはアメリカ。イランはアンカーのアダムスをトップと中盤で受け渡しながらCBには時間を比較的与える形。その分、中盤を捕まえるのはマスト。フリーの選手を作らせない。
中盤を消してくるイランに対してつっかけてくるのはアメリカのサイドの選手たち。絞ってくるロビンソン、降りてくるプリシッチ。左サイドの選手たちを軸にアメリカはイランの中盤封鎖に反撃していく。2トップ脇に選手を立たせて、相手を左サイドに寄せた後、対角の右サイドに大きく蹴ってアタッキングサードを攻略。アメリカのプランはざっくりとこんな感じだったと言えるだろう。
アメリカの右サイドの攻略の精度はなかなか。積極的に絡んでいくデストとムサに押し出されるように裏抜けするウェアのコンビネーションはアメリカがゴールに迫るための武器となっていたといえるだろう。
立ち上がりは中盤で踏ん張っていたイランだったが、アメリカの中盤にサイドの選手が登場してからズルズルとラインを下げるように。自陣の深い位置で何とかアメリカの攻撃を跳ね返す時間が続いていく。
イランにとっては押し込まれるとカウンターで辛いという副作用もある。ウェールズ戦で前線の起点となったアズムンはこの日は沈黙。ウェールズ戦と異なり、この日はワントップという布陣も影響したのか、比較的孤立する機会が多かった。
序盤のボールを持てる時間帯においてもなかなかイランは苦戦。アメリカはウェアがインサイドに絞り、ムサがサイドに出ていく4-4-2への変更を頻発。イランが数的不利になる中盤を使おうとしたら、アメリカの2トップの片方が下がりアンカーをケアする。バックラインへのケアと中盤の数的不利解消を根性で両立するアメリカの守備プランの前にイランは前進に苦しむ。
すると、試合を動かしたのは前進のパターンを明確に持っていたアメリカ。マケニーの対角パスからデストが右サイドを抜け出すと、折り返しを決めたのはプリシッチ。それぞれに課されたタスクをきっちりとこなしてみせたアメリカが先制してみせる。アメリカはアダムスがひっかけてからのロングカウンターなど前半のうちに更なる追加点を生むチャンスがあった。
後半、動いたのはビハインドのイラン。スコア以上に困った内容を改善すべく、トップで孤立していたアズムンを早々に諦め、サイドにゴドスを投入する。
プレッシングからのテンポアップという部分はそこまで狙いとしては見えなかったが、ボールを奪ってからのカウンターの出足は明確に良くなったイラン。ゴドスのランからアメリカのポゼッションをひっくり返す機会が徐々に出てくるようになる。アメリカもハーフタイムにアーロンソンを入れており、前線で体を張るサージェントと共にアクセントにはなってはいたが、選手交代の効果がより出たのはイランの方だと言えるだろう。
サイドからの抜け出しからのクロスというパターンは単調ではあるが、確実にアメリカは自陣に釘付けになる時間帯が増えていく。アメリカはサイドでタフな対応を見せていたこともあり、ファウルをしなければバックラインは比較的跳ね返すことができているが、FKへの対応にやや甘さも。同点なら勝ち抜けはイランというプレッシャーもあってかセットプレーではナーバスさもみせる場面もあった。
最後はDFを投入し5バックにシフトするアメリカ。ラストプレーではイランの選手たちがPKを猛アピールする場面もあったが、試合をひっくり返すための材料としてはいささか弱すぎると言えるだろう。
イランを退け、勝利一択のミッションに成功したアメリカ。2大会ぶりのグループステージ突破でオランダの待つベスト16に駒を進めた。
試合結果
2022.11.29
FIFA World Cup QATAR 2022
Group B 第3節
イラン 0-1 アメリカ
アフメド・ビン=アリー・スタジアム
【得点者】
USA:38′ プリシッチ
主審:アントニオ・マテウ・ラオス