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「3人の鬼」~2025.10.29 カラバオカップ Round 16 アーセナル×ブライトン レビュー

プレビュー記事

目次

レビュー

入れ替えたなりの代償

 プレビューでこの試合のポイントの1つはどこまでリソースを注ぐか?というところにあるとコメントしたが、両チームともに想像以上のターンオーバーを敢行してスターターを組んだと言えるだろう。

 アーセナルのメンバーを考える時に1,2人はスターター継続を余儀なくされるはずと思っていたが、CFにハリマン=アヌスを先発に抜擢し、継続したスターターはエゼただ1人。おそらくここのポジションもマルティネッリの負傷がなければ彼が先発だったはずで、アルテタは完全ターンオーバーを目論んでいたことが窺える。レギュラー格を45分ずつシェアしながらポジションを埋めるケースが多かった近年のカップ戦運用の中でも非常に珍しい扱いだ。それだけパレス戦でのチーム状態がタフだったということだろう。

 ブライトンもかなり幅を持たせた入れ替えを敢行。ダンク、ウェルベック、アヤリ、ミンテとこちらもレギュラー格の選手の多くをベンチスタートとしている。

 さらにブライトンは3バックでのスタート。後方を5枚にし、ファン・ヘッケがコッポラとボスカリのフォローをする形にする。

 しかしながら、5バックといえど自陣に引きこもるだけではなかったブライトン。アーセナルのマイナスのパスワークに合わせて前線はきっちりとラインを上げていく。立ち上がりにいきなりチャンスを迎えた形もこの前からのプレス起点。インカピエのパスがミスになったところから、ショートカウンターからだった。

 立ち上がりに見られたこのミスのように、アーセナルには特に選手を大幅に入れ替えた影響が見られるパフォーマンスだった。アーセナルもブライトンと同じようにマイナスのパスに合わせてバックラインにプレスをしに行ったが、縦へのスライドがハマらず。ファン・ヘッケからの縦パスを受けたCHはフリーになることが多く、バレバから一気に縦に進むことに。アーセナルはノアゴール周辺のスペース管理がイマイチで、バレバやゴメスをうまくチェックすることができなかった。

 ブライトンのチャンスは大きく分けてこの2つ。バックラインで左右に揺さぶりながら、縦に差し込むもしくはドリブルのコースを探すというのが1つ、そしてもう1つは立ち上がりのようにアーセナルのパスミスから。ノアゴールを咎めたところからのプレスからショートカウンターで襲いかかる。

 前半は明らかにシュートの多かったブライトン。アーセナルにとってはケパの落ち着いたパフォーマンスが清涼剤。ベテランらしい落ち着きのあるプレーでピンチを無事に凌ぐ。1on1がいくつもあるといういつもよりも一段危険な決定機ながらも、試合勘のなさを感じさせない出来で無失点をキープした。

頼みの綱の収支もプラスにならず

 保持面でも苦戦するのがこの日のアーセナル。ルイス=スケリーは特に絞らず、オーソドックスなバックラインからのボールの動かし方にトライを行う。しかし、先に挙げたようなパスミスからの被カウンターが発生してしまう。

 アタッキングサードにおいても同様に苦戦。ホワイト-ダウマンラインのオフサイドは明らかにタイミングがあっておらず、連携面での不慣れ感を感じさせられる物だった。オフサイドになるならまだいい方で味方が動かない状態のまま困ったホルダーがロストしてしまうシーンもあった。

 よって、アタッキングサードでも個人勝負を強いられるアーセナル。右サイドのダウマンは前を向ければ鋭さを見せてはいたが、単純にそうした機会が整えられないのと、1枚を剥がしても後ろから出てくる5バックという仕組みに対しては単騎でできることには限界があったと言わざるを得ない。それでも、プレスバックで潰しに貢献するなど一定のパフォーマンスを見せられるのがこの試合のダウマンの素晴らしいところだろう。

 そうした状況でこれまでのアーセナルの助けになってきたのはCKをはじめとするセットプレー。しかし、キッカーのサカ、ライスと主要ターゲットのガブリエウの3人の要人がいないとなると、威力は半減。自らが決定機を掴むのとは逆にカウンターからツィマスが1on1のチャンスを迎えるシーンもあった。さらにはCKからファン・ヘッケが決定機を迎えるシーンもあるなど、セットプレーをトータルで見てもあまり収支はプラスにはなってなかったと言えるだろう。

 少しずつペースを引き戻したいアーセナル。キーマンとなる予感だったのはホワイト。ツィマス周辺のスペース管理が怪しくなったブライトンは少しずつホワイトをフリーに。ドリブルを仕掛けるスペースができたホワイトは対角パスからエゼを狙う大きな展開を作っていく。1回目はオフサイドになったが、2回目は幅を取る展開に成功。徐々にワイドの選手の仕掛けの機会を増やしていく。

 だが、ゴールには至らず。前半はスコアレスのままでハーフタイムを迎える。

変化をつけた左サイドがゴールを呼び込む

 後半もブライトンは元気いっぱい。アーセナルのプレスを咎めたところから縦の矢印を出せると、2列目やCHの押し上げが攻撃の厚みを出していく。特にバレバが攻守にダイナミズムを出して、身体能力の高さを感じさせるパフォーマンス。後半もケパは忙しい立ち上がりとなった。

 ミスが出れば怪しいのは前半と変わらないアーセナルだが、徐々にアタッキングサードの攻撃の精度が出てくることでチャンスを作っていく。特に違いとなったのはサイド攻撃のフェーズ。左サイドに流れるヌワネリには相手のマークを外すことができるシーンが出てくるように。

 先制点も手数をかけたサイド攻撃から。メリーノのフリックで奥行きを作ることに成功した左サイドからの折り返しをヌワネリが仕留めてゴール。この日ここまでで一番の崩しがゴールにつながる。

 このゴールから試合はややオープン寄りに。一進一退の攻防の中でブライトンがチャンスを見出したのは右サイド。枚数をかけた連携でハーフスペースの奥をとって折り返しをしていく。

 アーセナルは縦の速い展開を使いつつ、テンポを落としたい時はエゼがリズムをコントロール。バタバタとした流れの中で異質な存在となっていた。

 どちらに流れてもおかしくない展開の中で試合の流れを決定づけたのはアーセナルの選手交代だろう。サカ、ガブリエウ、ティンバーの3人はまさしく鬼だった。一気に右サイドを活性化したサカはプレースキッカーとしても躍動。ターゲットとなったガブリエウの登場で威力は相当に高まることに。

 右サイドの活性化でセットプレーを得る頻度が上がり、1回1回の威力も上がってきたアーセナル。そして、得点にダイレクトに絡んだのは3人目の鬼であるティンバー。キャリーで敵陣まで入っていくと、裏をとるハリマン=アヌスへの抜け出しから1on1を演出。このシュートはスティールに阻まれるが、後方から攻撃に加わったサカが追加点を奪い試合決める。この日のハリマン=アヌスはいい意味で出ていることが気にならなかったし、最後の最後で得点にも関わった。価値のあるプレータイムになったことだろう。

 この2点目で試合は事実上決着。ブライトンは4バックにシフトして攻撃に出ていくが、アーセナルは落ち着いて残り時間をいなすことに成功。10月の公式戦全てを無失点で終わるという素晴らしい内容で締め括った。

あとがき

 個人個人は優秀なメンバーなのだろうが、やはりメンバーを総入れ替えすると難しさがあるなというパフォーマンスだった。ルイス=スケリー、モスケラなどすでにレギュラー組に入り込んでなめらかにプレーができているので、あとはそういう機会があるかどうかになるのかなと思う。ノアゴール、インカピエあたりの現在地を本当の意味で測るにはレギュラー組に混ざったまとまったプレータイムが必要になるはずだ。

 そうした機会がありながら、なかなか結果が出なかったヌワネリにゴールが出たのはポジティブ。左足振ってズドンという得意パターンとはちょっと異なり、オフザボールのポジション取りから得点に繋げたのもいい流れだと思う。

 それでもこの試合はやはり3人の交代選手の凄みが際立った。先制点の後のやや流動的な展開において投入した数分で流れを一気に引き寄せたガブリエウ、サカ、ティンバーという3人の鬼が見せた圧巻の存在感は驚異の10月の締めくくりの最後の1ページとして刻まれることになるだろう。

試合結果

2025.10.29
カラバオカップ
Round 16
アーセナル 2-0 ブライトン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:57‘ ヌワネリ,76′ サカ
主審:サム・バロット

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