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「仕方なくはない」~2026.1.25 プレミアリーグ 第23節 アーセナル×マンチェスター・ユナイテッド レビュー

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レビュー

シティ戦からのユナイテッドの守備プランの変化

 ミッドウィークには未勝利が続くイタリアの地での呪いに終止符を打ち、リーグフェーズの2位以内が確定。準決勝までの2nd legのホーム開催権を確保し、文字通りリーグフェーズで残されているミッションは無くなった。次に狙うは未勝利が続いているリーグ戦に終止符を打つこととなる。

 まずはアーセナルの保持から見ていこう。ユナイテッドの非保持は4-4-2ベース。メンバーは前節と同じではあったが、シティ戦の守り方とはマイナーチェンジがあった。具体的な変化点としてはSHの守備の基準点が挙げられるだろう。シティ戦ではシティのSBをケアしつつも4-4-2を守ることを優先し、ブロック守備の陣形をキープすることを重視していた。

 その一方でアーセナル戦ではより相手のSBに対するマンツーのカラーが強かった。4-4-2の陣形が崩れてしまったとしても割り切り、ティンバーとインカピエがユナイテッドのDFラインの高さをとった場合にはここの位置まで戻る。

 ユナイテッドは味方のSBに相手のSBのマークを受け渡す場面もあったが、その場合はユナイテッドのSHは大外にいるアーセナルのWGのマークを請け負い、最終ラインに吸収されるということを厭わなかった。この点はマイナーチェンジではあるが、シティ戦と明確にユナイテッドの守備が変わった部分だと捉えていいはず。シティよりもサイドでのSBを活用した攻撃をより警戒した可能性が考えられる。

 アーセナルはこのユナイテッドの守備原理を利用しようとした。ユナイテッドのSHがアーセナルのSBについていくということは、アーセナルのSBが高い位置を取ってしまえばユナイテッドのSHがプレス隊として3枚目の貢献を果たすことは難しいということに言い換えられる。アーセナルのSBがビルドアップに関与せず3バック化すれば、サイド側に浮いた3枚目からのキャリーは簡単にできる。

 逆にアーセナルのSBがビルドアップに関与することで3枚目のプレスをあえて引き寄せる攻略パターンも考えられる。12分過ぎのようにティンバーとサカの間にウーデゴールが入り込む形。アーセナルのWGとSBが守備基準を決めるのだとすれば、その2人があえて開く立ち位置を取ればスペースが開くという考え方だ。

 この試合ではSBがビルドアップに関与しない方がメインストリーム。個人的にはユナイテッド攻略には「ユナイテッドのCHの守備範囲を広げるアプローチが有効」とプレビューで述べたので、ユナイテッドのCHの管理すべき横幅が広がるアーセナルのSBがビルドアップに関与する形はもっと見たかったのだけども。

 それでもサイドからCBがキャリーをする形は有効であった。アーセナルはガブリエウよりもサリバの方がこういったキャリーのアクションが多かった。ガブリエウの方が上手いような気もするが、CBの持ち上がりの際に気をつけなければいけないのは成功率。ネガトラを強いられた時の陣形が歪んだ状態になるので前でロストしないことは重要。今のアーセナルであればより前の攻撃ユニットに信頼を置くことができるのは左よりも右と考えたのかもしれない。

 サリバの持ち運びに対してはユナイテッドは中央のブルーノが後から二度追いをしていく。明確に間に合っていないので、アーセナルは右サイドから簡単にキャリーをすることができた。

 では、ユナイテッドのSHがアーセナルのSBへのマンツーを無視して3枚目としてプレス隊に加わったらどうなるか?その答えはアーセナルの先制点のシーンにある。この場面ではガブリエウからジェズスへの縦パスを絡めながらムベウモ(このシーンではディアロと瞬間的にポジションが入れ替わっておりSHロールをやるべき位置にいた)の足を埋めてインカピエを解放する。

 インカピエのマーク役はムベウモだったので、ここからキャリーをされてしまうのはユナイテッドにとっては想定外。一気に背走を強いられることに。ユナイテッドはボックス内での陣形を整えられずそのまま失点まで。左右に振られた分、カゼミーロが左に釣り出されてしまい、ウーデゴールの位置の選手を潰すことができなかったのがユナイテッドの失策となる。アーセナルの先制点のシーンはユナイテッドの守備原理とは反する場面である。

滑走路効果を高める過程のエラー

 ユナイテッドにとって外から持ち運ばれるのがアーセナルのCBであれば許容できる理由もある。1つは先に触れたポジトラの陣形。サリバが持ち上がった場合、ロストしてユナイテッドがカウンターを打つ場面に変化すれば、サリバがCBの持ち場にいない可能性は高まる。ティンバーがビルドアップに関与しないことでサリバの前に作られた滑走路はアーセナルにとっても危険な匂いのする賭けでもあった。

 もう1つはCBであれば攻め上がられたとしても相対的に怖さがないから。14分手前のシーンのようにこの試合では流れの中でサリバが高い位置を取る場面もあったが、当たり前だが他のアーセナルの選手に比べればこの高さでの攻撃参加でできることは少ない。

 逆に言えばアーセナル側が「滑走路」を活用する効果を高めるためのアプローチとしてはサリバではない他の選手が「滑走路」を使うことが考えられる。ユナイテッドの1点目のシーンはまさにそのアプローチへのトライの真っ最中。スビメンディがCBの間ではなく、右に落ちる形で3人目を作り、ここからドリブルやパスによる組み立てからチャンスを作るトライをする。

 しかし、ユナイテッドは30分の失点ですでにビハインド。かつ、より放っておけないスビメンディが滑走路のスタートラインに立つとなれば後追いだったブルーノがより高い位置から咎めにいくという方策を取るのは不思議ではない。このビルドアップとプレスの駆け引きにアーセナルは負けてしまった感がある。縦につけるのではなく、逆サイドに振ることでプレスを打開しようとしたスビメンディのパスがミスとなり、ムベウモが1on1を制してユナイテッドは追いつくこととなる。

 アーセナルからすれば36:22にスビメンディ→ライスのパスを通せばこのシーンはチャンスになっていたはず。俯瞰では通せるコースは存在しているように見えた。この縦のパスが通らなかった時点で一旦は右にせり出したスビメンディを活用した攻撃はこのシーンでは難しくなった。なので、そこからはバックパス→左サイドに展開という流れ自体は理解できる。

 リアルタイムで見た時はサリバはやや余計なことをしたかなとも思ったが、総じて振る舞いは理解できるものというのが個人的な結論だ。もちろん36:25の場面で縦にボールを捨てることは可能だが、アーセナルの保持の選択っぽくはないし、同じように縦に捨てるアクションはその後のスビメンディにもできる話。ラヤを経由して逆サイドに展開する方がアーセナルのプレーブックとしては自然だろう。

 サリバとスビメンディを入れ替えるトライに関してもバックユニットのローテーションによるズレを活用するという今のアーセナルのプランとかけ離れているものではない。この場面のエラーは個人的にはボーンマス戦のガブリエウと同じく(よりシビアな場面ではあったが)スビメンディ個人に紐づいたものとして問題ないように思えた。

CHに過負荷を強いられたアーセナル

 ユナイテッドのボール保持において最も効果が高かったのはセンターラインにおける数的優位を作ることができるかどうかである。アーセナルのCHがキャパオーバーになるくらい多くのことを管理する形に持っていけばよりチャンスは広がる。

 ユナイテッドにとって初めての決定機だった33分のブルーノのシュートシーンを例にとって説明したい。ユナイテッドのこの試合のアーセナルの攻略の中心だったのはアーセナルのハーフレーンのMF-DF間への縦パス。この縦パスをアーセナルのCHがチェックできない状況で出すことができればチャンスになる。

 そのためにはアーセナルのMFラインの手前(=ユナイテッド陣側)に食いつきたくなる選手を置くことが重要となる。この場面で言えばメイヌーだ。

 カメラのスイッチングの影響でなぜメイヌーにジェズスもウーデゴールもチェックに行けない状況が生まれてしまったのかは不明だが、ライスがメイヌーにチェックしにいく状況を作れている時点で降りるムベウモが浮く。本来はライスが埋めたいスペースだ。

 ユナイテッドの素晴らしかった点はハーフレーンのライン間に縦パスを入れる際に必ず同じ高さにサポートができる選手を置いていること。結果的にはブルーノにパスが通ったが、カゼミーロのことである。

 もちろん、ムベウモに対してガブリエウがチェックにいくこともできる。だが、カゼミーロという並行サポートがいる以上、遅れて出ていってしまうとワンツーから背後を取られるリスクもある。第5節のシティ戦でガブリエウがハーランドと入れ替わられた失点シーンの構造の再現と思ってもらえればいい。

 後半の2失点目もこの構造だった。ライン間に入るドルグにパスが入り、ブルーノとの連携で完全に中盤を外されてミドル。前半からの構造のズレを活用された形が致命傷となった。この場面ではメイヌーを素早くスビメンディからジェズスに明け渡す必要があった。ジェズスのポジションの取り直しが遅れたせいで、メイヌーから離れるのが遅くなったスビメンディにとってドルグへの縦パスをケアするのは「キャパオーバー」以外の何ものでもない。ジェズスのリポジ遅れを誘発したマグワイアのキャリーはとても価値があった。

 前半は似たような場面でもアーセナルはユナイテッドの縦パスをケアできた場面があった。13:30のシーンがそれに当たる。ウーデゴールがリサンドロ・マルティネスへの縦パスのルートを制限し、その先にはスビメンディがカットできるようなポジションを取ることができている。

 ドルグのゴールのシーンも同じようにスライドが間に合っていれば縦パスは入っていなかった。メイヌーの受け渡しが遅れてしまったことが尾を引いてユナイテッドの見事なコンビネーションを引き寄せてしまった感がある。

 前半の序盤にアーセナルがこうしたギャップを作られなかった理由はブルーノのマーカーがはっきりしていたからだろう。多少持ち場を離れてでもサリバにはブルーノを潰す特命が与えられていた。アーセナルのCHに過負荷を与えることにユナイテッドが成功した場面においては、ブルーノがほぼ関わっていることからもこの方向性は理解できる。ブルーノを無視していいのであれば、ライスとスビメンディは誰をマークすればいいのかの認知や受け渡しの難易度がグッと下がる。

 雲行きが怪しくなったのは前半の途中。4-4-2ミドルブロックを組む形でラインが下がったタイミングでブルーノをサリバがマークせずに4-4-2の立ち位置を守る頻度が高まってから。CHの受け渡しの中にブルーノが入ったことで負荷が上がったしまった。ナローなスペースを攻略する上でブルーノの精度は必要不可欠だったことを踏まえると、サリバがマンツーでついていたブルーノのマークの受け渡しが曖昧になったことはユナイテッドに試合の主導権が移った一因だろう。

4枚交代に対する見解

 58分に敢行した4枚交代は議論が分かれるところだろう。交代策はいつだって議論が分かれるもの。特に負けた試合においては。

 まず、この交代が行われた時点でアーセナルに必要だったのはビルドアップで押し返すための前進ルートの構築だ。リサンドロ・マルティネスにつっかけることで前進のきっかけとなったギョケレシュの投入はその意図を見事に実装できた交代だったと言えるだろう。

 その一方でウーデゴールとスビメンディを下げたことによる右サイドのボール運びの不安定さの増加はいただけない。せめてどちらかは残して、ユナイテッドのプレスを空転するきっかけを作りたかった。メリーノ、ホワイト、そして逆サイドのIHに入ったエゼではこの役割は率直に物足りなかった。

 もう1つ、抑えておきたいのは4枚交代の段階でユナイテッドの守備基準が変化したこと。「滑走路」構築の要因となっていたアーセナルのSBへの極端なマンツーを避けて、全体のラインを下げながら4-4-2の構造を維持するシティ戦仕様に近づいたと言えるだろう。

 状況の変化の中で輝きを求められるのはホワイト。相手の逆を取るようなランはマークの受け渡しが遅れると守備側にとっては致命傷となる。マンツーではなく陣形を維持しながらの受け渡し要素が強まった終盤こそホワイトのフリーランは生きるはずだった。

 だからこそ、右サイドは3人目のサポートが重要。67:20で右のハーフレーン、PAラインの高さに誰もいないのは看過できない。IHのどちらかはいてほしい。メリーノのボックス内勝負が既定路線ならエゼと左右入れ替えて、この位置に立つタスクを与えるべき。サイドのサポートを捨ててボックス内に向かうのが早すぎる。この辺りのバランスの悪さは4枚交代による弊害に思える。

 右サイドの連携が終盤戦の攻略の軸となるので、マドゥエケは入れるとしても左の方がベター。ルイス=スケリーは押し込む前提がなければ前節のオライリーの二の舞になる。インカピエにプレータイム制限があり交代はマストだったとしてもルイス=スケリー投入にビビる理由はわかる。

 自分なりの交代策に関する結論をまとめる。58分の交代はジェズス、スビメンディ、インカピエ→ギョケレシュ、メリーノ、ホワイトの3枚が妥当。百歩譲ってエゼを入れるのであればメリーノと左右は逆、マドゥエケを入れるのであれば左というのが自分のこの試合の采配における意見である。ショックを与えることを優先し、細かいことが蔑ろになっている采配というのが4枚交代における見解だ。

 ドルグの負傷に伴い、シェシュコを入れた場面はやや驚きではあったが、アーセナルの4枚交代に特にビルドアップのフェーズの改善が見られなかったのは明らかだったので、引き続き組み合おうとするのはあの状況では当然だろうなという感じ。結果的にシェシュコへのロングボールが3点目に繋がることとなった。この点でもキャリックの方が試合の流れをより掴めていた選手交代ができていたということになるだろう。

あとがき

 2,3失点目を相手のスーパーゴールで片付けてしまうのであればアーセナルが今季タイトルはないと断言できる。それぞれのチームにとって優勝する上で他のチームにナンバーワンを取られることを譲れない分野が存在する。アーセナルにとってはナローなスペースを受け渡しする守備、下振れの幅の狭さ、そしてセットプレーでの得点力の3つである。

 2つの失点を仕方ないとすることは自分にとっては「アーセナルが優勝できなくても仕方ない」と同義。昨季もスーパーなゴールに泣かされた分、そうした芽は未然に摘む必要はがある。この試合のユナイテッドのナロースペースの崩しが素晴らしかったことは前提として、今後はこのような失点を同じ試合の中で繰り返すことは絶対に避ける必要がある。次の試合ではよりいい準備ができることを期待したい。

試合結果

2026.1.25
プレミアリーグ
第23節
アーセナル 2-3 マンチェスター・ユナイテッド
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:29′ リサンドロ・マルティネス(OG), 84′ メリーノ
Man Utd:37′ ムベウモ, 50′ ドルグ, 87′ クーニャ
主審:クレイグ・ポーソン

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