MENU
アーカイブ
カテゴリー

「信頼のギャンブル」~2025.12.3 プレミアリーグ 第14節 アーセナル×ブレントフォード レビュー

プレビュー記事

目次

レビュー

すでに代替案ではない

 炎のロンドン3連戦を終えたアーセナルに待っているのはチェルシー戦を起点とする中2日のラッシュ。142時間の間に3試合が詰め込まれるという超過酷スケジュールである。ブレントフォードは強力な相手ではあるが、ここは入れ替えもやむなし。ウーデゴール、ホワイト、マドゥエケなど数名の選手のターンオーバーを敢行することでリフレッシュを図る。対するブレントフォードもチアゴ、ダムズゴー、ヘンダーソンがベンチスタートとなり、こちらもコンディションを気にしたメンバー構成となっている。

 まずはブレントフォードの深追いするプレッシングから試合はスタート。トップがワンサイドに追い込みながらIHがスライドすることでアーセナルのビルドアップを彼らの左サイド側に追い込んでいく。

 アーセナルはこれに対して可変で対抗。マンツー気味になった時にカラフィオーリを捕まえる役割はカヨーデなのだが、高さとレーンを頻繁に変えるカラフィオーリにどこまでついていくかは悩ましいところである。

 前線ではマルティネッリがバックドアから背後を取るアクションを敢行。さらにはメリーノとの関係性を利用して、インサイドの低い位置に入り込んで浮くなどいつもの大外固定とは異なる立ち位置の工夫で勝負を仕掛けていく。

 左サイドの可変と裏抜けに対して、ブレントフォードはハイプレスで捕まえ続けるのは難しいと判断。よくある話だが、ハイプレスが無理ならばローブロック寄りに構えるという二段構成である。

 というわけでここからアーセナルはブロック攻略に移行。今度は右サイドで工夫をしていくアーセナル。ウーデゴールが自陣に引いて右サイドの駆け引きを意識。大外のマドゥエケを軸にホワイトとウーデゴールが高さを変えながら勝負を仕掛けていく。

 この右サイドからの縦への揺さぶりからアーセナルはあっさりと先制ゴールをゲット。右サイドのギャップを作ったところから抜け出したホワイトのクロスをメリーノが叩き込んで先制。2人のマーカーに対してのフリーになり方が完璧。さらには叩きつけるボールも完璧という抜群のストライカー仕草で先制点を奪い取る。後半にもDFを出し抜く形でシュートに詰めるなど、すっかりとただの9番になってしまったなという印象。降りて受ける技術も上達しており、メリーノのCFは負傷者がいるときの代替案の域をすでに超えていると言えるだろう。

受けて立つ同数迎撃

 この日は比較的アーセナルのローブロック崩しは好調だった。中でも良かったのは止まっている選手の近くにいるサポートランを活用してボールの動きに緩急をつけるアクション。マドゥエケが仕掛けようとするときのホワイトの追い越しが一番わかりやすい例である。

 止まっている選手から急に動きのついた選手にボールが渡ることで守備側の動きは明らかに一歩遅れる。24分のマルティネッリの決定機や32分のライスの右サイドへの突撃も同じようなチャンスメイクに分類できるだろう。

 メリーノの降りるアクションに対してついていかないのも含めて、この辺りはもう少し守備側がボール周辺の密度を上げることで対応したい部分。人がいるのにボックス内に張り付いているだけではあまりブロック守備の意味合いがない。きっちりとしたスライドを遂行する点で甘さがあったのがこの日のブレントフォード。

 失点以降はブレントフォードは再びハイプレスを起動したこともあり、引きつけながらWGが挟まれないという状況は容易に作り出すことができたアーセナル。フリーランは面白いように刺さるのでライスやカラフィオーリが左右のサイドに不確定要素として顔を出す動きがどんどん増えていくという好循環だった。

 一方のブレントフォードの保持はロングボールが主体。シャーデとワッタラでアーセナルのDFに噛み合わせる形でつっかけていく。主力2人が不在のCBであれば勝負を仕掛けていく価値があると判断したのだろう。特にロングボールに関しては空中戦に難があるモスケラをシャーデで狙い撃ちする。

 一度ボールが収まってしまえばブレントフォードの攻撃は長くなる。ロングスローにコーナーとセットプレー漬けでアーセナルを壊しにいく。20分には危ういシュートをラヤがギリギリで救うなど、アンドリュース仕込みのCKは炸裂までもう一歩まで迫っていた。

 ということでなるべくポゼッションを渡さないで進めたいアーセナル。その前提に立つと重要なのはCBに1on1の迎撃を許容できるか?ここに中盤が挟み込む形を意識すると、ライスが前プレに加われないことになり、前からのプレスが刺さらなくなる。

 この試合の前半のポイントの1つは相手の2トップの同数を生かしたロングボールに対して、アーセナルがモスケラとインカピエで受けて立つという判断をしたことだと思う。序盤こそやや跳ね返しはうまくいかないケースもあったが、徐々に順応したアーセナルのCB陣。チアゴがいれば話は違ったかもしれないが、シャーデであればモスケラもなんとかなった。

 ロングボールを起点作りではなく、逆にアーセナルのカウンターに利用されるという誤算が発生したブレントフォード。さらにこの日は右サイドからのカヨーデのロングボールが不発。飛距離と精度の両面で物足りず、陣地回復やボックスに迫っていくフェーズで機能しなかった。中3日では肩の調子がイマイチ的な野球のような話かもしれない。

 順調なアーセナルにも前半終了間際に誤算が発生。モスケラが負傷交代でCBにティンバーを入れることに。終盤にはマドゥエケに対峙するヘンリーが1on1で後手を踏まなくなったことと、ブレントフォードのローブロックがファーサイドへのクロスに問題なく対応したことでややアーセナルペースは鈍りハーフタイムを迎える。

ミスは自分で帳消しに

 後半、試合は縦に速い展開でのスタート。ビハインドのブレントフォードが仕掛けたこのペースにアーセナルは便乗。メリーノが長いボールのターゲットとなり、ピノックに競り勝つなど縦に速い攻撃もアーセナルは悪くない展開だった。

 ブレントフォードは保持局面からもリカバリー。CBのアイエルのキャリーでサイドを切り拓いたり、ケレハーのフィードで外を切るアーセナルのWGの背後をつけたりなどヘンリーやカヨーデを開放するシーンが少しずつ出てくる。

 このようにロングボールだけでなく後方の粘り強いボールの動かし方で相手を揺さぶることができるのがブレントフォードの強みである。ただ、手数を分で敵陣に進み、オープンな成分が減ってしまうとアタッキングサードでの攻め筋が消えてしまうのも悩みの種ではあるのだが。

 10分を過ぎたところで試合はゆったりとトーンダウン。アーセナルはもちろんこの展開でも悪くないのでここでもお付き合い。しかし、ギアを巻き直したいブレントフォードは一気に主力組を投入。チアゴ、ダムズゴー、ヘンダーソンを投入し、5バックをキープしたまま入れ替える。対するアーセナルもエゼとサカの2枚が両サイドに入ることでこちらも流れを変えにいく。

 この主力投入で得したのはアーセナル。リズムの違うエゼの登場で明らかにブレントフォードの守備は対応に苦労していた。右サイドでは明らかに1人での対応が難しいサカが登場。マドゥエケの後に出てくる元気なサカというのはSBにとっては地獄だろう。ヘンリーだけでなく、中盤がスライドすることで対応をする。

 だが、この中盤の動きによってアーセナルは細かく中央のコンビネーションが活性化する。ややアタッキングサードのタッチが乱れてしまった分、チャンスメイクを量産とまではいかなかったが、両脇で起点ができることでアーセナルの幅取りは安定した。

 5バックをキープしつつブレントフォードは最後の交代を敢行。しかし、ヘンリー→ルイス-ポッターの交代はサイドの手当てにはなっていないし、ロングボールも有効打をうてない。せめてチアゴを交代した時にシャーデを残しておけば、もう少しロングボールは活用しやすかったと思う。エネルギーが注入された前線は元気にプレスにいくが外されてしまうという状況が続くブレントフォードだった。

 優位な後半を維持し続けたアーセナルは後半追加タイムにサカが追加点をゲット。メリーノの中央のタメにより裏に抜け出したサカは冷静にシュートを仕留めた。直前の自身のシュートミスを帳消しにする一撃で試合は決着。アーセナルは難しい中2日の試合を完勝で飾った。

あとがき

 この試合のポイントは早々に試合を動かしたホワイト-メリーノラインの貢献が1つ。もう1つはCBにブレントフォードとの1on1の迎撃を許容して高いラインをキープするという判断をしたことだと思う。

 ガブリエウ、サリバであれば迷いなく託す仕事をきっちりとモスケラとインカピエにも託すことができたというのは今後を見据えても大きい。同じ役割を託せなければ本当の意味で層が厚いとはいうことができない。信頼をおいたからこそのギャンブルに勝利したアーセナルにとってはまた自信を深めた1勝となった。

試合結果

2025.12.3
プレミアリーグ
第14節
アーセナル 2-0 ブレントフォード
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:11‘ メリーノ, 90+1’ サカ
主審:トニー・ハリントン

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次